BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Black Uhuruの登場は自分にとっては、かなり衝撃的ではあった。英国PunkとReggaeが共鳴し、The CrashStiff Little FingersReggaeの影響をモロに受け、The SlitsAri-UpAdrian Sherwoodを中心としたDub UnitNew Age Steppersが登場してReggae、そしてDubLovers Rockが自分にとって何よりRealityと生命感を持った音楽として魅力的であった時代、そしてPunkドップリ一筋だった自分がWeller兄貴に影響を受けてModな道に入ってSoul/R&BFunkJazzBluesLatin Musicに興味を持つようになっていった頃、彼らの音楽が突然現れた。当然のことながら後追い80年代に突入してから彼らの存在を知った自分にとっては、Black UhuruといえばSandra "Puma" Jonesが加入していた時代なのである。つまり79年の『Showcase』から86年リリースの『Brutal』までの作品である。既に過去の焼き直しをするだけの形骸化したPunkからは心が離れていた当時の自分にとって、Black Music第三世界の音楽こそがRealityと生命感を持った音楽となり、中でもReggaeは、そのサウンドの面でも大いに興味を持っていたところだった。ご存知の通りSly & RobbieSly Dunbar/Robbie Shakespeare)が全面的に脇を固め、演奏のみならずProduceも担当するようになった彼らは80年代に絶頂期を迎えていく。本作は『Showcase』に続く通算3枚目のアルバムIsland Recordsに移籍し世界へ目を向けた本作は日本盤2年遅れて82年のリリースだったように思う。ジャケットが印象的だけど、実は大好きなSandra "Puma" JonesのVocalが少々抑え目な本作品は他のアルバムに比べて分が悪い。自分の中では『Red』や『Chill Out』の完成度の高さに比べるべくもない感じではあった。しかし、それでも衝撃的だった。このDark地を這うような重く沈み込みウネリを生みだしElectronic Drums飛び跳ねるサウンドはReggaeの新しい時代の幕開けを知らせてくれたようだった。

 

 『Sinsemilla』はBlack Uhuru80年Island Recordsからリリースしたアルバム。

Black Uhuru創設者のDerrick "Duckie" SimpsonにLead VocalのMichael Rose、そしてSandra "Puma" Jones、鉄壁のTriangle。演奏陣はSly & RobbieにAcoustic PianoとOrganにAnsel Collins、ギターにBertram "Ranchie" McLean、PercussionにUziah "Sticky" ThompsonというThe Revolutionariesの面々にギターに名手Rad "Duggie" Bryan、HarmonicaにJimmy Beckerというメンツ。

アルバム1発目は“Happiness”。この時期のSly & Robbieの象徴でもあるElectronic drumsの音で幕を開ける。重心の低いRhythmにのってMichael Roseが淡々と、しかし魂を込めたVocalで歌い上げていく。

World Is Africa”は重くウネリを生みだすリズム隊にのって心地良いフレーズを奏でるギターがご機嫌だ。

Electronic drumsの音で始まるイントロから惹きこまれるPush Push”はドッシリとタメをきかせたSly Dunbarのドラミングが素晴らしい。

There Is Fire”も重量感のあるリズム隊Jimmy BeckerHarmonicaが気持ち良すぎ。Darkな曲が続くのでアルバムのアクセントとしてはバッチリ。

似非チャイナ風のピアノのRiffで始まるNo Loafing (Sit And Wonder)”。これまた生命感に満ち溢れたリズム隊が最高。

タイトル曲“Sinsemilla”。PolyrhythmicalなDunbarのドラミングが炸裂しぶっとく重たくウネるRobbie Shakespeareのベースが最高。

Endurance”はアルバムで一番好きな曲。裏に入るElectronic drumsの気持ち良いこと。PumaChorusも良き。

アルバム最後をシメるのは“Vampire”。哀感に満ちたVocalが絶品である。

Push Push/Black Uhuru

Sinsemilla/Black Uhuru

(Hit-C Fiore)

Anything Is Possible/Icehouse

 Icehouseといえば、高橋幸宏YMO散開後84年にリリースしたアルバム『Wild & Moody』にLeaderのIva Daviesが参加していたことが印象深い。IcehouseはAustraliaのバンドで、77年に結成されたFlowersChrysalis Recordsと契約した80年代にバンド名を改名している。当時、大好きな幸宏を追いかけていて、彼らの存在を知ったのだが、80年代にはAustraliaのバンドがどんどん世界進出を果たして活躍していたように思う。以前ご紹介したMidnight OilINXSMen at WorkDivinylsといった連中がAC/DCに続けとばかりに頑張っていた。そんな中でIcehouse地味といえば地味かもしれないが、80年代の彼らはProphet-5Linn drum machineFairlight CMIを使ったいかにも80年代的なSynthe-Popで中々面白い存在感を放っていた。

