BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


Peço A Deus/Mestre Marçal

 Mestre MarçalことNilton Delfino MarçalはSambaに人生を捧げた真のSambistaと称されている。Bambas Do Estácioの一員でありBrasilのSambista/Percussionistとして知られるArmando Vieira Marçalの息子であり、Pat Methenyとの共演でも知られるMarçalzinhoことArmando de Souza Marçalの父親でもある。Marçalという名は父子三代に渡って続く名門であり、Sambaを愛し真摯に向き合う二代目Marçalを人々はMestre(Maestro:達人/巨匠/先生)と呼んだのであった。“Peço A Deus”はCaetano VelosoとのDuetで発表されて以来、Mestre Marçaがずっと歌ってきたDedé da PortelaことEdson FagundesDidaの手による永遠の名曲。愛と平和を心から願う人々を歌う、この歌詞もまた、今の時代にこそ響くものがある。

 

Recompensa/Marçal

 “Peço A Deus”はMarçal85年にリリースしたアルバム『Recompensa』に収録されている。多幸感に満ちて、Marçalの優し気なVocalとPercussionが加わると思わず腰が動き出してしまう大好きなアルバム。Caetano VelosoとのDuetで歌われる“Peço A Deus”はSlap BassQuicaChorusも加わって生命感に満ち溢れて実にイイ感じ。優美なViolãoの爪弾きで始まるアルバム1曲目“É Lá Que Eu Moro”から最後をシメるPercussionのみのインストO Bicho Vai Pegar”まで全曲最高の名盤である。

(Hit-C Fiore)

 

 いやあ、シビれましたなあ、最後に大谷選手とトラウト選手の同僚対決で、USAコールが鳴り響く中、日本が米国を力でねじ伏せるという仕込んでもここまでできないだろうという位、完璧なストーリーで幕を閉じたWBC。漫画を遥かに越えた劇的、激熱、刺激的な戦いは、スケールの大きい、野球愛に満ちた感動巨編の映画のようであった。千両役者のMVP大谷選手は勿論、ダルビッシュ選手の優れたリーダーシップのもと、苦境から劇的復活を遂げた村上選手、粋な助っ人ヌートバー選手、勝負強い吉田選手、スピードスター周東選手、いぶし銀の源田選手とキャラが立った個性豊かな選手たちそれぞれが生き生きと輝き、躍動し活躍したのも実に印象深かった。日本中が幸せな気分になれた魔法のような時間を与えてくれた素晴らしい野球選手たちに乾杯!

 

 Evelyn "Champagne" Kingという名前は、人それぞれによって好きな時代があったり思い出があるSingerかもしれない。77年にリリースされて大ヒットとなったDisco SingleShame”で人気が出た Disco  Singerとして認識している方もいらっしゃるかもしれない。確かに鮮やかなDebut Hit Singleとなった同曲の印象は強烈で、17歳にして堂々としたハリのあるキレ味抜群の歌いっぷりは素晴らしいものがあるが、個人的にはどうしてもKashifPaul Laurence Jones IIIといったProducer/Musician/Sound Creatorの手による80年代前半に全盛を誇った所謂New York SoundとかHush系と呼ばれたサウンドと共に、その歌声が思い浮かぶ大好きなR&B/Soul Funk Singerである。New YorkBronxで生まれたEvelyn "Champagne" KingはPhiladelphia International Recordsで働いていたところ、洗面所で歌っていたのを偶然聞いたProducer Theodore T. Lifeに見いだされてRCA Recordsと契約を結んでいる。そしてInstant FunkのメンバーやDexter Wanselら豪華な演奏陣がバックをつとめるDebut AlbumSmooth Talk』をリリースしている。こうして上述のDisco Hitが生まれ、Evelynは一躍全国区の人気者となったわけだが、どうしても、そのイメージが強く、以降の彼女を悩ませることになった。数年前にリリースされた素晴らしいCompilation盤The RCA Albums 1977-1985』を聴くと、鮮烈なDebutを飾り、抜群の歌唱力を持ち、そこそこの楽曲と演奏に恵まれていながら商業的には伸び悩んでいたKingが、81年のアルバム『I'm In Love』から一気に吹っ切れていくのがわかる。続く本作は、Billboard Black Singles and Hot Dance/Disco Charts#1 Hitとなった“Love Come Down”を生み、、上述の都会的で洗練されたNew Yorkの摩天楼を行き来する大人の夜の香りが漂う作品は頂点を迎えるのだった。

 

