Henry GrimesというBassistは実に不思議なMusicianである。『Jazz on a Summer's Day(真夏の夜のジャズ)』でThelonious Monk Trioの一員としてベースを弾いていたこの男は、Free Jazzのみならず、『Annie Ross Sings a Song with Mulligan!』、Lee Konitzの『Tranquility』、『Sonny Rollins and the Big Brass』、Mose Allisonの『I Love the Life I Live』、『Shirley Scott Plays Horace Silver』、Roy Haynes Quartetの『Out of the Afternoon』、 Walt Dickerson Quartetの『Jazz Impressions of Lawrence of Arabia』、 Lennie Tristanoの『Continuity』など数々の名盤で素晴らしい演奏を披露し、なんたって、あのCharles Mingusが、バンドに2人目のBassistを起用しようとした時に選ばれた人物なのであるから。50年代半ばまでにGrimesは有能なBassistとしての名声を確立していたにも関わらず、60年代後半、Californiaに移住後に突如、その消息は途絶えた。そしてGrimesはこの世を去ってしまったとの風評が流れ、一般的もそう考えられていた。ところが、2002年に、殆ど無一文で、演奏するBassもなく、 Los Angelesの小さなApartmentを借りて詩を書いたり雑用をして生計を立てているGrimesが発見された。Jazz界との繋がりを失っており、Albert Aylerが70年に亡くなっていることも知らなかったという。そしてGrimsは演奏を再開するのだ。Philadelphiaで、両親は共に若い頃は音楽家だった家庭にGrimsは生まれた。12歳の時にViolinを始め、Tuba、English Horn、Percussionを演奏するようになった。最終的にMastbaum Technical High Schoolの時にDouble Bassに転向した。その後もJuilliardで音楽を学び続け、Lennie TristanoやLee Konitz、Sonny Rollins、Thelonious Monk、 McCoy Tyner、Benny Goodmanらと共演している。Grimsesの演奏を聴いた時に、まず感じたのは、木の鳴りを生かした、そのぶっとく黒々としたBassの音色の豊かさである。それが、独特のTime感覚で繰り出されるフレーズで時空を歪ませていく心地良さ。大好きなBassistの一人である。
『The Call』はHenry Grimes TrioがESP-Diskから66年にリリースしたアルバム。Grimsが2002年に再発見されるまで唯一のソロ・アルバムであった。65年の12月28日にNew York Cityで録音されている。GrimesのベースにClarinet奏者Perry Robinson、そしてDrummer Tom PriceによるTrioの演奏。RobinsonはSavoyにPerry Robinson 4名義でKenny Barronのピアノ、Paul MotianのドラムスにGrimesのベースで『Funk Dumpling』というご機嫌なアルバムを残している。Tom Priceは、Frank WrightやBurton Greene、Patty WatersというESPお馴染みのメンツとアルバムで共演している。
アルバム1発目は“Fish Story”。ここでもGrimsの図太くウネるベースが存在感を見せる。Tom Priceのドラミングもただ闇雲に叩きまくるというのではなく、AbstractでStrangeなPulseを送り続ける。そこにPerry RobinsonによるClarinetが時に咆哮し、時に抑制されたPastoralな旋律を奏でる。3人は緩急自在に時空を駈けぬけていく。
“For Django”もMysteriousに静寂を3人が美しいPulseを描きながら徘徊する。時折Robinsonがスリリングに切り込んでくる。
Perry Robinson作の“Walk On”はPulseを刻み続けるリズム隊をバックにRobinsonが嘶き、しかし、それは好き勝手、ドシャメシャに終わらないところが、このTrioの良さ。
“Saturday Nite What Th'”は3者が抑制された美しい静寂の中で触発し合い、淡々と時が過ぎ去っていく。
Perry Robinson作のタイトル曲“The Call”。RobinsonはMinimalにフレーズを吹き続け、時空が歪み異次元にTripさせられる。悲し気なRobinsonのClarinetの鳴らしっぷりが印象的だ。繰り返しの美学。
アルバム最後をシメるのは“Son Of Alfalfa”。Robinsonの軽快なフレーズで始まり、繰り返される中、徐々に時空が捻じ曲げられていく。
◎Blue Monk/Thelonious Monk Trio at the Newport Jazz Festival, 1958
◎Henry Grimes at Crescendo
(Hit-C Fiore)









