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BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 The Fritz Pauer Trioの演奏は、いつ聴いても凛として瑞々しい魅力に満ち溢れているAustriaVienna生まれのJazz Pianist/Composer Fritz Pauer10代の頃からプロの演奏家としてのキャリアを開始している。お国柄かどことなくClassicalな香りも漂うが、欧州的な知的で抒情漂う味わいMcCoy Tyner以降のModalFreeにも対応可能なピアニスト。60年代前半には同国のSax奏者Hans KollerのGroupで演奏し、Friedrich Gulda66年に主催したInternationaler Wettbewerb Für Modernen JazzPiano部門第一位を獲得(ちなみに第二位はJan Hammer)して、その実力派ぶりが注目された。歯切れ良いタッチから繰り出される淀みのない流麗なフレージングは圧巻である。60年代Don ByasBooker ErvinArt FarmerDexter GordonFriedrich GuldaAnnie Rossと共演したPauerは68年から72年Vienna Municipal Conservatoryで教鞭をとり、その後はORF-Big Bandのメンバーとなった。Pauerに注目したのは70年MPSからリリースした『Live At The Berlin "Jazz Galerie"』で、Jimmy WoodeのべースにBilly BrooksのドラムスとのPiano TrioModalで三位一体となって突き進む清冽な演奏に心を奪われたのであった。ベースのWoodeにドラムスのKlaus Weiss、Tenor Sax/Flute奏者のFerdinand Povelと組んだMythologie71年にリリースした唯一のアルバム『Live At »Domicile« Munich』やSunbirds2枚のアルバム傑作である。本作はORF-Big Bandのリリースの合間を縫って70年代後半にリリースされたアルバム。ベースにはJimmy Woode、ドラムスのTony InzalacoとのTrioで、MPSからリリースされた。

 

  『Blues Inside Out』はMPSから79年にリリースされたThe Fritz Pauer Trioのアルバム。

アルバム1曲目はドラムスのTony Inzalaco作“The Beacon”。イントロから炸裂するPauerのキリっと引き締まった硬質の美とも言うべきBlock Chord連打が激カッコイイ。躍動感に満ちたリズム隊にのってPauerのピアノが力強くも、流れるような優美なフレージングを弾き倒す。Tony Inzalacoのドラム・ソロもキレキレである。

English Garden Walk”はイントロから典雅な旋律を奏でるPauer、BluesyなTheme歯切れ良くBlock Chordを刻んだかと思えばFunkyに転がるピアノで魅了する。

Flute Song”はユッタリとしたBeatにのってPauerが典雅な旋律を紡ぎ出していく。決して甘すぎることなく耽美的になることもなく、ほどよく甘美で切ないMelodyにグッとくる。

欧州的なLyricalなイントロから始まる“My Little Girl”も疾走感に満ち溢れたリズム隊にのってPauerが縦横無尽に弾き倒すキレの良いタッチで力強く、これでもかと叩きつけるようなピアノが良い。気持ち、ありふれた旋律ではあるが、勢いとキレで圧倒する。鯔背なドラム・ソロも良き。

ベースのJimmy Woode作のタイトル曲“Blues Inside Out”。タイトル通りのご機嫌なBlues。Woodeのベース・ソロもイイ味出している。

ドラムスのTony Inzalaco作“Terra Samba”。これまた欧州らしい理知的な美しさが感じられるナンバー。躍動するリズム隊に小気味良いタッチのピアノが気持ち良すぎ。

Ellingtonの“Prelude To A Kiss”はStandardをガッツリ弾きこなし

アルバム最後をシメるのはWoode作の“The Man From Potters Crossing”ではマッタリBluesyにキメる。このあたりのバランスも良き。

(Hit-C Fiore)

