Blossom Dearieは57年にFranceから米国に帰国してVerveに素晴らしい6枚のアルバムを録音しているが、60年代に再び渡欧して、米国と欧州を行き来しながら活動していた。Ronnie Scott'sで演奏したりBBCの番組に出演して、欧州、そして世界中にそのファンを増やしていった時期である。そんなLondonに滞在して名門Fontanaに残したアルバムに未発表曲を加えたBox Set『Discover Who I Am (The Fontana Years London 1966-70)』が先月リリースされた。これが最高としか言いようがない出来で、また何度目かのBlossom Dearieを聴きまくる日々が続いている。初めてBlossom Dearieの歌声を聴いた時は、女優さんかなにかの企画モノかと思っていたのだが、その汚れを知らない子供が無邪気に好奇心いっぱいに洒脱な大人の世界を歌い上げていくような非現実ともいえる世界に一発で惹きこまれていったのだった。Blossom Dearieが、歌うだけではなくピアノも弾いているNew York出身のJazz Musicianだと知った時は驚きであった。今でいうところの、あざとい、と一聴して感じられるこの手のVocalは本来苦手である自分が、これほどまでにBlossomにのめり込んでしまったのは、単純にCuteというだけでは収まらないJazz特有の洗練されながらも遊び心に満ち、Bluesyで、時にIronyさえ感じさせるVocalと、実はかなり過小評価されている彼女のSwingyで小粋なピアノに魅了されたからである。そしてBlossomがGeorgie FameやJohn Lennonに捧げた名曲からもわかるように、自然体で、ジャンルの壁を軽々と越えてMagicalな音楽を生みだしていくSongwritingの才能の虜になってしまったのだ。JazzだろうがBossa NovaだろうがPopsだろうがお構いなし、只ひたすら心地良く魅力的な音楽を、彼女独特の小洒落たセンスで仕上げて魅惑の世界に誘い込む。そこにParisのEspritを含む欧州的なElegantでWitに富んだ香りが漂うのは上述の欧州で充実した時期を過ごしたBlossomならではの世界である。勿論、VerveやFontana時代も大好きだが70年代のDaffodil 時代も最高であることはいうまでもない。
『Once Upon A Summertime』はBlossom Dearieが58年にVerveからリリースしたアルバム。ベースにRay Brown,、ドラムスにEd Thigpen、ギターにMundell Loweを従えてBlossomの歌とピアノがご機嫌である。
アルバム1曲目は“Tea For Two”。VerseからBlossomrの歌声とピアノに惹きこまれる。優しく語りかけるように歌うlossomrにメロメロである。
43年初演のBroadway Musical『Oklahoma!』のShow Tune“The Surrey With The Fringe On Top”。Ahmad JamalやMiles Davisの演奏で知られるこの曲を、しっとり歌い上げる。
小気味よいMundell Loweのギターで始まる“Moonlight Saving Time”。Loweのギターが素晴らしいがBlossomのピアノ・ソロもイイ感じ。
Blossomお馴染みのCy Coleman作曲Carolyn Leigh作詞によるピアノ弾き語りのBallad“It Amazes Me”。
Miles Davisの名演で知られる、Frank LoesserがMusical『Guys and Dolls』のために書いた“If I Were A Bell”。Cuteで小洒落た歌いっぷりが最高。
Steve AllenとDon Elliott作の“We're Together”。イントロの演奏から惹きこまれるMinor調でBlusyな味わいも格別。
“Teach Me Tonight”はLoweのギターがイイ味出してる小粋な仕上がり。Brownのベース・ソロも渋いっすなあ。
過ぎ去りし夏の思い出を歌うMichel Legrand節が光るタイトル曲“Once Upon A Summertime”。
Blossomrのピアノで始まる軽快にSwingするEY Harburg作詞Harold Arlen作曲の“Down With Love”。
Musical『The Garrick Gaieties』に使われた“Manhattan”。Blossomの囁くようなVocalとセンス抜群のピアノが沁みるBallaad。
大人の遊び心に満ちたCy Coleman作曲Carolyn Leigh作詞の“Doop-Dee-De-Doop (A Doodlin' Song)”はCoquettishなBlossomrとお惚けCaleman節が絶妙の絡み合い。
アルバム最後を飾るのは大好きなGershwinの“Love Is Here To Stay”。色っぽいBlossomrと洒落のめした演奏は最高としか言いようがないっす。
(Hit-C Fiore)