Love Affair/Marie Pierre | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 今年もあと3ヶ月とチョット。毎回思うわけだが、あっという間に年が終わっていく。なんだかんだで今年も仕事中心の一年に終わりそうだ。仕事の合間に小旅行でもと思いながら、ヤマを越えそうと思ったら次の仕事が前倒しで控えていた!みたいな感じで、ここ数年は全く余裕がなくて、仕事以外は遠出できない状態が続いている。今年も数年がかりの最も高いハードルを必死の思いでクリアして、ようやく休めると思った途端に飛び込み仕事が続けて入って来たり。旅行の予定すらたてられないのは良いんだか悪いんだか。断れない性格だから仕方ないのかもしれない。ま、そんな慌ただしい毎日の中で、わずかな安らぎのひと時に聴く大好きな音楽。これは格別である。ま、好きな音楽しか聴かないから当たり前と言えば当たり前だが、本当に自分の心と体を優しく解きほぐして新たな創作のエネルギーを与えてくれたりもする。そして、実際には行ったり見たりできない、さまざまな風景を見させてくれるのだ。月並みな言葉だけど、音楽は本当に素晴らしい。
 てなわけで本日はとっておきの一枚。これは、大仕事やり遂げたとか、特別の時しか聴かないと決めているぐらいのお気に入りで大切にしている音盤。とりあえずLovers Rockといったら自分はこの作品。Dennis BovellのProduceが光る、この時代でしか生まれ得ないTorojanから出た極上の味わいの一枚。Marie Pierre可憐で愛くるしいVocal楽曲の良さに尽きる名盤。本日は一仕事終えて、この大切な音盤を久しぶりに取り出した。Barbados出身で、この作品を残して表舞台から姿を消して主婦としての生活を送ったMarie Pierre。時計や宝石、小物といった自分のお気に入りを並べた女性らしいジャケットも素晴らしいですな。PunkDubの時代に産み落とされた甘く切ない一枚。それにしてもMinnie RipertonLinda LewisPatrice RushenSyreetaとか、こういったCuteで魅力的な歌声は、自分にとって生涯離れることのできない魔力を持っているものだと、いつも思うのである。

 『Love Affair』はMarie PierreTorojanから77年にリリースしたデビュー・アルバム。ギターのJohn KpiayeとピアノのWebster Johnson、ドラムスのJah BunnyもProducerでベースと鍵盤を手掛けるDennis Bovell率いるMatumbiの仲間。TromboneのHenry "Buttons" TenyueとTrumpetのPatrick TenyueもMatumbiのアルバムに参加するBovellの身内だそう。そういった和気あいあいとした雰囲気が実にイイ感じでこのアルバムを仕上げている。Seriousで厳しい現実と向きっていた当時の英国在住の移民の子孫たちが作り上げた音楽と表裏一体であったのがこの作品だ。だからこそ、このアルバムのSweetで愛くるしいVocalに心惹かれてしまうというのもあるだろう。
アルバムのOpenerは、この時代らしい独特のSynthesizerとCuteなVocalが最高すぎる“Choose Me”。
思わずスキップして外に出かけたくなる極上のナンバー“Can't Go Through (With Life)”。これもSyntheやピアノ、ギターといったバッキングの何気ない音使いが最高。勿論Rhythm隊も気持ち良すぎ。
Stevie WonderのCover“I Believe”もMarieのVocalとエレピが最高すぎて昇天。何気にベース・ラインもイイ感じ。
もう切なくて切なくて胸をかきむしられる名曲中の名曲Somebody Else's Man”。歌も演奏も、勿論楽曲、無駄のないアレンジと最高の仕上がり。
NosutalgicなイントロからMarieの歌声が飛び出したところで一発で仕留められてしまう“Nothing Gained (From Loving You)”。Jazzyな味付けが絶妙。
ギターのオブリChorusが、これあまた甘く蕩けそうなくらいに気持ち良い“Humanity”。
Minor調の“Rowing”もMarieのか細くも魅力あふれる歌いっぷりが実に素晴らしい。
続いてもMinorチューン“My Best Friend”。悲しみを湛えた歌声と演奏陣の歌心溢れたバッキングの妙が最高。
Walk Away”もChorusがCute。これはヘッドフォンで聴くとたまらんす。
最後を飾るのはLovelyで、Tonarityが変わるたびに喜びや悲しみ、さまざまな想いや風景が交錯していく“Over Reacting”。
(Hit-C Fiore)