Code Blue/Icehouse

 “Anything Is Possible”はIcehouse90年にリリースしたアルバム『Code Blue』に収録されている。これまでのSynthe-Pop路線からギターが活躍する割合が増えて、Iva Daviesお得意のBugpipeOboeがイイ味を出している。

(Hit-C Fiore)

 John Abercrombieのこのアルバムは、自分が初めて買った彼のLeader Albumである。そして、かなり思い入れのあるレコードでもあるのだ。実は、当時、内容もよく知らずにとある理由と、ジャケットに惹かれて中古レコード屋さんで目にして思わずすぐに手に取りレジに急いで買ったものである。ECMから出たアルバムを中古レコード屋さんで買い集めるようになっていた自分が、John Abercrombieというギタリストについて知っていた事といえば、大好きなGroup Oregon77年にリリースした『Friends』というアルバムのB面最後を飾る曲“Timeless”がAbercrombieの曲であったこと、そしてOregonのギタリストRalph TownerがAbercrombieと共演し、自身のソロ・アルバムでも“Timeless”を取り上げていること、さらに、Ralph TownerやTerje Rypdalと並ぶECMの3大ギタリストと呼ばれている一人であることぐらいであった。80年にTownerがリリースしたギター独奏のLive Albumの名作『Solo Concert』では同曲と“Ralph's Piano Waltz”とAbercrombieの曲を2曲も取り上げてられていて、なんと本作には、その2曲が収録されているのであった。New YorkPort Chesterに生まれ、Greenwichで育ったAbercrombieは、Berklee College of Musicで学び、Organ奏者Johnny "Hammond" SmithのGroupに参加し、 MichaelRandyBrecker兄弟Billy CobhamのGroup Dreamsにも短期間ながら参加していた。Gil EvansBarry MilesGato Barbieriのアルバムに参加、Billy CobhamのGroupでの演奏が評判を呼んだ。そしてJack DeJohnetteとの共演をきっかけにECMで数々の名盤を生みだしていく事になるのであった。本作ではJack DeJohnetteのDrumsに鍵盤にJan Hammerを迎えたTrioの演奏で、RockやFusionを越えたジャンルレス唯一無比の世界を生みだしている。

 

 『Timeless』はJohn Abercrombie75年ECMからリリースしたアルバム。

アルバム1発目は鍵盤奏者Jan Hammerの曲“Lungs”。いきなりHammerのOrganがJack DeJohnetteの躍動的で疾走感に満ちたBeatにのって炸裂すると、Abercrombieのギターも唸りを上げて熱いBarttleが繰り広げられる。途中でMysteriousで静かなPartFunkyなSynthe Bassが飛び出すPartを挟み、Trioの緩急自在でスリリングな演奏は最後まで高いTensionを保ったまま謎めいた独自の世界へ誘い込む。

Abercrombie作の“Love Song”では一転してHammerのピアノAcoustic GuitarDuoでECMらしい硬質なLyricismに魅了されてしまう。

上述の“Ralph's Piano Waltz”はECM流Coolで理知的なOrgan Jazzで、ここでもTrioの演奏は青白く燃える炎のようなスリリングでMagicalな世界へTripさせてくれるようななImprovisationを聴かせている。Ralphとは勿論、今年1月、この世に別れを告げていった OrgonのLeader/ 

Guitarist/Pianistであり不世出のMusician Ralph Townerのことである。

B面1曲目は再びHammer作の“Red and Orange”でOrganとギターのAggresiveなかけ合いが炸裂。バックのDeJohnetteのドラミングも文句なしに素晴らしい。

Remembering”もTrioが自己の奥底に深く入り込むような会話をするような演奏が美しく、深い味わいを生みだすECMらしい。

アルバム最後をシメるのはタイトル曲“Timeless”。12分近い長尺の曲であるが、厳かに、静かに始まる深遠なイントロから徐々にProgressiveな世界へ入り込もうとする、謎めいた内省的な、それでいて秘めたる情熱を感じさせる。HammerのSynthesizerも弾きすぎずに、ECM的佇まいになっているのが面白い。ギターは時にPat Methenyを感じさせる部分があるのが興味深い。

