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BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Conjunto 3Dはたった1枚のアルバムしか残さなかった所謂Super Groupである。Brasilのジャンルを越えた有能な鍵盤奏者/Composerの一人Antonio Adolfo率いるJazz Samba TrioのTrio 3DSambaの女王と謳われた女性Singer Beth Carvalhoと69年にEgberto GismontiがArrangementsを担当した『Minha Chegada』という素晴らしいソロ・アルバムを残しているDandyism漂う男性SingerのEduardo Conde、名ギタリストのHelinhoことHélio Delmiroが加わったのがConjunto 3Dである。名手たちによる演奏は勿論バッチリなのは言うまでもないが、当時20代前半で若さ弾けるCuteで爽やかなBethのVocalEduardo Condeの淡々と抑え気味なCoolでDandyな歌声がバッチリ噛み合って、陽気で爽快なChorusと共にお届けするのは名曲の数々。10代のAdolfoがLe Trio CamaraのドラムスNelson Serra De Castro、ベース奏者Carlos Monjardimと結成したTrio 3Dは本格派ではあるが、チョイと捻りのきいた硬派なJazz Sambaを聴かせてくれていたのだが、一体何が起こったのか、Adolfoがここで、こう来るかの大幅なPops路線に変更したのは個人的には大成功だったのではないかと思われる。これが数年後のAntonio Adolfo & A BrazucaというMagicalなPopsで魅了するGroupに繋がっていくのである。本作ではAdolfoの自作曲は1曲のみなのは残念だが、Chico BuarqueRoberto MenescalMarcos ValleGilberto Gilらの名曲にまじえてFrancis LaiCole PorterHerbie Hancockまで登場する選曲センスの妙が素晴らしい。正にJazzやPopsのジャンル越境。そして多幸感に満ち溢れた作品同様に野郎どもに囲まれてCharmingな笑顔を見せているBethが印象的なジャケットも最高っすなあ。

 

 『Muito Na Onda』はConjunto 3D67年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“When The Saints Go Marching In”を小粋なBossaに仕上げている。

出ましたFrancis Laiの“Un Homme Et Une Femme”。これこそダヴァダヴァダChorusかと思わせて、なぜかインストというのも良い。

Marcos Valleの65年作『O Compositor E O Cantor』収録の“E Preciso Cantar”。男女Duetで言わずもがなの極上の仕上がり。

Antonio Adolfo作の“Patruira Samba”。男女のScat小粋にキマってますな。

Gilberto Gilの“Roda”はご機嫌なJazz Sambaに仕上がっている。演奏は勿論Vocalもキレキレ。

Cole Porterの“I'Ve Got You Under My Skin”~“Night And Day”のMedleyは夢見心地。

Sid WayneSherman EdwardsがVocal Group The Temposに書いた切なくも美しい名曲See You In September”はアルバムで一番のお気に入り。

Chico Buarqueの名曲“Noite Dos Mascarados”も男女のかけ合いが何ともたまらんすなあ。

Herbie Hancockの“Watermellon Man”もAdolfoのFunkyなピアノが冴える素晴らしい仕上がり。

英国のNovelty Group The New Vaudeville Bandの“Winchester Cathedral”もHelinho口笛とギターをFeatureした愛らしいBossaに仕上がっている。

Roberto Menescalの“Canto Ou Fuga”は艶っぽいVocalがたまらんす。

アルバム最後をシメるのはMarcos Valleの“Sonho De Lugar”を爽やかなJazz Sambaインストで後味スッキリでアルバムの幕を閉じる。

(Hit-C Fiore)

 Nappy Brownの強烈なGospelの香りを感じさせる独特のVibratoによる野太い歌声チョイComicalな節回しは確かに人を選ぶかもしれないが、独特のヤニくさいBlues感覚にあふれた歌いっぷりはもっと評価されてもいいだろう。この人の、これまた灰汁の強い面構えが実に歌える感を醸し出していてイイ感じなのだが、見かけによらず多彩で小洒落た味わいも持っていたりして、自分はわりとハマってしまってアルバムを集めたりもしたものだ。96年には来日公演も果たしているそうだが、残念ながら観にいくことはできなかった。Nappy Brownといえば、やっぱりRay Charlesが歌った“Night Time Is The Right Time(The Right Time)”の作者であり、自身も57年にSavoyからSingleと“The Right Time”としてリリースしているが、元々はRoosevelt Sykes37年に録音しBig Bill Broonzyが歌詞を少し変えて“Night Time Is the Right Time No. 2”として歌ったものがベースとなっている。Nappy BrownことNapoleon Brown Goodson CulpNorth Carolina州Charlotteに生まれて、ずっとGospelを歌ってきたが、54年Savoy Recordsと契約を結び、“Don't Be Angry”、“Pitter Patter”、“Little By Little”、“It Don't Hurt No More”と50年代後半にかけてヒット曲を連発した。Elvis Presleyは、NappyがMemphisに来るたびに観にいっていたというのだから、その人気ぶりも伺える。しかし、その後売り上げも低迷し、その後のBlues、R&Bに少なからず影響を与えたというNappyは70年代にはThe Southern Sistersと2枚のアルバムを残すぐらいで、すっかり表舞台から消え去ったかと思われたところ、80年代に入って突如復活するのである。AtlantaのギタリストTinsley Ellisが結成したThe Heartfixersを率いてリリースした本作が、その復活の第一弾となるご機嫌なアルバム