  Jean Carnといえば、Black Jazz Recordsに素晴らしい4枚のアルバムを残しているDoug Carnの公私にわたるPartnerとして、71年の『Infant Eyes』、72年の『Spirit Of The New Land』、73年の『Revelation』と3枚の作品に参加していたSingerである。Georgia州Columbusに生まれたJean CarnことSarah Jean Perkins4歳の時にChurch Choirのメンバーとなり歌い続けてきた。Carnは歌うだけでなく、音楽に対する探求心からJuilliard School of Musicに進み、そこでさらに学問を深める計画を立てていたという。そしてJazz Pianist Doug Carnと出会い、2人は結婚する。Jeanが参加Black Jazzに残した3枚のアルバムでは、ジャンルを超え包み込むような抱擁感に満ちたScaleの大きなJeanのVocalが大きな役割を担っていた。Dougが参加した関係からかEarth, Wind & Fireの初期のアルバムでJeanはVocalを披露している。しかし、2人は別れ、Jeanは新たな道を歩むのだった。Sax奏者Azar Lawrence74年作『Bridge Into The New Age』やNorman Connorsの同年作『Slewfoot』に参加。さらに翌75年にはConnorsのアルバム『Saturday Night Special』でMichael HendersonとDuetした“Valentine Love”がR&B Chart10位とヒットしたことによりJeanはJazzの世界から一気にR&B/Soulへと新たな歩みを踏み出すのであった。Kenneth GambleLeon HuffPhiladelphia International Recordsと契約したJeanは、R&B/Soul Singerとして本作をリリースするのである。吹っ切れたかのように、まるで別人のように軽やかにSoulfulなVocalを披露するJean。Kenneth GambleとLeon HuffにDexter Wansel、McFadden & WhiteheadProduceを務めている。本作は、JeanがPhiladelphia  Soulを歌わされたのではなく、Philadelphia  SoulにJeanが新しい風を吹き込んだ作品といえるだろう。

 

 『Jean Carn』はJean Carn76年Philadelphia International Recordsからリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は “Free Love”。イントロから胸が高鳴る高揚感に満ち溢れたナンバーで、華麗に舞うStringsChorusを伴ってJeanがSoulfulに歌っている。

No Laughing Matter”は優美なStringsをバックにJeanの圧巻のVocalが堪能できるMidium。Jazzの香りも漂い甘さは抑え目なのが良い。後に登場するAnita Bakerにも共通するものを感じる。

Dexter Wanselが楽曲提供とProduceを担当した“I'm In Love Once Again”。これまたStringsが盛り上げる哀感漂う切ないLove Song。JeanとChorus隊の絡みも良き。後半のピアノ・ソロも素晴らしい

Kenneth GambleとLeon Huffが書いた必殺のBalladDon't You Know Love When You See It”。甘さを抑えて決してベタにならずJeanの実力が発揮されたナンバー。

Dexter Wansel作でProduceも担当したBalladWhere Did You Ever Go”。Scaleの大きいJeanのVocalがピッタリ。

続いてもDexter Wansel作でProduceの“You Are All I Need”。海辺と思われる効果音から始まり、CuteなJeanのVocalが堪能できるナンバー。咽び泣くSaxもイイ感じ。そしてバックのChorusが圧巻である。

軽快なDance TuneIf You Wanna Go Back”。時代柄、Discothequeな味わいが面白い。こういうCatchyでイナタい曲をJeanが歌うのがなんとも。

Vinnie BarrettVon Gray作の“You Got A Problem”もCatchyなDance Tuneながら、こちらは都会的で小洒落た仕上がりなのが面白い。

アルバム最後をシメるのは“Time Waits For No One”。McFadden & Whiteheadが楽曲とProduceに関わった曲で派手さはないが味わい深いナンバー。

Free Love/Jean Carn

(Hit-C Fiore)

 Claudio RocchiはMilanoに生まれ学生時代にBeat Bandを結成してキャリアをスタートさせた。10代でStormy Sixベーシストとして加入すると69年にリリースされたDebut AlbumLe Idee Di Oggi Per La Musica Di Domani』でBass、Acoustic Guitar、 Clavichord、Organを演奏してMulti-Instrumentalistの才能を発揮させ、一方でLeaderのFranco Fabbriと共にSongwritingでも貢献した。しかし、Rocchiは1作のみでバンドを脱退するとソロ活動の道を進み始める。PFMを結成する前のMauro Paganiが参加したExperimentalPsychedelic1stアルバムViaggio』を70年Aristonからリリースすると、翌71年には最高傑作と言われる『Volo Magico N.1』をリリースしProgressiveでPsychedelicなCantautoreとして高い評価を受け、唯一無二の存在感を示した。精神性と神秘的な音楽の探求のためにインドへの長期旅行に旅立った後に発表されたアルバム『Essenza』ではOsannaElio D'AnnaI GigantiのMulti-Instrumentalist Giacomo Di Martinoを迎え、即興演奏をより取り入れた個人的に大好きな作品に仕上がっている。 Trilok GurtuAktualaのメンバーが参加した『Il Miele Dei Pianeti Le Isole Le Api』に続き75年の『Rocchi』、76年の『Suoni Di Frontiera』というElectronicExperimentalな方向性で従来のファンの度肝を抜いた後に移籍したCramps Recordsから77年にリリースされたのが本作である。2作続いた実験的でElectronicaだったAvant-GardeでSound志向の方向性から再び思慮深い歌詞と味のあるVocalを聴かせるSinger-SongwriterとしてのClaudio Rocchiの才能を再び感じさせるアルバムに戻ったアルバム。とはいえ、初期のMeditativeでAcousticな作風からOrchestraを導入するなど幾分、Commercialな方向性も感じさせるのは時代の流れであろうか。個人的にはギタリストAlberto Cameriniの参加が嬉しい。

