Mestre MarçalことNilton Delfino MarçalはSambaに人生を捧げた真のSambistaと称されている。Bambas Do Estácioの一員でありBrasilのSambista/Percussionistとして知られるArmando Vieira Marçalの息子であり、Pat Methenyとの共演でも知られるMarçalzinhoことArmando de Souza Marçalの父親でもある。Marçalという名は父子三代に渡って続く名門であり、Sambaを愛し、真摯に向き合う二代目Marçalを人々はMestre(Maestro:達人/巨匠/先生)と呼んだのであった。“Peço A Deus”はCaetano VelosoとのDuetで発表されて以来、Mestre Marçaがずっと歌ってきたDedé da PortelaことEdson FagundesとDidaの手による永遠の名曲。愛と平和を心から願う人々を歌う、この歌詞もまた、今の時代にこそ響くものがある。
◎Recompensa/Marçal
“Peço A Deus”はMarçalが85年にリリースしたアルバム『Recompensa』に収録されている。多幸感に満ちて、Marçalの優し気なVocalとPercussionが加わると思わず腰が動き出してしまう大好きなアルバム。Caetano VelosoとのDuetで歌われる“Peço A Deus”はSlap BassにQuica、Chorusも加わって生命感に満ち溢れて実にイイ感じ。優美なViolãoの爪弾きで始まるアルバム1曲目“É Lá Que Eu Moro”から最後をシメるPercussionのみのインスト“O Bicho Vai Pegar”まで全曲最高の名盤である。
Evelyn "Champagne" Kingという名前は、人それぞれによって好きな時代があったり思い出があるSingerかもしれない。77年にリリースされて大ヒットとなったDisco Single“Shame”で人気が出た Disco Singerとして認識している方もいらっしゃるかもしれない。確かに鮮やかなDebut Hit Singleとなった同曲の印象は強烈で、17歳にして堂々としたハリのあるキレ味抜群の歌いっぷりは素晴らしいものがあるが、個人的にはどうしてもKashifやPaul Laurence Jones IIIといったProducer/Musician/Sound Creatorの手による80年代前半に全盛を誇った所謂New York SoundとかHush系と呼ばれたサウンドと共に、その歌声が思い浮かぶ大好きなR&B/Soul Funk Singerである。New YorkのBronxで生まれたEvelyn "Champagne" KingはPhiladelphia International Recordsで働いていたところ、洗面所で歌っていたのを偶然聞いたProducer Theodore T. Lifeに見いだされてRCA Recordsと契約を結んでいる。そしてInstant FunkのメンバーやDexter Wanselら豪華な演奏陣がバックをつとめるDebut Album『Smooth Talk』をリリースしている。こうして上述のDisco Hitが生まれ、Evelynは一躍全国区の人気者となったわけだが、どうしても、そのイメージが強く、以降の彼女を悩ませることになった。数年前にリリースされた素晴らしいCompilation盤『The RCA Albums 1977-1985』を聴くと、鮮烈なDebutを飾り、抜群の歌唱力を持ち、そこそこの楽曲と演奏に恵まれていながら商業的には伸び悩んでいたKingが、81年のアルバム『I'm In Love』から一気に吹っ切れていくのがわかる。続く本作は、Billboard Black Singles and Hot Dance/Disco Chartsで#1 Hitとなった“Love Come Down”を生み、、上述の都会的で洗練されたNew Yorkの摩天楼を行き来する大人の夜の香りが漂う作品は頂点を迎えるのだった。
『Get Loose』はEvelyn Kingが82年にリリースしたアルバム。81年リリースの前作『I'm In Love』からKashifやPaul Laurence Jones IIIがProduceやSongwriting、演奏に加わり、Hush Productions的な音作りがよりPopな展開をみせた本作。前作同様ProducerのMorrie Brownと共にKashifらの煌びやかなSynthesizerの打ち込みと生音が絶妙のバランスで心地良く腰を動かすサウンドがご機嫌だ。
アルバム1曲目は上述の大ヒット“Love Come Down”。Kashifの手によりProgramされたFunkyなSynthesizerをバックに思わず口ずさみたくなるCatchyで魅力的なサビを歌うEvelynのVocalが生き生きとしている。
“I Can't Stand It”はWayne BrathwaiteのSlap Bassで始まりPaul Laurence Jones IIIのSynthesizerやエレピにIra Siegelのキレの良いカッティング・ギターが絡んで気持ち良すぎ。
イナタいノリで始まる“Betcha She Don't Love You”はサビは一転してPopでCatchyにキメている。