 

 『Tore Up』はNappy Brown84年Landslide Recordsからリリースしたアルバム。相変わらず不敵な面構えにやけたジャケットが最高っすな。

アルバム1発目はLittle Walter56年のSingle“Who”。いきなり元気溌剌ノリノリのNappyのVocalと演奏が良い。Albey SchollHarpもご機嫌である。

Gene Allison58年のヒット曲“You Can Make It If You Try”。Gospelの香り漂うVocalSoulfulなBalladに仕上げている。

James BrownもCoverしたJon Thomas60年にヒットさせた大好きな“Heartbreak”。イントロのHammondが絶品でNappyのVocalも絶好調Billy McPhersonのTenorもイイ感じ。

続いては50年代に書かれたという自作のド助平Slow BluesLemon Squeezin' Daddy”。これはNappyしか歌えないっすなあ。

ご機嫌なJumpJack The Rabbit”でのNappyはキレキレで、その飛ばしっぷりは圧巻である。

Willie Dixon作となる大好きなHowlin' Wolfの“Hidden Charms”も最高としか言いようがない。疾走感にあふれた演奏もご機嫌Tinsley Ellisのギター・ソロも文句なし。

Ray Charles53年のヒット曲“Losing Hand”。このSlow Bluesが文句なしに最高で、Tinsley Ellisギター・ソロもグッときますなあ。

Bob Dylan69年作『Nashville Skyline』収録の“Tonight I'll Be Staying Here With You”。これまたOliver WellsHammondソロもご機嫌な最高の仕上がり

Nappy自作の“Hard Luck Blues”はGospel育ちのDeepな歌いっぷり本領発揮のSlow Blues。文句なし。この歌いっぷりとギター・ソロはたまらんす。

Hank Ballardの“Tore Up Over You”もノリノリっすなあ。

最後をシメるのは“It Ain't My Cross To Bear”はThe Allman Brothers BandDebut Albumに収録されていたGregg Allman作“It's Not My Cross to Bear”のCover。これまたグッとくるSlow Blues沁みますなあ

(Hit-C Fiore)

 Contraluz60年代末Argentinaで結成されたLemonというBeat Rock Groupが母体となっている。そしてCelofanという名に改名するも、最終的にContraluzというバンド名に落ち着き、ギターとVocalのCarlos Barrio、ベースのFreddy Prochnik、ドラムスのNéstor "Punsi" BarrioのTrio編成に4人目のメンバーとしてFlute/鍵盤奏者でVocalistのAlejandro Barziを迎えている。さらに専任のVoclsitoとしてAlvaro Cañada5人目のメンバーとして加わったことによって、英国のJethro Tullに影響を受けた演奏をしていたバンドは、Rockと民族音楽を融合させた、より個性的な音作りを志向するようになっていく。特にArgentinaのAltiplanoPuna Grassland地帯に伝わる伝統的な先住民の舞踏音楽Carnavalitoを取り入れるなど、Folklore Rhythmをの導入と土着的なサウンドWildでHeavyなRockのサウンドを組み合わせた演奏はBuenos Aires Rock ("B.A. Rock") にも出演し注目を集めたという。そして、73年EMIから本日ご紹介するDebut Albumをリリースし、順風満帆かと思えたContraluzであったが、当時の軍事政権による検閲をはじめ、さまざまな問題によってバンドは解散せざるを得ない状況に追い込まれてしまうのであった。アルバムリリース後に管楽器/鍵盤奏者のAlejandro Barziは脱退しPatagoniaに拠点を移し、ギターとVocalのJorge GuarnieriとFlute/Sax奏者のGustavo Dinersteinを迎えて いる。73年の年末には7", 33 ⅓ RPM, Single“ Indios Sin Prision/La Sarna Del Viento”をリリースし、これがBestsellerとなったのだった。74年にはHarvestから最後のSingleとなった“Que Tu Voz Se Escuche”をリリースしている。その後、バンドはBarrio兄弟を中心に再結成してアルバムも数枚リリースしているようだ。

