Stéphane GrappelliのViolinを聴くと、いつもウキウキした気分になるのであった。勿論、このParis生まれのJazz ViolinのPioneerにして巨匠がAggressiveに弾き倒すのも、また欧州独特の翳りを感じさせる哀感に満ちたViolinを奏でるのにも心惹かれるものがあるのだが、Elegantな音色と旋律で、軽やかにSwingするGrappelliは、清々しい気持ちにさせてくれるし、気分を高揚させてくれて、やっぱり最高なのである。幼少時に母を亡くし学者であったItaly系の父は第一次世界大戦で徴兵されて、Grappelliは極貧の子供時代を過ごした。父が戦地からようやく戻った時に床に寝て、食べ物すら満足にない孤児院にいたGrappelliはFranceに帰化することになったのであった。父が工面したお金でViolinを手にしたGrappelliは12歳でConservatoire de Parisに入学し23年に卒業したが、路上やCafeで演奏して日銭を稼ぎ、貧しいながらもなんとか生計を立てていた。やがて無声映画の伴奏者としてOrchestraの仕事を得て、Jazzと出会うことになり、Grappelliの運命は大きく変わっていくのである。一時は収入のためにViolinの演奏をやめてBig Bandでピアノを弾いていたGrappelliであったが再びViolinを演奏するように奨められて、31年にDjango Reinhardtと運命の出会いを果たす。そしてDjangoと伝説のQuintette du Hot Club de Franceを結成したGrappelliのその後、第二次世界大戦を経ての活躍ぶりはご存知の通り。基本はSwingなのであるが、Hard Bopな演奏者をバックにした時にはフレーズこそBopではないが、果敢に彼らに対応しようと挑んでいるのが良い。本作はMel LewisのドラムスにGeorge Mrazのベース、ピアノにRoland HannaというThad Jones & Mel Lewis楽団のリズム隊を迎えた70年代のGrappelliを代表する名作のひとつ。演奏良し曲良し、雰囲気も最高である。この時期のGrappelliは絶品である。
『Parisian Thoroughfare』はStéphane Grappelliが73年に録音しBlack Lionから75年に『Stephane Grappelli Meets The Rhythm Section』としてStephane Grappelli, Roland Hanna · Jiri Mraz · Mel Lewis名義でリリースされたアルバム。
アルバム1曲目はCole Porterの“Love For Sale”。心躍るイントロからもう気分は最高。優美に躍動するMel LewisのドラムスとGeorge MrazのベースをバックにGrappelliのViolinもRoland Hannaのピアノもキレキレでご機嫌である。Mrazのベース・ソロは相変わらず超絶技巧で耳を奪われてしまう。
Roland Hanna作の哀感を湛えた名曲“Perugia”。MrazのArcoとUnisonでViolinで奏でられる切ないMelodyがたまらない。75年にリリースされたHanaの『Perugia: Live At Montreux 74』でのソロ・ピアノでの演奏も最高である。
続いてもHana作でイントロのMrazとGrappelliのUnisonから掴みはバッチリの“Two Cute”。Grappelliの小粋なPizzicatoがイイ感じ。
George Gershwinの“Fascinating Rhythm”はMrazの圧巻のベース・ソロで始まる。Hanaのエレピもイイ感じでGrappelliもElegantに歌いまくり。Mel Lewisのドラムスも相変わらずご機嫌で最高に気持ち良し。
Bud Powell作のタイトル曲“Parisian Thoroughfare”。イントロのHanaのエレピからウキウキさせてくれる。Grappelliも技巧的に弾き倒していてカッコイイっす。Hanaのエレピ・ソロも最高。
なんとChopinの“Improvisation On Prelude In E Minor”。
Antonio Carlos Jobimの“Wave”。雰囲気タップリにHanaのピアノで始まり、BossaのRhythmにのってGrappelliも心地よさそうに歌いまくり。
最後をシメるのは20年代のMusica『Hit the Deck』の“Hallelujah”。イントロからキレキレでGrappelliの圧倒的な演奏に脱帽。
(Hit-C Fiore)