 

 『Fuoco』はClaudio RocchiCramps Recordsから77年にリリースしたアルバム。鍵盤にFranco Orlandini、ベースにPaolo Donnarumma、ドラムスにAngelo BranduardiのバンドのAndy Surdi、加えて興味深いのは3人のDouble Bass奏者、Enrico IntraのバンドやSawyでの活動で知られるJazz BassictのMarco RattiJoacchino D'AquilaFranco Corleviが参加し、数曲であるがギターのGilberto ZiglioliやSoprano SaxでAktualaのDaniele Cavallanti、そしてViolinで以前から参加していたPFM加入前のLucio Fabbriがソロを聴かせてくれている。

アルバム1曲目はピアノ弾き語り風に始まる “Ho Girato Ancora”。Stringsが寄り添い、ジワジワと盛り上げ、Alberto Cameriniのギターが唸りを上げ渾身のソロが炸裂していく。

Acoustic Guitarの響きとStringsが典雅な欧州風情を描き出す“Responsabilità”。AktualaDaniele CavallantiSprano Saxもイイ味を出している。

Franco OrlandiniがArrangementを担当した“Una Fotografia”もピアノ弾き語り風に始まり優美なStringsが盛り立てていく。

Guardando”は魅力的なRocchiのAcoustic Guitarの弾き語りから始まり、バンドの演奏が加わり、ウネりまくるベースや軽やかに歌うViolin、寄り添うStrings生命感躍動感を加える。Lucio FabbriElectric Violinソロも最高で、音響的にも前作辺りのElectronicaな要素も加わった素晴らしい仕上がり。

哀感に満ちたL'Orizzonte A Milano”もFabriのViolinがイイ味を出している。Progressiveな彩りOrchestraがPopで聴き易さを感じさせる。

抒情溢れるピアノ弾き語りのBalladNon è Stato Diverso”。甘美なStringsが盛り立てていく。以前のRocchiの作風からは考えられないが出来は良い。

アルバム最後をシメるのは“Festa”。BrassやStringsが加わって語りかけるように歌うRocchiの魅惑のVocalと一体となっているのが良い。

(Hit-C Fiore)

 Seu legado e seu som continuarão vivos e sendo reverenciados por muito tempo, o que você fez por nós é algo de um valor inestimável.

Obrigado Pe Grande.

Quiabo/Hermeto Pascoal & Grupo

(Hit-C Fiore)

 『Pretty In Pink』は映画を観る前にサントラ盤を気に入って、もしかして映画も面白そうかもと思って観たら、結構ハマったものだ。80年代に一世を風靡した所謂"Brat Pack" Filmの中の一作として知られているようだけど、今観ても80年代Cultueがど真ん中な感じで結構楽しめたりするのであった。単なる青春映画としてではなく(それだけだったら自分は観ようとは思わなかったかもしれない)、映画の中にRecord Shopが出てくるのだけれど、Annie Potts演じる店長のIonaのファッションとか店の様子(Record Shopが登場する映画はだいたい好きな作品が多い)、登場人物たちのファッションインテリア小物、この辺が実に興味深い。特に主人公の女の子が乗っていた車がPoor-Man's Porscheと呼ばれていたVolkswagen Karmann Ghiaなのが、一番のツボなのであった。車の免許をとったら絶対にのりたいと思っていた2ドアのCoupé(実際には自分は国産の中古車しか買えなかったのだが)で、しかも色がPink!、これにはやられた。Soundtrack盤の方は映画のEnding を飾った大好きなOrchestral Manoeuvres In The DarkOMD)の“If You Leave”で始まり、当時ドはまりしていたJesse JohnsonNew OrderEcho & The BunnymenSmithSuzanne Vegaといった80年代半ば英米(英国勢が多めだが)で人気を集めた連中の楽曲が集められ、当時を思い出すCompilation Albumとしても楽しめる。85年に公開された映画『The Breakfast Club』や86年の『Ferris Bueller's Day Offフェリスはある朝突然に)』の脚本/監督を務めたJohn Hughesが脚本を書き製作総指揮を担当した。 Billy Joelや Billy IdolのMusic Videoを監督していたHoward Deutchが初めて監督した映画で、自分としては映画も音楽も、なんとも楽しめて親しみがわく作品なのであった。