 

 『Americanos』はContraluz73年EMIからリリースしたDebut Album

アルバム1曲目は上述の“ Indios Sin Prision”。Alejandro Barziの抒情的なFluteで始まり、Alvaro Cañadaの力強いVocalが印象的。

Sin Trabajo”はHeavyなギターで始まり、ドッシリゆったりしたリズム隊をバックにした壮大なBallad風の演奏となる。ここでも短めなFluteソロが入り、すぐさまHeavyなギターが割り込むように炸裂するがVocal南米らしい歌心に満ちたもの

No Sea Que Caigas Mendigando”も荒々しくWildなFluteとギターによるイントロがJethro Tullを思わせるが、Vocalはやはり南米らしい抒情を感じさせつつPowerfullな歌唱で個性を発揮している。

Clave De Sol”はGentleで抒情的なFluteで始まるも、凶暴でHeavyに暴れまくるギターと共にWildな唾飛ばしFluteへと化していくのが面白い。バタバタしたドラミングも南米らしくて良き。

La Sarna Del Viento”も作者Carlos BarrioのHeavyなギターとCañadaのPowerfulなVocalが強力である。この辺は英米のRockというより、ItalyのRockに近いところも感じられる。

El Charco”はLyricalなFluteGenteなVocalFolk Rock風に始まるも押しの強いギターが加わりVocalが力強く歌い上げていくあたりはItalian Rock風。途中で再び抒情的なPartが挟み込まれるのも良い。

ギタリストCarlos Barrio単独作の“Abrir El Día”は繊細で抒情的なFluteがソロを取る仄々としたInstrumental。

アルバム最後をシメるのはCarlos Barrio単独作の“Seamos”。Jazzyなピアノ・ソロが挟み込まれるのが面白い。

(Hit-C Fiore)

 David Axelrodは今でこそSamplingネタの宝庫のような存在としてHip Hopを中心としたMusicianDJClub関係にその名を轟かせているが、最初にその名を聴いたのは、かのLos AngelesのPsychedelic Rock Band The Electric Prunesが68年にリリースしたアルバム『Mass in F Minor』であった。ご存知の通り、Gregorian MusicPsychedelic Pop融合というConceptを目指したこのアルバムの作曲と編曲を依頼されたAxelrodが書き上げた楽曲はGarage Band上がりのElectris Prunesのメンバーが演奏するには、あまりにも複雑で高度過ぎたのだった。それ故に、AxelrodはCanadaのChilliwackの前身Group The Collectors外部のMusicianに演奏を依頼し名前貸しとなったPrunesのメンバーは一部にしか演奏に参加することはできなかった。彼らの次作『Release of an Oath』になるとAxeldodによって、Howard RobertsやDon Randi、Carol Kaye、Earl Palmerらが演奏を任され、バンドのメンバーは殆ど演奏に関与しない作品に仕上がっている。こう書くとオレ節全開の独裁者的なイメージが漂うが、それはAxelrodが独自の美意識を持ち、妥協を許さない職人気質の仕事人であることの証明でもあった。さて、本日ご紹介するyのはDavid Axelrodの2作目のStudio Albumとなるアルバム。68年リリースの前作となるDebut Album『Song Of Innocence』同様に英国の詩人William Blakeの18世紀に出版された挿絵入り詩集『Songs of Innocence and of Experience』を題材にし、ギターのAl Casey、鍵盤奏者のDon Randi、ベースのCarol Kaye、ドラムスのEarl PalmerThe Wrecking Crewの面々が録音に参加している。Baroque OrchestrationsR&BPsychedelic PopFolk MusicRockの要素が取り入られた唯一無二の摩訶不思議な音世界は圧巻である。

 

 『Songs Of Experience』はDavid Axelrod69年Capitolからリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“A Poison Tree”。Popな曲調で始まるとStringsピアノが奏でる次々と場面転換されていく映像を喚起させるような世界に惹きこまれてしまう。

A Little Girl Lost”はピアノ12弦ギターUnisonで奏でるSimpleなMelodyの繰り返しが郷愁を誘う

産業革命が始まった頃のLondonの精神的風土を描いたWilliam Blakeの詩節を反映している“London”。StringsをバックにOrganVibraphoneがイイ味を出している。Tromboneソロもイイ感じ。

幻想的で夢見心地の“The Sick Rose”もOrganやギターによる不穏な前半部からStringsTromboneソロが次第にめくるめく映像的な世界を描き出していく。淡々とした流れの中にジワジワと幽玄な雰囲気を出しているのが素晴らしい。

