“(Sometimes I Feel So) Uninspired”はTrafficが73年にリリースしたアルバム『Shoot Out At The Fantasy Factory』に収録されていいる。また同年にリリースされたLive Album『On The Road』でも魂のこもった最高の歌と演奏を聴くことが出来る。
David Crosbyが1月18日に、この世に別れを告げていった。気難しそうだけど、その笑顔は人懐っこく優しそうで、人の心をとらえて離さない感じがして、West Coast Rock界の勝新ともいうべき、Outlawで自由奔放だけど、どこか憎めない、愛すべき才人。2010年代に入ってからの充実しまくった意欲作をリリースして、これからが音楽人生本番だぜ、みたいな勢いが自分にとって強い印象として残っていたので、何とも残念で、悲しくとても辛い。2014年リリースの『Croz』に始まり、2016年の『Lighthouse』、翌年の『Sky Trails』、Becca StevensやMichelle Willis、Michael Leagueとの『Here If You Listen』、そして2021年作『For Free』に昨年リリースされたばかりのソロとしては初めてのLive Album『David Crosby & the Lighthouse Band Live at the Capitol Theatre』という長い闘病生活をおくっていたとは思えない近年の作品は、いずれも旺盛な創作意欲と気合の入り方を感じさせ、完成度も高い。これら大物Musicianや期待の若手音楽家との交流を通じて、才能と自信に満ち溢れた素晴らしい作品で楽しませてくれてきただけに、あまりにも突然の終幕が今でも信じられない。自分にとってのDavid Crosbyというのは、The ByrdsやCrosby, Stills, Nash & Youngのメンバーという印象よりも、そういった近年の作品でのMaestroぶりや、71年にリリースされたMusteriousで瞑想的な摩訶不思議な魅力に満ちた1stソロ・アルバム『If I Could Only Remember My Name』での得体のしれない怪しいMusicianであり、大好きなJoni Mitchellの風変わりでいびつな魅力に満ち溢れたDebut Album『Song To A Seagull』をProduceした少々偏屈だけどStrangeな魅力を湛えた音楽性を持った人物として強く印象に残っている。そんなCrosbyが1stソロから18年ぶりに世に出したのが2ndアルバムとなる本作である。80年代ということもあって、Sound Productionはさすがに時代を感じさせられるが、仲間に支えられ続けて、おクスリ生活から足を洗った清々しい笑顔を見せるジャケット通りの作品だ。何より楽曲が良い。と思ったら、裏ジャケットの写真では、やっぱりCrosbyらしい毒を放っているのが最高だ。
Facts Of LifeはSylvia Robinsonと並んで "Mother of Hip Hop"と称されるGeorgia州出身のR&B and Soul SingerMillie Jacksonに見いだされた3人組のVocal Group。Southern Soulの女帝ともいえる存在感を放つMillieに目を付けられただけある実力派である。Tyrone Davisの妹であるJean DavisとKeith Williams、Chuck Carterの3人は当初、The Gospel Truthと名乗っておりFloridaのKayvette RecordsからMillieのProduceで75年にDebut Single“Up Hill Peace Of Mind”をリリースしている。 Jeanはなんたって、お気に入りの女性Vocal GroupHoney And The Bees出身だし、Keith Williamsは、 Little Anthony & The Imperialsと一緒に歌っていたり、Flamingosが70年にリリースした“Buffalo Soldier”で Lead Vocalをつとめた実力派、そしてChuck Carterも60年代に.BrunswickやBedford RecordsからSolodeSingleをリリースしているのだから、かなりのものだ。Facts Of Lifeと改名して76年にBanks & Hamptonの“Caught In The Act (Of Gettin' It On)”をリリース、彼らの2nd Singleは、なんとCountry Singerの Bill Anderson作でMary Lou TurnerとのDuoで75年にHitした“Sometimes”。こ。これがUS Black Singles Chart3位となるHitとなってしまうのだから面白い。イナタい曲でも、彼らのSoulfulな男女Vocal掛け合いが実にイイ感じで、マッタリしてはいるけれど、沁みますなあ。本作は、そんな彼らが77年にリリースしたDebut Album。Barbra StreisandとかBarry Manilowといった意外な選曲に驚かされるけれど、実力派の3人がDeepにSoulfulに歌い上げているのが良い。翌78年にリリースされた2nd Album『A Matter Of Fact』をリリースしているが、このアルバムも中々の出来であった。残念ながら、この2枚のアルバムを残して解散してしまったようだ。