 

 『Pretty In Pink』は86年に公開されたHoward Deutch監督の同名映画のSoundtrack盤

アルバム1発目はOrchestral Manoeuvres In The Darkの“If You Leave”。彼ららしいチョッと惚けたPopな感覚が良い。

Left Of Center”はSuzanne Vegaの曲でJoe Jacksonがピアノを弾いていてSuzanne Vega Featuring Joe JacksonとCreditされている。

Jesse Johnsonの“Get To Know Ya”はPrinceの“1999”みたいなCheapなSynthesizerにのってJesseが歌う典型的な80年代Sound。これはイマイチ。後半に炸裂するギター・ソロのみが聴きモノ。

INXSの“Do Wot You Do”。これまた典型的な80年代サウンドだけどFunkyで勢いのあるVocalが良い。

映画のOpeningを飾ったThe Psychedelic Fursの“Pretty In Pink”。元々は彼らの81年にリリースされた2nd Album『Talk Talk Talk』に収録されていた曲で、映画用に再録音したもの。脚本を書いたJohn Hughesがお気に入りの曲だったそうで、それを映画のタイトルにしたとのこと。

New Orderの“Shell-Shock”。ちなみに映画で主演したMolly Ringwaldは彼らの大ファンであるらしい。

80年代に活躍した英国のSinger-Songwriter Belouis Someの“Round, Round”。これは中々Cathydeイイ曲。

Danny Hutton Hittersの“Wouldn't It Be Good”。84年にヒットしたNik Kershawの曲で、Three Dog NightのDannyがこの映画のためにCoverした。

Echo & The Bunnymenの“Bring On The Dancing Horses”。85年にリリースされた彼らのCompilation Album『Songs To Learn & Sing』に収録されている。

アルバム最後をシメるのはThe Smithsの“Please Please Please Let Me Get What I Want”。84年にリリースしたSingle“William, It Was Really Nothing”のB面だった曲。Vocalは苦手だが、Johnny Marrは本当に良い曲を書く。

 

Pretty In Pink/The Psychedelic Furs

Please Please Please Let Me Get What I Want/The Smiths

(Hit-C Fiore)

 Wailing Souls60年代に結成され現在も活動を続けているJamaicaのReggae Vocal GroupWinston "Pipe" MatthewsLloyd "Bread" McDonaldGeorge "Buddy" Haye3人によって,結成された頃はThe Renegadesと名乗っていた彼らは60年代初頭Joe Higgsの主催していたVocal Classに通っていた。Matthewsは以前、The SchoolboysのメンバーとしてPrince BusterのRecordingに参加していた。彼らは名ギタリストErnest RanglinBack SingerとしてRecordingを行いSingle“Lost Love”をリリースしている。そしてClement "Coxsone" DoddのStudio Oneで“Back Out With It”や“Row Fisherman Row”、The Classics名義で“Mr. Fire Coal Man”といったSingleを録音している。68年にThe Wailersの弟分としてWailing Soulsを名乗るようになってGeorge "Buddy" Hayeは脱退してOswald DownerNorman Davisが加入、“Dungeon”や“Thou Shalt Not Steal”などのを録音した。しかし70年代に入ってもThe Wailersとの混同を避けるためか、彼らはさまざまな変名で何枚もSingleをリリース、DownerとDavisが脱退、Hayeの復帰、Joe Higgsが短期間加入したり、メンバーも入れ替わりが続くが、 Black Uhuruの創設メンバーRudolph "Garth" Dennisが加入するとProducer Joseph Hoo KimとChannel One Studioと提携してThe Revolutionariesをバックに“Back Biter”や“Very Well”、“Things and Time”、“Jah Jah Give Us Life”、“War”などヒットを世に出した。独自のLabel Massiveを設立して“Bredda Gravalicious”や“Feel the Spirit”もヒットさせた。本作は、それらのヒット曲を中心にして79年にリリースしたアルバム。ドラムスのSly DunbarにThe Revolutionariesの鍵盤奏者Ansel CollinsやギターのRadcliffe "Dougie" BryanBo-Pee Bowen、ベースのBertram "Ranchie" McLean、ここではギターのRobbie Shakespeare、TromboneのVin Gordon、Tenor Saxの"Deadly" Headley Bennett、PercussionのUziah "Sticky" Thompsonに加えTarzan Nelsonのピアノ、 Rico RodriguezのTrombone、Cedric "Im" BrooksのAlto Saxといった名手の演奏も充実した歌良し、曲良し、演奏良しの名盤である。