12弦ギターによるどこか悲し気な旋律で始まる“The School Boy”。ピアノとギターを中心とした演奏に、挟み込まれたOrchestrationは、映画音楽風ではあるが、アルバムの流れの中で聴くと哀しみを湛えたこの曲が何ともいえない味わいを感じさせる。

Minimalなピアノが印象的な“The Human Abstract”はBlakeの詩に登場する幽霊を思わせる。ここでは、あえて音数をそぎ落としたSimpleなSound空虚で儚くも美しい効果を上げている。

The Fly”もOrchestration映画音楽的ではあるけれど、哀しみが漂うSoundLondonの灰色の空を思わせる。

アルバム最後をシメる“A Divine Image”もDarkで不穏な雰囲気独自の音世界を演出している。荘厳であるが、深い悲しみを湛えた世界に惹きこまれていく。

(Hit-C Fiore)

 Robin Trowerの熱く燃えたぎるギター、 もうジャケットから伝わってくる熱狂的な大観衆を前にした気合入りまくり一世一代のLive Album。実際にはSwedenStockholm Concert Hall75年2月3日にThe Swedish Broadcasting Corporationの番組用に収録された演奏で、メンバーはLive録音されていることには気づかなかったとのこと。とはいえ、このド迫力と臨場感は半端ない。LondonCatford生まれEssexSouthend-on-Sea育ちのTrowerは、Gary Brookerと結成したThe Paramounts、同じSouthendで人気を二分していたというThe OriolesMickey Juppと組んだJamを経て、Brookerが結成しDebut SingleA Whiter Shade of Pale”を大ヒットさせたProcol Harum67年に加入する。Procol HarumではDebut Albumから71年リリースのアルバム『Broken Barricades』まで在籍したTrowerは脱退すると、Frankie MillerStone the CrowsのBassist/SingerのJames DewarJethro TullのDrummer Clive BunkerJudeというバンドを結成するが、Recordingすることなく短命に終わり、DewarにDrummerを加えてTrio編成のバンドを結成するのであった。73年ProducerにProcol Harumの鍵盤奏者Matthew Fisherを迎えChrysalisからDebut Album『Twice Removed from Yesterday』をリリース、翌74年には『Bridge of Sighs』、75年にはドラムスがReg Isidoreに代わって元Sly & The Family StoneBill Lordanが加入して『For Earth Below』、そして待望のLive盤となる本作がリリースされ、Jimi Hendrixの再来といわれたRobin Trowetは一気に英米で人気の絶頂期を迎えていく。しかし、Trowerが単なるJimiのEpigonenに終わっていないことは、本作を聴けば明らかである。Wahを多用しながらも粘り気のあるBluesyだけど重く沈み込むような独特の湿り気を帯びたギター英国独特の味わいが感じられる。

 

 『Robin Trower Live!』はRobin TrowerChrysalisから75年にリリースしたLive Album

アルバム1発目は2nd AlbumBridge of Sighs』収録の“Too Rolling Stoned”。幾分速度を上げたLiveならではの勢いで始まり、Bill Lordanの力感溢れるドラミングにのってJames DewarのSoulfulなVocalもご機嫌で、イントロのFunkyなカッティングソロなど、TrowerのWahを多用した燃えたぎるギターが最高。

Debut Solo Album『Twice Removed from Yesterday』からギターが咽び泣きのBalladDaydream”。切々と歌い上げるJames DewarのVocalも狂おしい泣きのギターで魅了するTrowerも一体となって迫ってくる。

続いても1stAlbumからB.B. Kingの“Rock Me Baby”。英国伝統のBlues Rock仕様であるが、ひたすら弾き倒すTrowerのギターに圧倒される。

2nd Album収録の“Lady Love”はイントロのギターの激カッコイイRiffからノリノリのFunky RockSymbalを多用したBill Lordanのドラミングがバンドに勢いを与えている。Trowerの、これでもかと攻めまくる熱いギター・ソロも最高。

Dubut Albmの冒頭を飾ったFrankie Millerとの共作“I Can't Wait Much Longer”はゆったりタメのきいたBeatにのったDewarの哀感に満ちたSoulfulなVocalが絶品で、TrowerのギターもWahを使いながら魂の入った弾きっぷりに心奪われてしまう。Bluesyだが、とことんDarkに沈み込む粘り気のあるStratocasterの響きBritishな香り

75年リリースの当時の最新作『For Earth Below』収録の“Alethea”はBill Lordanのドラム・ソロが炸裂

アルバム最後をシメるのは2nd Albumから“Little Bit Of Sympathy”。

Too Rolling Stoned/Robin Trower

(Hit-C Fiore)