 『Get Loose』はEvelyn King82年にリリースしたアルバム。81年リリースの前作I'm In Love』からKashifPaul Laurence Jones IIIがProduceやSongwriting、演奏に加わり、Hush Productions的な音作りがよりPopな展開をみせた本作。前作同様ProducerのMorrie Brownと共にKashifらの煌びやかなSynthesizerの打ち込み生音が絶妙のバランス心地良く腰を動かすサウンドがご機嫌だ。

アルバム1曲目は上述の大ヒット“Love Come Down”。Kashifの手によりProgramされたFunkyなSynthesizerをバックに思わず口ずさみたくなるCatchyで魅力的なサビを歌うEvelynのVocalが生き生きとしている。

I Can't Stand It”はWayne BrathwaiteSlap Bassで始まりPaul Laurence Jones IIIのSynthesizerエレピにIra Siegelのキレの良いカッティング・ギターが絡んで気持ち良すぎ。

イナタいノリで始まる“Betcha She Don't Love You”はサビは一転してPopでCatchyにキメている。

タイトル曲“Get Loose”はMoog BassとProgramされたSynthesizerが当時を思い起こさせてくれる如何にもなNew York Soundが今聴くと新鮮で面白い。Evelynは、なんとRapを披露

個人的に大好きなKashif作“Back To Love”も煌くエレピギターのカッテイング重心の低いWayne Brathwaiteのベース心地良く腰を動かす摩天楼で繰り広げられる大人の夜のさまざまな光景が拡がる。

Paul Laurence Jones III作の“Stop That”もCuteなChorusとEvelynのVocalがご機嫌なお気に入りのCoolなFunk

Get Up Off Your Love”もBarry EastmondによるFunkyにウネるMoog BassにEvelynとChorusの掛け合いが最高。

アルバム最後をシメるのは、Barbara Wyrick作の必殺のBalladI'm Just Warmin' Up”。大好きなTawatha AgeeのChorusが最高。Andy NewmarkNeil Jasonのリズム隊も気持良すぎしっとり歌い上げながら官能的なEvelynのVocalも文句なしの極楽気分。

 

Love Come Down/Evelyn King

(Hit-C Fiore)

 Thin Lizzyはガキの頃から贔屓にしているバンドのひとつで、勿論アルバムはほとんど持っているわけであるが、本日ご紹介する『Renegade』は、残念ながら一般的には不当ともいえる非常に評価の低い作品とされている。まあ、Brian "Robbo" RobertsonGary MooreJohn Sykesもいないわけで、尚且つ、この時期のLizzyは Phil LynottScott Gorhamも、おクスリ関係でボロボロだったらしい。個人的にはLizzyは"Robbo"Scott Gorhamのツイン・ギターだった時代が一番好きなわけだけど、Eric Bellがギターを弾いていたTrio時代も、勿論脱退した"Robbo"に代わってGary Mooreが加入した時代も大好きである。John Sykesが加入したStudio録音最後の作品となる『Thunder And Lightning』は、らしくはないが、Catharsisを得られるアルバムとして気に入っている。となると本作はどうなんだ?ということになるけれど、これが結構いけるのである。Gary Mooreが79年のTourの途中でバンドを離れ、なんとギタリストにRich KidsVisage、そしてUltravoxに加入するMidge UreManfred Mann's Earth BandDave Flettを迎えて来日公演を敢行した後、Pink FloydPeter Greenと仕事をしていたギタリストSnowy Whiteがメンバーとなって、個人的にLizzyのアルバムでも5本の指に入る大好きな『Chinatown』が80年にリリースされている。そして、本作が録音されるのだが、前作にも参加していた鍵盤奏者Darren Whartonが正式メンバーとして迎えられ5人編成となったLizzyの作品となる。Snowy Whiteのギターがここでも素晴らしい。派手なサウンドと音数勝負の80年代にあってPhilのVocalが心なしか少々元気がないように聴こえるのが残念だけど、それが大人の哀愁と味わいを感じさせてくれるアルバムでもある。

 

 『Renegade』はThin Lizzy81年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Angel of Death”。Darren WhartonSynthesizerがFeatureされたイントロから違和感を感じざるを得ないが、勢いのあるギターとPhilのVocalも飛び出しLizzyらしさが出て安心する。

PhilとWhiteの共作となるタイトル曲“Renegade”はギターのArpeggioで始まり、Phil が語りかけるように歌う、ギターとPhilの歌い方もあいまって、どことなく同郷のVan Morrisonを思わせるところがあったりする。Up Tempoに曲調が変わると、お約束のツイン・ギターが炸裂。やっぱりBrian Downeyのキレキレのドラミングが最高

