Mravin GayeはLiveが嫌いだったという。そして70年代に残された公式Live盤は74年の『Live!』とアルバム『I Want You』の大規模なプロモート・ツアーの模様を収録した『Live at the London Palladium』.だけ。残念ながらスタジオ・アルバムに比べて評価が高くないのである。そりゃMarvinが70年代に残したスタジオ・アルバムは、ある意味、神がかりともいうべき名盤揃い。勿論、楽曲の完成度の高さもある。が、サウンド・プロダクションが素晴らしいのだ。例えばこの時代のMarvinのサウンドの特徴ともいえる幾重にも重ねられたMarvin自身の表情豊かなVocalの多重録音や映画音楽を思わせる欧州的な響きのStringsに加え、Percussionを始めそれぞれのリズム楽器が複雑に絡み合って作り出す芳醇なGroove(各楽器の音量のバランスの妙)。スタジオでのマジック炸裂しまくりの各アルバムの出来は半端じゃない。この繊細且つ複雑なサウンドを当時の会場の音響状態や制限ある機材状況下で完璧に再現するのは土台無理。『What's Going On』や『Let's Get It On』、『I Want You』といったそれらの作品の持つ独特な空気感は、もう一回それを再現しようとしても困難だ。さらに近年、再評価著しいアルバムで、Marvinがスタジオに篭って自身のさまざまな心情を投影して作り出したとされる78年作の『Here, My Dear』がある。それらの作品に比較して、残念ながらMarvinの70年代のLiveアルバム2作の評価は低いのだ。確かにステージでスタジオ録音の完璧な再現はできない。しかし視点を変えてみればMarvinの魅力のひとつは完璧でない弱々しい極めて人間的な部分でもあるのだ。時には神聖で猥雑で男性的な力強さと女々しさや壊れやすさを持つ天才肌の男。そしてステージ恐怖症だったとされるMarvinではあるが、上記のLive盤ではフェロモンたっぷりの自信に満ち溢れた姿が録音されている。何よりも、荒々しさと同時に繊細さもあわせ持つMarvinがそこにいる。すべてが完璧じゃないから面白い。Liveの醍醐味でもある。熱狂的に迎え入れる観衆の前で名曲の数々を歌うエロ帝王、そしてエンターテイナーMarvinの魅力に酔いしれる。
『Live at the London Palladium』は77年にリリースされた2枚組のレコード。A~C面までは『I Want You』発売後の76年10月に行われたのLondon講演の模様を収録している。D面にはスタジオ録音の長尺のParty Song“Got to Give It Up”1曲が収録されている。『I Want You』はMarvinが初めて自分の所有するスタジオで念入りに歌入れをして制作された作品だ。Marvinの、身体を官能で包み込むような心地良いVocalの多重録音による効果がキモとなっている。それをステージでどのように再現するか非常に興味があった。本作は74年の『Live!』よりも観客の声援が抑えられ、MarvinのVocalの状態も良くなっている。
“Intro Theme”に続いて“All the Way Around”そして“Since I Had You”と『I Want You』からの2連発。スタジオ盤ほどの完成度はないがLiveならではの臨場感が面白い。スタジオ盤に比べてモッサリ気味のサウンドにのってMarvinが思いのほか表情豊かに歌い上げる。サウンドの完成度ではないMarvinの歌の力で聴かせるのだ。“Come Get To This”はいかにもMotown調のサウンドにのせてスタジオ盤よりもテンポを落とし、Marvinの熱いVocalが観客を煽る。Liveならではのセクスィー・ビームが徐々に強くなり、官能の嵐の予感。続く“Let's Get It On”こそがMarvinの真骨頂で、漂ってくるフェロモンが濃厚すぎる。そしてコーラス隊やバックの演奏陣も一体となった高揚感に観客は狂喜乱舞。“Trouble Man”は大好きなサントラ盤のタイトル曲でMarvinもこの曲はお気に入りなのか74年のLive盤でも演奏している。
ヒット曲Medleyそしてなんといっても“Distant Lover”、これも名曲、名唱。
◎エロイっす→All The Way Around/Marvin Gaye Live 1976
◎コレですな、コレ、この高揚感→Let's Get It On/Marvin Gaye live in Montreux 1980
◎クチパクですがカッコイイ→After The Dance/Mrvin Gaye
(Hit-C Fiore)