Jorge Benは基本的にはDebut以来変わらない、金太郎飴的なSongwritingでありながら、たまらなく魅力的な楽曲を次々に生み出す天才的なSongwriterといえる。勿論、SoundやArrangementは、それぞれの時代によって当然それなりに変化はするのであるが、その変わらない、腰を動かすというか、幸せな気分にさせてくれるような祝祭感と生命感に満ちたMelodyは天下一品である。全曲Jorge Benの手による楽曲で固めた本作は、ズバリ直球勝負の一枚。あえて装飾的な部分をギリギリまで削ぎ落とし、潔くSimpleに自らの歌とギターを際立たせる引き締まったバックの演奏にまかせてRelaxしたBenが良い。演奏を担当しているのはまだDebut前のTrio Mocotó。Joaozinho Parahyba、Nereu Gargalo、Fritz Escovaoの3人組である。演奏技術は抜群で、SoulやFunk、Rockのジャンルを超えた演奏を、ここではVocalを引き立ててサラリと聴かせる。それに応えて、飾り気のない、素朴なVocalとPrimitiveなギターを聴かせるJorge Benも絶好調。後にSamba Rockとして一世を風靡するMovementの先駆的な作品となった。しかし、ここでのJorge BenのSongwriting、特に歌詞は、これまでとは少々違った部分も垣間見せる。それは、当時人々を抑圧していた軍事独裁政権に対するIronyと自らの毅然としつつも、どこか肩の力を抜いて心地良さを追求するIdentityが絶妙にまじりあった世界。Romanticで情熱的ないつものJorge BenらしさもSão PauloのNightclubで鍛えたTrio Mocotóの躍動感に満ちた無駄のない演奏が際立たせる。しかも、基本はAcoustic、それゆえにJorge Benが紡ぎ出すMelodyと、時にEmotionalな高まりさえ見せるVocalが一層芳醇な味わいを感じさせて、本作を特別なものにしている。
『Fôrça Bruta』はJorge Benが70年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目“Oba, Lá Vem Ela”はFunkyなギターのカッティングから始まりJorge Benらしい生命感に満ちたMelodyを素朴で温かみのある歌声で歌い上げる。Stringsもイイ感じで後半の盛り上がりもバッチリ。
イントロから祝祭感漂う“Zé Canjica”も基本はギターの弾き語りでPercussionが心地良く響き、楽曲自体の良さが際立っている。
マッタリした中にMellowで切ないMelodyが冴えわたる“Domenica Domingava Num Domingo Linda Tôda De Branco”。寄り添うHornのEnsembleも素晴らしい。
“Charles Jr.”はギターのイントロからStringsが加わり甘美なScatが飛び出すとJorge BanがEmotionalに歌い上げていく。6分越えだけど長さあを感じさせずに聴かせるのは流石。
“Pulo, Pulo”はイントロのギターのカッティングから腰が動いてしまう。ここでもStringsとHorn Section、Percussionが絶妙でVocalを盛り上げてくれている。
“Apareceu Aparecida”はJorge Benお得意の野性味あふれるVocalの中に時折忍ばせる切ない泣きのMelodyがグッとくるナンバー。
“O Telefone Tocou Novamente”もJorge Ben特有の哀感と泣きがたまらない名曲。Jorge BanのEmotionalなFalsettoまで飛び出す。
“Mulher Brasileira”は優美なOrchestrationが冴えわたる、これまた切ないMelodyがグッとクルるナンバー。後半のJorge Bえnの感極まった歌いっぷりも良し。
脱力気味のVocalがイイ味を出している“Terezinha”。オッサンの鼻歌的なRelaxしまくった感じが実に様になっているのがスゴイ。
アルバム最後をシメるのは高揚感に満ちた“Fôrça Bruta”。まんまArchie Bell & the Drellsの“Tighten Up”なのはご愛嬌。
(Hit-C Fiore)