流されて/Piero Piccioni | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 


 梅雨の合い間にほんの少しだけ覗く青空。

目の前の仕事を放り出して海にドライブに出かけて夏の陽射しを身体じゅうに浴びてボンヤリしていたい。

が、それはどうみても無理な話である。

晴れた日は学生の頃はよく講義をサボってたっけ。

そんな時によく聴いていたのがPiero Piccioniが音楽を担当したこのサントラ盤

英語題『Swept Away 』(流されて

原題は『Travolti da un insolito destino nell'azzurro mare d'agosto 』、

“8月の紺碧の海で非日常的な運命に打ちのめされて”という映画。

後にGuy RitchieMadonnaの夫婦がリメイクしているらしいこの映画。

地中海にヴァカンスに出かけた大富豪婦人とその召使いさんが無人島に流されて…という話。

Piero Piccioniの手がける音楽が見事に映画のタイトルにピッタリである。

映画の内容は結構ベタらしいが見ていないのでわからない。


  Trino生まれのPiero Piccioniは弁護士の資格を持ちながら、いつの間にかJazz Pianistに。

そして作曲の才能に恵まれた彼は映画作曲家になってしまったと。

Piccioniの手がけた映画音楽は大好きなモノが多いけれど、その中でもこの作品は特別。

74年の作品であるが今聴いても少しも古さを感じさせない。

この季節になると必ず聴きたくなる、涼しげなBossaっぽい曲調が実に心地よい。

中でもテーマ曲は楽曲もアレンジもPiccioniの面目躍如。

イントロのメジャーセブンスからサブドミナントマイナーのテーマに入るところが良い。

この映画のテーマであろう揺れ動く2人の心情を上手く表現していると思う。

Morriconeも素晴らしい映画作曲家であるがPiccioniもまたイタリア映画音楽界の才人の一人。

都会性やクールな感覚といった特徴がこの作品には際立っている。

ホーン・アレンジの素晴らしさ、繊細なStrings、悩ましげな女性Voiceの使い方も洗練されている。

Piccioniの他の作品ではおなじみScatの女王Eddaが活躍する名作『Scacco Alla Regina』や

Jazzyでハードボイルドな『Lucky lucianoコーザ・ノストラ)』が好きだ。

Piccioniの美しいメロディーを堪能したいならC'era una Voltaイタリア式奇跡)』も良い。


                    Hit-C Fiore