BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Henry GrimesというBassistは実に不思議なMusicianである。『Jazz on a Summer's Day真夏の夜のジャズ)』でThelonious Monk Trioの一員としてベースを弾いていたこの男は、Free Jazzのみならず、『Annie Ross Sings a Song with Mulligan!』、Lee Konitzの『Tranquility』、『Sonny Rollins and the Big Brass』、Mose Allisonの『I Love the Life I Live』、『Shirley Scott Plays Horace Silver』、Roy Haynes Quartetの『Out of the Afternoon』、 Walt Dickerson Quartetの『Jazz Impressions of Lawrence of Arabia』、 Lennie Tristanoの『Continuity』など数々の名盤で素晴らしい演奏を披露し、なんたって、あのCharles Mingusが、バンドに2人目のBassistを起用しようとした時に選ばれた人物なのであるから。50年代半ばまでにGrimesは有能なBassistとしての名声を確立していたにも関わらず、60年代後半Californiaに移住後突如、その消息は途絶えた。そしてGrimesはこの世を去ってしまったとの風評が流れ、一般的もそう考えられていた。ところが、2002年に、殆ど無一文で、演奏するBassもなく、 Los Angeles小さなApartmentを借りて詩を書いたり雑用をして生計を立てているGrimesが発見された。Jazz界との繋がりを失っており、Albert Ayler70年亡くなっていることも知らなかったという。そしてGrimsは演奏を再開するのだ。Philadelphiaで、両親は共に若い頃は音楽家だった家庭にGrimsは生まれた。12歳の時にViolinを始め、TubaEnglish HornPercussionを演奏するようになった。最終的にMastbaum Technical High Schoolの時にDouble Bassに転向した。その後もJuilliardで音楽を学び続け、Lennie TristanoLee KonitzSonny RollinsThelonious MonkMcCoy TynerBenny Goodmanらと共演している。Grimsesの演奏を聴いた時に、まず感じたのは、木の鳴りを生かした、そのぶっとく黒々としたBassの音色の豊かさである。それが、独特のTime感覚で繰り出されるフレーズで時空を歪ませていく心地良さ大好きなBassistの一人である。

 

 『The Call』はHenry Grimes TrioESP-Diskから66年にリリースしたアルバム。Grimsが2002年に再発見されるまで唯一のソロ・アルバムであった。65年の12月28日にNew York Cityで録音されている。GrimesのベースにClarinet奏者Perry Robinson、そしてDrummer Tom PriceによるTrioの演奏。RobinsonはSavoyPerry Robinson 4名義でKenny Barronのピアノ、Paul MotianのドラムスにGrimesのベースで『Funk Dumpling』というご機嫌なアルバムを残している。Tom Priceは、Frank WrightBurton GreenePatty WatersというESPお馴染みのメンツとアルバムで共演している。

アルバム1発目は“Fish Story”。ここでもGrimsの図太くウネるベースが存在感を見せる。Tom Priceのドラミングもただ闇雲に叩きまくるというのではなくAbstractでStrangeなPulseを送り続ける。そこにPerry RobinsonによるClarinetが時に咆哮し、時に抑制されたPastoralな旋律を奏でる。3人は緩急自在に時空を駈けぬけていく。

For Django”もMysterious静寂を3人が美しいPulseを描きながら徘徊する。時折Robinsonがスリリングに切り込んでくる

Perry Robinson作の“Walk On”はPulseを刻み続けるリズム隊をバックにRobinsonが嘶き、しかし、それは好き勝手、ドシャメシャに終わらないところが、このTrioの良さ。

Saturday Nite What Th'”は3者が抑制された美しい静寂の中で触発し合い淡々と時が過ぎ去っていく

Perry Robinson作のタイトル曲“The Call”。RobinsonはMinimalにフレーズを吹き続け時空が歪み異次元にTripさせられる。悲し気なRobinsonのClarinetの鳴らしっぷりが印象的だ。繰り返しの美学

アルバム最後をシメるのは“Son Of Alfalfa”。Robinsonの軽快なフレーズで始まり、繰り返される中、徐々に時空が捻じ曲げられていく

Blue Monk/Thelonious Monk Trio at the Newport Jazz Festival, 1958

Henry Grimes at Crescendo

(Hit-C Fiore)