Ralph's Piano Waltz/John Abercrombie

(Hit-C Fiore)

 Graham ParkerElvis Costelloや、少し遅れて登場してきたJoe Jacksonあたりと、しばしば比較されることが多かったようだ。日本では丁度Punkの嵐が吹き荒れていく中、この3人は熱量怒り生々しさといったところが当時のPunkと共鳴するところが大きかったから、Punkの流れで語られていたのかもしれない。自分はこの3人とも大好きなMusicianでありSongwriterではあるけれど、今となっては、それぞれが独自の道を歩んできていることは興味深い。そして今でも自分は、このDebut Albumのジャケットのように武骨で垢抜けない愚直なまでに音楽に誠実なオッサンが大好きなのであった。ポーズをキメまくったCostelloやBrian Griffinの手による如何にもEdgeの立ったCoolで洗練されたJoe JacksonのDebut Albumのジャケットに比較して、工事現場で今日も朝から一仕事やり遂げたかのような男気溢れるオッサンが煙草ふかして、今日も終わったかと一人呟いているかのごとき瞬間を切り取ったジャケット。自分にとってのParkerは正にそれである。現場叩き上げじゃ、ええ仕事しとる。そもそもGraham ParkerことGraham Thomas Parkerは出自も異なる2人に先駆けて紆余曲折を経て試行錯誤を重ねながら現場叩き上げで地道に活動を開始していたのだ。勲章も商業的な成功も金も名誉も、この男には似合わないSoul Musicに夢中になって学校をやめ、仕事を辞め、島に移住ヒッチハイクSpainを経由してMorocco放浪し Gibraltarで冷凍食品の荷揚げと配達をしながら音楽を続けTangierNightclubで演奏し、英国に戻るとガソリンスタンドで働きながら腕を磨き音楽の夢をあきらめなかったHope & Anchorの上にある小さなStudioでDemoを録り、それが認められると、Pub Rockの腕利きを集めたGraham Parker and the Rumourが結成されるのであった。

 

  『Howlin Wind』はGraham Parker76年Vertigoからリリースしたアルバム。ギターのBrinsley Schwarzに鍵盤のBob AndrewsBrinsley Schwarzから、Ducks DeluxeからはギターのMartin Belmont、そしてベースにAndrew Bodnar、ドラムスにStephen Goulding、そして "The Rumour Horns" からBaritone SaxのJohn "Viscount" Earle、加えてJade WarriorのSax奏者Dave Conners、TrumpetのHerschel Holder 、TromboneのDanny EllisHorn隊が参加した。

アルバム1発目は R&B感覚がたまらない“White Honey”。SoulfulなParkerのVocalにChorusもHorn隊もバッチリ

Nothin's Gonna Pull Us Apart”もガッツリSoulな要素が沁みわたった楽曲とご機嫌なParkerのVocalと演奏に酔いしれる。

Silly Thing”もHorn隊が冴えわたるマッタリ心地良いShuffleだが、Parkerの魂入ったVocalの味わい深さと言ったら格別だ。

Gypsy Blood”はSoulfulに吼えながら、切ないMelodyさりげなく男の哀愁を漂わせるところが泣かせる。

Between You And Me”は歌詞が最高。そして激しい男がふと紡ぎ出すRomanticなMelodyにグッとくる。

Dave EdmundsがRockabillyなギターを弾きNoel BrownSlideが冴えるRock'n RollBack To Schooldays

Soul Shoes”もEd DeaneSlideがご機嫌な大好きな曲。

Lady Doctor”もHorn隊も共にBluesyにヤサグレる歌と演奏が最高。

男くさいVocalが魂込めて吼えるYou've Got To Be Kidding”。

タイトル曲“Howlin' Wind”はParkerのSongwritingが冴える名曲

Noel BrownDobroが渋い“Not If It Pleases Me

最後をシメるのは魂入った熱きRaggaeDon't Ask Me Questions”。

Soul Shoes/Graham Parker and the Rumour

(Hit-C Fiore)