イントロからThin Lizzy節炸裂の“The Pressure Will Blow”は優美なツイン・ギターが炸裂

Leave This Town”もイントロからギターの激カッコイイRiffが飛び出しツイン・ギターのところでは思わず拳を振り上げヘドバンかましますなあ。

アルバム唯一のSingleとなった“Hollywood (Down on Your Luck)”。サビがPopでアメリカンな味わいを感じさせるが、ガンガン攻めるギターのRiffとビシバシとキメまくるDowneyのドラムがご機嫌。

Downey激カッコイイFillで始まる“No One Told Him”。ガンガン攻めつつ哀感はいったBメロもイイ感じ泣きのギター・ソロが炸裂して、これまた盛り上がりますなあ。

Snowy WhiteとPhil共作の“Fats”はベースがウネるFunkyなイントロから一味違う。こういうノリでもDowneyのドラミングは絶品。Darren Whartonのピアノ・ソロもご機嫌ですなあ。

イントロのAcoustic Guitarから雰囲気タップリの“Mexican Blood”。

最後をシメるのは“It's Getting Dangerous”。Synthesizerが加わった80年代的なナンバーながらお得意のツイン・ギターが飛び出しLizzy

らしさは発揮されている。

 

Renegade/Thin Lizzy

(Hit-C Fiore)

 Michael Dinnerは米国のTVDirectorPproducer、そして脚本家として現在は活躍している人物であるが、かつてSnger-Songwriterとして2枚のアルバム7枚のシングルを残していた。Oxfordの大学院に留学していた時に、弾き語りをしていたところを見いだされてFantasy Recordsと契約したDinnerではあったが、結局音楽の道を進まずに勉学に励んで、上述のTV業界で活躍する人生を選択している。これもまた人生であろう。いかにもNorman Seef撮影といったジャケットからも知的で思慮深そうな感じが伝わってくる。Linda RonstadtのProducerとして知られるJohn BoylanがProduceを手がけたこともあって、70年代半ばの古き良きWest Coast Rockど真ん中といったサウンドで、ManassasAl PerkinEd BlackPedal Steel GuitarがFeatureされていて正にLA産Country Rockといった感じもツボだ。約半世紀近く前の作品だが、今聴くと、これが結構新鮮だったりするのである。思えば昨年はBluegrassやCountry Rockが個人的に盛り上がって、その手の音盤を聴き漁っていたのであった。Linda RonstadtがChorusで参加しているだけでなく、Lindaの73年作『Don't Cry Now』に参加していたベースのMike Bowden、ドラムスのMickey McGee、74年のアルバム『Heart Like A Wheel』でギターを弾いているBob Warfordも参加している。また、Andrew GoldDavid Lindley、EaglesのDon FelderRuss KunkelEd BlackといったLinda関係の人物が多数参加し、Michael UtleyNick DeCaroLarry Knechtelら名手たちと共にDinnerのVocalを盛り立て、カラッと乾いた後味の良いCountry Rockに仕上げているのが良い。Dinnerは、その後、最後のアルバムとなる『Tom Thumb The Dreamer』を76年にリリースしている。

 

 『The Great Pretender』はMichael Dinner74年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はタイトル曲“The Great Pretender”。Linda Ronstadt73年のアルバム『Don't Cry Now』でも弾いていたEd BlackPedal Steel Guitarがご機嫌である。

Jamaica”はMajor Seventh Chordの甘美な響きに加えて、後にTaj MahalのアルバムやTourでも活躍するRobert GreenidgeSteel Panがイイ感じ。DinnerののびやかなVocalも心地良い。

アコギ弾き語り風に始まる“Yellow Rose Express”もEd BlackのPedal Steel Guitarが冴えまくりの爽やかなWest Coast Rock。

Andrew Goldピアノを弾く切ないBalladSunday Morning Fool”。Dinnerの優しく語りかけるようなVocalが沁みる。ここでもPedal Steelが大活躍。

Last Dance In Salinas”はDavid LindleyFiddleとのManassasのAl PerkinPedal Steelがイイ感じ。

Tattooed Man From Chelsea”はDon FelderのSlideが吼えるノリの良いナンバー。

Woman Of Aran”はMichael UtleyHammondが絶品のBallad。これまた淡々と歌うDinnerのVocalが沁みますなあ。

Pentacott Lane”はアルバムで一番お気に入りの甘美で切ないWaltz。Nick DeCaroのAccordionが最高。

アコギ弾き語り風で始まる“Icarus”はJohn Boylanが弾くMellotronが登場してじわじわ盛り上げていく

アルバム最後をシメるのはLarry Knechtelが弾くOrganで始まる“Texas Knight”。Mickey McGeeと共にRuss Kunkelがドラムスを担当している。この曲もJohn Boylanが弾くMellotronとLarry Knechtelが弾くピアノがイイ味を出している。

(Hit-C Fiore)

