Trio MocotóはSão PauloのJogral Nightclubで68年に結成され、Jorge BenのBack Bandとして活躍した。そしてバンド名からわかるようにこのTrioは自身の素晴らしいアルバムも世に残している。彼らの音楽はSambaとSoul、Funk、Rockの要素が融合した所謂Samba-Rock、あるいはSambalançoとして語られることが多いが、NightclubでClementina De JesusやNelson Cavaquinho、Cartola、Paulo VanzoliniらBrasilの錚々たるSambistaのバックの演奏をしてきただけでなく、彼らはTommy FlanaganやDuke Ellington、Oscar Peterson、Earl Hines、Jon Carter、Michel Legrand、Dizzy Gillespieらとも共演してきただけに、その音楽性は多様性に富んでいる。ギターとVocalのFritz Escovão(Luiz Carlos Fritz)、ドラムスでVocalのJoão Parahyba、VocalとPercussionのNereu Gargaloの3人は当時São Pauloに住んでいたJorge Benと共に演奏を続けて50年代に起源をもつといわれるSamba-Rockと呼ばれる音楽を深化/熟成させていった。それは60年代にNightclubが増加した結果、発展していったSambalançoや、60年代末にTropicáliaの波が押し寄せた時、共鳴し合って、Jovem Guardaも巻き込みながら人気を集めていく。元々、Samba-EnredoやBossa Nova、BaiãoとRockをMixさせた独自の音楽を友人のPartyなどで歌っていたJorge Benがこの3人と出会って70年代に摩訶不思議なジャンル越境の音世界を追求していったのは実に興味深い。本作は71年にリリースされたTrio Mocotóの1st Albumで、同年に続いてリリースされた2nd Album『Trio Mocotó』も最高であるが、72年に日本でリリースされたJorge Benの同年2月21日の日比谷公会堂での来日公演を収録したLive Album『Jorge Ben On Stage』でも彼らの活躍ぶりを堪能できる。
『Trio Mocotó Muita Zorra! (...São Coisas Que Glorificam A Sensibilidade Atual)』はTrio Mocotóが71年にリリースしたDebut Album。
アルバム1発目はTim Maiaの71年の同名アルバム収録の“Meu País (My Country)”。引き締まったリズム隊にピアノのRiffと優美なStringsがイイ感じ。
Antonio Carlos E Jocafi の“Xamégo De Iná”もギターのカッティングとピアノのBlock Chordsに鳴り響くPercussion、そして浮遊感のあるStringsが最高。Chorusもご機嫌である。
Ivan Lins作の“O Criolauta”もイントロから思わず腰が動き出す。サビのChorusとCuícaが最高に盛り上がる。
Erasmo CarlosとRoberto Carlos作の“O Sorriso De Narinha”も陽気に揚げ揚げっすなあ。
Jorge Ben作の“Esperança”はイントロのギターのカッティングから高揚感に満ち溢れて、聴いている方も思わず顔が綻び身体が動き出してしまう。これがTrio Mocotóの魅力である。
B面1発目もJorge Benの名曲“Maria Domingas”からスタート。Strinsが優しく極上のMelodyに寄り添う、これまた最高っすなあ。
Antonio Carlos E Jocafiの“Nagó”はPrimitiveなかけ声から始まり、泥くさいノリでChorusが盛り上げていく生命感に満ち溢れたナンバー。
“Só Quero”はHorn隊も加わってガンガン飛ばしていくのが最高。
大好きなJoão Do Valeの“O Canto Da Ema”はイントロのご機嫌なピアノから始まるFunkyな仕上がり。
Jorge Ben作で本人も参加した “Aleluia, Aleluia (E Ainda Tem Mais)”。Cuícaがイイ味出してますなあ。
Erasmo CarlosとRoberto Carlos作の“Coqueiro Verde”。最後まで高揚感溢れる歌と演奏が良き。
◎Maria Domingas/Trio Mocotó
(Hit-C Fiore)