Other Aspects/Eric Dolphy | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

   


 The Latin Jazz QuintetEric Dolphyと組んだ『Caribe』を聴きながら、ふとEric Dolphyの百年の孤独なんていう事をを考えていた。

Dolphyの死後に我々は数多くの未発表作品を聴く事ができるようになった。

けれど未だにEric Dolphyのやろうとしていた事を本当に理解できる人はいないんじゃないだろうか。

悲運ともいえる短すぎる生涯の中で必死に新しい音楽への探求を続けたDolphyを多くの人々が賞賛する。

しかし本当に彼がやろうとしていた事は誰にもわからないし、これからも謎のままなんだろう。

でも、それでいいんじゃないかと思う。

自ら作り出した音楽の謎を残したままDolphyは旅立ち、そこから未来に渡り誰も、その謎をとけない。

Dolphyが地球上から消えても、Dolphyの精神と作り出した音楽はずっと孤独の旅を続けていく。

人々はこれからも、彼の音楽をずっと聴き続けていくだろう。

Eric Dolphyという人は孤高の人というイメージがある。

未知の領域を求めて、時間と空間を越えて宇宙へと旅立ってしまったDolphy。

彼独自のタイム感空間感覚の中で繰り出される奇妙に捻じ曲がったフレージング。

さらに、その音色音響が誰にも理解できない独特の音世界を作り出すのである。

毎日、音楽の事を考え続けて新しい実験を繰り返しながら宇宙と交信していたのだろうか。

音楽に全身全霊を捧げていたんだろうな。

特に盟友Booker Littleを失ってからは世界の片隅でたった一人、虚空に向かって懸命に発信し続けていたんだろう。

個人的に好きなのはCharles Mingusのグループでの演奏。

やっぱりMingusのリーダー・シップは偉大だ。

それに『Out To Lunch!』やBooker Littleとの『Eric Dolphy at the Five SpotVol.1&2』も好きだ。

Last Date』の鬼気迫る演奏も胸を打つ。

それからDolphyの未発表音源まで聴きあさったものだ。

そして未発表作品であった『Other Aspects』を初めて聴いた時、ぶっ飛んでしまったのだ。

Dolphyは最後のヨーロッパ演に旅立つ前に未完成の作品を決して発表しないという事を伝えて友人に託したのであった。

そしてDolphyはBerlinで客死してしまうが、それから15年近く後に発見されたのが、この未発表集である。

その事からもDolphy自身の満足のいく作品ではなかったとも考えられる。

ここには試行錯誤を繰り返し、既存の音楽スタイルから逸脱して飛翔していこうとするDolphyの姿がある。

個人的にはDolphyの不思議な音響感覚とあくなき実験精神が発揮された興味深い作品だと思う。


 『Other Aspects』はEric Dolphyの60年62年に録音された未発表音源集。

Dolphyが友人に託した音源は79年にFlute奏者のJames Newtonによって発見されて87年Blue Noteからリリースされた。

ここにある音楽は確かに未完成で何をやりたいのか理解できない作品であるかもしれない。

ジャンルを逸脱してDolphyの音楽が行き着く先がまったく見えない混沌とした状態で存在している。

それだからこそ面白いし、たまに聴きたくなる作品。

この作品集では特にDolphyのFluteの響きが気に入っている。

オープニングの“Jim Crow”はOperaticなVocalに驚かされる。

これまでDolphyの演奏にはDebussyStravinskyの影響を感じてしまう時もあったけれど、この曲でのDolphyは現代音楽的なコンポジションを模索しているような。

Out To Lunch!』に到る途中過程と考える事もできるが、そんな事を考えるのは無意味だろう。

ピアノを弾いているのはなんとBob Jamesらしい。

2曲目と4曲目の“Inner Flight”はDolphyのFluteソロ。

Dolphy-N”はRon CarterとのデュオでDolphyはAltを吹く。

Inprovisations and Tukras”はTablasTambouraと祭囃子の笛のようなFluteが絡む。

女性Scatが面白い。

DolphyはColtraneの影響もあってかRavi Shankarと交流がありインド音楽に興味を持っていたのかもしれない。


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