 Denny Zeitlinといえば、あのBill Evans67年にリリースしたピアノ多重録音Further Conversations with Myself』で取り上げ、69年Eddie GómezMarty MorellとのTrioでAmsterdamで録音したLive Albumのタイトルにもなり、大好きな79年11月L'Espace CardinでのMarc JohnsonJoe LaBarberのTrioのLive Album『The Paris Concert (Edition One)』にも収録された名曲“Quiet Now”の作者として個人的に強く興味を持ったのであった。Illinois州はChicago生まれのDenny Zeitlinは、Jazz Pianistであり精神科医でもあるということでJazz愛好家の間では有名である。代表作と言われ“Quiet Now”も収録されている『Shining Hour - Live At The Trident』のジャケットには黒縁メガネ口髭を伸ばした気難しそうなオッサン(失礼)がガンつけているようで、如何にもという感じであるが、本日ご紹介するDebut Albumでは気の弱そうなWoody Allen風のインテリさんという青年が写っている。アルバムのタイトルの『Cathexis』というのは心理学/精神分析学専門用語だそうだ。それにしても医大在学中の新人さんがいきなりClumbiaからDebutというわけで、音を聴けば納得の、とても二足の草鞋の片手間仕事とは思えない高い演奏技術と先進性を持ったJazz Pianistなのであった。幼少期からピアノを弾き6歳になるとClassical Musicを学び始めたZeitlinは、George Shearing,Dave BrubeckBilly TaylorLennie TristanoBud Powellに影響を受け、高校時代からChicagoと、その周辺でプロとして演奏を開始していた。その頃にBilly TaylorとGeorge Russellに指導を受けていたのだというから、なるほどである。Clumbiaと契約したZeitlinは、63年にFlute奏者Jeremy Steigの『Flute Fever』でPianistとして鮮烈なDebutを飾っていたのであった。

 

 『Cathexis』はDenny Zeitlin64年Columbiaからリリースしたアルバム。ベースにCecil McBee、ドラムスにFreddie Waitsを迎えたTrioの演奏である。

アルバム1曲目は自作曲“Repeat”。イントロからピアノのみでSimpleなMelodyを繰り返しスピード感に満ち清冽なBlock Chordで魅了したかと思えば、速いPassageのフレーズを繰り出してくる。肩の力抜けよと言いたいところだが、瑞々しい演奏が良い

I--Thou”は、イントロから美麗なChordで魅了するBill Evansを彷彿とさせるご機嫌なJazz Waltz

Stonehenge”も疾走感に満ちたModalなナンバー斬新な和声感覚と、スピード感に満ちながらもSwingしているのが素晴らしい。1曲目2曲目に比べると、ZeitlinがRhythmも和声も新しい感覚を持ったピアニストであることが伝わってくる。

Gershwinの“Soon”をEvans以降印象派的和声のみならず現代音楽的側面も微かに顔を出して料理するあたり、George Russellに指導を受けたというのも頷ける。

Gigi Gryceの“Nica's Tempo”も静謐な中に、まるで別の曲のよう力強いタッチで斬新な和性感覚の色彩感を付けていくのが素晴らしい。ある意味Lennie Tristano的なStoicなPianismが感じられる。

タイトル曲“Cathexis”。これまた圧倒的なスピード感で弾き倒し。しかし2分台でアッサリ終わってしまう。

Monkの“'Round Midnight”。個人的にはEvansの演奏をコピーするほど気に入っているのだが、こちらはしみじみとした味わいで、これまた沁みる

Little Children, Don't Go Near That House”はEvans風自作曲

最後を飾るのは“Blue Phoenix”。これまたピアノ独奏でグッとクる仄かにBluesyな前半からAggressiveな後半に展開する。時折、高速フレーズを繰り出すもZeitlinらしい思慮深いBlock Chordが絶品。

Cascade/Denny Zeitlin 

(Hit-C Fiore)

 Nouvelle Cuisine80年代後半にBrasilのSão Pauloから登場した風変わりなJazz BandNightclubDiscoを中心に活動を続けていて、2000年YBrazil?MusicからNouvelleという名義でリリースされたアルバム『Free Bossa』まで、全部で4枚のアルバムをリリースしているようだ。このアルバムに参加していなかったSingerCarlos Fernandoは残念ながら2019年この世を去っている80年代に英国からも、一捻りある所謂Fake Jazzなバンドが結構世に出てきたが、そこには英国的な捻じれた感覚というか屈折した感覚やCynicalな毒がどこか漂っていたものだ。Brasilから登場したNouvelle Cuisineが面白かったのは、そういったものは少し違うところにあると思う。この88年にリリースされたDebut Albumでは、George GershwinDuke EllingtonHarold ArlenRichard Rodgers and Lorenz HartBilly StrayhornGeorge Shearingといった名作曲家が書いた有名なJazzのStandard曲を中心にSimon And Garfunkel時代のPaul Simonのナンバーと1曲のみのバンドのOriginal曲が取り上げられている。それらの楽曲が、一風変わった演奏形態心地良い空間を生みだしている。変わっているといっても演奏自体は繊細で至極まともだけど一捻りあるし、楽曲の良さも損なわれることなく伝わってきている。なにしろ、極力音数を抑えてContrabassDrumsVibraphoneClarinetギター、時にはDobro7-String Acoustic Guitarが加わったりする演奏がなんとも素晴らしく、Carlos Fernandoの優男風鯔背な歌いっぷりも素晴らしい。Brasilらしい一級品の素材を料理して心地良くMagicalな世界を生みだす、高い音楽性が感じられる身体能力の高いMusician同士のEnsembleの妙に舌鼓をうってしまうのである。本作のメンツはVocalのCarlosに7-string Acoustic Guitar、Guitar、DobroのMaruicio Tagliari、Clarinet、Soprano Saxophone、PianoのLuca Racle、ContrabassのFlavio Mancini、Drums、VibraphoneのGuga Stroeterという5人組

