Gentle Giant/Gentle Giant | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Gentle Giantで一番好きなアルバムは何か?と聞かれたら、これは難しい。では、もしGentle Giantを知らない人に最初に薦めるアルバムは?となれば、自分は彼らの全盛期のLive Album『Playing the Fool』かデビュー・アルバムである本作をあげるだろう。Gentle Giantの原点であり、ある意味、最も分かり易いアルバムであるからだ。そして英国の香りが強く漂う作品でもある。本作は、2ndアルバム以降の考え抜かれた騙し絵のようなArrangmentsMulti-Instrumentalistでもある各メンバーがさまざまな楽器を交換し合いながら躍動感に満ちた変拍子軽々と演奏して描き出す複雑で精緻なEnsemble実験的だが完成度の高い楽曲といったGentle Giantらしさは、それほど感じ取ることができない。荒々しく、部分的にはまだまだ整理しきれていないところも見え隠れする。それでも、彼らのあくなき音楽への探求心と実験精神は伝わってくるし、むしろその少し背伸びしたぎこちなく未完成な部分が生々しさと勢いを感じさせる。また、Coolで洗練された70年代中期の作品に比べて野暮ったい垢抜けなさや若干の大仰さも目立つとはいえ、それらがこの時期だけの分かり易さ親しみやすさに繋がっている。だから、このアルバムは自分にとっての愛聴盤なのである。ジャケットで引いてしまう人もいるかもしれないが、典雅Pastoral管弦楽器凝りまくったChorusをバックに英国特有ElegantでLyricalでチョイと捻りのきいた旋律を聴かせてくれるところなど、夢見心地である。かと思えばBluesy屈折したRiffHardなギターMellotronも飛び出す大胆不敵な部分も面白い。Medievalな要素も彼らの特徴だが、本作で既に複雑な対位法を使うなどClassicalな要素BluesyでHardなRockが混在し、そこにJazzAvant-Gardeな風味を加えているのは斬新だ。中世現代BaroqueBluesLyricalさWildさ相反する要素が共存しながら、時間と空間を自由自在に行き来することによって、それぞれに物語が進んでいく。もはやジャンルなど軽々と飛び越えた音楽性。この時点で四半世紀以上先を彼らは進んでいたのだ。しかし、彼らは次作でさらなる進化を遂げ洗練を極めていく。英国には今から45年以上も前に変拍子PolyrhythmCross-Beat(Cross-Rhythm)Polymetricを駆使しつつPolytonalityまで取り入れた楽曲をCoolに演奏していた連中がいたというのは驚きである。

 『Gentle Giant』はGentle Giantが70年にVertigoからリリースした1stアルバム。ProduceはTony Viscontiが担当。
アルバム1曲目は荘厳なOrganの響きから始まる“Giant”。Ray Shulmanのベースがリードするかのように5拍子を挟みながらスリリングに躍動するJazz Rock調に展開。Derek ShulmanのVocalはSoulfulに吼えWildで野蛮な持ち味を発揮している。Ensembleは2ndアルバム以降に比べるとまだ緩くカワイイものだが、迫力は十分。途中の展開でMellotron大仰なChorusSymphonicな響きを奏でるところはこの時期だけのもの。キメや展開も以降に比べれば、Simpleでぎこちなさを感じさせるが勢いでのりきっている。
Gary GreenAcoustic 12 Strings Guitarで始まる“Funny Ways”はRay ShulmanがViolinKerry MinnearCelloを弾き、VocalはPhil Shulman、続いてDerekが担当、清らかなChorusと共に室内楽的Elegantな美しさに満ちた導入部からPercussiveなドラムスに合わせてTrumpetが鳴り響き、Hammondが響き一気に陽気なノリになるとGaryの泣きのギター・ソロが始まる。再びAcousticな導入部に戻る。
Alucard”はDraculaのAnagramのタイトル通り、不穏な変拍子のイントロから始まり、激カッコイイBluesyなギターRiffが炸裂する。後の彼らを感じさせるナンバーではあるが、テープ処理された怪しいChorusはこの時期だけのもの。
Phil ShulmanのGentleなVocalがイイ味出してる“Isn't It Quiet And Cold”は古き良きParisの街角が目に浮かぶNostalgicなAcoustic Pop。とはいえ3拍子から4拍子へのさりげない展開The BeatlesのようなMagicalなChorusがKerryのXylophoneやRayのViolinの響きと共に英国的な仕掛けの多い凝りまくったPopsに仕上げている。ベースはDerekが弾いているのも興味深い。
Nothing At All”は美しいAcoustic GuitarとChorusにウットリする前半部からVocalが加わり徐々に熱を帯び、BluesyなギターSoulfulなShoutが炸裂、途中でMartin Smithドラム・ソロが始まる。するとそれをバックにKerry MinnearがFranz Lisztの“Liebestraum No. 3 in a Flat Major”のフレーズを弾き、次第にFree Jazzのようなピアノが不安を煽る。で、最後は再びアコギの爪弾きと歌に戻るというチョイ強引な力技も微笑ましい。
Bluesyなギターがカッコイイ“Why Not”はHeavyにDriveする個人的にアルバムで一番のお気に入り曲。British Bluesの残り香がたまらない。とはいえ中間部のClassicalなKerryのVocalや中世風のOrganRecorderなど仕掛けも多く、ここぞという時にGaryのギター・ソロが炸裂するところが気持ち良い。
最後をシメるのは、何と英国国歌God Save the Queen”をジミヘンばりにロックにキメたThe Queen”。最後にHammondとギターが熱く燃え、CoolAbstractMinimoogで終わるところがカッコイイ。
Funny Ways/Gentle Giant

(Hit-C Fiore)