 

 『Wild Suspense』はWailing Soulsが79年Island Recordsからリリースしたアルバム。MangoからリリースされたCDには加えて7曲のDubが追加されたお得盤である。

アルバム1発目はAnsel Collinsが弾く心地良いOrganから始まる“Row Fisherman”。上述のStudio One時代のSingle曲の再演だけど、Tempoを落として、よりドッシリした彼らの貫禄が感じられる出来。

Rudolph "Garth" DennisがLead Vocalを担当した“Slow Coach”もホンワカしたChorusがイイ感じ。

We Got to Be Together”はMatthewsの男くさいSoulfulなVocalに寄り添うChorusの魅力がタップリ味わえるお気に入りのEarthyなナンバー。

Feel The Spirit”はLloyd "Bread" McDonaldがLead Vocalを担当。全員がLeadwo取れるのが彼らの強みで心地良すぎるChorusもバッチリ

Bredda Gravilicious”はSly Dunbarのドラムスに高らかに鳴り響くHorn隊で始まる。Radcliffe "Dougie" Bryanのギターもイイ感じ。

タイトル曲“Wild Suspense”は再びDennisがLead Vocalで、浮遊感のある心地良いChorusとAnselのOrganとDougieのギターも最高。

高揚感に溢れるThey Never Know”もOrganとHorn隊をバックにVocalとChorusがご機嫌ですな。

再びLloyd "Bread" McDonaldがLead Vocalを担当した“Black Rose”は、これまたマッタリ心地良いOrganから始まりChorrusも極楽気分

甘美で切ないMajor SeventhのChordにのってVocalと寄り添うChorusが最高の“Something Funny”。AncelのOrganも良いけどDougieのギターは最高ですな。

アルバム最後を飾るのは高らかに鳴らされるHorn隊で始まる“Very Well”。

Feel The Spirit/Wailing Souls

(Hit-C Fiore)

 BlitzDerbyshire州はHigh Peak特別区にある小さな町New Mills80年に結成されたPunk Bandで、既にご紹介したThe Businesらと共にPunksやSkinheads、社会に不満を抱くWorking-Classの若者たちによって70年代後半に始まったOi!のMovementの中にいたバンドである。サッチャー政権下の労働者階級の失業や労働者への抑圧政府や警察、その他権力による不当な嫌がらせに対する怒りOi!のバンドたちの歌詞に反映され、その怒りは形骸化/商業化されつつあったPunkな連中にも向けられた。Blitzの4人のメンバーはPunks2名とSkinheads2名というゴリゴリのOi!Punkではあるものの、所謂Hardcore PunkのSpeed命とはかけ離れた、70年代London Punkの影響下にあるところが面白い。歌詞の内容はサッカーや労働者階級の暴力について歌うものもあり、まずは何より楽曲がCatchyで、良く書けており、思わずシンガロングしてしまうところが良い。バンドのLeaderと思われるギタリストNidge Millerの才能は、もっと評価されても良いだろう。VocalのCarl Fisher、ベースのNeil McLennan 、ドラムスのCharlie Howeとの4人編成ではあるが、実際はMillerのワンマン・バンドであったと言われている。とはいえ、ゴリゴリと手数多く意外とMelodicなラインを弾くMcLennanのベースや、男気溢れドスの効いたFisherのVocal、勢いがあり引き締まったHoweのドラムスと、バンドとして、Oiのバンドの中ではそれなりに人気と実力を兼ね備えた存在であった。No Future Recordsと契約して81年に『All Out Attack E.P.』をリリース、82年の7" Single“Never Surrender / Razors In The Night”が評判を呼び、翌83年Debut Albumとなる本作をリリースしている。

 

 『Voice Of A Generation』はBlitz83年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は“We Are The Boys”。ゴリゴリのベースに歪みまくったギター、野郎Chorusの男気Punkは思わずシンガロングCatchyな部分も含めて盛り上がりまくりの最高のOi Punk。

