
このところ、ずっと気が張っていた。この辺でチョイと気を休めて、のんびりしてみる一日も、あっていいかな?なんて思ったり。元来、集中力が長く続くタイプではないわけで、案の定、気を許すと、だらけムードに突入してしまう。言い訳ではないけれど、一応プロジェクトの方が大筋見えてきたので一安心みたいなところもあったり。ま、それでも気を抜かずに適度な緊張を保たないと。考えた結果、少々の息継ぎは許されるだろうと、自分に言い聞かせて、今日は久々にのんびりと一日を過ごそうと決めた。このところ、ずっと聴き続けてきた、それでも飽きのこない音楽を聴きながら。本盤は、あの震災の日々から、ようやく、なんとか心底、音楽を聴きたいという気分になった時に思い浮かんだ中の一枚。抜け出せない麻薬のように、それから聴き続けているんだけど、やっぱり素晴らしい音楽なのである。
Jorge Ben(後にJorge Ben Jorに改名)。彼の土着的な音楽は自分の身体の奥底にまで響く。あとでじわじわ効いてくる薬のような音楽。さてJorge Benのアルバムでどれか1枚を選べといわれたら、自分は色々迷った末、このアルバムを選ぶだろう。大ヒット曲が収録されているわけでもない。それでも、本当に大好きな作品で、イマイチ気分がのらない時や、落ち込んだ時、何度救われたことか。時代により、さまざまな音楽を取り入れたJorgeだが、本質的に変わらない彼の快感に忠実な音楽。本盤はR&B、Funk、DiscoなJorge Benでもないし、彼の代表的なSamba-rock的な作品でもない。でも奥深いSoulを感じてしまうのである。ProduceはPaulinho Tapajos。アレンジにはOsmar Militoの名も。
『A Tabua de Esmeralda』はJorge Benの74年の作品。ジャケットが思わず、神秘的、哲学的な感じで、いつもの親しみやすいJoregeと違うのか、と身構える。『エメラルドの記念碑』とでもいう意味のタイトルも意味深だ。でも、心配後無用。音楽の方は、いつもより、むしろ力の抜けた、実にPeacefulで、心地良い楽曲ばかり。アコギと、リズミカルに下半身を動かす、Joegeの歌を中心に、全曲最高っす。Joregのメロディーは、美しい旋律とか、斬新なメロディーとか、派手と言うわけでもないんだけど、身体中に染み渡ってくる、不思議な魅力がある。
アルバムの1曲目は、アコギのカッティングに続く混声Chorusから始まる“Os Alquimistas Estao Chegando”。
“O Homem da Gravata Florida”はGentleなVocalが心地良い。しかし、ギターの弾き語りだけでも十分、これだけ奥深い世界を作り上げるBenは素晴らしい。
ダビーな出だしに驚く“Errare Humanum Est”は清らかなChorusに伴われて歌う。Dub処理もStringsも効果的。
“Menina Mulher da Pele Preta”。繰り返しの美学。いつの間にかJorgeの世界に轢きこまれてしまう。
Funkyなカッティングがカッコイイ“Eu Vou Torcer”。
Peacefulな空気感、穏やかなメロディとStringsが絶妙に絡む“Magnolia”。あぁ、天にも昇ってしまいそうだ。
アルペジオ、そして生命感に満ちたChorusにのって歌われる“Minha Teimosia, Uma Arma para te Conquistar”。
Afroな名曲“Zumbi”。
“Brother”はCall and ResponseがSoulな、土着的で力強いナンバー。
Percussionの響きが気持ち良い“O Namorado da Viuva”は、JorgeのVocalが特効薬のように日々の疲れを取り払ってくれる。大好きな曲。
“Hermes Trismegisto e sua Celeste Tabua de Esmeralda”は、ゆったりしたGrooveが気持ち良い。この曲もPercussionとChorusが効果的なナンバー。
最後は、やはりアコギのカッティングにのってチョイといっちまったBenのVocalが最高の“Cinco minutos”。Marisa MonteもCoverしている、“人生の5分間”。これまた名曲。
(Hit-C Fiore)