 B-12という名前の正体がよくわからない80年代に登場したBrasilの3人組70年代後半Lady ZuPhillipsからリリースした『A Noite Vai Chegar』と『Fêmea Brasileira』という2枚のアルバムProduceしたLuiz Carlos MalulyのProduceで83年Discos CBSから“Tremelix / Café Frio”なるドイツのSpider Murphy Gangの“Ich Schau' Dich An (Peep Peep)”のParodyのようなお遊び感あふれるElectro Pop7", Singleをリリースすると、São PauloのInstrumental Group Top SoundsやCodigo 90なるPsychedelic Rock Groupでギターを弾いていたMarcos 'Vermelho' FicarelliEduardo FecarottaMark Lundという3人組としてRGEから唯一のアルバムとなる『Doze Inicial』を84年にリリースしている。アルバムが世に出た時期と、まあ、狙っているとしか思えないジャケットバンド名から、ある程度想像がついてしまいそうだが、80年代初頭から英米を中心として盛り上がりをみせていくElectro PopなSoundまんまなのである。そう、Brasil初と思われる3人組Electro Pop UnitがB-12なのであった。楽曲もMarcos FicarelliとEduardo Fecarottaの2人が殆ど手掛けており、3人による、ギターSynthesizerベースなどの演奏に加えて、Guest MusicianとしてAlberto Niccoli Jr.がドラムス、Marco Antonio Escovaがベース、Producer/ComposerのReinaldo Barrigaが1曲だけAcoustic Guitarで参加している。おそらく時流にのった企画モノというか単発Projectのようなものであったのかもしれない。しかし、そこはBrasil、同時期に英米から量産されたElectro Popとは一味違う歌心に満ち、時にハッとさせる魅惑のMelodyピコピコ・サウンドにのって歌われていく。そして、Studio Sessionで数々の名演を残しているFicarelliの流暢なギターの名人芸が飛び出してくるのだ。Cheapでスカスカ、なんともダサ気持ち良いSoundはクセになってしまう。

 

 『Doze Inicial』はB-1284年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“Edifício”。大仰なイントロからElectro Popに展開するがダサ気持ち良いCatchyなMelodyがなんともクセになる。

疾走感にあふれたApaixonado”はイントロだけ聴くとおっとKroutrockか、みたいな感じだが歌メロが始まるとやっぱりありふれたElectro Pop

Cowboy”はSimpleなSoundをバックにCoolで抑えたVocal淡々と歌い上げる中々イイ感じ。

Ilha Deserta”はReggaeで調哀感漂うMelodyもイイ感じスカスカな音が気持ち良い。Coolに進行しChorusで盛り上げるサビも良き。

Ray Mattar作の“Meu Bem”も疾走感に満ち溢れたNew Wave感が懐かしいElectro Pop。ギター・ソロも短いながらカッコイイ。

小気味良いギターのカッティングで始まる“Cê Não Me Sai Da Cabeça”は中々魅惑のMelodyを持ったナンバーでSynthesizerもイイ感じ。

B面頭を飾る“É A Noite”はギターの刻みSynthesizerNew Wave感に満ちているが歌心溢れるMelody抜群に親しみやすいのがBrasilらしい。

Surra De Beijos”もいかにも80年代Electro PopなんだけどCheapなバックにのったMelodyが良き

語りかけるように歌うBallad調の“Apimenta O Clima”。

New WaveなギターのRiffで始まる“Zero”。CathyなElectro Pop

ウキウキ気分でスキップを踏みたくなるCozinhar É Amar”。高揚感に満ちたElectro Pop

アルバム最後を飾るのは“Pirei”は似非Chinaなイントロから始まる勢いのあるElectro Pop。ChorusもSyntheのフレーズも80年代的Fake感に満ちている。

Cowboy/B-12

(Hit-C Fiore)