 

 『Nouvelle Cuisine』はNouvelle Cuisine88年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はGeorge Gershwinの“Embraceable You”。涼し気なギターやClarinetVibraphone響きが最高でCarlos FernandoのGentleなVocalも素晴らしい。ピアノレス、ドラムレスでIntimateな極上の味わい。

Harold Arlen作曲の“Blues In The Night”はCarlos Fernandoの力の抜けた心地良いVocalがClarinetと極上のEnsembleを奏でる。小技のきいたギターもイイ感じ。

Riquixá”はメンバーのOriginal曲Vibraphoneで始まる、この曲がこれまた気持ち良すぎで、Carlos FernandoのVocalも最高

Simon And Garfunkel70年リリース『Bridge Over Troubled Water』に収録されていた“So Long Frank Lloyd Wright”。これまた極上の味わい。

Richard Rodgers and Lorenz Hartの名曲中の名曲“My Funny Valentine”もVibraphoneの響きがご機嫌な仕上がり。さり気なく入るStringsも良し。Clarinetも気持良すぎ。

George Shearing“Lullaby Of Birdland”はOeranVibraphoneにCarlos Fernandoの歌いっぷりが最高に気持ち良い。炸裂するScatもイイ感じ。

軽やかにSwingするGeorge Gershwinの“My One And Only”も鯔背っすなあ。ここではピアノも加わり実にSwingy。

W.C. Handyの“St. Louis Blues”は冒頭のBluesyなギターから雰囲気たっぷり。そこにVibraphoneを加える大胆なArrangeが最高。ここではBrassも加わり、ご機嫌すなあ。

Duke Ellingtonの“Day Dream”は夢見心地のVibraphoneで始まり極上のEnsembleに酔いしれる。Clarinetソロも良き。

アルバム最後を飾るのはBilly Strayhorn作曲“Chelsea Bridge”。Stringsも加わり雰囲気タップリCarlosが歌い上げる

Daydream/Nouvelle Cuisine

(Hit-C Fiore)

 Albert KingといえばFlying V、"Lucy" という名が付けられたFlying VはDan ErlewineBradley Prokopowによって2代目、3代目と引き継がれたが、やっぱり1958 Gibson Flying Vですなあ。映画『Wattstax』で愛機"Lucy"を弾きながら歌う巨漢の左利きギタリストAlbert Kingは強い印象を残してくれた。Stax時代のBooker T & The MG'sをバックにFunkyなBlues路線も後にMuscle Shoalsに出向いた『Lovejoy』のSwampyなBlues Rockも、Stax倒産後のUtopia時代の『Truckload Of Lovin'』、『Albert』、そしてAllen Toussaintを迎えた『New Orleans Heat』あたりの試行錯誤で路線を拡げていったけれど独自の個性を失って今一つな時代もずっと聴き続けているわけだけど、以前ご紹介した『Live Wire/Blues Power』や『Albert Live』、後に発掘された『Wednesday Night in San Francisco』や『Live in the '70s』、『Rainin' in California』などの未発表の発掘Live音源なんかを聴いていると、やっぱりLiveでのAlbert Kingは格別だなあと、素直に思うのであった。さて、本日ご紹介するのは、そんな中でも特にお気に入りのLive AlabumStaxに所属していた時代にCalifornia州InglewoodにあるForumで行われた演奏の模様を収録した未発表のLive Albumが2015年に発掘されたのである。OrganにJames Washington、ベースにBill Rennie、ドラムスにSam King、そしてギターにDonald Kinsey、Tenor SaxにRick Watson、TrumpetにNorville HodgesWilbur Thompsonというメンツ。72年といえば上述の8月20日に Los Angeles Memorial Coliseumで行われた『Wattstax』に出演した頃。正に全盛期で脂がのりきっていた頃歌と演奏が楽しめる。Booker T & The MG'sやThe Memphis HornsThe Bar-KaysThe Movementに比べればKinsey以外は知名度こそ高くないが、バックの演奏もここではAlbertを盛り立てるべく熱演である。

