
気持ち良さそうな、いい顔してますな。このジャケットだけで無条件に欲しくなる音盤。Arkansas生まれのギタリストLuther Alllisonのアルバムは、なぜか本人の顔がインパクトのあるイイ味出しているのが多くて、思わず手がのびてしまう。この人の良さは、正しく全編タフな全力投球である。ある意味、愚直なまでに押しまくり、弾き倒し、Shoutしまくりの手抜きなしノリ一発。だからLive盤が一番、その魅力が伝わってくるのである。この心地良いやりすぎ感、出し惜しみなしのサービス精神は、Allisonが、かつて不遇な扱いを受けた米国から欧州に渡り、地道なクラブ・サーキット廻りで頭角を現したという事実を知れば納得できる。クラブ叩き上げ、お客様を楽しませて何ぼといった、筋金入りのLive Performanceの迫力に満ちている。だから、聴いている方も惹きこまれていくのである。ところが、本日ご紹介する音盤は、それらの熱情音盤とはチト趣が違っている。スカスカで頼りないバックを従えて、濃い口ではなくこざっぱりした薄口の勢いで勝負するAllisonが興味深い。ワウなんかかけて少しFunkyでSoulな要素をBluesに取り込もうとする野心的な部分も見え隠れする若き(とはいっても三十路突入である)Allisonの音盤である。まだまだ技術的にもアラがあるけれど、このスカスカで荒削りの演奏と、時折入るワウがかかったギターが妙に気持ち良いのである。そして何よりも、チョイと鼻にかかったAllisonのVocalが好きなのだ。この後のMotownからの黒くて太いアルバムに比べれば、歌も演奏も軽くてギターも個性がないし、まだまだB.B. Kingの影響を強く残しているのだが、自分なりの独自性を出そうと懸命に模索中の、初々しくも直向なAllisonが気持ち良い。
『Love Me Mama』はDelmarkから69年にリリースされたLuther Alllisonのデビュー・アルバム。すでにDelmarkのOmnibus盤『Sweet Home Chicago』で2曲披露していたAllisonだが、Chicago Bluesの定番に自身のオリジナル曲も収録した本盤では、後からは考えられないCoolなプレイもあったりして面白い。後のFunkyでRockな路線への布石となる部分も見受けられ、デビュー作らしい瑞々しいプレイが楽しめる。正直リズム隊は心もとないものがあるのだが、Allisonのまだ線の細いVocalと醒めた風情をかもし出すワウ・ギターが薄っぺらいバックと作りだす空間が、不思議とクセになる。
アルバム一発目“Why I Love The Blues”は、いきなり飛び出すWahギターに、スカスカのリズム隊をバックに歌うAllisonの独特のSmokyなVocalが良い。このアッサリ加減が今の自分には丁度良い塩梅なのかもしれない。
Willie Dixonの“Little Red Rooster”。この曲もワウが印象的だが、Allisonの歌いっぷりも最高。この頃のAllisonのVocalはホント好みである。こういう声質だけで黒さを感じさせてくれるのは憧れる。
快調に飛ばすB.B. Kingの“4:00 in the Morning (Waiting on You)”。この妙に軽い感じはこの時期のAllisonの味。
Eddie Boydの名曲“Five Long Years”。バタバタしたリズムにのって妙にエロティックなギターと後を思わせる迫力の唱法が飛び出す。
控え目なHorn入りの“Dust My Broom”。ミストーンも気にせず勢いで弾きまくるAllison。
アルバム・タイトル・ナンバー“Love Me Mama”はリズム隊が崩れて(オカズが入ると崩れまくりのドラムス)Funkyになりきれない。後の作風を思わせる作品。
Elmore Jamesの大好きなSlow Blues“Sky Is Crying”。
“Help Me”ではワウがエッチな雰囲気を出していて良い。
B.B. Kingで知られる“You Done Lost You Good Thing Now”はAllisonもなりきっている。
最後を締めるのはWahギターがカッコイイFunkyなインスト“Bloomington Closer”。
◎Little Red Rooster/Luther Alllison
(Hit-C Hiore)