We Could be Flying/Karin Krog | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 KarinKrogNorwayが世界に誇るジャンルの枠を越えて活躍するSinger。彼女の名前を最初に目にしたのはPhilip Catherine関連のレコードを集めている時であった。それは彼女が74年にヨーロッパのJazzの精鋭たちを集めてDenmarkで録音したMichel Legrandの作品集『You Must Believe in Spring』であった。Catherineだけではなく天才ベーシストNiels-Henning Ørsted PedersenにドラムスがAlex Riel、バンド・リーダーはTrumpetのPalle Mikkelborgという布陣は、よだれモノであった。CatherineやPedersenの参加作品は素晴らしいものが多いので、Strings入りの多少甘口で歌モノに徹した、この作品は見過ごされがちであるが、個性的なKarin KrogのVocalが心に残っていた。Karinも彼らの演奏を気に入っていたらしい。Karin Krogは63年のデビュー以来、Jazzの世界にとどまらず、時には前衛的ともいうスタイルで常に挑戦を繰り返してきたKarin Krog。北欧の先進的なJazzシーンが活況を帯びてきてから、もう何年も経過しているが、そんな中で彼女は常に実験的なVocalistの先駆者として注目を集める存在であった。それはジャンルの枠だけでなくSingerの枠を越えた活動を続けてきた彼女の姿勢に対して多くのMusicianが共感し、Collaborateしてきた事実からも明らかだ。楽器演奏者ですら常にインプロヴァイザーとして先鋭的であり続けることは難しい。それなのにSingerとして時には楽器奏者並にRing ModulatorEchoplexまで駆使して挑戦を続けるKarin Krogの存在は現代においても充分に刺激的だ。かつてDon Ellisとも親交もあり、John Cageや独特の電子音響作品で知られるNorwayの作曲家Arne Nordheimにも興味を持っていたKarinらしい。 


 『We Could be Flying』は74年にリリースされた作品。Karin Krogは前述の『You Must Believe in Spring』の約2ヵ月後にこの作品を録音している事に驚かされる。なんという創作意欲。鍵盤にSteve Kuhn、そしてBassがSteve Swallow、ドラムスにJon Christensenというトリオを従えている。また本作ではJoni Mitchellの曲を取り上げている。大好きなCarla Bleyの作品を取り上げているのもポイントが高い。Carlaといえば今では即座にSwallowの名前が連想されてしまったりして。そういえば、思いついたのがもう1人、60年代にSwedenに滞在して北欧の音楽シーンに大きな影響を及ぼした、あのリディクロ理論で有名なGeorge Russell。彼は無名時代のCarlaの作品を取り上げていた。そのRussellは北欧とも縁が深かった。69年にRussellはNorwayのMusicianを集めて電化Jazz『Electronic Sonata for Souls Loved by Nature』という作品を出しているのだ。この作品には、Jan GarbarekTerje Rypdalに混じって本作にも参加しているJon Christensenが参加しているのだ。Oslo出身であるKarin KrogにとってもRussellの影響は大きかったのかもしれない。この作品もMusicianのメンツを見て、すぐに手に入れたのであった。それは間違いではなかった。

本作ではSteve Kuhnがエレピを弾くなど、この時代らしい試みが印象的だ。Joni MitchellやCarla Bleyの楽曲がSteve Kuhnの書いた4曲の素晴らしいオリジナルとともに象徴的だ。これらが時代やジャンルを超越した作品であることをKarin KrogとTrioの名演が証明している。

アルバム・タイトルにもなった1曲目の“We Could be Flying”はド派手な8ビートでビックリするがKarin Krogは完全に自分の血肉として消化して、独特のタイム感で歌う。

続く“The Meaning of Love”はエレクトリック編成のトリオの作り出す心地良いGrooveにのってKarinが妖艶に歌う。このアルバムではKuhnのエレピのバッキングも素晴らしいが、Swallowのエレキベースが独特のウネリを生み出している。

Joni Mitchellの“All I Want”を生き生きと歌うKarin。彼女には、どんな音楽でも自分のものにしてしうまう才能があるのだ。

Carla Bleyの名曲 “Sing Me Softly Of The Blues”は4ビートにのってKarinがBluesyに歌い上げる。

エレピが軽やかなSambaノリのKuhn作曲の“Raindrops, Raindrops”。KarinのノリノリのVocalも良いがKuhnの流れるようなソロがこれまた素晴らしい。

Lament”はKuhnのPianoとのDuoで清々しく歌い上げる。

最後の曲“Time To Go”では独特のEchoが幻想的な空間を作り出している。


○昨年のMolde International Jazz Festival でのKarin Krogの幻想的なステージ。Percussionは大好きなMarilyn Mazurが叩いている。

Break of Day in Molde/Karin Krog

○リズム隊も最高→The Meaing of Love/Karin Krog

(Hit-C Fiore)