 

 『Live At The Fabulous Forum! 1972』は72年California州InglewoodにあるForumで行われた演奏を収録したAlbert King のLive Album

アルバム1曲目は62年にBobbinから7", 45 RPM, Singleでリリースした“Got To Be Changes Made”。コレだよ、コレの痺れるギターの音から始まりHammondをバックにしたAlbertのVocalも貫禄十分。独特のEmotionalなチョーキングが炸裂して魂入りまくった演奏が最高。

72年リリースの代表曲のひとつとなるMinor BluesI'll Play The Blues For You”。冒頭や曲の途中のAlbertの語りも雰囲気タップリで沁みますなあ、コレは。Hammodも含め淡々としながらも盛り立てていくバックの演奏も含め、やっぱりこの曲のLiveはグッとくるものがありますなあ。

Howlin' Wolf64年のChessからのSingleKilling Floor”。69年リリースのアルバム『Years Gone By』でのBooker T & The MG'sのタメのきいた演奏もご機嫌だったが、こちらはTempoを上げて勢い勝負

72年のアルバム『I'll Play The Blues For You』の最後を飾った“Angel Of Mercy”。このMinor BluesもAlbertのVocalが沁みますなあ。勿論、抑え気味に入って待ってましたとばかりにソロで炸裂するギター・ソロは最高。

Blind Lemon Jeffersonの“Matchbox Blues”はご機嫌なギターのRiffで始まり軽快に盛り上げていく

Herbie Hancockの“Watermelon Man”は上述の『Live Wire/Blues Power』の冒頭を飾った曲。こちらはハネた16beatのよりFunkyな仕上がり

I'll Play The Blues For You』収録のAnn Peebles71年のSingle“Breakin' Up Somebody's Home”はSoulfulなAlbertのVocalが素晴らしい。けっして派手ではないがHorn隊もイイ味を出している。

最後を飾るのは11分越えのギター泣きまくりの熱演Stormy Monday”。

I'll Play The Blues For You/Albert King

(Hit-C Fiore)

 Sandra Crossのこのアルバムは本当に思い出深いアルバムである。と同時に今まで聴いてきたReggaeに対する、また別の楽しみ方を教えてくれた音盤でもある。それはPunk一辺倒の子供がさまざまな音楽と出会いながら、同時に自分の日々の生活がこれまでとは異なる環境になり、さまざまな人々との出会い経験を積み重ねながら多くのことを学んでいった時期に丁度重なる体験として、甘美な思い出と共に今でも鮮やかに蘇ってくる。いわゆるLovers Rockとの出会いは、Punkのみならず英国の音楽に夢中になっていた頃、そのCaribbean Sea浮かぶ島々からやってきて英国移民となった人々やその子供たちが好む音楽もまた、SoulFunkJazzLatin Music同様に自分の興味の範疇となっていったのだ。それは、精神性とMessage性が強いReggaeとはまた違ったSweetでRomanticなReggaeDubなんかと同時に自分に大きな衝撃を与えてくれたのだ。あのRock Against RacisimRAR)に参加しThe Pop GroupThe SlitsのProducerとしても知られるDennis BovellがProduceしたMarie Pierre79年の名作Love Affairや同年のJanet Kayのヒット曲“Silly Games”を聴き、Bovellが手掛けたLinton Kwesi Johnson同様にショックを受けたのだった。Caron Wheelerが在籍していたBrown Sugarの存在も知った。そして『Dub Me Crazy !!』のMad Professorが設立したAriwaから登場したのがSandra Crossだった。自分にとってAriwaの最高傑作はBrown SugarのCarol SimmsKofiという名で89年にリリースしたBlack ... With Sugarであるけれど、Ariwaから登場してくるLovers Rockに夢中になったきっかけはSandra CrossのこのDebut Albumであった。South London生まれのSandraは14歳の時にLove & UnityのメンバーとしてRecordingに参加、80年に自ら楽曲を手掛けた“I Adore You”がヒットしている。その後、Ariwa Rocordsに所属しThe Wild Bunchのメンバーとして活動し、本作でソロ・デビューした。