 U.K. Subsはまだ現役で活動を続けている23年に行われた欧州と英国Tourは大盛況で、LondonのThe 100 Clubでは5夜連続Sold Outで最高潮の盛り上がりをみせた。勿論Original MemberのVocalist Charlie Harperはまだ元気に歌い続けている。25年にはバンドのメンバー3人がLAX(Los Angeles International Airport)に到着するやいなや入局拒否で拘束されて本国英国へ強制送還、Charlie Harperは無事に入国して3人のGuest Musicianを伴ってLos AngelesのThe Belasco Theaterで行われたLA Punk Invasionで気合タップリに歌いまくったですなあ。メンバーのBassist Alvin Gibbsは67歳にして米国から追い出されるとは思ってもみなかったが誇りに思っているとのこと。今年の5月25日82歳になったHarperは、まだまだ現役続行中なのはいうまでもない。半世紀以上も歌い続けているPunk Legend三十路を過ぎてPunkを歌い始めた不屈のPunk Rock Singer Charlie Harper率いるU.K. Subs、やっぱり彼らは最高だ。そしてPunk好きなら、SubsのLiveは是非経験して欲しいのだ。76年Pub Rock BandのVocalだったHarperが、The RoxyPunk Rockに出会って結成したU.K. Subs。そんな彼らが79年Debut AlbumAnother Kind Of Blues』がリリースされる2年前、77年12月31日にRoxyでぶっ放したLive。VocalのHarperにギターのNicky Garratt、ベースのPaul Slack、ドラムスにはRory Lions(Rory Lyons)という布陣で行ったRecorded Liveを収録した音盤をご紹介。やっぱり、SubsのLiveはご機嫌すなあ。そして、この時代のPunkは最高っすなあ。とにかくHarperの三十路過ぎとは思えないEnergyに満ちた若々しく気合の入ったVocalは最高。そして小気味良く、鋭いカッティングで押し通すギターのGarrett、ブイブイ鳴らして動き回るベースのSlack,後に脱退てしまうがLyonsの荒々しいドラミング、すべてが最高である。

 

 『Live At The Roxy Club』は77年The Roxyで行われたUK SubsRecorded Live Album

アルバム1発目は“B.I.C.”。ジャキジャキしたギターのカッティイングブイブイ鳴らすベース、そして気合の入ったHarperのVocalが眩しい

続いてもDriveするベースがご機嫌な“I Couldn't Be You”。

疾走感に満ちたI Live In A Car”。動き回るベース激しくカッティングするギターがカッコ良すぎ。

HarperのスカしまくったVocalが最高なTomorrow's Girls”。野郎Chorusもノリノリ。

Harperのご機嫌なカウントからぶっ放すノリノリのStranglehold”。思わず拳を突き上げシンガロング

Illegal 15”はブイブイ鳴らしてDriveするベース鋭いカッティングで迫るギターがカッコイイ。

Debut Album冒頭を飾った“C.I.D.”。ベースのフレーズで始まり、HarperのヤサグレVocal野郎Chousが最高っす。

おそらく初出のスピード感に満ち溢れたNo Rules (Victim)”。短いながら荒々しいギター・ソロも良き。

Lady Esquire”もHarperのトッポいVocalが良き。カッティングのみで切れ込むギターも良き。

向こう見ずに暴走するTelephone Numbers”は79年リリースの“Tomorrow's Girls”のB面だった大好きなナンバー。

カッティングとギター・ソロが激カッコイイWorld War”。

アルバム最後をシメるのは尖りまくったギターのカッティングで最後まで押し通す激カッコイイDisease”。

Stranglehold/U.K. Subs

C.I.D.~I Live In A Car/U.K. Subs European Tour 2023

(Hit-C Fiore)

◎Dance In A Greenwich Farm/Cornell Campbell

 Cornell Campbell75年にリリースしたSingle“Dance In A Greenwich Farm”。この頃のCampbellは“The Gorgon”や“Natty Dread in a Greenwich Farm”とヒット曲を連発している。The Aggrovatorsをバックに歌い、Johny ClarkeJohn Holtらと70年代Buny Leeの名を高めた看板Singerの一人だ。Ska全盛時60年代からStudio Oneで歌い続けてきたCampbellといえば、その絶品のFalsetto Vocalだが、硬派なRoots路線も歌いこなせる素晴らしいSingerである。The AggrovatorsのDrummer Santa DavisFying Hi-Hatにのって70年代半ばにCampbellは一気に表舞台へ飛び出していく。

 

 

Dance In A Greenwich Farm/Cornell Campbell

 “Dance In A Greenwich Farm”はCornell Campbell75年英国VulcanのSub Label Grounationからリリースした同名のアルバム『Dance In A Greenwich Farm』に収録されている。The Agrovatorsがバックの演奏を固めKing Tubby's Studioで録音されたお気に入りの音盤である。ProducerはBunny Leeであある。

(Hit-C Fiore)

 