 確定申告の季節が終わっても、まだ目の前にはやらなきゃいけないものがドッサリと…

ま、WBCで大谷選手やダルビッシュ投手の活躍見て気合注入、さ、ガンガンいきますわ。

 

 Climax Blues Bandは大好きな英国出身のBlues Rock Bandである。彼らは60年代後半StaffordでギタリストPete HaycockDerek Holt、Sax、Harmonica奏者のColin Cooper、鍵盤奏者Arthur Augustin Wood、ベースと鍵盤を演奏するRichard Jones、DrummerのGeorge Newsomeによって結成されたが、当初はThe Climax Chicago Blues Bandと名乗っていた。実は時代と共にバンド名も音楽性も変わり続けた彼らだが、米国で人気が出てPopな路線になってもその根底にはBlues魂が残っていたのだった。彼らの母体となったのは地元のGospel TruthというGroupで、Modなバンドとして日本でも知られているHipster Imageを脱退したColin CooperがPete Haycockと結成したR&B Bandだったが、Blues志向の音楽性が強まり上述のDerekやRichardらをメンバーを加えてバンド名を新たにしたのだった。British Blues Rockが人気を集め、彼らもDebut AlbumThe Climax Chicago Blues Band』を69年にリリースしている。その後、米国のバンドChicagoとの混同を避けるためにClimax Blues Bandと名前を短くしている。次作『Plays On』リリース前にRichard Jonesが脱退しDerekがベースを担当、『Tightly Knit』を、またもやバンド名を変えたClimax Chicago名義でリリース。George NewsomeがJohn Cuffleyに交代しArthur Augustin Woodもバンドを去って4人編成となって本作をリリースしている。次作のLive Albumこそが彼らのBlues Rock Bandとしての本領発揮となる名盤中の名盤であるが、以降Popな味わいを増して米国で人気を得ていくBluesJazzFunk英国的なLyricalでPopな音楽性Blendされた彼らの音楽は、Fleetwood Mac同様に当初のコテコテのBlues Rockから遠く離れてしまい米国志向となってしまったが、決してQualityが低い音楽ではない。その萌芽は本作や前作から感じ取ることが出来る。Pete Haycockは英国で最も過小評価されているギタリストでありSongwriter、そしてVocalistの一人であろう。

 

 『Rich Man』はClimax Blues Band72年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はタイトル曲の“Rich Man”。Bluesyなギター英国的な陰影のあるMelody、そして米国西海岸を思わせるLyricalなChorusの組み合わせが面白い。PercussiveでPrimitiveなリズム隊もイイ感じ。Slideも豪快にキメていてカッコイイ。

Mole On The Dole”は一転してアコギをジャンジャカ鳴らしてGentleなVocalが英国的な牧歌的ともいえるナンバー。

You Make Me Sick”もSlideがカッコ良すぎるBlues Rock.。彼らお得意のLead Vocalの1Octave下の低音で歌うVocalも登場して、Saxもご機嫌なノリの良いナンバー。

Standing By A River”はイントロから激カッコイイFunkyなナンバー。この路線が後に花開くことになる。Pete Haycockギター・ソロは鳥肌モノDerek HoltぶっとくウネるベースElectric Pianoもイイ感じ。

Bo Diddley BeatにのったColin CooperBlues Harpがご機嫌な“Shake Your Love”。この曲もSlideが最高。Derekの重心の低いベースも気持良し。

イントロのBluesyなギターから痺れる“All The Time In The World”。LazyなノリバッチリキマッタChorusが素晴らしい。雄たけびを上げるSlideソロが最高

イントロのギターのRiffがBluesyで激カッコイイ“If You Wanna Know”。途中からTempo Upしてノリノリの展開になり、また戻るといった緩急自在で繰り返される見事な展開が素晴らしい。

最後をシメるのはSon Houseの“Don't You Mind People Grinning In Your Face”。Acousticな弾き語りで激渋な仕上がり。ここでもSlideが素晴らしい

(Hit-C Fiore)