 

 『Country Life』はSandra Cross85年Ariwaからリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はThe Stylisticsの“Country Living”のCover。Mighty Diamonds77年SingleのVersionに忠実なSweetで切ないLovers Rock

Sandra自身のSongwritingによる“We Miss You”。SandraのSmoothでNaturalな唱法がバッチリハマったナンバー。Romanticな楽曲にピッタリで実に心地良い。

I Hope”も女性Chorus隊と一緒にSandraの優しく語りかけるような落ち着いた歌声で歌われていくSweetなMelodyがご機嫌である。たまりませんなあ。

再びSandra自作の“You're Lying”。アルバムで一番好きな曲。SynthesizerChorus隊愁いを湛えたCuteなVocalに絡む様が最高。RomanticなMelody歌詞雰囲気タップリ

B面冒頭を飾る“Break Up To Make Up”は再びThe StylisticsのCover。Junior BylesHeptonesもCoverしたこの曲も名曲。Slim LintonDuetでSandraのCuteなVocalが最高。

Sandraのペンによる“Listen D.J”はSynthesizerの響きとSandraのVocalが気持ち良すぎ

これまたイントロのSynthesizerとSandraのCuteなScatから惹きこまれてしまう“It's You”。甘く切ないChorus隊との絡みと言い最高としか言いようがない。

アルバム最後をシメるのは“I Will Go”。透き通ったSandraのVocalとChorus隊Soulfulな絡みがご機嫌である。

Country Living/Sandra Cross

(Hit-C Fiore)

 Mayo ThompsonといえばRed Krayola(Red Crayola)創始者Leader唯一のPermanent MemberSongwriterギタリストでありVocal担当、そして再結成されたPere Ubuにも参加していたギタリストとして知られているが、個人的にはRough TradeProducerとして大好きなScritti PolittiThe Monochrome SetStiff Little FingersRaincoatsThe Fallを手掛けていた人物としてのThompsonが自分にとっては重要であった。以前にも書いたが最初の出会いはRough Tradeから81年にリリースされた日本編集の名Compilation盤Clear Cut』に収録されていたThe Red Crayolaの“Born In Flames”で、そこでは同盤に参加していたEssential LogicLora LogicがVocal、RaincoatsのGina Birchがベースを弾いていていたのだった。Thompsonにとっては、不況と石油危機で70年代の半ば米国Art界隈音楽界隈は完全に崩壊していて、そこに探求するものはなく、興味を失って英国に渡りRough Tradeで仕事をしていたのである。Punkの嵐が吹き荒れたLondonでは初期のThe Red Crayoraを聴いて好きになった連中もいてThompsonと共鳴するものがあったのだろう。そんなMayo ThompsonはTexas州Houstonに生まれ11歳の時にPianoのレッスンを受けるようになり作曲に興味を持つようになった。St. Thomas大学に進学しJazzに興味を持ちようになり、65年、20代のThompsonは欧州への旅行から帰国後にRock Bandを結成するのだった。HoustonPsychedelic Sceneが盛り上がる中、古い曲を演奏するより新しい曲を作ることに興味があるというThompsonが結成したRed Crayolaは、13th Floor Elevatorsが所属するInternational Artistsと契約し67年にリリースされたDebut AlbumにはRoky Ericksonが参加した。しかしメンバーのRick Barthelmeが去りバンドは一旦解散してしまう。そして、Thompsonは今のところ唯一の単独名義となるソロ・アルバムの本作をリリースするのであった。

 

 『Corky's Debt To His Father』はMayo Thompson70年Texas Revolutionからリリースしたアルバム。Red Krayolaとはうって変わったAmericanaな世界はThompsonが好きだというJohn FaheyVan Dyke Parksからの影響も感じられる。

アルバム1発目は“The Lesson”。思わずThe KinksRay Daviesを思い起こさずにはいられない自由気ままな脱力VocalFiddle、そしてSlide GuitarTime SlipしたかのようなOld Timeで穏やかな音楽

Oyster Thins”は冒頭のギターとVocalのUnisonがチョイGentle Giant風味だが、まもなくRagtime風20世紀初頭の米国へ連れていかれて思わず幻惑されてしまう

Horses”はPere Ubu80年のアルバム『The Art of Walking』で再演されたStrange Pop。頼りなげな少々調子はずれのVocalがイイ味を出している。

