Winter Light/Oregon | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 OregonGentle Giant(以下GG)、どちらもジャンルを横断した高い音楽性を持ち、メンバー全員がMulti-Instrumentalistで、さまざまな楽器を持ち替えて、創造性に満ちた独自の音楽を生み出しているグループだ。70年代の彼らは孤高ともいえる存在であった。残念ながらGGの方は解散してしまったけれど、OregonはPercussionやSitarTabla奏者で結成時以来のメンバーであったColin Walcottを84年に事故で失ってからも、残りの3人は現在まで不動だ。Trilok Gurtuが加わり、その後脱退してMark Walkerが参加した現在もまだ活動を続けている。自分にとってこの2つのグループは非常に大きな影響を与えてくれた忘れられない存在だ。そして、未だに音楽の奥深さを教えてくれ、音楽のさまざまな謎を発見する喜びを与えてくれている。Oregonの結成はUniversity of Oregonの学生だったRalph TownerGlen Mooreが出会ったことが全ての始まりであった。Tim Hardinの紹介でPaul Winter Consortに参加した2人はそこでPaul McCandlessCollin Walcottと出会いOregonが誕生する。Oregonといえば、やっぱりこの4人の時代が自分にとっては最高だ。そして何といっても印象が強いのは Vanguard時代なのだ。確かにRalph Townerのソロ作品などからOregonにはECMというイメージを強く持たれる方もいるかもしれないし、Oregon自体が正にECMっぽさを感じさせる存在で、実際ECMにも3作の素晴らしい作品を残している。しかし、ジャンルを越境し、近年また脚光を浴びているEnsemble Improvisationを体現してきた彼らの孤高のInventivenessはVanguard時代に一つの頂点を迎えたといえる。
 まだまだ朝夕肌寒い日々が続くけれど、春の香りをいたるところで感じる。この間までのあの厳しい冬、手袋をし重ね着をした寒々しい日々に比べれば我慢できる。そして、ふと実家の炬燵で春を待っていた日々が蘇る。あの頃、春の訪れを待つ冬の寒空の下で、早く家に帰ってこのレコードを聴くことばかりを考えていたのであった。

 『Winter Light』はOregonVanguardから74年にリリースした作品。Vanguardからは3作目のアルバムとなる。
アルバム1曲目はTowner作の“Tide pool”。12弦ギターOboeEnglish Horn清々しいアコースティックな響きTablaとベースの織り成す幻想的生命感に満ちた音楽に夢中になってしまう。
Jim Pepper作の至高の名曲“Witchi-Tai-To”。Oregonのlyricalスケールの大きい演奏が生かされたナンバー。Townerの高揚感に満ちたピアノが素晴らしい。WalcottのDulcimerもイイ感じだ。
Towner作の“Ghost Beads”はClassical GuitarTablaにHornが絡むところがカッコ良すぎ。Mooreもベースも最高。Multi管楽器奏者のMcCandlessはSoprano SaxやBass ClarinetのみならずOboeやEnglish Hornまで演奏してしまうが、とりわけOboeとHornの牧歌的な音色に惹きこまれてしまう。
Glen Moore作の“Deer Path”。ここではGlenがピアノとViolinを弾くが、これが神秘的Darkな曲調に深みを与えている。Townerの12弦ギターも効果的だ。
Paul McCandless作の“Fond Libré”。神秘的12弦ギターのArpeggioSitarに絡むBass Clarinetが生き物のようだ。
Oregon名義の作曲“Street Dance”はGlenのViolinが再び存在感を発揮する。Oregonでは珍しく腰が動かされるナンバー。
Towner作の“Rainmaker”は至福の瞬間。躍動するTownerのピアノとTablaとベースが心地よく響き、McCandlessが空を駆けぬけていく
再びOregon名義の“Poesía”は正に彼ら一流のEnsemble Improvisationの醍醐味が味わえる。
アルバム最後を飾るのはCollin Walcott作の“Margueritte”。これまた腰が動く生命感溢れるナンバー。WalcottのCongaに12弦ギターがカッコ良すぎるRiffを重ねエレキ・ベースが躍動する。TownerのFrench HornやWalcottのPakhawajが独特の雰囲気を醸し出す。ベースとPercussionのソロもカッコ良すぎ。アルバムで一番お気に入り。この曲はWalcottのECMからのソロ1作目『Cloud Dance』のA面1曲目でも演奏されている。
(Hit-C Fiore)