今年も来日して自然体で音楽への愛情に溢れた演奏とピースフルな笑顔
を披露して観客の心を満たしてくれたジャマイカの笠智衆、Rico Rodoriguez。
日本のミュージシャンとの交流はお馴染みだが、Ricoは61年に渡英してから
ジャマイカとイギリスを行ったり来たりして、ずっとイギリスの音楽とジャマイカ
の音楽の架け橋となって、その温かみのあるTbで魅了してくれる人だ。
Georgie FameもVan MorrisonもPaul師匠も、Jools HollandもRico翁の
ファンだという。
2ToneレーベルでのSpecialsとの活動で彼を知った人もいるだろうしTrojansや
Bad Mannersとの来日で彼を知った人もいるだろう。
それ以外でも27歳で渡英して以来、Ricoは数々のイギリスのミュージシャンと
共演している。
Georgie FameのBlue Flames,John Martyn,SelectorやChas Jankelあたりとも
共演しているのが興味深い。
『That Man Is Forward』は2Toneレーベルから81年に発表された。
この作品は、Sly&Robbie,Mikey Mao Chungといった、Peter Toshのバック
バンドであったWord,Sound&Powerらのセッションと、Earl Chinna Smith率いる
Soul Syndicate中心のセッションから成り スカやジャズ、カリプソといったRico
の幅広い音楽性が発揮された作品。
Ricoのオリジナル3曲に加えて、Charlie Parkerの“Fiesta”やLionel Hampton
の“Red Top”まで飛び出す。
『Man From Wareika』というスピリチュアルな傑作が、非業の死を遂げた盟友
Don Drummondへの鎮魂歌のような緊張感を感じるのに比べて、本作はRicoの
持ち味のハートウォームなボントロの響きがより、牧歌的で心地よい。
実はRicoはDrummond同様、Harold McNairを生んだ名門アルファ・コテイジ・
スクールの出身。
「わしゃ、ジャズ屋じゃないしのう…」なんて言って、ColtraneやCliford Brownに
言及したりして、これまでも“Take Five”をやったりしてるし、なんといっても来日
公演でもおなじみサッチモの“What A Wonderful World”をやってりしてるのが
お茶目。
そして、しっかりRicoのスタイルにしているところがお見事。
Trombone好きの自分としてもRicoとCurtis Fullerは特別な存在だ。
テクニックだけでは語れない音楽の一番大切な部分を教えてくれるから。
Hit-C Fiore