Bleak House/Terje Rypdal | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 NorwayOslo出身のギタリストTerje Rypdal。今でこそNorway/北欧は他の欧米諸国とは異なる独自の世界観を持ったJazzの世界を確立したイメージがあるけれど、60~70年代にはまだまだそこまでの認知度はなかった。米国で生まれ育ったJazzに影響を受けながらも、自国の伝統音楽や独自の文化、民族性や歴史、その土地の自然や風土に育まれた感性から生み出されたJazz、NorwayのJazzについて自分が興味を持ち始めたのも、Jan Garbarekや以前ご紹介したKarin Krog、このTerje Rypdalといった世界的に活躍してきた音楽家を知ってからであった。そして彼らやArild AndersenJon Christensenがいたからこそ、Nils Petter MolværBugge WesseltoftPaal Nilssen-LoveといったNorway出身の音楽家の存在が注目を集め、世界各国にNorwayのJazzの魅力に惹かれる人が増え始めたのだ。自由で先鋭的な部分と北欧の自然を思わせる冷厳さと牧歌的な部分を併せ持つNorwegian Jazz。それはTerje Rypdalの音楽性にも当てはまる。RypdalといえばECMと自分は安易に連想してしまうが、一歩間違えば完全な自己満足になってしまう実験的で前衛的な個性を主張したかと思えば時としてヘビメタなギタリストになる愛すべきRypdal。そのつかみどころのなさも魅力なのだ。本作はそんなRypdalの振れ幅の大きい音楽がデビュー作ならではの混沌の中で主張している。本作には北欧に渡ったGeorge RussellがOsloで録音し69年にリリースした『Electronic Sonata for Souls Loved by Nature』に若き日のRypdalとともに参加するJan GarbarekやJon Christensenが名を連ねている。

 『Bleak House』はTerje Rypdal68年にリリースしたデビュー・アルバム。杖術の2人に加え、ベースに名手Terje Venaas、鍵盤にChristian Reim、TrumpetにDitlef Eckhoffらが参加している。
アルバム1発目は独特の冷気を孕んだギターで始まる“Dead Man's Tale”。なんとRypdalが英語で歌うVocalも披露する。意外にBluesyなRypdalが新鮮である。Rypdal自身が吹くFluteChristian ReimHammondソロもイイ感じ。
Wes”は、正にタイトル通りWes MontgomeryになりきったRypdalがBig BandをバックにOctave奏法を披露する。
Winter Serenade”は“Falling Snow”、“Snow Storm”、“Melting Snow”の3つのパートから成るAbstractな組曲寒々とした空気の中で情念の炎のようにRypdalのギターが揺らめく。
アルバム・タイトル曲“Bleak House”。躍動感のあるWaltzのRhythmにのってJan Garbarek吼えまくるのが面白い。
むせび泣きのギターが雄大なスケールのOrchetrationをバックに奏でられる“Sonority”。全体に寒々とした彼の地を思わせながらもRypdalの氷の炎が青白く燃焼していく。
最後をシメるのはアコギを弾きながらのScatが最高な“A Feeling Of Harmony”。RypdalのFluteも素晴らしい。
(Hit-C Fiore)