10cc/10cc | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 10ccTrafficStatus Quoは子供の頃からずっと大ファンである。そして英国らしいバンドといえば、個人的には真っ先に彼らの名前が思い浮かぶ。10ccは4人オリジナル・メンバー全員が優れたSongwriterマルチ・プレイヤーであり味のあるVocalistでもある。さらに4人ともに有能なProducerでもありサウンド・クリエイターとしても独創的な世界を持っている。正に音楽的に優れた才能が集まったグループ。4人それぞれが得意な分野があるとはいえ、ほぼ対等な関係で(特に初期は)音楽を作り出してきたのだろう。オリジナル・アルバムを4枚制作した分裂前の10ccの音楽の魅力は、バランス感覚に優れたメンバー全員が対等に音楽を作り出し、それらがミックスされることにより生まれる相乗効果によるものが大きかった。オリジナル・メンバーによる最終作『びっくり電話』では、そのバランスがギリギリのところで成立している。既に、分裂する2組の音楽的な方向性の違いが明確になりつつも、4人が作り出す実験的なPopsは真の意味でProgressiveであった。彼らの音楽制作の特徴は、常にSongwriterパートナーを組み、複数で楽曲を書き上げ、最終のアレンジは基本的に4人の合意によって進められるところである。この事により、Songwritingのパートナーを組み替えて生み出される楽曲の斬新さが際立ち、メンバー4人全員が吟味し、納得した上でしか日の目を見ない高いクオリティーの作品を生み出してきたのだ。


 10cc72年8月4日にデビュー・シングル“Donna”をリリースしている。実際には彼ら4人は、それ以前に変名プロジェクトによる作品を出していたし、4人それぞれのキャリアから純粋な新人バンドとはいえないけれど、この後に彼らが次々と出し続ける作品の完成度の高さと人を食ったようなユーモアと実験精神は既に頭ひとつ抜きん出た存在だったろう。

 デビュー・アルバム『10cc』は73年7月にリリースされた。毒の強いユーモアParody精神が前面に出たアルバムである。10CCの初期のアルバムは全部大好きであるが、このアルバムに強い思い入れがあるのは、大好きなMonty Pythonを思わせる強烈なギャグが満載であることかもしれない。確かに2作目以降のスケールの大きさや革新性には及ばない。さらに、実際にアルバムの完成度からいったら次作以降の名盤3枚とは比べものにならない。また、The BeatlesThe Beach Boys50~60年代OldiesのParodyが全開で、コミカルな路線が前面に出ていることもあり、次作以降での独自の楽器Gizmoを駆使したりするProgressivePopなオリジナリティーには遠く及ばない。とはいえ1枚目のアルバムにして後に派手に花開く彼らの一筋縄ではいかない個性が芽吹いている。映画のCut-Up場面転換を思わせる彼ら一流の映像的な音楽センスや毒を隠し持っているが一聴しただけでは甘いPop Songという魅力だ。彼らの作品では一番ユーモラスで、アルバム・ジャケットのロゴも含めて大好きな作品だ。

脱力気味のファンファーレで始まるアルバム1曲目の“Johnny, Don't Do It”は'50年代の Doo-wopのパロディーのようなPops。ヒット曲“Rubber Bullets”もそうだが、ストーリー性のある歌詞はシリアスなテーマを軽くひねるといった、彼ららしいブラック・ジョークがきいている。

Sand in My Face”も漫画のストーリーのようなコミカルな展開をサウンドと歌詞で表現した大好きなナンバー。

Godley, Cremeらしいユーモアたっぷりの“The Dean and I”もBeach BoysのParodyも飛び出しながら先を予想させずに次々と場面展開していくのが面白い。これを3分間のPopsに仕上げてしまう彼らに脱帽。

ヒット・メイカーのGraham GouldmanEric Stewartのコンビはリズミカルな“Headline Hustler”と映画好きらしいナンバー“Ships Don't Disappear in the Night (Do They?)”でひねりのあるPopsを披露。2曲ともEricお得意のSlideが炸裂している。

Fresh Air for My Mama”は10ccの前身であるEricとG&CのHotlegs時代の曲を発展させた名曲。

◎Kevinがドラムから離れVocalを披露している!

Fresh Air for my Mama/10CC

(Hit-C Fiore)