Poeta Do Povo/João do Vale | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 

 しかし、コレは何というジャケットなんだ。とは言いながらやっぱり買ってしまうのであった。João do ValeMaranhão州出身で、Luiz GonzagaJackson Do Pandeiroと並ぶNordesteBrasil北東部)の音楽の素晴らしさを教えてくれた音楽家だ。Joãoといえば、なんといっても人々を抑圧する軍事政権を批判するNara Leãoが主演したGianfrancesco GuarnieriとAugusto Boalによる『Show Opinião』だ。Zé Kétiとともに出演し大成功を収めたショーの結果を受けJoãoのこの名作が世に出ることになったともいえる。64年の年末に始まり翌年にかけて大ヒットしたこのショーはBrazilの音楽史に残るものであり、"Música de Protesto"として大きな足跡を残した。当時の現実を厳しく直視したNaraが、あえて富裕層のための音楽となっていったBossa Novaと決別したと言われる伝説のステージでもある。Brasil音楽のルーツを探りたいと北東部に足を向けたNaraが出会った音楽。素朴で温かくて人々の生活に根差した音楽。Joãoの素朴でゴツゴツとした手触りのような歌声は決して上手いとは言えない。その朴訥とした人柄が伝わってくるようなJoãoの歌い方が最高だ。そして、何よりもJoãoの作曲家としての才能も賞賛に値する。当時、何百曲も書いた多作家のJoãoであるが、常に街に暮らす人々の生活を見つめて続け彼らの心情を伝えるように自然で味わい深い旋律にのせて歌い続けた。João do ValeはGonzagaやJacksonに比較すると心なしか人気や評価が低すぎるような気がする。この音盤や『Show Opinião』を聴くたびにもっと多くの人にその魅力を知ってほしいと思う。

 

 『Poeta Do Povo』はJoão do Vale65年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目“A Voz Do Povo”はViolaoとJoãoの素朴な歌声と男女Chorus,これだけで幸せだと思ってしまう。決して上手いVocalではないのに心に響いてくる。

Show Opinião』でNara Leãoのために書き、代役となったMaria Bethâniaが歌った名曲“Carcara”は繰り返しの美学。男女Chorusと一緒に無骨なまでにひたすら繰り返しタイトルを連呼して歌うJoãoが最高。転調も効果的。

Pra Mim, Nao”もSimpleな演奏とJoãoのVocalが沁みますなあ。感情の発露のようなViolaoのソロも実に素朴なもので、それゆえに響くのである。

Show Opinião』の冒頭を飾った“Peba Na Pimenta”も、SanfonaAccordion)がイイ感じで思わず童心に帰ってしまうな旋律とリズムに和んでしまう。

静かに始まりゆったりした歌と演奏に惹きこまれていく“Minha Historia”。

ViolaoのArpeggioから始まり男女Chorusを伴い徐々に盛り上がっていくA Lavadeira E O Lavrador”。

これまた『Show Opinião』で歌った“Pisa Na Fulo”。Sanfonaのイントロが沁みる哀感漂うナンバー。

O Jangadeiro”は抒情的なViolaoのイントロからJoãoの野太いVocalが入っていくところがイイ感じ。

Luiz Gonzagaも歌った“Fogo No Parana”。これまた北東部独特の詩情が伝わってくる。

Joãoの野性を呼び覚ますかのようなVocalが響きまくる“Ouricuri”。

O Bom Filho A Casa Torna”はSanfonaの響き思わず踊り出したくなるリズムにのって歌うJoãoがイイ感じ。

最後をシメる“Sina De CabocloNaraが『Show Opinião』で歌った朴訥で詩情に満ちた曲。

(Hit-C Fiore)