 David Friedmanは以前もご紹介した大好きなMallet奏者/Composerの一人であるが、4年前にDavid Friedman Generations Quartet名義でリリースされた『Flight』や『A Christmas Gathering』が相変わらず素晴らしい出来で、注目のピアノのClara Haberkampも抜群の演奏を聴かせて大満足なのであった。こういう季節になるとVibraphoneMarimba優美で凛とした音色がなぜか聴きたくなるのである。本日ご紹介するのは Friedmanが日本のLabel East Windからリリースしたアルバム。4年前の4月に惜しくもこの世を去ってしまった盟友Dave Samuelsと共にVibraphoneとMarimbaを演奏し、ベースにHarvie Swartzというメンツは、彼ら3人がDrummerのMichael DiPasquaと結成するピアノレスのQuartet Double Imageへと発展していく。最もこちらはピアノレスにドラムレスの編成で、1曲のみGuestのHubert LawsFluteが加わる、そしてFriedmanとSamuelsのDuoの曲もあるという、極めて室内楽的な魅力に満ちた作品となっている。興味深いのはメンバーの自作曲以外に、Sax奏者Dave LiebmanPat MethenyからJ.S. Bachの曲まで取り上げていることだ。特にMethenyは76年1stソロ・アルバムBright Size Life』リリース前であったのだから驚かされる。しかも取り上げられた“April Joy”は78年にリリースされるPat Metheny GroupPMG)のアルバムに収録されている曲だ。本作がリリースされた75年といえば、MethenyはまだThe Gary Burton Quintetに所属していた頃であったはずだ。SamuelsはMetheny同様にBarkleeに学びGary Burtonと師弟関係にあることから、Methenyと交流があったのかもしれない(実際、後にPMGのアルバムに参加している位だから)。また、Harvie Swartzが3曲自作曲を提供しているが、それがまた素晴らしい楽曲でComposerとしてのSwartzの才能が窺い知れる。

 

 『Winter Love, April Joy』はDavid Friedman75年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はFreiedman自作の“Nyack”。静謐な美しさを湛えたこの曲はDavid FriedmanがMarimbaを、Dave SamuelsがVibraphoneを叩いている。

Harvie Swartz作の“Truce”。この曲は前述のDouble Imageのアルバムでも取り上げていた(そちらの方はドラムス入りでJazz Rock感の強い演奏)。作者であるSwartzのベースが存在感を発揮している。

Sax奏者Dave Liebman作の“Brite Piece”はAbstractな中に時折Minimalな浮遊感覚を伴う演奏が心地良い。この曲ではSamuelsはBass Marimbaを叩いている。

Excercise #5 - April Joy”は75年の時点でPat Methenyの曲を取り上げているのが興味深い。そういえばデビュー前のMethenyもGary Burtonと師弟関係にあったのだ。この曲のみHubert Lawsが参加してFluteを吹いている。

映画監督など多彩な顔を持つ作曲家Thomas "Tom" Pierson作の“Untitled”は硬質な響きが心地良い。

再びHarvie Swartz作の“Island”。これまたMysteriousで優美なMelodyを持った曲。SwartzはComposerとしてもかなり優れているベーシストだ。

Saraband”はJ.S. Bachの『Sonatas and Partitas for Solo Violin』から。この辺のChamberな魅力も嫌味なく心地良く響いてくる。

最後をシメるのは3度目のHarvie Swartz作の“I've Touched Your Soul”。テープの逆回転で始まるこの曲もただ只管美しい

(Hit-C Fiore)

 Ronnie Lane and The Slim Chanceのアルバム『Anymore for Anymore』はジャケットがあまりにも大好き過ぎて作業中でも寝る時でもいつでも見れる部屋の壁に飾っているのであるが、肝心の中身の方も言うに及ばず大傑作である。大好きなThe Small FacesRonnie LaneSteve Marriottが去った後に残りのメンバーとJeff Beck GroupのRonnie WoodとRod Stewartを迎えて結成したFaces。正直Facesに関しては以前も書いたように、好きな曲は多くてもアルバム全体となると、歌と演奏が大味すぎて中々入り込むことができなかった。唯一、彼らが73年にリリースしたRonnieが中心的役割を果たした傑作『Ooh La La』はお気に入りのアルバムであったが、残念ながらバンドのメンバーを自分のバックバンド扱いにするVocalのせいで既にバンドは崩壊していた。Bassistとしてだけでなく楽曲の提供や曲によってはLead Singerの役割を担っていたRonnieが73年にバンドを去りWalesMontgomeryshire群にあるHyssingtonに引っ越し家族と共にCountry Lifeを開始する。そしてRonnieは、Slim Chanceを結成する。ProducerのGlyn Johnsの仲介でGallagher & LyleBenny GallagherGraham Lyleが加わり、ドラムスにはThe Grease BandFairport ConventionBruce RowlandSaxKeef Hartley Band のJimmy Jewell、ベースにSpooky ToothChris Stewart、鍵盤にBilly Livsey、ギターにBlossom ToesB.B. BlunderKevin Westlake、という布陣。Debut SingleHow Come”は全英11位を記録した。本作ではベースにThe FoundationsSteve BinghamFiddle奏者Ken Slavenが迎えられている。SongwritetとしてのRonnieは過小評価され過ぎているように思われる。Small Faces時代からRonnieが書いた曲が大好きな自分にとっては、ずっと脇役的存在に甘んじていたRonnieの楽曲とVocalが存分に楽しめる本作は一生手放せない宝物だ。