 Harmonica Slim名乗る人物は複数いるから、非常にややこしい。一番有名なのは、主に50~60年代に活動していたTexas出身の本名Travis Leonard Blaylock56年Aladinから“Mary Helen”やVita Recordsから“You Better Believe It”のSingleをリリースして、ささやかなヒットとなり、Percy MayfieldHarmonica FatsB.B. King、T-Bone WalkerPee Wee CraytonRay Charlesらと共演した。このことによってHarmonica Slimを名乗っていた、 Louisiana州出身のもう一人の人物、本名Isiah MooreJames Isaac Moore)がSlim Harpoと名乗るようになった。さらに、ややこしいことにHarmonica Slimを名乗る人物はさらに2人いたMaryland州Victoria出身の本名Andrew Parsons、そして本日ご紹介するのがCaliforniaWest Fresnoを中心に活動していた

本名Richard Riley S. RigginsというBlues Harmonica Player/Singerである。正直、最初にこのアルバムを見つけた時は驚いたのであった。Texas出身のHarmonica Slimのアルバムかと思ったのである。しかし、この人は70年代以降Bluesを演奏しなくなったし、84年に鬼籍に入っている。調べてみたらCaliforniaで活動していたHarmonica Slimがギタリスト/SingerのHosea Leavyと制作したアルバムであった。ところが、これは手に入れて大正解の、実に自分のツボを突くイイ感じの粗野で乾いたBlues Abumに仕上がっていたのであった。本作は2000年にリリースされているが、Harmonica Slimは95年にギタリストRon Thompson、Drummer Chris Millar、ベース奏者Bill CampbellJeff Henryを迎えて、おそらく最初のLeader Album『Back Bottom Blues』、97年にSinger Johnny Da-Doo Wilsonを迎えHarmonica Slim  With Blues West & Da-Doo名義でアルバム『Give Me My Shotgun!』をリリースしている。

 

 『Cold Tacos And Warm Beer』は2000年にリリースされたHarmonica Slim , Hosea Leavyのアルバム。

アルバム1発目は“Catfish Blues”。Hosea LeavyぶっといBlues GitarとHarmonica Slimの鄙びたHarp、そしてぶっきら棒なVocalがイイ感じ。

K. C. Douglas Was A Fine Man”もイントロのHarp渋い語りが実に良き。全体を通して古くて新しい感じのEvergreenなBluesになっているのが興味深い。

Cold Tacos And Warm Beer”は前作に参加していたJohnny Da-Doo Wilsonを迎えた冒頭の野郎2人の掛け合いが面白い、ご機嫌なナンバー。

Hoseaの兄Clvin Leavyの名曲“Cummins Prison Farm”のCoverは、なんと脱力しまくりのLazyなBluesから入り、語りも入った8分越えのド渋なBluesに仕上げている。

She Wants To Boogie”はタイトル通りSlimのご機嫌なHarpを堪能できるBoogie。これは最高。

“Back Door Man”もHosea Leavyのギターがイイ味出している。Johnny Da-Doo WilsonガサツなVocalも良き。

The Frisco Railroad”も語りから始まり、タイトル通りのTrain Peaceがイイ感じ。

Hosea Leavyのアルバムにも収録されていたやさぐれBluesHey Boss”。荒れたVocalとHarpが良き。

Hosea's Boogie”も野卑なVocalMinimalなHarpがご機嫌なBoogie

All Alone Now”はイイ塩梅のユッタリマッタリLazyなBlues

脱力しまくりのお気楽BluesGod Didn't Make Honky Tonk Angels”。

アルバム最後をシメるのはBobby "Blue" Blandの“Don't Want No Woman”。EffectをかけたVocalであっという間に終わってしまう。

Back Door Man/Harmonica Slim , Hosea Leavy

(Hit-C Fiore)

