Heavy Axe/David Axelrod | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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  DJがうらやましく思えることがよくある。彼らの鍛えられた耳、それは強力な武器である。想像力というものが、その分野でのAcademicな教育によって、実は知らず知らずのうちに何らかの制約を受けるということは確かにあるだろう。絵や文学でも、あるかもしれないが、少なくとも音楽に関してはそういうことは、よくあるのだ。楽器を弾けなくてもSamplingなどで容易に音楽を作り出すことが可能となった今、本物の耳、研ぎ澄まされた感性を持った連中が下手に楽器ができる連中が考えもつかないほど、カッコイイ斬新な音で驚かせてくれる。オイオイそれは調性上合ってないだろ、とか、実際の人間じゃそんなBeat叩けないだろ、なんて荒業を大胆に繰り出してくるけど、カッコ良くて気持ち良けりゃいいんだよ、結局。
 David AxelrodDopeな音を作り出すStudioの魔術師。黒人居住区に生まれ育ち、LAで子供の頃からR&BやJazzを浴びるほど聴いて、夜の街でヤンチャな生活を送っていたAxelrod。NYの夜の酒場でピアニストGerald Wigginsと偶然知り合い、何とProducerとして仕事をすることになる。Harold Landの『The Fox』を手掛けたことにより、生涯の親友となるCannonball Adderleyと出会いCaptolで“Mercy, Mercy, Mercy”のヒットで一躍大物Producerの道を歩み出すAxelrod。Carol Kaye Earl Palmerの鉄壁のリズム隊にギタリストHoward Robertsといった西海岸の名手達を完璧に操り、Hollywoodの傲慢な監督のように自分の思い描く世界をとことんまで追求する男。時として、その豪腕はThe Electric Prunesの『Mass in F Minor』のようにバンドのメンバーを排除してまで頑なに、自分の追求する音世界に走らせる。しかし、出来上がった作品を前にすれば、その完成度に文句の言いようがない(それは勿論、The Electric Prunesのアルバムと考えなければだが)。相当な個性の強さであり、アクの強さだ。さすがに、宗教の香りが強くなったりStringsが大仰になったりする作品には、個人的についていけない部分もあるのだが、この人の場合は、どんなにAbstractな音響を作り出しても、お安いイージーリスニング的音楽でも、リズム隊のBottomが素晴らしい。Axelrodが追求する世界は、JazzでもなければR&Bでもないし、RockでもFunkでもPopsでもない彼の頭や身体の中で心地良く鳴り響いている音響なのだろう。

 『Heavy Axe』はDavid Axelrodの6枚目のアルバムで74年にリリースされた。Produceは盟友Cannonball Adderley。鍵盤にGeorge Duke。ギタリストの中にはJohnny Guitar Watsonの名もある。MoogにはRudy Copeland、ドラムスは Cannonball Adderleyの QuintetやNat Adderley Sextetで知られるRoy McCurdy。本作では彼のお得意の幽玄なStringsは控え目で、それにBig BandやChorus隊も加わるという編成。Axelrodにしては凡庸だが、面白いのは、全編Moog Baseがうねりまくるところ。そして、このアルバムの核をなしているのはRoy McCurdyのドラミングである。
アルバムの一発目はFunkyなDukeのエレピで始まる“Get Up Off Your Knees”。この1曲だけだがCannonball AdderleyがAltoでソロをかましておりやす。
Vince Guaraldiの“Cast Your Fate To The Wind”。この辺はイージーリスニングっぽいAxelrodの迷いが出ている。
Stephanie Spruillがねちっこく歌うCarly Simonの“You're So Vain”。熱唱ではあるが、自分には歌い方がくどいかも。
My Family”はMoogがうねりまくり。Gene Amonsが気持ち良さげにTenorを吹く。A面終わり。
で、このアルバムは、なんたってB面である。
イントロのエレピと暴れまくるFuzzギターがカッコイイ“Mucho Chupar”は途中からSexyなVoiceが入ってきて18禁な展開に。
ご存知Stevieの名曲“Don't You Worry 'Bout A Thing”はFluteが心地良い。
Congaと低音部で蠢くMoog、Johnny Guitar Watsonのギターが最高の“It Ain't For You”。
最後の曲はGeorge Dukeの浮遊感のあるエレピとうねりまくるMoog Baseが心地良い“Everything Counts”。
(Hi-C Fiore)