 

 『Anymore for Anymore』はRonnie Lane and The Slim Chance74年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はAcoustic Guitarの弾き語りにピアノとAccordionが絡む“Careless Love”。Tradを小粋に仕上げるRonnieに脱帽。

イントロのGraham Lyleが弾くSlide Guitarから泣かせるRonnieらしい切なく甘美なDon't You Cry For Me”。Saxも雰囲気タップリ。

Bye And Bye (Gonna See The King)”もLyleのMandlin泥くさいSlide、Billy Livseyの転がるピアノがイイ味出している。

ギターのKevin Westlakeとの共作“Silk Stockings”はノリが良くてRonnieのVocalも楽しそう。

Jimmy Horowitzによるイントロの英国調のStringsの響きが気分な“The Poacher”。これまたRonnieらしい素朴な味わいのナンバー。

MandlinやRonnieのGentleなVocal心を和ませる米国のBanjo奏者/Singer Derroll Adams作の“Roll On Babe”。この手の曲をやらせたらRonnieは最高っすなあ。

Tell Everyone”はFaces71年リリースの2ndアルバム『Long Player』に収録されていた大好きな曲味はあるけれど線の細いRonnieのVocalをSaxが盛り立てているのが良い。

商業TVで初めて演奏された曲といわれる“Amelia Earhart's Last Flight”。PlainsongもCoverしたこの曲をFiddleピアノSlideSaxが実にイイ感じで仕上げている。こういう曲はPubで聴いたら最高ですなあ。

タイトル曲“Anymore For Anymore”はAcousticなサウンドにのって切ないMelodyを歌い上げるRonnieのGentleなVocal沁みまくる名曲。“”

米国Composer/SongwriterVaudevillianだったHarry Von Tilzerが書いた“Only A Bird In A Gilded Cage”。1分チョイのピアノ弾き語り風

アルバム最後をシメるのはメンバーが楽し気に盛り上がるChicken Wired”。

(Hit-C Fiore)

 Vaughan Mason And Crewは一般的には所謂、一発屋という存在で語られることが多いし、実際そうなのであろう。彼らが79年の夏にリリースしたSingleBounce, Rock, Skate, Roll”がUS Billboard Hot Soul Singles5位Billboard’s Disco Top 100 Charts38位を記録するHitとなって一躍、その名を知られるとこととなった。この曲は、同年6月にリリースされBillboard Hot 100で8月18日付でNo.1を記録したFunk Band Chicの大Hit Number“Good Times”のBasslineからInspireされた曲だそうだ。最初の3拍の頭4分音符でガッツリ刻み4拍目は休符の後に16のウラでSyncopateしたフレーズをブッ込んでノリを出す、この黄金のパターンは、さまざまな形で応用されて、ご存知Queenの“Another One Bites the Dust”なんかもそのひとつ.。Vaughan Mason And Crewは、その名の通り楽曲とProduceを手掛けPercussionLead Vocalを担当するVaughan MasonがLeaderとなる4人組で、Vaughanと共にLead Vocalを担当するJerome BellドラムスPercussionGreg BufordピアノSyntesizerArp Bassを担当するBenjaminBen Eppsというメンツで唯一のアルバムとなる本作を80年に世に出した。当時Wall Street Journalを読んで、過熱していたRoller Skateのブームに目を付けて便乗したとはいえ、レコード屋に務めるVaughan Masonはラッキーだった。本作には77年に『Free Yoursel』というご機嫌なアルバムをリリースしたGo-Go Group E.U.Experience Unlimited)の鍵盤奏者であったMichael "Prof. Funk" HughesSynthesizerClavinetMoog Bassで参加しているのが嬉しい。Hughesと共にMoog Bassを担当するJohn Freeman、CoogaでCleveland Battleが参加している。また、ご機嫌なベースを弾いているのは名手Michael Sugar Bear Foreman。後にVaughanはButch Dayoと組んでVaughan Mason And Butch Dayoとで『Feel My Love』というMini Album83年にリリースしているが、これもまた傑作である。

 

 『Bounce, Rock, Skate, Roll』はVaughan Mason And Crew80年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Roller Skate”。WhistleCowbellから始まり否が応でも腰が動き出してしまう。P-FunkマナーうねりまくるSyhthesizerが最高で、重心の低いBorromで鳴らされるNastyなベースもご機嫌だ。この曲も80年にCutされてUS R&B Songs Chartで52位を記録している。、

心地良いPercussionCosmicなSynthesizerから始まる“Cravin' Your Body”はぶっといMoog Bassがイイ味を出しているがこの手の曲としては少々地味ではある。