 My Solid GroundはドイツはFrankfurtMainzとの間に位置するRüsselsheim60年代後半に結成されたRock Band。 例によってアルバムを1枚リリースしただけで解散してしまったBnadでの一つであるが、その彼らが残した唯一のアルバムが結構イイ感じなのであった。この時期、同国から登場してきた多くのバンド同様にPink FloydDeep Purple、Uriah HeepといったBritish Rocの影響が強く感じられるけれど、ジャケットからもわかるように、Psychedelecの残り香がそこかしこから漂ってくるのが興味深い。このアルバムがリリースされた71年といえば、時代的に英米ではPsychedelic Musicはとうに旬を過ぎた時期ではあったがFrankfurtの郊外にあるRüsselsheimに暮らす結成当時14歳の少年が、このGarageでPsychedelecなHard Rockを生みだしたのは驚くべきである。個人的には、この手のジャケットのアルバムは直ぐに手が出てしまうほど自分の好みなのであった。内ジャケットがまたご機嫌なのである。My Solid GroundはギターとVocalのBernhard RendelをLeaderとして、ベースとVocalのKarl-Heinrich Dörfler、ドラムスのAndreas Würsching、鍵盤のIngo Wernerという4人組バタバタしたドラムスや音程が危なっかしいVocalはお世辞にもうまいとはいえず、かなり素人っぽいかんじではあるが、語りVocalを歪ませたり女性Vocalも導入したりピアノやOrganのDarkで浮遊感に満ちた使い方などもあって、ある意味で時代錯誤的な程よいTrip感覚が今聴くとイイ味を出している。EngineerはMaestro Dieter Dierks、Producerは後にNektarを手掛けるPeter Haukeで、音響的にもかなり奥深い魅力を感じさせるのが気に入っている。バンドはアルバムのリリース後も継続する予定であったが、メンバーが次々と脱退しRendelは学問の道へ進むことを決断するのであった。

 

 『My Solid Ground』はMy Solid Ground71年Bacillus Recordsからリリースしたアルバム。

アルバム1発目はいきなり13分越えの大曲Dirty Yellow Mist”。歪ませたVocal荘厳なOrganPsychedelicで浮遊感に満ちたサウンドは時代を感じさせつつも、どこか奇妙で、まあギターのRiffなどDeep Purpleあたりからいただいている部分はあるにせよ、女性Vocalの導入やピアノの使い方など、時代を越えた摩訶不思議感が面白く、音響的にも雰囲気タップリではある。

Flash Part IV”もおっKinksか的なBritishな香り漂うギターのRifから始まり、2分台の短い曲ながらご機嫌である。

音程が危なっかしいVocalも味となるUriah Heep調のHard ShuffleThat's You”。

The Executioner”もいきなり気怠気な呟きNarratinのような語りHeavyなギター荘厳な鍵盤と共にPsychedelicな空間を生みだしている。

Melancholie”はタイトル通り、甘美で切ない泣きのピアノ欧州浪漫な雰囲気を否が応でも高めるナンバー。Acoustic Guitarの使い方もバッチリのインスト曲

Handful Of Grass”はイントロのガッツ入ったギターからご機嫌である。バタバタしたドラムスガムシャラに弾き倒すギター・ソロも良し。

アルバム最後をシメるのは“Devonshire Street W 1”。ここでもRawなギター。ソロが雰囲気を出している

アルバム最後をシメるのは疾走感に満ちた"X"”。Psychedelicなギター・ソロがイイ感じ

Handful Of Grass/My Solid Ground

(Hit-C Fiore)

 SlaveOhio Funkの中でもOhio Playersと並んで大好きなFunk Groupである。SlaveはNew Jersey州Newark生まれのMulti-Instrumentalist/ Songwriter Steve WashingtonことStephen C. WashingtonがTrombone奏者Floyd Miller70年代半ばにOhio州Daytonで結成したバンドである。Washingtonは、Electric Trumpetを最初に使った人物の一人と言われているが、80年代半ば以降の復活したGeorge Clintonとの仕事でも知られている。天才Walter "Junie" Morrison同様にOhio FunkとP-Funkを股にかけて活躍した偉大なFunk Legendである。そのSteve Washingtonも今年の2月にこの世に別れを告げていった。やっぱりSlaveは司令塔のWashingtonが指揮を握っていた本作までが最高なのであった。個人的な好みを言えば、最初の3枚漆黒に光り輝くOhio Funkの傑作であった。なんといっても重くぶっといMark AdamsSlap Bass、そしてThe Isley BrothersErnie IsleyのごとくHardにAggressiveに弾き倒すMark HicksのGuitarが核となり78年の3作目『The Concept』からStarleana YoungCurt JonesSteve ArringtonがVocalで加わり79年リリースの次作『Just a Touch of Love』で正式メンバーとなりバンドは洗練が加わっていく。そして80年、本作の登場だ。Tom Dozierに代わりSteve Arringtonがドラムスも担当しリズム隊は、より粘り腰のFunkとなり後にAuraを結成する紅一点のStarleanaのVocalが男くさく荒々しかったFunk Bandに華をもたらした。Slaveは80年代も盤石だと思ったが、残念ながらWashingtonとStarleana、Jones、Mark Hicksは本作を最後にバンドを離れてしまうのだった。

 