Time Bomb”もガンガン突っ走る荒々しさ満点のOi!Punk。サビでShoutするVocalもカッコイイ。

Voice Of A Generation”は激熱暴走電車のごとく突っ走る大好きなナンバー。

Bleed”はゴリゴリ弾き倒すベースで始まり歪みまくったギターが加わるも、これまたどこかCatchyなナンバー。

T.O.?”は疾走するベースにのって歪んだギターをガシガシとキメまくる大好きな曲。

勢いにのって攻めたてるギター男っぽいShoutを随所で炸裂させているご機嫌な“Propaganda”。

ゴリゴリしたベースで始まる“Criminal Damage”は激カッコイイっす。

Lou Reedの“Vicious”もEdge立ちまくりのPunk仕立てで最高。ギター・ソロも素晴らしい

Singleにもなった“Warriors”は疾走感に満ちながらも思わずシンガロングのCatchyなノリが良き。

驚きの16Beatのイントロから激走Punkに展開する“Nation On Fire”。

Primitiveなドラミングで始まりドスが効きまくったVocalが圧倒する“Your Revolution”。

70年代Punkなイントロから野郎Chorusが吼えるシンガロングが最高な“Scream”。ギター・ソロも良き。

イントロから唸りを上げるギターが最高な“4.Q.”。

Escape”もギターのRiffが激カッコイイ。これまた男気シンガロングなナンバー。

イントロのRiffシンガロングなサビがご機嫌な“Moscow”。

最後をシメるのは、微かにNew Waveの香り漂うClosedown”。

Propaganda/Blitz

 

(Hit-C Fiore)

 Silver PlatinumMiamiから80年代初頭にScene姿を現したFunk Band。なんとバンドのメンバーにはGary Cooper!がCreditされていることで即買いであったのだが…。Michael Jackson激似のVocalにまず驚かされてしまうが、メンバーにMichael Johnsonという名前が。これは一体…、その正体はMichael SterlingことMichael T. Johnsonであった。Michael Sterlingは80年代から90年代にかけて、その甘い歌声を生かしてR&B系Solo Singerとして活躍してアルバムを何枚もリリースしている。元々はFloridaの Cuban Music Sceneで、そこそこ名の売れていたLatin系Singer Ray FernandezRay & His Courtでベースを弾いていたのだが、幼馴染のギターと鍵盤奏者で歌も歌えるGary Cooper!(P-Funk Familyの一人で あのBootsy's Rubber BandGary Mudbone Cooperとは別人であった)と、Percussion奏者Jerry McCormickとSilver Platinumを結成する。CooperはMiamiのT.K. Productions傘下のDriveから77年に“We've Got A Winner”というご機嫌なFunkの7", 45 SingleをリリースしたThe Florida Playersというバンドに絡んでいて楽曲も提供していた。それにしても裏ジャケットにしっかりGary Cooperという名前がCreditされているのだから驚いてしまう。まあ、同時に3人の写真も裏ジャケにあるので別人であることはすぐ分かるのであるが。その3人の演奏が素晴らしい。まずMichael JohnsonのバッキバキのSlap Bassがご機嫌だ。またBonnerue Horns Of Miamiと名付けられたHorn隊もキレキレで鋭角的に切り込んでくるところが実に小気味よい。また甘美なBalladも中々の出来である。全体的に同時期に日の出の勢いであったCameoの影響が感じられるが、やっぱり80年代初頭のFunkは名作が多いと思わされる作品である。残念ながら彼ら唯一のアルバムとなってしまうのではあるが。

 

 『Silver Platinum』はSilver Platinumが81年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目は、その名も“Dance”。ビシバシと気持ち良くキメるHorn隊に、寄り添うStringsCoolなエレピ若々しくも黒光りするVocalとかけ合うChorus隊、そして何より炸裂しまくるSalp Bassがご機嫌である。

You Can't See It”もバッキバキにキメまくるSlap Bassが良き。Michael Jackson風のVocalもイイ感じの甘さ漂うMidiumではあるがFunk魂満ちたナンバーに仕上がっている。

I Made It”は哀感漂うStringsで始まるBallad。この時期に登場した他のFunk Band同様にEarth, Wind & Fire影響下にあるが完成度は高い。SoulfulなVocal2人の絡みは絶品である。