前曲同様、VaughanとEppsが共作した“Thinking About You Baby”は哀愁のピアノで始まるおセンチなBallad思い入れたっぷりにSoulfulに歌い上げてはいるものの、アルバムの流れとしては、この位置でこの手の曲が出てくるとせっかく盛り上がったFunkな気分がチョイと盛り下がってしまう。もしこれが、とびきりSweetなBalladであったならばFunk Bandとしてはバッチリだったのであるが。

We're Gonna Funk You Up”はウネるSynthesizer歪ませたギターキレの良いピアノがイイ感じの重心の低いFunk。後半に登場する燃えたぎるギター・ソロやVocalも頑張ってはいるが、やや不完全燃焼なのが残念。

いよいよの御登場は上述のHit曲だが、例によって“Bounce, Rock, Skate, Roll I”と“Bounce, Rock, Skate, Roll II”とCreditでは2曲に分かれている。ぶっとくウネるMoog BassCoolなエレピキレの良いFunkyなカッティング・ギターが絡み、Handclapがガッツリ心地良いツボに入ったご機嫌なFunk。Percussionが入ったりして盛り上げる。少々単調ともいえるが、無条件に腰を動かすには十分である。

(Hit-C Fiore)

 Graham Collierが関わった作品は、ずっと追いかけ続けているのだけれど、近年また続々と貴重な発掘音源がリリースされていて嬉しい。昨年リリースされた『Hamburg 1968』も素晴らしい発掘Live Albumであったが今年も『Down Another Road @ Stockholm Jazz Days '69』というお宝音源が登場して楽しませてくれている。英国が生んだ偉大なBassistであり、Band-LeaderComposer作家教育者として輝かしい功績を残したCollierは音楽に関わって半世紀以上にも渡る活動を続けてきた。惜しくも2011年に人生の幕を閉じてしまったが、Down Beatの奨学金を得て入学したBerklee School of Music63年に英国人で初めて卒業し、67年DeramからThe Graham Collier Septetとして『Deep Dark Blue Centre』を発表して以来、メンバーや編成は変わりながら、Qualityの高いLeader Albumをずっと制作してきた。69年Graham Collier Sextetでの『Down Another Road』、Graham Collier Musicとしての第一作で70年Fontanaからリリースされた『Songs For My Father』はBritish Jazz史に残る金字塔ともいうべき名作といってもいいだろう。Nucleus~Soft Machineに加入するKarl JenkinsJohn MarshallだけでなくHarry BeckettGilgameshに加入するギタリストPhil Lee、Trumpet奏者Kenny Wheeler、Trombone奏者Nick Evans、名Sax奏者Stan SulzmannAlan SkidmoreTony RobertsArt ThemenにPianist John TaylorらといったBritish Jazz界で活躍し数々の名作を生みだしてきたメンバーが出入りしていた、それらの作品以降のアルバムも、メンバーは地味かもしれないが傑作である。Graham Collierが74年Londonに自ら設立したLabel Mosaic RecordsからGraham Collier Musicとしてリリースされた作品もたまらなく魅力的で、必死になって集めたものだった。鍵盤奏者が、Nucleusに加入しPazを結成する大好きなGeoff CastleからRoger Deanに交代した本作も、Label第一作となった前作『Darius』同様にCompositionImprovisation絶妙のバランスで英国らしい典雅硬質の美しさスリリングな緊張感が同居する中に垣間みせるLyricismが素晴らしい。

 

 『Midnight Blue』は75年にリリースされたGraham Collier Musicのアルバム。

アルバム1曲目はタイトル曲“Midnight Blue”。Roger DeanがMinor Chordでピアノを鳴らすと、ギターのEd Speight、Harry Beckett、Derek Wadsworthが続いてThemeのMelodyを次々に演奏して静かに、そしてタイトルのごとくDarkな色合いで、少々意味ありげに始まる。それぞれの楽器が絡みながらリズムは突如静から動、そして静へ、再び動へと、さまざまな表情を持つ夜のごとく、静と動が入れ替わりながら刻々変わっていく中、英国的なLyricalな旋律が生み出されていく。Trympet、ギター、Tromboneだけの演奏になり、それぞれがMelodyを描き出し絡み合うと、リズム隊が疾走し、切れ味鋭いBeckettのTrumpetソロが始まる。激しく煽るリズム隊にのって白熱のソロをとるBeckettが圧巻だ。ギターが登場し、しばらくするとリズム隊はゆったりとした静かな演奏に戻るが、Trumpetソロは続く。そしてSpeightの思慮深いギター・ソロが始まる。ピアノのChodrのみのバックでDerek WadsworthのTromboneソロが始まるが、途中でTromboneのみとなったりして、これまた聴きモノである。最後は疾走するフォービートにのってRoger Deanのピアノ・ソロAbstractになったり、情緒に走らず硬質の演奏が良い。最後は静かにThemeが奏でられる。A面すべてを使った22分越えの大曲はダレることなく緊張感を持ち最後まで聴かせる。