 『Stone Jam』はSlaveが80年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“Let's Spend Some Time”。Mark AdamsのSlap Bassが唸りを上げるどFunkなリズム隊をバックにCuteなStarleana YoungのVocalがイイ感じ。

Feel My Love”もStarleanaの可憐なVocalにSteve Arringtonの粘っこいVocalが絡むのが面白い。切れ込むHorn隊も、さすがWashington、センス抜群。

Starting Over”は必殺のRomanticで甘美なMidium Slow。ここでもStarleanaのVocalは絶品。Funk BandはこういうSweetな曲が必ずアルバムに入っていなければならないのだ。

Sizzlin' Hot”はHardなギターとSlap Bassが炸裂するFunk。コレっすなあ、Slaveは。

ヒットした“Watching You”はMellowでPopなFunkだが、Mark AdamsのSlapが唸るBottomは重くSteve Arringtonの粘着質のVocalが個性を出している。このダサカッコ良さは病みつきになってしまうのだ。

Dreamin'”もCatchyでMellowだがBottomは重量級のFunkSlapがウネリまくり。CuteなVocalに絡むChorusも気持良すぎ。これぞ、この時期のSlaveというべき魅力的なナンバー。

Never Get Away”もSlap Bassが圧巻激カッコイイFunk。StarleanaがCute男女Vocalのかけあいもバッチリ。ここで出ましたMark Hicksの燃えたぎるギター・ソロ

最後をシメるのはタイトル曲“Stone Jam”。Slapが炸裂しStarleanaの魅力的なVocalもたまらない。そしてArringtonは一歩間違うとお笑いのワウワウVocal、Mark Adamsのギターが乱入して弾き倒し

Watching You/Slave

(Hit-C Fiore)

 Joe Higgsといえば、Bob Marley and The WailersJimmy CliffWailing Soulsお師匠的存在で"Godfather of Reggae"とも呼ばれているようなReggaeの歴史において重要な人物なのであるが、ご本人も元々Singerとして50年代から活動していたのだった。Joe HiggsことJoseph Benjamin HiggsはJamaicaのKingstonに生まれ、TrenchtownGhettoで育った。58年に、後に首相となる政治家でRecord ProducerでもあったEdward Seagaが設立したLabel WIRLWest Indies Records Limited)からRoy WilsonとのDuo Higgs & WilsonとしてSingle“Oh Manny Oh”をリリースするが、これはJamaicaで初めてPressされたRecordのひとつとも言われており、5万枚を売り上げることになった。50年代後半から60年代前半にかけて、Higgs & WilsonはClement "Coxsone" DoddのLabel Supreme Recordsに“Mighty Man”Wincox Recordsに“There's A Reward”をRecodingしヒットさせたが、64年にWilsonが米国に移住したために、このDuoは解消されている。SkaからRocksteadyの時代に移りつつある時期、Higgsはソロとなり、Carlos MalcolmThe Afro-Jamaican Rhythmsと共演し、Lynn TaittThe Soul BrothersにLead Vocalistとして加入した。そしてSlum街で育ち、努力で這い上がって成功を収めたHiggsは同じような境遇にいる若手の指導を開始する。Trenchtownで行われたLessonでBob MarleyやBunny LivingstonBunny Wailer)、Peter Toshは教えを受けWailing Wailers時代にToshのLead VocalでHiggs作の“Stepping Razor”をNo Creditで歌っている。またBunny Wailerが73年米国Tourへの参加を拒否した時にWailersのTourに参加している。Jimmy CliffともToureし、Bandleaderをつとめ、楽曲も提供している。72年、HiggsのDebut Albumとなる本作はIsland Recordsで録音されていた。しかしChris Blackwellは販売を躊躇し3年間お蔵入りとなった後、75年Micron Musicからリリースされるのだった。

 

 『Life Of Contradiction』はJoe Higgs75年Micron Music Limitedからリリースしたアルバム。バックを務めるのはStudio Session BandThe Now Generation。鍵盤にEarl "Wire" Lindo、ギターにMikey Chung、ベースにVal Douglas、ドラムにMikeyことMichael Richards、そして、当時Jamaicaに拠点を移していたEric Galeがギターを担当しているのが興味深い。

アルバム1発目は“Come On Home”。さすがに3年間は長かったが、下降するベース・ラインが印象的なMinor調のこの曲でHiggsのVocalは温かみに溢れ、いつ聴いても心を安らかにしてくれる。