  Taj Mahal映画音楽を初めて手掛けたのは、おそらく72年に公開されたMartin Ritt監督の『Sounder』で、なんと脇役としても出演している。Lightnin' Hopkinsが歌う“Needed Time”で幕を開けるこのSoundtrack盤の素晴らしさはいうまでもなくField Recording風にRareで素朴なBluesが次々に披露されていく様に、心を動かさえれずにはいられず、TajがBAFTAGrammy AwardにNominateされたのも十分にわかる傑作である。そしてSoundtrackとしては2作目となるのが本作である。こちらは77年に公開されたArthur Barron監督によるAngela DavisGeorge JacksonJonathan Jackson実話を元にした映画Soundtrack盤である。John LennonYoko Ono72年にリリースしたアルバム『Some Time in New York City』でAngela Davisに“Angela”という曲を捧げている。69年UCLA哲学助教授であったAngelaは当時California知事で後に大統領となるRonald Reaganの勧めにより不当解雇され(裁判の結果、復職)、その後逮捕され刑務所に投獄され、最終的には無罪を勝ち取っている。 さて、この映画音楽を担当した頃のTajといえば、BluesをRootsに持ちながら、SoulRockReggae、そしてCaribbean Musicジャンルを軽やかに越境しながら独自の音楽を追求していって77年Warner移籍第一弾となる前作『Music Fuh Ya' (Musica Para Tu)』をリリース。そこでSteel Panを演奏していたTrinidad and TobagoLaventille出身のRobert Greenidgeと管楽器奏者Rudy Costa、Conga奏者Kwasi "Rocky" Dzidzornu、ベースのRay Fitzpatrick、DrummerのKester Smithらのメンツもそのまま前作のTropical路線を受け継いだ方向性は本作でも大いに魅力を発揮している。思えばTajの父親はAfro-Caribbean JazzのArranger/Pianistであり、子供の頃から慣れ親しんできたであろうCaribbeanな香りが漂う、Bluesを軸にしながらより多様性を感じさせる作風は只のサントラ盤に終わらない魅力を持っている。SeriousなThemeを扱った映画にTajの音楽は、Peacefulで開放感を感じさせるんだけど、どこか物憂げで哀しげな雰囲気を漂わせた曲調で、これは絶妙の取り合わせであったと思われる。

 

 『Brothers』はTaj Mahal77年にリリースした同名映画のSoundtrack盤

アルバム1曲目は“Love Theme In The Key Of D”。 Robert GreenidgeによるSteel DrumsとRudy CostaのSax心地良く響き、TajのVocalも風呂の中で気持ち良く歌っているかのように脱力しまくりで、ご機嫌である。それでいて生命感に満ち溢れSoulfulなVocalは何回聴いても素晴らしい。

Funky Butt”もFluteやSteel Drum、Congas、Percussionが鳴り響く楽園系の極楽サウンドにのってTajが気持ち良さそうに歌っている

BluesyなAcoustic Guitarの爪弾きから始まる“Brother's Doin' Time”。これぞ多様性に満ちたTaj流Bluesといえる。

Claudia LennearAlison MillsがBacking Vocalで参加したSoulfulなTajのVocalが最高な“Night Rider”。

PrimitiveなPercussionとChorusTribalな高揚感を演出する“Free The Brothers”。これは最高。

Sentidos Dulce (Sweet Feelings)”は心地良く鳴り響くPercussionをバックにSoprano Sax軽やかに歌い上げているInstrumental Number楽園ムードを醸し出すSteel Drumが効いていて、これまた気持ち良すぎ。

Tajの弾くピアノグッとくるThe Funeral March”。これは沁みますなあ。

Malcolm's Song”はSteel Drumが哀しげに鳴り響きSaxも同様にフレーズを奏でるインスト曲

アルバム最後をシメるのは“David And Angela”。Steel DrumKalimbaの響きが、どこか甘美で切なくも希望を持たせるような曲調と共に絶品の味わい。

Sentidos Dulce (Sweet Feelings)/Taj Mahal & The Phantom Blues Band 

(Hit-C Fiore)