タイトル曲“Get Loose”はMoog BassとProgramされたSynthesizerが当時を思い起こさせてくれる如何にもなNew York Soundが今聴くと新鮮で面白い。Evelynは、なんとRapを披露。
個人的に大好きなKashif作“Back To Love”も煌くエレピとギターのカッテイングと重心の低いWayne Brathwaiteのベース心地良く腰を動かす。摩天楼で繰り広げられる大人の夜のさまざまな光景が拡がる。
Paul Laurence Jones III作の“Stop That”もCuteなChorusとEvelynのVocalがご機嫌なお気に入りのCoolなFunk。
“Get Up Off Your Love”もBarry EastmondによるFunkyにウネるMoog BassにEvelynとChorusの掛け合いが最高。
アルバム最後をシメるのは、Barbara Wyrick作の必殺のBallad“I'm Just Warmin' Up”。大好きなTawatha AgeeのChorusが最高。Andy NewmarkとNeil Jasonのリズム隊も気持良すぎ。しっとり歌い上げながら官能的なEvelynのVocalも文句なしの極楽気分。
Climax Blues Bandは大好きな英国出身のBlues Rock Bandである。彼らは60年代後半にStaffordでギタリストPete HaycockとDerek Holt、Sax、Harmonica奏者のColin Cooper、鍵盤奏者Arthur Augustin Wood、ベースと鍵盤を演奏するRichard Jones、DrummerのGeorge Newsomeによって結成されたが、当初はThe Climax Chicago Blues Bandと名乗っていた。実は時代と共にバンド名も音楽性も変わり続けた彼らだが、米国で人気が出てPopな路線になってもその根底にはBlues魂が残っていたのだった。彼らの母体となったのは地元のGospel TruthというGroupで、Modなバンドとして日本でも知られているHipster Imageを脱退したColin CooperがPete Haycockと結成したR&B Bandだったが、Blues志向の音楽性が強まり上述のDerekやRichardらをメンバーを加えてバンド名を新たにしたのだった。British Blues Rockが人気を集め、彼らもDebut Album『The Climax Chicago Blues Band』を69年にリリースしている。その後、米国のバンドChicagoとの混同を避けるためにClimax Blues Bandと名前を短くしている。次作『Plays On』リリース前にRichard Jonesが脱退しDerekがベースを担当、『Tightly Knit』を、またもやバンド名を変えたClimax Chicago名義でリリース。George NewsomeがJohn Cuffleyに交代しArthur Augustin Woodもバンドを去って4人編成となって本作をリリースしている。次作のLive Albumこそが彼らのBlues Rock Bandとしての本領発揮となる名盤中の名盤であるが、以降Popな味わいを増して米国で人気を得ていく。BluesやJazz、Funkに英国的なLyricalでPopな音楽性がBlendされた彼らの音楽は、Fleetwood Mac同様に当初のコテコテのBlues Rockから遠く離れてしまい米国志向となってしまったが、決してQualityが低い音楽ではない。その萌芽は本作や前作から感じ取ることが出来る。Pete Haycockは英国で最も過小評価されているギタリストでありSongwriter、そしてVocalistの一人であろう。
Vaughan Mason And Crewは一般的には所謂、一発屋という存在で語られることが多いし、実際そうなのであろう。彼らが79年の夏にリリースしたSingle“Bounce, Rock, Skate, Roll”がUS Billboard Hot Soul Singlesで5位、Billboard’s Disco Top 100 Chartsで38位を記録するHitとなって一躍、その名を知られるとこととなった。この曲は、同年6月にリリースされBillboard Hot 100で8月18日付でNo.1を記録したFunk Band Chicの大Hit Number“Good Times”のBasslineからInspireされた曲だそうだ。最初の3拍の頭を4分音符でガッツリ刻み4拍目は休符の後に16のウラでSyncopateしたフレーズをブッ込んでノリを出す、この黄金のパターンは、さまざまな形で応用されて、ご存知Queenの“Another One Bites the Dust”なんかもそのひとつ.。Vaughan Mason And Crewは、その名の通り楽曲とProduceを手掛けPercussionとLead Vocalを担当するVaughan MasonがLeaderとなる4人組で、Vaughanと共にLead Vocalを担当するJerome Bell、ドラムスとPercussionのGreg Buford、ピアノ、Syntesizer、Arp Bassを担当するBenjamin(Ben) Eppsというメンツで唯一のアルバムとなる本作を80年に世に出した。当時Wall Street Journalを読んで、過熱していたRoller Skateのブームに目を付けて便乗したとはいえ、レコード屋に務めるVaughan Masonはラッキーだった。