L/Godley & Creme  | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Godley & Creme10ccのメンバーであったLol CremeKevin GodleyDuoであるが、77年に彼らの1作目のアルバム『Consequences』がリリースされた時はLol Creme / Kevin Godleyという名義であった。2作目となった本アルバムの英国盤では音盤にLol Creme And Kevin Godley、裏ジャケットにはGodley・Cremeと表記され、米国盤では音盤にGodley & CremeとLol Creme And Kevin GodleyというCreditが併記されている。完全にGodley & CremeというDuo名に統一されたのは79年にリリースされた3作目となる『Freeze Frame』からであった。彼らが脱退した理由公式的には彼らが10cc時代にアルバムやLiveで使っていたGizmoというギターのAttachmentUniversity of Manchester Institute of Science and Technology (UMIST)の協力のもとに"The Gizmo" (Gizmotron)として開発し、そのDemonstration用のAlbumを制作するためということであった。そのGizmoを使って演奏していたのは主にLol Cremeである(Ericも使っていたが)。勿論、DrummerのKevin Godleyも他の3人同様 Multi-Iinstrumentalistであり高いCreativetyを持ち、何よりFalsettoもまじえた美声独創的なSound Designの発想やSongwritingで貢献してきたわけだが、少なくともGizmoを前面に出した作品に関してはLolの演奏面での貢献は大きかった。そして『Freeze Frame』からは実際には使用されているのにGizmoのCreditが消えてしまい、Godley & CremeというDuo名が使われるようになっていく。同時に収録曲のMusic Videoを初監督し、その後彼らは画期的なVideoを次々に世に出し、MTV時代に一時代を築くことになる。10ccは元々映画ネタも多く、まるで一編の映画を観ているかのように感じさせる曲が特徴でそのSoundscapeと歌詞は革新的であった。その実験的先進性に富んだSoundと楽曲の多くはArt School出身のGodleyとCreme主導によるものが多かった.10cc時代の、ジャンルを横断してHip HopSamplingCut&PasteCopyMixといった手法を10年以上前に先取りした、映画のCut-Up場面転換を想起させる音作りは本作でも絶好調。彼らの創造性は音楽の枠をも越えていたのであった。名盤中の名盤

 

 『L』はGodley & Creme78年にリリースしたアルバム。10cc脱退後1作目の『Consequences』はDialogueをまじえたMusical仕立てのCocept Album3枚組という一大傑作ではあったが、全英Top3入りした分裂後の10ccのアルバムには商業的には大きく差を付けられた。この名作を理解できない批評家も多くKevinは傷ついたもののLolは全く意に介さずだったのが面白い。本作は、良くも悪くも創造性に満ちた彼ら独特の制御不能のやり過ぎ感が1枚のレコードに凝縮されている。Zappaを思わせるスリリングなEnesmbleやSlapstickBlack Jokeネタも盛り込まれているのが興味深い。彼らの一番Jazz Rock的な味わいを感じさせる作品となった。

アルバム1曲目は“This Sporting Life”。恋愛がうまくいかないAtheleteを描いた63年公開の同名の英国映画がある。JazzyでMoodyな導入部から目まぐるしく展開が変わる映画のような名曲Sinicalな歌詞は意味深だ。途中で登場するBad SamaritanのVoiceはPaul Gambaccini。

Sandwiches Of You”はベースとドラミングが激カッコイイ。ここでもXylophoneGizmoが活躍している。そして彼ら独特のChorusが最高。

Art Schoolでの苦悩を描いた“Art School Canteen”では彼らがGrahamやEricに負け時劣らずの優美なMelodyを生みだす才能に満ちていることを証明。AcousticなSoundとKevinの美麗なVocalが素晴らしい。元々が幼馴染でArt School出身の彼ららしい曲。Gizmoも効果的

摩訶不思議なイントロから最高の“Group Life”。珍しくKevinが弾くベースも素晴らしい。“Donna”の一節も登場する。Jonathan HandelsmanAlto/Soprano Saxもカッコイイ。

Punchbag”もGizmoが大活躍のStrange Pop展開の妙に脱帽。

Foreign Accents”はAndy Mackay がAlto/Tenor Saxを吹いているバックでZappaのごとき激カッコイイUnisonが炸裂。

最後をシメるのはSinicalなMedleyHit Factory / Business Is Business”。Effectをかけたピアノ奇妙奇天烈な音響の合間に顔を出すPopでCatchyなMelodyは、やはり元10ccらしい英国の香りAndy Mackay Soprano/Alto/Tenor/Baritone  Saxでイイ味出している。

(Hit-C Fiore)