Sergio Mendes & Brasil'66 | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 この音盤は、どちらかといえば想い出の音楽といったところで、子供の頃に父親の車の中でよく聴かされていた音楽。ずっと祖父母と暮らしていた子供の頃に、両親と一緒に時間を過ごした記憶は圧倒的に車の中が多かったような気がする。そして、父親に車の中で聴かされた音楽と、その時に車の窓から見た街の風景がいつまでも自分の心の中に残っている。両親はJazzやLatin音楽や映画音楽やイージー・リスニングが好きで、年に1回の長期休暇で家族旅行する時は必ず音楽が車の中で鳴り響いていた。その頃、聴いていて強く心に残っているのはサッチモとHenry Manciniとセルメンである。Sergio Mendes & Brasil'66の、どことなく楽しそうでリズミカルな音楽は子供にとっても魅力的な音楽だった。とにかく踊り出したくなる音楽は昔から大好きだったのだろう。10代前の幼児体験というのは相当強烈に残っているもので、長い間、自分の中ではSergio Mendesといえば、この音盤のイメージなのである。そして自分が本格的にLatin音楽を好きになる頃には、自分の固定観念から、すっかりスルーしてしまっていたのだ、セルメンを。ところが、後にHermeto Pascoalが参加したBrasil'77のFunkyな音盤『Home Cooking』や92年の『Brasileiro』を聴いて、再びSergio Mendes & Brasil'66を聴きなおして驚いた。当時はガキだから当然気付かなかったのだ、この色気のある2人の女性Vocalを。特にLani HallのVocalのなんとも悩ましいことよ。本盤をProduceしているのはHerb Alpert & the Tijuana Brassのリーダーであり、A&Mの創設者でもあるHerb Alpertであるが、Hallは後にAlpert夫人となるのである。Hallの才能を見出したMendesは賞賛されるべきである。Mendesが有能なMusicianを見出す才能があることはBossa RioBrasil '65でも証明されているが、米国人であるHallを起用したことがBrasil'66の世界的な成功の鍵だったような気がする。

 『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil '66』は66年A&Mからリリースされ『マシュ・ケ・ナーダ』と邦題がつけられた。
オープニングはJorge Benの“Mas Que Nada”。言わずもがなの大ヒット・ナンバーでもあり、永遠に色あせない音楽である。
Tom Jobimの“One Note Samba”では小粋なダヴァダヴァダ炸裂。それにしてもLani HallのVocalは色っぽいっす。
Sammy Davis Jr.の名唱で知られる“The Joker”ではLani HallのJazzyな歌唱がイイ感じ。
Teddy Randazzo作曲のLittle Anthony & the Imperialsのヒット曲“Going Out of My Head”も大好きな曲。
Tim Dom Dom”は、子供の頃に悪ふざけして口ずさんで親に叱られていた思い出が。
The Beatlesの“Day Tripper”はLatinのRhythymにMendesのJazzyなピアノが楽しめる。
Tom Jobimの“Água de Beber”。このアルバムにMendesの曲は1曲もないが、Brasil'66の場合はBossa NovaやBrazilian Jazzがどうこうというより選曲とArrangeセンス、そして何より、そのBeatにのるVocalが爽やかなエロに満ちていることが重要。
Henry Manciniの“Soft Hot Wind”では、やはりLani HallのVocalが素晴らしい。
大好きなアヒルとガチョウと鴨と白鳥のQuartetの歌“O Pato”。こういう男女混声のコミカルで楽しい歌でもHallの声はCuteで、たまりませんな。
最後はBaden Powellの“Berimbau”。最後にこういう曲をもってくるところにMendesのバランス感覚の良さを感じる。

※PercussionのJoseの動きに注目!
Mas Que Nada/Sergio Mendes & Brazil 66


Lani Hallは最高!
Going Out of My Head/Sergio Mendes & Brazil 66

(Hit-C Fiore)