I Am”はMichae Jackson似のVocalがイイ感じのDiscotheque

Funky Part”は同時期のCameoあたりを思わせるSharpに切れ込むHorn隊に、これまたご機嫌なSlap BassソロがFeatureされた小気味よいFunk。

Hit And Run”はHorn隊とStringによる煌びやかなイントロからドッシリ攻めたてるFunk。ビシッと揃ったChorus隊は、やはりCameoの影響を感じさせる。地味ではあるが、タメをきかせたリズム隊がしっかり土台を支えている。ウネるSynthesizerソロもカッコイイ。

Stringsと鍵盤が奏でる激Sweetなイントロから雰囲気タップリ必殺のBalladOne More Chance”。

Party's Over”もCameo並みのキレキレのHorn隊引き締まったリズム隊Up TempoのSpeed感を増すDisco風味のFunk

アルバム最後をシメるのは1分チョイで終わるRepriseDance (Reprise)”。

(Hit-C Fiore)

 Yesの最高傑作は『Tormato』ではないかと思っている。YesやPink FloydDeep PurpleLed Zeppelinといったあたりは、自分がPunkドップリの中学生だった頃、尖りまくっていたPunkな姐さんお兄さん方から曲が無駄に長い歌詞が自己満足に浸り過ぎ現実感もなく、何より退屈だなんだと散々バカにされ嘲笑されていたのだった。彼らにとってみれば、山下達郎とか大瀧詠一も同様で、鈴木英人永井博のイラストから、わたせせいぞうの漫画まで徹底的に笑いものにされていた。その後、なんかの機会で、『ハートカクテル』な世界って今最高にダサいよね、と当時仲間内でとびきり尖っていて、その後アパレル業界で活躍するCool Beautyな姐さんが放った言葉は今でも心に残っていて、今日に至るまで彼女と思い出話をする際のお笑いネタとなっている。「いつまで夢見てんだよ、おっさん、現実見ろや」、当時の彼らの声が聞こえてくる。そんな中にあって自分はYesもFloydもPurpleもZeppelinもヒッソリと聴いていたのだった。彼女たちの音楽仲間でもある、自分の親友のお姉さんが聴かせてくれたのだった。FloydとZeppelinはジャケットがカッコ良かったし、PurpleもYesも変すぎる意味不明のジャケットが妙に気になっていた。彼女の部屋に行ってSabbathELPHeepなんかと一緒に聴かせてもらったのだ。Old Waveだとか揶揄され、彼らの中世の貴族みたいなヒラヒラした衣装を笑われつつも、FloydとSabbathとZeppelinについては、自分としては気に入った曲もあったし、ELPはお馬鹿なノリが好きだった。でも、YesとKing Crimsonは苦手なのであった。宮殿とか神話とか啓示とか大仰で深刻ぶって説教くさい感じと曲が長すぎ演奏も冗長に感じられたから。深遠とか壮大とか荘厳というものが古くさく時代遅れになっていた。それでもCrimsonの『Discipline』とYesの『Tormato』には10代の自分には好きな曲があった。曲が短いというのもあったかもしれない。ちなみにPunkな姐さんたちにはMotörheadとかThin LizzyCanNeu!、Canterburyの連中、そしてなぜかVDGGとSabbathといったところは人気があったのだった。

 

  『Tormato』はYes78年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はSteve HoweTraditioalな香りも漂うギターから始まる“Future Times”~“Rejoice”。深刻で大仰に聞こえる歌詞を甘ったるい少年合唱団のようなVocalで歌う従来の宗教臭い路線はお伽の国に長居せずCompactにまとめているのが良いAlan White軍隊行進曲風ドラミングが面白い

Don't Kill The Whale”は自分がYesがなぜ苦手なのかが良く分かるタイトルと演奏。こういう歌詞はなあ…、ギターと鍵盤も手癖で弾きまくるソロが長く、せっかくJazzなど引き出しの多いPatrick Morazを迎えた『Relayer』でもImprovisationが凡庸になってしまうこのバンドの限界かもしれない。

Madrigal”は中世貴族みたいなヒラヒラ袖の衣装を着て勿体ぶってHarpsichordを弾くMusic Videoが全て。ただし、余りにギターも鍵盤も音数を詰め込み過ぎて「お互いを打ち消し合ってしまう」悪い癖は、この曲に限っては酷くなく、Acoustic Guitarとのバランスがとれている

Release, Release”は活気に満ちてPunk以降のPrimitiveなノリを意識したようでもある。歓声のSEPolyphonic Synthesizerがさすがに時代を感じさせる古くさいところがアレだが、結構ノレる曲である。