『Véu De Noiva』は例によってNovelaもの、BrasilのTVドラマのサントラ盤としてリリースされたアルバムで、個人的にかなり愛聴してきた作品である。鮮やかな黄色のジェケットにまず目を奪われてしまうが、この音盤に出会って、もうかれこれ20年以上が過ぎ去ってしまっただろうか。Originalのアナログは手の届かない存在というほど高くなかったかもしれないが、CDでReisueされた時は狂喜して、早速手に入れたものだ。そういえば、貧乏学生だった頃は、まだYoutubeなんてのはなかったから、誰かに録音してもらった音源を聴いて気に入ったアルバムは、何とかバイトで稼いで手に入れるようにしたものだった。そして今度はCDで聴いて気に入った作品はアナログで手に入れるように必死で稼ぎまくったものである。一時この手のNovela/サントラ盤が続々と外資系大型CDショップで売られていた時代、90年代から、まだ2000年代初頭にかけては、都内のショップで、かなりのスペースをさいてコーナーを作った南米の作品が存在感を放っていて、お目当て以外にも店頭に並んだ沢山のCDを手に取って、気に入った作品を手に入れることができた時代であった。あの頃は良かったなあ、などと懐古的になりつつも、このアルバムを聴いていると、当時のさまざまな思い出が目の前に浮かんでは消え、やっぱ甘美で夢想的な世界に入り込んでしまうのであった。さて69年から70年にかけてBrasilの最大の放送局Rede Globo(TV Globo)で午後8時に放映されたTelenovelaである『花嫁のヴェール』のサントラ盤となる本作。お目当てはApolo IVなる謎のGroupによる“Azimuth”の演奏であるわけだが、Elis ReginaやWilson Das NevesによるCaetano Velosoの“Irene”のCoverやJoyceやRoberto MenescalのScatが冴えわたるナンバーとか名曲揃いである。そしてAntônio AdolfoとTiberio Gaspar共作の甘く切ないTheme曲“Tele Tema (Tema De Amor)”は何回聴いても最高である。
『Véu De Noiva』は69年から70年にかけて放映されたBrasilのTV番組のSoundtrack盤。
アルバム1曲目、Sambalanço Trio~Som TrêsのピアニストCésar Camargo Marianoが書いた“Tema De Luciano”はLuiz Eçaのピアノと寄り添うStringsがいきなり哀感に満ちた演奏。
Umas E OutrasのRegininhaが歌うAntônio AdolfoとTiberio Gaspar共作の“Tele Tema (Tema De Amor)”は切なく甘美で官能的なVocalが最高ですなあ。
Marcos ValleとNovelli共作の“Azimuth(Mil Milhas - Tema De Marcelo)”はApolo IVなる後のAzimuthのメンバーによる演奏。Valleの『Mustang Côr De Sangue』収録の同曲と同じ。Aggressiveに弾きまくるピアノと優美なStringsやHorn隊との共演が面白い。
Márciaが表情豊かに歌い上げるChico BuarqueとGaroto、Vinicius De Moraes作“Gente Humilde”。
Roberto Menescalの“Depois Da Queda (Tema De Flor)”はFluteとStringsをバックにしたScatが最高に心地良いインスト曲。
The Ingram KingdomはNew Jersey州はCamden出身のFamily Funk Groupである。Family Groupは数あれど、歌も演奏もFamilyだけでやるというFunk Groupとなると、思い浮かぶのは個人的に Five Stairstepsから発展したお気に入りのInvisible Man's Bandがあるけれど、彼らはBurke兄弟以外にDean Gantが加わっているから全員家族のバンドではないし、ご存知Isley BrothersはVocal3兄弟で始まり、後に加わった演奏陣は2人の兄弟に一人は義理の兄弟である。そういう意味ではメンバー全員が音楽一家のIngram家の子供たちだけで編成され歌の演奏もやってのけるThe Ingram Kingdomは貴重な存在といえるのではないだろうか。Vocalの紅一点Barbara IngramにギターとTromboneのWilliam(Bill) Ingram、鍵盤とSaxphone、FluteのJimmy Ingram、ベースとTromboneのButch Ingram、ドラムスのJohnny IngramにCongasのTimmy Ingramという6人組。しかし、このジャケットは最高ですなあ。多幸感に満ち溢れ、メンバー仲良く晴れやかな笑顔で“The Funk Is In Our Music”、コレ最高!文句なしに彼らを応援したくなってしまいますな。