
しかし、なんというジャケットなんだろうか、これは。この音盤については、まさかCD化されるとは夢にも思わなかっただけに、手に取った時の嬉しさは忘れられない。かれこれ6年ぐらい前になるだろうか、欧州Jazz幻の名盤が次々とCD化されて、ホントいい時代になったものである。大好きな鍵盤奏者Wolfgang Daunerや、ずっと追いかけているベース奏者Eberhard Weberが参加しているのだから、内容はともかくGetするしかないのであった。それにしても本盤の2名のベース奏者を同時に演奏させるツイン・ベース体制とは驚いた。ベース奏者2人というとMagmaや晩年のMiesとかOrnette Colemanやこの間ご紹介したAllen Houserの『No Samba』を連想するけれど、本盤と同時期ではSonny Rollinsの64年作『The Standard』の“Travelin' Light”で、もう1人のベース奏者にArcoを弾かせたりしていたのを思い浮かべたりする。 だが、やはり61年あたりからJohn Coltraneが既に試みていたのが最初だったのだろうか?Art DavisとReggie WorkmanによるTwo-Bass Droneによる61年作『Ole Coltrane』は、Cecil McBeeとStanley Clarkeを起用したPharoah Sandersの71年作『Black Unity』に受け継がれている。ドイツのSax奏者Joki Freundは63年の段階で、この2人のベース奏者による演奏を試みているが、その10年前に既に考えていたという。
『Yogi Jazz』はJoki Freund Sextetが63年に録音したアルバム。Alto Sax、Flute奏者のEmil MangelsdorffとTenor、Soprano Saxを演奏するFreundの2管をフロントに、ドラム奏者には後にDave Pike Setを結成するPeter Baumeister、ピアノにWolfgang Dauner。そしてベースにはEberhard Weberと、後にDRS Big Bandに参加するKarl Theodor Geier。
アルバム1曲目の“Caravan”から度肝を抜かれた。こんな硬質の叙情が漂う“Caravan”は聴いたことがない。黙々と青白い炎を燃やしながら突き進んでいくリズム隊をバックにMangelsdorffのFluteとWeberのリード・ベースが絶妙のCoolな色彩を加えていく。Daunerは相変わらず弾きまくっても、どこか醒めた風情である。一方、リーダーのFreundは目立たないながらも、全員を冷静に統率するかのようにSopranoを吹く。寒々としたドイツの冬空の下、一行がゲルマンの森を猛スピードで駆け抜けていくかのような力強さも感じられる。
Romanticで美しいピアノの調べから始まるMcCoy Tynerの作“Aisha”。John Cltraneの61年作『Ole Coltrane』に収録されたExoticな魅力を持ったBallad。ここでもMangelsdorffの静謐な美しさを湛えたFluteが素晴らしい。
ツイン・ベースによるイントロが面白い“The Caribbean Ringo”はFreund作。SaxとFluteの2管による躍動感のあるModalなTheme、そしてDaunerの自由奔放なソロ。ドイツのJazzらしいStoicな叙情が感じられるナンバー。
Benny Golsonの“Killer Joe”はDaunerの素晴らしいピアノ・ソロ、そしてFreundのTenorとMangelsdorffのAltoが絡み合う。
Freund作の“HL 20”。Arcoで始まるこの曲こそツイン・ベースが生かされた大好きなナンバー。淡々と低音部でLatin調のMinimalなフレーズを引き続けるベースとサウンドに緊張感を与え続けるベース。AltoとTenorもスリリングに絡み合いながら作り出される、先鋭的でありながら、実に心地良い音世界に酔いしれる。
最後の曲もFreund作“Yogiana”。FluteとTenorのイントロは欧州特有の陰影が感じられ、Two-Bass Droneにより、ゆったりとしたRhythmが繰り返されると、催眠効果があるような感じ。異国情緒漂うModalなナンバー。
(Hit-C Fiore)