Got To Take A Way”はOrganが実にイイ感じSoulfulなHiggsのVocalが素晴らしい。

ゆったりまったりの中に生きる喜びを与えてくれる生命感が漲っているのが素晴らしい“Wake Up And Live”。BluesyなGaleのギターが面白い。

Life Of Contradiction”はSoulR&BBluesAfroの要素が見え隠れし、Steve Winwoodにも通じる多様性を持ったHiggsのVocalも素晴らしい。

Laid Backした“Who Brought Down The Curtains”。ここでのHiggsのVocalの味わい深さといったら、明らかにReggaeの範疇を越えている

Higgs & Wilson時代の“There's A Reward”は名曲だ。聴けば聴くほど、その魅力にハマるスルメ曲。HiggsのVocalバックの演奏も絶品遊び心タップリのGaleのギターも良き。

Hard Times Don't Bother Me”も大好きな曲。GaleのBluesyなギターが絶品。

My Baby Still Loves Me”もHiggsの根底にあるSoulR&Bがにじみ出る魅力的な多様性のあるReggae。Galeのオブリに思わずニンマリ

RomanticでSweetな“She Was The One”。

Song My Enemy Sings”は器の大きいHiggsの人間味あふれるVocalが良い。

There's A Reward/Joe Higgs 

(Hit-C Fiore)

 Chrome70年代後半San FranciscoのUndergroundに蔓延していた凶暴でDarkな雰囲気を味わいたいなら迷わずに本作をお勧めする。もうジャケットからしてヤバさ満点である。StrangeAggressiveAvant-Gardeなんだけど、そのどこか虚無的でCoolでIndustriallな佇まいの中にCatchyな部分が見え隠れするところが面白い。ギタリストHelios Creedが加入して77年にリリースされた前作『Alien Soundtracks』はPistolsPunk勢に影響を受けたというExperimentalでGarageでPunkな傑作であったけれど本作では、Creedの攻撃的でEdgeの立ったギターがRiffで空間を切り裂きつつも前作ほどそれのみで押し通さず、SF的で不気味Sound-CollageCut-Upが唐突にぶち込まれてわけわからん展開になるなど、ジャケットのような狂気に満ちた破滅的な空気が全体に漂っている。ある意味、ドイツのNeu!やFaustらKrout Rock的なMinimalでDadaïsmeに満ち時空を捻じ曲げていくStrangeなSoundscapeに知らぬうちに惹きこまれていってしまう。これまたかなり中毒性の高い音楽である。それは同時期のSan Franciscoで活動を開始したFlipper同様に陰鬱でDruggyではあるが、青い海と空、爽やかな空気が似合うお気楽Hippieお花畑な60年代からの米国西海岸を不安をかき立てながら、破壊的でCoolに闊歩していくような傍若無人ぶりが最高なのであった。ギタリストJohn Lambdinがバンドを去り、リーダーであり創設者である、California Institute of the Artsで学んでいたDamon EdgeことThomas WisseとHelios Creedの双頭体制になったアルバムで、ベースのGary Spainは演奏と楽曲への関りはA面の一部の曲のみで残りはEdge、Creed共作となる(1曲のみEdge単独作)。Creedのギターは不協和音Heavyに奏でEdgeがScrap Metalを叩いたり、本作はIndustrial Rock始まりのひとつとも言われている。

 

 『Half Machine Lip Moves』はChrome79年にSiren Recordsからリリースしたアルバム。

アルバム1発目は疾走感に満ちたTV As Eyes”。エイトビートにのって歪みまくったCreedのギターとCreedのVocalが吼える。そして途中で突如として謎のSEと意味不明のSound-Collageがぶち込まれていく。

Zombie Warfare (Can't Let You Down)”は前曲同様に‎Apache Beatで突き進み歪んだギターが狂気を孕んで炸裂していく。Rhythm ChangeEffectをかけたVocalも、Psychedelicなギターもカッコイイ。まるで世紀末へ向かっていくようだ。

March Of The Chrome Police (A Cold Clamey Bombing)”もひたすらApache Beatを叩き出すドラムが気持ち良い。やる気なさそうに吐き捨てるようなEdgeのVocalも良き。

いきなり逆回転Tapeから始まる“You've Been Duplicated”。ここでも無造作にぶちこまれたSEが奇怪な雰囲気出しまくり。

タメのきいた重たいBeatにのってPsychedelicなギターが咆哮する“Mondo Anthem”。途中でRhythm Changeして‎Apache Beatで突き進んでいく。それにしてもSF的なSound-CollageCut-Upがヤバい。