しかもLead VocalのBarbaraをはじめ、全員が実力派のMusicianなんだから素晴らしい。特にBarbaraはCarla Benson、Evette Bentonと女性Vocal Trioを結成して"The Sweethearts(of Sigma)", "The Philadelphia Angels", "The Sweeties"と名前を使い分けながら70年代から80年代のPhiladelphia Soulを中心としたPhiladelphia International Recordsの数々の作品にBacking Vocalとして参加してきた実力者である。Maestro Thom Bellの元でSigma Sound Studiosで経験を積み、The Spinnersの“Could It Be I'm Falling in Love”や“Games People Play”でも彼女らの歌声を聴くことが出来る。そんなBarbaraのVocalをFeatureしたThe Ingram KingdomのDebut Albumは高揚感と躍動感に満ち溢れたご機嫌なFunk Albumに仕上がっている。
Tete Montoliuはお気に入りのピアニストの一人であり、その鮮やかなまでに粒立ちの揃った強弱のメリハリがハッキリついたタッチが素晴らしい。そして生命感に満ちた圧倒的なSwing感覚で淀みなく繰り出されるDrive感溢れるフレーズが生み出すCatharsisに酔いしれる至福の瞬間、これは格別だ。ただ、その超絶技巧とDynamismに満ちた緊張感の高い演奏を、何時いかなる時でも無条件に受け入れられるかというと、それはその時の体調であるとか、精神状態であるとか、時と場所、Situationを選ぶであろう。人間たまにはユッタリとRelaxしたい時とか和みたい時もあるわけで、そういった時はConcentric盤やSteeplechase盤、SABA盤やDiscophon盤でのTeteの気合の入りまくった弾き倒しの演奏ではなく、他の音盤の御登場となるわけである。しかし、Teteにだって以前ご紹介した77年リリースの『Blues For Myself』のように心地良い寛ぎ感をもたらしてくれる作品があるのであった。本日ご紹介するのは、そんなTeteがEnsayoに残したLatin3部作といわれる作品の中の一枚。TeteがBossa Novaの名曲を優美でRomanticかつ躍動感に満ちたLatin感覚で心地良く演奏している。Catalunya(Catalonia)の誇りともいえるピアニストTeteは70年代に地元BarcelonaのLabel Ensayoに上述の『Blues For Myself』やLatin3部作などLeader作を残しているが『Ten To Two Blues』などDusko Goykovichのアルバムでも素晴らしい演奏を披露している。元々はClassical Music中心のLabelだったEnsayoであるが、TeteがTangoやLatinの名曲を演奏した74年リリースの『Temas Latinoamericanos』に続いて、好企画である本作で、難いこと抜きにマッタリ楽しみたいものだ。ベースにAlberto Moraleda、ドラムスにMiguel Angel Lizandra、PercusiionにはCubaのPedrito Díazという布陣。ジャンルを越えて理屈抜きに甘美で心地良い旋律を紡ぎ出すTeteの演奏に酔いしれるのである。
『Temas Brasileños』はTete Montoliuが74年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は“Orfeo Negro”とあるが、Medleyで“Felicidade”から“Orfeo Negro”、そして“Samba de Orfeu”と続く3曲Medley。
“La Chica De Ipanema”は優美なソロ・ピアノからベースとPercussionのリズムが加わって軽快でRelaxした演奏が心地良く響く。“Take The A Train”のフレーズを取り入れる遊び心を発揮しつつユッタリピアノのみになって、リズムが加わって“Corcovado”のMelodyにウットリ聴き入ってしまう。カクテル・ピアノ入ってきたかと思えば得意のスピード感に満ちた速弾きを時折織り交ぜ、典雅なソロ・ピアノからPercussionが心地良く響く“Samba De Uma Nota So”へ突入。Bossaからフォービートに展開してTeteが本領発揮のキレキレのピアノが炸裂するところもご機嫌。こちらも3曲Medley。
一転してDarkな響きのピアノで始まりFree Jazzでも始まるかと思わせておいてZé Do NorteことAlfredo Ricardo Do Nascimento作“O'Canganceiro”で生命感に満ちたMelodyが飛び出す瞬間の気持ち良さといったらない。そしてAry Barrosoの“Bahia”をBossa風に演奏し“Brasil(ブラジルの水彩画)”でPercussionも入って陽気に弾けるのが最高。EndingでのPercussiveなTeteのお遊びフレーズもご愛嬌でLatinの血が騒ぐノリノリである。