 Leroy Smart独特の歌声の魅力にハマると中々抜け出られない。映画『Rockers』にも出演し、The Clashの“(White Man) In Hammersmith Palais”でも言及され、"The Don"としても知られる伝説的な存在となったSmartは現在までに30枚を超えるアルバムをリリースしてJamaicaでも一際個性的な存在感を放っている。Smartは、JamaicaはKingstonに生まれ2歳で孤児になった。Jamaica 最大かつ最古のKingstonにあるMaxfeld Park児童養護施設に入り12歳になるまで過ごしたSmartであるが、そこから数多くの有能なMusicianを輩出したAlpha Boys Schoolで厳しい教育を受け、聖歌隊の重要なメンバーになった。ご存知の通り、そこはGhetto出身の恵まれない子供たち、家庭に問題のある子や行き場のないStreet Childrenを対象に道を踏み外さないように音楽で校正指導する全寮制の職業訓練校であり、大好きなEddie "Tan Tan" Thornton、Joe Harriott、Harold McNair、Rico Rodriguez、にSkatalitesのDon Drummond、Tommy McCook、Johnny "Dizzy" Moore、Lester Sterlingといった錚々たるメンツが学んだKingstonの名門である。そこで靴職人としての技能も学び、16歳になって世に出たSmartではあったが職を転々としながらもMusicianになる夢を追いかけ続け、60年代後半Singleをリリースし、70年にはJoe GibbsのLabelから“Ethiopia (To Jamaica)”、72年には“Pride & Ambition”の最初のVersionをリリース、Bunny LeeJackpotからも“God Helps The Man”をリリースしている。そしてProdecer Jimmy Radwayと出会い73年に“Mother Liza”をヒットさせるのであった。これがBreakthroughとなり勢いにのったSmartは77年には自らProduceを手掛けるようになり、Channel OneThe Revolutionariesをバックにしたアルバム『Dread Hot In Africa』をリリースしている。

 

 『Propaganda』はLeroy Smart78年Burning Soundsからリリースしたアルバム。ギターとベースにDennis Bovell、ドラムスにMatumbiのアルバムで叩いているJah Bunny、Organ、PianoにNoel Fishというメンツ。このChannel One Recording StudioとLondonのTMC StudiosでMatumbiの演奏をバックにSmartのご機嫌なVocalを録音したアルバムはSmartのアルバムで一番のお気に入りである。

アルバム1発目は上述のヒット曲であり代表曲Mother Liza”。SmartのVocalもBovellのギターも激渋の味わいでご機嫌である。

タイトル曲“Propaganda”もSmartもいぶし銀のVocalとBovellの湿りを帯びたギターの絡みが最高。派手さこそないが、それぞれの魅力がイイ感じで伝わってくる。

No Check Babylon God”もSmartの個性的なVocalSimpleで味わい深い演奏の上にのって実に心地良い。

Baby Why?”は哀感に満ちながら力強く歌い上げるSmartが良き。

イントロから最高な“Shower”。それにしてもBovellのギターは最高っすなあ。Smartの生命感溢れる歌いっぷりも素晴らしい。

Hate No One”もSimpleながら粘り腰の演奏にのってSmartがPositiveに歌い上げていくのが良い。

Learn The Good”もイントロが最高。Smartの抑えた歌い方ながら存在感を発揮している。

良い意味でのPopな味わいにSmartがバッチリハマった“Don't Trust Them”。

Stick Together”も心地良いバックの演奏に激渋のLeroy節がたまらない。

アルバム最後をシメるのは“Beverley”。これまた腰が動き出す演奏にSmartの個性を放つVocalも生き生きとしている

Leroy Smart

(Hit-C Fiore)

 Southside Movementは、そのバンド名からわかるようにIllinois州Chicago出身のFunk Band。元々はSimtec & WylieというGene Chandlerが設立したChicagoのLabel Mister Chandから71年に唯一のアルバム『Gettin' Over The Hump』をリリースしているWalter "Simtec" SimmonsWylie DixonSoul Vocal DuoBacking Bandとして誕生した。バンド単体としては全部で3枚のアルバムをリリースしているようで、Gene Chandler & Jerry Butler70年リリースのアルバム『Gene & Jerry - One & One』にも参加していたギターのBobby Pointer、ベースのRonald SimmonsLeroy Hutsonの『Love Oh Love』にも参加していた鍵盤奏者Morris Beeks、ドラムスのWillie Hayes、Trumppet奏者のStephen Hawkins、Lead VocalのMelvin MooreというメンツでRecordingした1st Albumが本日ご紹介する『The South Side Movement First』である。FunkのAlbumとしては74年20th Century Recordsからリリースされた2nd AlbumMovin'』には“Mississippi Cutback”や“Hola, Nena (Hey, Baby)”、“Saldré Del Paso (Gotta Get Over The Hump)”、“Salvemos El Mundo (Save The World)”といったご機嫌なナンバーを収録されていて充実しているし、最終作となった翌75年リリースの3rd AlbumMoving South』のSolidでキレの良いFunkの完成度の高さには及ばないが、彼らの本質であるBluesに根ざした泥くささタメを効かせた重量感のあるサウンドは、このDebut Albumに軍配が上がる。Vocalも本作のみで脱退してしまうMelvin MooreのSoulfulでBluesyな味わいが個人的には気に入っている。