タイトル曲“Half Machine Lip Moves”はIndustrialな香りに包まれたかと思えば唐突に終わり、また始まり不気味なVocalが登場する。もうわけわからない展開で最高。

Abstract Nympho”はApache Beatにのった不気味なVoiceキレの良いギター、そしてRhythm Cahnge歯磨きのようなSEが面白い。

Industrialな始まり方が印象的な“Turned Around”。

Zero Time”は呪文のようなVocalPsycheなギターが炸裂

Tapeの逆回転から始まる“Creature Eternal”はギターのRiffと電子音の組み合わせが面白い。

アルバム最後をシメるのは16ビートでギターが吼えるCritical Mass”。

TV as Eyes + Zombie Warfare/Chrome

(Hit-C Fiore)

 Westwindという英国のバンドがLarry Pageが69年に設立したIndependent Record Label Penny Farthingに残した唯一のアルバムとなる本作。ジャケットから漂う英国詩情に満ちた世界が、男性2人女性1人という米国のFolk Group Peter, Paul and Mary(以下PPM)と同様の編成で奏でられていくAcousticなSound男女Chorusを通じてアルバム全体を支配しているのがイイ感じ。Melodyは口ずさみやすくPopなんだけど、英国らしいBlueで抒情的な翳りが感じられるのに加えてOboeViolinAcoustic GitarHornStringsによるバックの演奏は、英国の香りを感じさせる、まあ、いってみれば英国の中の亜米利加なSoundであるんだけど1970年というこの時代の英国から時空を越えてTime Slipしていく浮世離れしたところも感じさたりする。湖畔に佇む3人の男女、彼らは一体何を想いどこに向かおうとしていたのだろうか?PPMが時代を代表するFolk Groupとして活躍した60年代から、時代は70年代に入っていた。既にPPMは解散していたが、世界各国でPPMに影響を受けたPPM StyleのFolk Bnadがどれだけの数、世に出ていた事だろうか。英国では60年代末から70年代にかけてPentangleFairport ConventionSteeleye SpanといったTraditonal Musicの伝統を受け継ぎ独自の世界観創造性を持ったGroupが登場していたが、Electric楽器を使用して彼らが切り開いていった独創的な世界とは、このWestwindというGroupは別の場所にいた。同じPPM編成でCrosby, Stills, Nash & Youngの影響も感じられるWooden Horseにも通じる、どこか夢想的英国的な抒情が感じられる世界。清涼感があり、時に可憐な紅一点Sarah DysonのVocalが実に魅力的で、Gentleな男性Vocalもイイ感じ。英国の深い森の中に迷いこみ現実逃避したくなる時には欠かせない一枚である。

 

 『Love Is...』はWestwindが70年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はユッタリマッタリRelaxしたリズム隊にのって始まるRagtime調のFolk RockGoodbye Butterfly”。ところが男女Chorusは、どこか夢見がちな美しく儚い世界を描き出していく。

Acoustic Guitarが奏でるイントロから惹きこまれていく“Sleepy City”。男女ChorusOboeの響き愁いを湛えた英国抒情を描き出している。

Love Ia A Funny Sort Of Thing”も英国的な翳りを感じさせるAcoustic Guitarと女性VocalにStringsが優しく寄り添い実にイイ感じ。

Sun Across The Snow”も軽やかに歌うSarah Dyson可憐なVocalが良き。

How Many Stars”も多幸感を感じさせるFolk RockでSarahのVocalが絡むところがイイ感じ。

Robin Hill”もSarah Dysonの魅力的なVocalに男性Chorusが寄り添い白昼夢のような世界が描き出されている。

Fisherman's Song”はアルバムで一番好きな曲。男女Vocal魅力的なMelodyを歌い上げ、FluteHorn彩りを沿える

Sweeney Todd”は英国のDance Hall Musicの伝統を感じさせる。

Acoustic GuitarとFluteで始まる“Rosemary”は夢見心地な男女Chorusが素晴らしい

Sarah Dyson優し気に語りかけるように歌い上げるVocalが絶品の“Harbour Lights”。ここでもさりげないStringsが良き。

Home Is Where My Heart Is”も気品あるStringsで始まりSarah DysonのVocalと男性Chorusが英国詩情あふれる世界を生みだしている。

(Hit-C Fiore)