Arriving UFO”はRick Wakemanの弾くイントロが最高。ただ曲は長くてギター・ソロも退屈。

Circus Of Heaven”は従来の彼らの型通りの陳腐な哲学思想が出てしまうが、とっちゃん坊やVocalJon Andersonらしい曲ではある。終盤の子供の声は勘弁してほしいところだけど。

アルバム最後をシメるのはYesで一番好きな曲On The Silent Wings Of Freedom”。Chris SquireRickenbacker Bassが躍動するピロピロ弾きのギターも音響的には面白いドリフの舞台替えのTheme感あるギターソロが最高。

Madrigal/Yes

(Hit-C Fiore)

 Lloyd McneillWashington, D.C.に生まれたJazz Flute奏者。ComposerProducerとしても卓越した才能を持つMusicianであるが、画家詩人写真家教育者としても知られるMultidisciplinaryな人物である。Lloyd Mcneillは60年代には公民権運動に関わり、Ballet絵画Brian Enoに先駆けて空間芸術Installations)のための音楽を制作し続けてきた。McneillはAtlantaMorehouse Collegeで美術と動物学を学んだ後、Howard Universityに進学し、63年に同大学の美術学修士号を取得した最初の人物となった。64年から65年にかけて、ParisL'Ecole Nationale Des Beaux Artsに留学してLithographyの勉強をさらに深めていき、65年にはPablo Picassoと、そのPartner Jacquelineと友人関係を結んだ。作曲家のHale Smithに作曲を学び、Smithと親交のあったEric Dolphyにも音楽理論とFluteを、また、Harold JonesにClassical Fluteの技術を学んだ。JazzとClassical Musicを身に付けたMcneillは、70年代を通じて、美術の職に加え、Afro-American Musicの歴史や、Fluteの個人Lessonも手がけ、Rutgers UniversityでのJazz Studies Programの立ち上げにも尽力した。そして、AfricaやBrasilを旅してJazzにBrasilやAfrica、LatinなRhythmを融合させると同時にMusic Anthropologistとしても確固たる地位を築いていった。McNeillといえば、70年にリリースされたThe Lloyd McNeill Quartet の『Washington Suite』であるけれど、Nina SimoneやRon Carter、Cecil McBee、そしてBrasilのDom SalvadorやPaulinho Da Viola、Paulo Moura、Martinho Da Vila、Naná Vasconcelosらと共演してきたMcNeillが米国とBrasilのMusicianと共に作り上げた傑作が本盤である。深遠且つ幽玄なだけでなくLatin的な自由な解放感と躍動感が味わえる隠れた名盤といえよう。

 

 『Treasures』はLloyd Mcneill76年に自身が設立したLabel Baobab Record Co.からリリースしたアルバム。ベースにCecil McBee、ピアノにDom Salvador、ドラムスはBrian BrakeとBrasil出身のPortinho、PercussionにRay Armando。

アルバム1曲目は“Griot”。Dom Salvadorが弾くピアノをバックにMcneillが吹く神妙でMysteriousなFluteで始まり、自由自在に飛翔し空間を駈けぬけていく。Dom Salvadorのピアノもいつもとは違うFreeな香りをふりまきながらModalで浮遊感に満ちた響きを生みだし、どこかEthnicMeditaitionalなAtmosphereが全体を包んでいく。Cecil McBeeのベースはMinimalにBottomを支え、心地良い雰囲気に思わず身体が動き出してしまう。

As A Matter Of Fact”は軽快で心が弾むようなイントロから惹きこまれてしまう。Cecil McBeeの心地良くDriveするBass Runningにのって、McneillのFluteは軽やかに宙を舞う。Dom Salvadorの優美に躍動するピアノ・ソロも極上である。

Dom Um Romaoが75年にMuseからリリースした大好きなアルバム『Spirit Of The Times (Espirito Du Tempo)』にも収録されていたDom Salvador作の“Salvation Army”。こちらはRay ArmandoPercussionCecil McBeeのMinimalなベースから始まり、これまたDom Salvadorの小気味よいピアノとMcneillの天高く飛翔していくようなFluteが加わると、極上の気分

最後をシメるのはStandardの“You Don't Know What Love Is”。McneillのFlute独奏で始まり、Dom Salvadorの華麗な指さばきで奏でられる典雅なピアノが素晴らしい。

(Hit-C Fiore)