本作には77年に『Free Yoursel』というご機嫌なアルバムをリリースしたGo-Go Group E.U.(Experience Unlimited)の鍵盤奏者であったMichael "Prof. Funk" HughesがSynthesizer、Clavinet、Moog Bassで参加しているのが嬉しい。Hughesと共にMoog Bassを担当するJohn Freeman、CoogaでCleveland Battleが参加している。また、ご機嫌なベースを弾いているのは名手Michael Sugar Bear Foreman。後にVaughanはButch Dayoと組んでVaughan Mason And Butch Dayoとで『Feel My Love』というMini Albumを83年にリリースしているが、これもまた傑作である。
『Bounce, Rock, Skate, Roll』はVaughan Mason And Crewが80年にリリースしたアルバム。
心地良いPercussionとCosmicなSynthesizerから始まる“Cravin' Your Body”はぶっといMoog Bassがイイ味を出しているがこの手の曲としては少々地味ではある。
前曲同様、VaughanとEppsが共作した“Thinking About You Baby”は哀愁のピアノで始まる、おセンチなBallad。思い入れたっぷりにSoulfulに歌い上げてはいるものの、アルバムの流れとしては、この位置でこの手の曲が出てくるとせっかく盛り上がったFunkな気分がチョイと盛り下がってしまう。もしこれが、とびきりSweetなBalladであったならばFunk Bandとしてはバッチリだったのであるが。
“We're Gonna Funk You Up”はウネるSynthesizerと歪ませたギターとキレの良いピアノがイイ感じの重心の低いFunk。後半に登場する燃えたぎるギター・ソロやVocalも頑張ってはいるが、やや不完全燃焼なのが残念。
いよいよの御登場は上述のHit曲だが、例によって“Bounce, Rock, Skate, Roll I”と“Bounce, Rock, Skate, Roll II”とCreditでは2曲に分かれている。ぶっとくウネるMoog BassにCoolなエレピとキレの良いFunkyなカッティング・ギターが絡み、Handclapがガッツリ心地良いツボに入ったご機嫌なFunk。Percussionが入ったりして盛り上げる。少々単調ともいえるが、無条件に腰を動かすには十分である。
Graham Collierが関わった作品は、ずっと追いかけ続けているのだけれど、近年また続々と貴重な発掘音源がリリースされていて嬉しい。昨年リリースされた『Hamburg 1968』も素晴らしい発掘Live Albumであったが今年も『Down Another Road @ Stockholm Jazz Days '69』というお宝音源が登場して楽しませてくれている。英国が生んだ偉大なBassistであり、Band-Leader、Composer、作家、教育者として輝かしい功績を残したCollierは音楽に関わって半世紀以上にも渡る活動を続けてきた。惜しくも2011年に人生の幕を閉じてしまったが、Down Beatの奨学金を得て入学したBerklee School of Musicを63年に英国人で初めて卒業し、67年にDeramからThe Graham Collier Septetとして『Deep Dark Blue Centre』を発表して以来、メンバーや編成は変わりながら、Qualityの高いLeader Albumをずっと制作してきた。69年のGraham Collier Sextetでの『Down Another Road』、Graham Collier Musicとしての第一作で70年にFontanaからリリースされた『Songs For My Father』はBritish Jazz史に残る金字塔ともいうべき名作といってもいいだろう。Nucleus~Soft Machineに加入するKarl JenkinsやJohn MarshallだけでなくHarry BeckettやGilgameshに加入するギタリストPhil Lee、Trumpet奏者Kenny Wheeler、Trombone奏者Nick Evans、名Sax奏者Stan Sulzmann、Alan Skidmore、Tony Roberts、Art ThemenにPianist John TaylorらといったBritish Jazz界で活躍し数々の名作を生みだしてきたメンバーが出入りしていた、それらの作品以降のアルバムも、メンバーは地味かもしれないが傑作である。Graham Collierが74年にLondonに自ら設立したLabel Mosaic RecordsからGraham Collier Musicとしてリリースされた作品もたまらなく魅力的で、必死になって集めたものだった。鍵盤奏者が、Nucleusに加入しPazを結成する大好きなGeoff CastleからRoger Deanに交代した本作も、Label第一作となった前作『Darius』同様にCompositionとImprovisationが絶妙のバランスで英国らしい典雅で硬質の美しさとスリリングな緊張感が同居する中に垣間みせるLyricismが素晴らしい。