Baden Powellの“Canto De Ossanha”は不穏な雰囲気で始まりDarkなBlock Chordから一気に爽快なMelodyが飛び出すBossaへと突入、ここではTeteのスリリングな指さばきが聴きモノ、そして“Ola(Wave)”のカクテル・ピアノ風でユッタリマッタリと思わせておいて速いPassageのフレーズが突如飛び出したり遊び心に満ちた演奏で、“So Danço Samba”でTeteらしい躍動感に満ちた演奏でMonkの“Straight No Chaser”のフレーズをきっかけにフォービートに展開して気持ち良すぎ。
Kayakというバンドに初めて出会ったのは馴染みの中古レコード屋さんであった。おもわずジャケットに惹かれて衝動買いしてしまったわけだけれど、手を出しやすい金額だったこともあっただろう。レコ屋のおやさんがオランダの山本山とおっしゃっていたが、同国のバンドといえば古くは“Venus”のヒットで知られるShoking BlueやEarth And Fire、Golden Earring、そしてFocusや大好きなSupersisterといったところは知っていたのだが、Kayakに関しては殆ど予備知識はなかった。このレコ屋さんのおかげでEkseption、Solution、Finch同様にKayakに出会うことができて本当に良かった。個人的には当時夢中になっていた10ccやSailor、Stackridge、City Boyといった70年代の英国らしい捻りがきいて凝りまくった音楽を独特のセンスでPopに聴かせるバンドに共通するジャケットのセンスに思わず期待値が上がっていたのである。Kayakの場合は中心人物となる鍵盤奏者のTon Scherpenzeelの音楽性が強く反映されているのだろう。Popな装いの中でProgressiveでSymphonicな音楽性が彼らの個性として魅力を放っている。またTonと共にバンドの曲を手がjけているドラムスのPim Koopmanも中々味のある楽曲を提供している。本作は彼らの2作目にあたるアルバムで単純にバンド名をタイトルにしているが、自信作なのであろう。次作では1曲しか書いていないPimが、本作で脱退してしまうベースのCees van LeeuwenやTonと共作したりして半数以上の曲を手掛けているのも興味深い。音楽学校Hilversums Muzieklyceumで共に学んだTonとPimが中心となって結成されたKayakはPercussionを叩きMarimbaも弾くVocalのMax Werner、ギターのJohan Slager、ベースのCees van Leeuwenというメンツ。TonはHarpsichordとAccordion、PimはMarimbaも演奏する。70年代後半のWigwamに近いところも感じさせるが、Bluesの香りがしないところがKayakの個性でもある。
Wipersは70年代に後半に登場した大好きな孤高のPunk Band…少なくとも自分の中ではそうだった。しかし、Mediaに彼らの動向が登場したような気配もなく…、実体はStudio Projectであったようだ。Wipersは70年代後半にPortland州はOregon出身のGreg SageによるRrecording Projectとして誕生した。バンド名はSageが映画館の窓ふきの仕事をしていたことから名付けられた。もう聞き飽きた言葉であるが、Kurt Cobainがお気に入りのバンドということで、彼らもまた一躍、その名を高めた存在である。実際にNirvanaでWipersの“Return of the Rat”と“D-7”をCoverしているのだから、影響を受けたのは確かだろう。その2曲が収録されているのが本日ご紹介するWipersが79年にリリースした彼らの1stアルバム『Is This Real?』である。ザクザクと攻撃的に切り刻むギターが最高のCatharsisを与えてくれる“Return of the Rat”と、陰鬱な雰囲気でギターのArpeggioから始まる“D-7”。どちらも、まるでNirvanaの曲といってもいいぐらいだ。しかし、その2曲のCoverで彼らの知名度が急上昇した時に、既にWipersは消滅していたのであった。そのくらい大きな影響をKurt Cobain/Nirvanaに与えたWipersは最初は、TourやPromotionもせずに10年間で15枚のLPを録音することをSageが目標としていたという。そりゃ、Interviewをはじめバンドの写真などPressにも登場しないわけである。Sageは音楽をEntertainmentではなくArtだと考えていたのだった。それらの事実を知った時、作品至上主義ともいうべき、そういったSageの姿勢に10代の時の自分は大きな感銘を受けたのであった。Rrecording Projectとはいっても、Sage自身が全ての楽器を演奏するわけではない。裏ジャケットにはギターとVocal担当のSageと共にベースのDave KoupalとドラムスのSam Henryの名前がある。結局、Sage以外のメンバーが変わったりする時もあったが、WpersはTrio編成を基本として18年で10枚の目標には届かなかったが数々の素晴らしいアルバムを残したのだった。