 

 『The South Side Movement First』はSouthside Movement73年にリリースしたアルバム。大半の曲に関わっているのはBobby RushLittle Junior Parkerと仕事をしているChicago出身のSongwriter James R. Vanleerで一部の曲でTrumppet奏者のStephen Hawkinsが共作している。

アルバム1発目はBobby RushとJames R. Vanleer共作の“I' Been Watching You”。初期の彼ららしい泥くさく重く淀んだFunkの味わいが楽しめる。漆黒のVocalHorn隊との絡みなど、ある意味Junieがいた頃のOhio Playersに通ずるところがあるのが気に入っている。

Love Turned Me Loose”も粘り腰のリズム隊にSoulfulなVocalが最高にご機嫌なFunk。切れ込むHorn隊も良き。

高らかに鳴らされるHorn隊で始まるFunk“La Dee Da”は

Have A Little Mercy”はイントロのWah Guitarから気分が揚がるFunk。Horn隊は、ここでもイイ感じで盛り立てている。

タメをきかせたFunkCan You Get To That”はアルバム一番のお気に入り。ウネるベースやHammond 、エレピ、Horn隊が一体となってBottmの低い漆黒のFunkを聴かせてくれる。

Wahをきかせたギターで始まる“You're Gonna Lose My Love”も黒々としたタメが最高に気持ち良い粘り腰Funk。Melvin Mooreの歌いっぷりHorn隊バックで渋く支えるHammondとエレピも最高。

Catchyなサビから始まる“Come On And Love Me”も、やっぱり全体的にはBluesyな仕上がりで、派手さはないが、実に味わい深い。

イナタさ全開の“Everlasting Thrill”もクセになるダサカッコイイFunkでHorn隊がキレキレ。

Stevie Wonderの“Superstition”は原曲に忠実ながら彼ららしいLaid BackしたBluesyな味わいは格別である。

アルバム最後をシメるのはいきなり高揚感と躍動感に満ち溢れたインスト曲Mud Wind”。コレはコレで実にカッコイイ。

(Hit-C Fiore)

 Legendのこのアルバムはチョッと見、大好きなGentle GiantCivilianとジャケットが似ている。どちらもバンドの最終作というのが興味深い。Legendの方は、あのKeefが手掛けていて、これはこれで遊び心が感じられて、中々らしいというか、さすがVertigoというか。さて、Legendというバンドも、バンドを率いていたギターとVocalのMickey Jupp不当と言えるほど 評価も低い人気がないのは残念である。ただ、これは一般的な音楽ファンの問題で、Wilko Johnsonをはじめ、Musicianや業界人の間で、Mickey Juppという人はそれなりに評価されているのは確かなようだ。70年代半ばから後半のPub RockからPunkNew Waveという流れの中で、英国の音楽Scene、特にSouthendでは'Godfather of Pub Rock'なんて呼ばれて少なからず影響力を持ってきたJuppであるが、そのキャリアの始まりは、63年に結成されたという  R&B Beat Band The Oriolesである。SouthendではMick Jaggerから最高のR&Bバンドと賞賛されたProcol Harumの前身となったThe Paramountsと並ぶ人気バンドだったらしく、それぞれのバンド間の交流もあったようだ。バンド解散後、JuppはParamountsのRobin Trowerと一緒にバンドを結成するが空中分解しJuppは68年にギタリストChris EastLegendを結成する。米国のBell Recordsと契約し69年にDebut Album『Legend』をリリースするも、バンドはLabel側の問題もあって空中分解。The Orioles時代のギタリストMo Witham、ベーシストJohn Bobin、ドラムスにBill FyfieldLegend)と共にJuppはLegendを再編Vertigoから71年Tony ViscontiのProduceで『Legend』をリリースしている。本作ではドラムスがBob Clouterに交代して、これでLegendは、全員がThe Orioles出身者となったのであった。Legendが残した3枚のアルバムは、商業的な成功にこそ結びつかなかったものの、早すぎたPub Rock Bandの傑作として、今であれば少しでも正当な評価を得ることが可能なご機嫌な作品である。

 

 『Moonshine』はLegendがVertigoから71年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“Moonshine”。小気味よくご機嫌なギターのカッティングから始まる。泥くささを感じさせる中にChorusFunkyなリズム隊も中々洒落ている。

ピアノで始まりMatthew FisherのStrings Arrangementが英国の香りを醸し出す“Another Guy”は優美ささえ感じさせる。

Mother Of My Child”もFisherがStrings Arrangementを担当するも、こちらはSoulfulなJuppのVocalとの対比が英国の中の亜米利加的で面白い。

