Benito Lertxundiが昨年11月に全てのConcert活動の終了を発表した時は、やはりショックであった。Spain北部のBasque自治州にあるGipuzkoa州Orio出身のSinger-Songwriter Benito Lertxundiは60年代後半に活動を開始して半世紀以上に渡ってBasque音楽界を支えてきた重鎮である。外見は若く見えるけれど、Lertxundiも83歳になった。傘寿(80歳)を越えて活動を続けているMusicianは多いけれど、さすがに身体に負担のかかるConcert活動は厳しいものがあるし近年、認知症に悩まされてきたLertxundiにとっては、仕方がない決断なのだろう。これまでにも80年代末から90年代前半まで一時的に沈黙を守る時期があったり近年は活動のペースが遅くなってきたにせよ、ここまでBasqueを代表する音楽家として第一線で素晴らしい音楽を世に届けてきただけでなくBasque文化全般に対する貢献度はいくら賞賛してもしすぎることはない。Lertxundiという人は元々は美術学校で学んだ木彫の職人であったらしい。その朴訥とした温かみのある歌声は、Basque特有の哀感を湛えながらも、美しい自然に囲まれた大らかで、澄み切った青空から陽光が差し込んでくるような心地良さを感じさせてくれるものだ。Celtic Musicと共鳴する部分も感じられるが研究熱心なLertxundiは、その辺も意識していた。Benito Lertxundiに出会ったのは地中海周辺の音楽の魅力に夢中になっていた頃に、CatalunyaやAndaluciaの音楽に出会い、東西南北、中部それぞれの地域で独自で多彩な顔を持ったSpainの音楽に興味を持つようになった頃。そして、とりわけBasqueの音楽に魅せられるようになっていた時であった。Acoustic楽器を中心に奏でられるPureで清冽でありながらも、どこか生命感を強く感じさせる音楽。本日ご紹介するアルバムは初期の作品で、70年代後半からのBasqueというFranceとSpainにまたがる場所で生まれた伝統的な文化の継承人としてBertsolaritzaとしてのLertxundiの圧倒的な魅力と個性が確立される前の作品である。それゆえに、瑞々しくも大好きなBretagneのAlan Stivellの影響がまだ強く感じられるところが興味深い。
『Oro Laño Mee Batek…』はBenito Lertxundiが74年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲は“Oi Lur, Oi Lur”。Acoustic Guitarの響きで始まりLertxundiの歌声が響き渡ると、もうそれだけで惹きこまれていく魅力がある。Stringsも目立ちすぎず、伸びやかで生命感に満ちたLertxundiのVocalを効果的に盛り立てていくのが良い。
優美で幻想的なArpeggioが哀感漂うLertxundiのVocalと独自の世界へと導く“Asarre Egon Nahi Nuke”。
“Zure Askatasunagatik”はArpeggioとStringsの絶品のEnsembleにのってGentleに歌い上げていくLertxundiが良い。
“Herri-Behera Jota”は、いきなり力強いVocalで始まり、Chorusが寄り添う。SimpleなAcoustic GuitarとVocalだけでじっくり聴かせてくれる。
8分越えの“Txori Ttikia”もAcoustic GuitarとVocalのみで神妙だけど生命感溢れる音楽が奏でられていく。大地にしっかり足がついているところが良い。後半の語りが入るところが良い。
“Euskal Pizkundea”も魅力的なAcoustic GuitarのArpeggioにStringsが寄り添い、Lertxundiの語りが始まり、哀感に満ちたVocalが沁みますなあ。
“Haur Bati”もLertxundiの情感豊かな歌声とAcoustic Guitarの優美なArpeggioの演奏のみだが、これが素晴らしい。心に訴えかけてくる音楽。
“Entzun Zazu”は落ち着いたLertxundiの歌声に清らかな女性Chorusが寄り添う。控えめに響き渡るStringsも絶品。
3拍子の“Oria Ibaia”はBasqueらしい哀愁を素晴らしいAcoustic GuitarのArpeggioとLertxundiの温もりのあるVocal、典雅なStringsが描き出す。
アルバム最後をシメるのは“Oi Gure Lurra”。Acoustic Gitarの優美なArppegioとLertxundiのScatが極上の響き。雰囲気タップリの語りも良き。
◎Euskal Pizkundea/Benito Lertxundi
(Hit-C Fiore)









