Yessongs/Yes | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  YesのこのLive Albumは発売された当時レコード3枚組というボリュームであったわけで、それでもファンはためらわず購入したのであろう。レコードと寸分変わらぬ完璧な演奏力というのが、当時のYesの売りであったわけであるが、確かに今になってみれば微妙な編集ダビングがあることがわかってしまったとはいえ、多くのロック・ファンは初めてこのLive盤を聴いた時には、本当に生でYESがこのレコードを再現するような演奏をやってのけたんだと驚かされたに違いない。ある意味、ロックは夢を売るものであるから、これは大正解。音質とか、ダビングしたとか、つぎはぎの編集であるとか、どうでもよろしい、ただ、黙ってこの熱気と迫力に満ちた演奏を楽しめばよいのであって、それこそ細かいことは気にしないことがロック。そして完全無欠の演奏よりは、多少荒々しく危なっかしいところがあってもハッタリに満ちていた方がロックのDynamismが感じられて面白いELPがそれをDéformerして人気があったように、そういう意味では本作も完璧なロックのLive Albumであるからして売れたのである。実際にはこの当時、彼らより遥かに高い演奏技術や複雑で創造性に満ちた楽曲や構成力、Arrangementsを持った連中は、南米や東欧、南欧は勿論、英米にも多数存在していたのであるが、大切なことは、この3枚組のアルバムが UK Albums Chartで7位US Billboard 200で12位を記録したということである。前作の『Close to the Edge』は前者で4位、後者で3位を記録していたわけだから、当時これだけのロック界の人気バンドで、レコードと同じレベルの演奏を再現したLive Albumを世に出したのは例がない。Punkが登場してマントを羽織ったヒラヒラ金ぴかのステージ衣装や大仰で冗長な演奏は嘲笑の対象となってしまったが、後追いの自分としてはPunk上がりとはいえ、中学生の頃、YesのLive盤に感心したのだった。73年という時代を考えた時に、哲学的、宗教的ともいえるテーマを、いかにも難しそうな演奏をしてるような雰囲気で、ハッタリ感タップリに演奏する方が、涼しい顔して難易度の高い超絶技巧をさりげなくキメる連中より当時のロックな雰囲気を反映し、偉大なエンターテイメントとして成立し人気を集めていたのが古き良きこの時代。Studio盤とTempoが異なったりChorusが乱れるのもロックな勢いがあって良しクラシックやSFからの引用もいかにもで、ジャケットともども当時の夢見る少年少女の人気を集めたのも納得のLive Albumである。

 

 『Yessongs』はYes73年にリリースした3枚組となる初の公式Live Album。インプロ志向のBill Brufordが脱退しTourが始まるわずか1週間前Alan Whiteが新メンバーとして加わった72年の『Close to the Edge』Tourの音源が収録されている。

アルバムはOpening (Excerpt from 'Firebird Suite')”で始まる。Tapeの再生による小澤征爾が指揮するBoston Symphony Orchestraが演奏するIgor Stravinskyの名曲で期待が高まっていく。

Close to the Edge』から“Siberian Khatru”。演奏は勿論、この曲のキモとなるChorusも結構頑張っている

アルバム『Fragile』から“Heart of the Sunrise”。Chris Squireのベースがグイグイ引っ張りHardでAggressiveな部分静かにJon Anderson歌い上げる動と静のContrastがついたYesの代表曲。

The Yes Album』から“Perpetual Change”。ここではこれでもかと弾き倒すSteve Howeのギターが聴きモノ。

Close to the Edge』から“And You and I”。Andersonお得意の壮大なThemeを歌い上げMellotronPedal Steel Guitarが雰囲気を盛り上げている。Studio盤のPastralな雰囲気が薄れてしまっているのが残念。

Fragile』からHoweギター・ソロをFeatureした“Mood for a Day”。

Wakemanソロから“Excerpts from 'The Six Wives of Henry VIII”。

代表曲“Roundabout”はWakemanとHoweのソロの掛け合いが良い。Chorusは残念

I've Seen All Good People”は冒頭のChorusは頑張った

Popな“Long Distance Runaround”からChrisのベース・ソロThe Fish”へ。

Close to the Edge”は少々荒い演奏だが勢いがありChorusも良し

Yours Is No Disgrace”は臨場感たっぷりにHoweのギターが暴れる

最後をシメるのはRobert A. Heinleinもビックリのあまりにもまんまの“Starship Trooper”。SF的なThemeで幻想的に盛り上げるのがYesらしい。

(Hit-C Fiore)