Adam”もピアノのChordで始まり、優美で抒情的なThemeのMelodyが奏でられる。終始、ゆったりとしたリズムにのって各楽器が激しく絡み合う瞬間もある。こちらもCoolで凛とした演奏の中でたまらなく美しい旋律が生まれていくのが素晴らしい。

最後をシメるのは2管で格調高く始まる“Cathedra”。Hard-Boiledで実に心地良い演奏だがSpeightの歪ませたギターも飛び出すソロが聴きモノ。

(Hit-C Fiore)

  漆黒のFunk魂を感じさせてくれるOrgan奏者Lonnie Smithといえば、Blue Note時代初期のアルバムが最高なのであるが、Kuduからの本作も大のお気に入り盤である。Lonnieのレコードは色んなコスプレした本人のお茶目な感覚が実に最高なのであるが、本作もジャケットが素晴らしい。さて、New YorkはLackawanna生まれのHammond B3を黒く唸らせる名手Lonnie Smithは、Organ奏者Jack McDuffバンドThe Brother Jack McDuff Quartetなどで活躍していたギタリストGeorge BensonNew York Cityで出会い、The George Benson Quartetに加入して活躍、67年ClumbiaからBensonもギターで参加した『Finger Lickin' Good』でアルバム・デビューする。Roland KirkLou Donaldsonと共演しながら移籍したBlue Noteから69年代後半から70年初頭にかけて『Think!』、『Turning Point』、『Move Your Hand』、『Drives』とSoul Jazzど真ん中なリーダー・アルバムを次々とリリースしてきた。本作はKuduに移籍して最初にして最後の作品。Lonnieのたった一枚のKudu作品は、次作となるGroove Merchantから75年にリリースされる『Afrodesia』など、よりFunk寄りになる以降の作品とBlue NoteのSoul Jazz時代の丁度中間に位置する。Funkなリズムを取り入れつつ、逆に独特の灰汁のある黒さが失われていった後の作品にはないLonnieの個性が光るアルバムである。Organに加えてClavinetを弾いたり、LatinなBeatを取り入れたり、ぶっ飛んだCosmic浮遊感漂うJamで暴れまくったりオレ節全開で、これが実にイイ塩梅なのである。Grover Washington, Jr.のTenorも活躍し、Billy CobhamのドラムスにRon CarterChuck Rainey(1曲のみだが)のベースもそんなLonnieさんに引っ張られてイイ味出しているのも嬉しい。

 

 

 『Mama Wailer』はLonnie Smith71年Kuduからリリースしたアルバム。Produceは勿論Creed Taylor

アルバム1曲目はタイトル曲“Mama Wailer”。Ron CarterのベースとBilly Cobhamのドラムスが緩めのLatinなBeatで腰を動かす。Marvin Cabell野太いTenor SaxソロRobert LoweSoulfulなギター・ソロもイイ感じ。LonnieはHammondの他にClavinetも弾いてFunkyに挑発する。適当感満点ベロベロレロレロScatもイナタいノリが最高。

続いてもLonnie作のド渋なFunk魂がガッツリ注入されたMidium Number“Hola Muncea”。タメのききまくったLonnieのHammondがRon CarterのMinimalなベースとCobhamの跳ねの入った、これまたLatinなBeatが心地良い。Lazyな雰囲気の中で繰り返しの心地良さがたまらない。

A面最後を飾るのはChuck RaineyウネりまくるベースとCobhamの躍動するドラミングが腰を動かすCarol Kingの“I Feel The Earth Move”。得意のウッチータッチーなCobhamのドラミングとJimmy PonderFunkyなカッティングが時代を感じさせるが、延々とオレ節かましまくりのLonnieのソロが熱いっす。

B面すべてを使って演奏されるのはSly & The Family Stoneのあの名曲のCover“Stand”。前半は若干チャラいノリCTI特有のお気楽Fusionな感じではあるが、リズム・チェンジして腰を落とした漆黒のGrooveにのってLonnieのHammondGrover Washington, Jr.Tenor SaxFunk魂が炸裂する。この気持ち良いFunk Jamが永遠に続いて欲しいと思ったら後半はTempo UpSaxソロギターソロと続き、Psychedelicで浮遊感に満ちた展開になっていく。HypnoticなBeatののってLonnieのAbstractなソロが宙を駈けぬけて心地良すぎるPsychedelic Funky Jam時空を歪ませていく

(Hit-C Fiore)