Os Mutantesといえば、Rita Leeである。勿論、Arnaldo BaptistaもSérgio Diasも自分は贔屓にしているMusicianなわけで、3人揃い踏みのOs Mutantesは最高なのであるが、やっぱり紅一点のRita姐御の存在感は衝撃的なのであった。そんなRita Leeも、とうとう虹の向こう側に旅立ってしまった。中心人物のArnaldo Baptista、弟でギタリストとしての才能にも恵まれていたSérgio Dias、そしてBrasilのRockの女王と謳われたRita Lee、この3人の役者が揃ってこそのこそのOs Mutantes、『昭和残侠伝』シリーズの藤純子、高倉健、池部良の偉大な御三方みたいなものである。TropicáliaというMovementを支えたCaetano VelosoやGilberto Gilと共に必ずOs Mutantesの名があがる。けれど、実際のところOs Mutantesの場合は、CaetanoやGilbertoのような身も心も捧げて軍事政権の悪行に抗うといったSeriousさとはまた別のところで
、あっけらかんとRockな勢いで、このMovementに乗っかった感じがして微笑ましい。出たとこ勝負の勢い任せ、その自由奔放でネジが外れちゃったかのように怖いもの知らずに暴れまくるところがOs Mutantesの面白さである。The BeatlesのCover BandをやっていたというArnaldo BaptistaとMagdalena Tagliaferroの元でClassicalなピアノ教育を受け、女性3人組のTeenage Singersを結成してFolkyな歌を歌っていたRitaが出会ってOs Mutantesが結成された。Debut Album『Os Mutantes』をリリースして68年7月にリリースされた名作『Tropicalia ou Panis et Circencis』へ参加、69年リリースのアルバム『A Divina Comédia ou Ando Meio Desligado』から参加したベースのLiminhaとドラムスのDinho Lemeが正式メンバーとなった『Jardim Elétrico』が71年にリリースされる。本作は、それに続く通算5作目となる彼らのアルバムである。残念ながら本作を最後にRitaがはバンドを脱退してしまうのであった。そしてArnaldoとRitaによる従来のMuatntesらしさと、演奏時技術に長けたDiasとLiminhaによるProgressiveでHardな音楽性が拮抗した方向性が混乱した作品となった。それでも面白いのがMutantesである。
『E Seus Cometas No Pais Do Baurets』はOs Mutantesがリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は、いきなりスカシたロッケンロール“Posso Perder Minha Mulher, Minha Mãe, Desde Que Eu Tenha O Rock And Roll”.。嬌声が飛び交う中、Organソロも飛び出したりして盛り上がる。それにしても人を食ったようなタイトルが如何にも彼ららしい。
Rita Leeの優しく語りかけるようなVocalが絶品の“Vida de Cachorro”。Acoustic Guitarといい、The Beatlesの“Black Bird”を思わせるPastralな仕上がり。“犬の一生”というタイトルも最高。
LiminhaのベースがFunkyにウネる“Dune Buggy”。このお馬鹿な感じはP-Funkを彷彿とさせる。なにでにリズム隊がスゴい。
Ritaの色っぽい語りで始まるLatin Rock“Cantor De Mambo”。こういう曲ではSérgio DiasのギターもSantanaに負けじと弾き倒し。
“Beijo Exagerado / Todo Mundo Pastou”は、このアルバムを象徴するような散漫でおふざけたMedleyだけど、それが何とも魅力的なのが、またMutantesらしい。
“Balada Do Louco”はThe Beatlesの影響下にあるBallad
だけどSynthesizerやSitarが飛び交い、次第にネジが外れていくのが良い。RitaとArnaldoの共作。
“A Hora E A Vez Do Cabelo Nascer”はDiasとLiminha主導と思われるHard Rock。HeavyなギターのRiffで始まりOrganも激しく煽る。
Luiz Gonzagaとの仕事でも知られるSão Paulo出身の作曲家Hervé Cordovil作のヒット曲“Rua Augusta”。熱いRockな仕上がりが良い。
Church Organで始まる“Mutantes E Seus Cometas No País Do Baurets”。フォービートも飛び出すインスト曲と思わせて最後にVocalが登場する。Diasのギターが最高。
アルバム最後をシメるのは“Todo Mundo Pastou II”。この脱力っぷりが良い。
(Hit-C Fiore)