Dear Betty Baby”もBaritone HornとアコギをバックにThompsonの鼻にかかった情けなげなVocalが沁みわたる。

Venus In The Morning”は酔いどれ千鳥足で奏でられるようなAcid Folk

To You”もBaritone HornTenor Saxが絶品のStrange PopRoger RomanoのベースとThompsonのピアノもイイ味を出している。

Fortune”もアコギSlide GuitarをバックにPastoralな幻影が拡がっていく。

Red Crayolaを脱退したFrederick Barthelme作の“Black Legs”。Thompsonの脱力したVocalがよいお気楽ShuffleGood Brisk Blues”。奇妙な間とVocal時空を捻じ曲げていく

The La La's女性ChorusSaxがイイ味出してるStrange PopAround The Home”。

アルバム最後をシメるのは、なり切れないStone風のSlideがご機嫌Garage RockWorried Worried”。

The Lesson/Mayo Thompson

(Hit-C Fiore)

 Jonathan KellyことJonathan LedinghamIrelandDrogheda出身のSinger-SongwriterDrogheda Grammar Schoolに通い、66年Folk Group The Boomerangsのメンバーとなった。Jon Ledingham名義でPye Recordsから67年SingleWithout An E / She's Got Me”をリリース、翌68年にはIrelandのLabel Targetから“Love Is A Toy”をリリースしている。69年にはJonathan Kellyを名乗るようになり、LondonのRestaurantで歌っているところを、子役出身でBee GeesのDrummerでもあったColin Petersenに見いだされた。PetersenのProduceで同年2月にParlophoneから7", 45 RPM“Denver”をリリース、翌70年には“Make A Stranger Your Friend”をリリースしている。続くSingle“Don't You Believe It?”ではEric ClaptonSlide Guitarを弾いている。同年夏になると、PetersenとKellyはバンドを結成することを決意し、後にQueenに発展するSmileでベースとVocalを担当していたTim StaffellHumpy Bongを結成しKellyが書いた曲“Don't You Be Too Long

Parlophoneからリリースしている。3人以外のメンバーも流動的で、残念ながらバンドは70年末には解散してしまう。Kellyは、その後PetersenをManagerとして起用してRCA Recordsと契約して72年に『Twice Around The Houses』、翌73年に『Wait Till They Change The Backdrop』をリリースするのであった。本作は70年Parlophoneからリリースされた初期のSingle未発表音源などを収録した幻の1stソロ・アルバム。バックを務めているのはAshton, Gardner & Dykeの面々。Backing VocalはLesley DuncanMadeline BellSue & Sonny、BanjoとSteel GuitarにBilly Bellという豪華なメンツ。そして George Harrisonの『All Things Must Pass』で知られるJohn BarhamOrchestrationはやっぱり素晴らしい。

 

 『Jonathan Kelly』はParlophoneから70年にリリースされたJonathan Kellyのアルバム。

アルバム1曲目は上述の“Denver”。欧州らしいStringsが寄り添い、Kellyの哀感に満ちながらも力強く伸びやかな歌声が響き渡る。

Son Jon”も抒情的なKellyらしさが発揮された作品で穏やかに歌い上げていく中にバックの演奏とStringsが一体となって英国然とした世界が拡がっていく。

一転して陽気なCountry Tasteの“Tom Bodey”は女性ChorusBanjoHarmonicaがイイ味を出している。

Sailor”もSinger-Songwriter。としてのKellyの才能が発揮されたナンバー。映像が思い浮かぶように表現力豊かに歌い上げられていく

Mrs Gilbert”もいかにも英国的なAcoustic Number

上述の“Don't You Be Too Long”。これがアコギをかき鳴らしてもうグッとくる仕上がりである。

B面は上述のEric ClaptonSlide Guitarを弾いている“Don't You Believe It?”で始まる。こういうノリの良いBoogieもイイ感じ。

アコギの弾き語りで始まる“Julia”は優美なMelodyOrchestrationがバッチリで極楽気分。

Pedal Steelがイイ感じの“That Grand Old Uniform Of Mine”。これまたMelodyが良き抑え気味に歌うKellyのVocalもイイ感じ。

アルバムで一番お気に入りの甘く切なくてグッとくるWaltzAnother Man's Wife”。さりげなく寄り添うStringsも良き。

Daddy Don't Take Me Down Fishing”はThe Beatlesからの伝統のBritishな香りがたまらない。BrassやChorus隊と一体となって描き出す世界観が素晴らしい。

アルバム最後を飾るのは“Sunday Saddle”。Banjoがイイ感じの英国の中の亜米利加

That Grand Old Uniform Of Mine/Jonathan Kelly

(Hit-C Fiore)