Captain Cool”もEarthyなギターのRiff惚けたChorusが最高で、2分足らずで終わってしまうのが残念。ここでもSlideがイイ感じ

Ausfahrt”は1分足らずのインストエレピをバックにギターが気持ち良い。

B面あたまの“Eingang”はA面最後の曲“Ausfahrt”と同じというか続きのインスト。

Shine On My Shoes”もご機嫌なギターのRiff泥くさいSlideにJuppの歌いっぷりが最高。

The Writer Of Songs”も、たまらなく英国的なピアノMatthew FisherStrings Arrangementが最高で、Juppの作曲能力の高さが感じられる。

Local Folk'ol”もピアノとギターの抜群の絡み気の抜けたChorusが最高。

ご機嫌なピアノで始まる“At The Shop”は後期BeatlesのPaulが書くようなVaudeville Music Hall調のナンバー。

アルバム最後をシメルるのはBluesyな後期BeatlesのJohnが書くようなJust Because”。ギターのRiff2本のギターの絡みVocalとChorusも最高

(Hit-C Fiore)

 Turk MauroNew York City生まれのTenor Sax奏者70年代三十路を過ぎて表舞台に登場してきた、このぶっとく男らしいToneを持ったTenor Sax奏者は同時期に、同じように欧州のLabelからLeader作をリリースしたお気に入りのSax奏者Sal Nistico同様に、Jazz不遇の時代に一部のJazzファンから熱い支持を集めたようだ。銀行の郵便仕分け室働きながら、ずっとJazzを演奏してきた苦労人でもある。そうはいっても、Claude ThornhillWoody HermanBuddy RichBig Bandで経験を積み、初めてのLeader Albumとなる本作から飛び出して来るTenor SaxとBaritone Saxは第一線で活躍してきたSax奏者たちと遜色ない紛れもなく本物の香りに満ちている。まだまだJazz初心者だった10代の頃に連れ行ってもらったJazz喫茶で、たまたまかかった本盤の逞しい音力でグイグイ迫ってくるTenor Saxに一発で魅了されてしまったのだった。Al Cohnが3曲参加している。ピアノにHugh Lawson、ドラムスにBen Riley、ベースはBob CranshawTom Barneyが、それぞれ3曲ずつ参加している。そして本作は、77年Denmarkに設立されたLabel Jazzcraft Recordsから記念すべき第一作としてリリースされたものであった。以前ご紹介したHugh LawsonPrime TimeCharlie RouseMoments' Noticeといったご機嫌な作品を70年代後半にリリースしている愛すべきMinor Labelである。残念ながら8枚のLPを世に出して消滅してしまったが、70年代に設立された同じオランダのTimeless RecordsやDenmarkのSteepleChaseやItalyのRed Recordsと並んで70年代Hard Bop Revivalに大きな役割を果たしたこのLabelの第一弾に選ばれただけのことはある、Hard Bopへの情熱と愛情が感じられるお気に入りのアルバムである。

 

 『The Underdog』はTurk Mauro77年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はStandardの“All God's Children Got Rhythm”。 Marx Brothersの37年公開の映画A Day at the Races』のOpening Themeとなった曲で、Speedにのって、いきなりアクセル全開のBlowが心地良し。Hugh Lawsonのピアノ・ソロも良き。

Al Cohn作曲のタイトル曲“The Underdog”はLawsonのピアノで始まり哀感漂うThemeにグッとくる男泣きのBalladで、MauroとCohnの絡みがたまらんすなあ。Hard-Boiledにむせび泣く男性的なToneのTenorが最高。Lawsonのピアノ・ソロも流麗なフレーズが、甘さに流されず、華麗に、時にテクニック炸裂の速いPassegeも盛り込みながら展開され、これまたご機嫌。

Mauroの自作曲“Turquoise”も冒頭からキレキレでMauroとCohnが高らかに、優美にキメるThemeがイイ感じ。ここでもMauroとCohnの絡みが絶品。

続いてもMauroの自作曲で“Jazz Leif”。Bob Cranshawのベースで始まるBluesで、Mauroは、個々でBaritone Saxを吹いている。このチョイDartyな吹きっぷりが良い。Lawsonのピアノも本領発揮。

Mauroの自作曲3曲目“Zoot & Al”は、Tenor Saxの名コンビに捧げられた曲で、ここでは只管、吹き倒す。Ben Rileyの引き締まったドラムスとかけ合いながら、熱気にあふれて小気味よいSwingerぶりを思う存分発揮している。

最後をシメるのはBuffy Sainte-Marieの“Until It's Time For You To Go”。これがRomanticでご機嫌なJazz Waltzに仕上がっていて最高。CohnとのEnsembleも素晴らしい。

(Hit-C Fiore)