Build Up/Rita Lee | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  もし、あの時Rita Leeが芸術を弾圧する度重なるBrazilの軍政の悪事に腹を立ててアレを実行していたなら一体どうなっていただろうか?なんて想像をしてしまう。とにかく、このSão Paulo生まれの破天荒な姐さんは、古希を迎えても相変わらずパワー全開である。Ritaといえばご存知、あのあらゆる芸術と報道を検閲し圧力と弾圧を続けた軍事政権に対するTropicáliaCaetano VelosoGilberto Gilと共に支えたOs Mutantesのメンバーであったわけだが、彼らの持つ出たとこ勝負というか、イイ意味で思いつき重視のお茶目でお気楽、適当感、瞬発力に満ちたイメージというのはCaetanoやGilbertoのSeriousさとはまた別の意味で人々から支持されるWildで肉体的ともいえるロックなパワーを、このMovementに与えていたような気がする。この如何にもおフランスなジャケットからして、その筋の方々から再評価されまくったRitaの1stアルバムも、そのハチャメチャ感とRockなSpiritはしっかり打ち出されている。このソロ・アルバムはOs Mutantes在籍中にリリースされているわけで、ProduceもメンバーのArnaldo BaptistaとバンドのArrangementsを担当していたMaetro Rogério Dupratが手掛けているのも良い。名門Universidade de São Pauloに入学し英語は勿論、フランス語スペイン語イタリア語まで話せる才媛で女優を目指していた頃もあったRita姐の気ままなお転婆感が満載なのである。勿論、作曲だけでなくOs Mutantesのメンバーもアルバムに参加しており、ぶっ飛んだPsychedelicな香りも仄かに漂うのが素晴らしい。そういえばRita姐がギターを弾いている姿は最高にカッコイイのである。おフランスなWhisperだけじゃないのである、さすが姐さん、Rockですな。

 

 『Build Up』はRita Lee70年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はNostalgicなStringsで始まるタイトル曲“Sucesso, Aqui Vou Eu (Build Up)”。Ritaも最初はジャケットのように、おフランス的なお嬢様風のWhisper Vocalでしっとり歌いあげるのかと思いきや、バックの演奏がMusicalのように展開するのに合わせて見事なハッチャケぶり。最高っす。Arnaldo BaptistaとRitaの共作。

Calma”もArnaldo Baptista作の名曲で、Catchyなサビを持ったSoul風味も魅力的なナンバー。

Rita自作の“Viagem Ao Fundo De Mim”もおフランスとCountry Musicの融合的な世界をRitaがお嬢なVocalで魅了。

Precisamos De Irmãos”はエロでCuteなRita姐のWhisperに一発KO。さりげなく洒落のめしたStringsもさすがMaestro Rogério Dupratのお仕事。

再びArnaldo BaptistaとRitaの共作“Macarrão Com Linguiça E Pimentão”はMagicalでPsychedelicなMutatesっぽさが感じられる甘美で摩訶不思議な世界。

フランスのGeorges Moustakiの“José (Joseph)”は如何にもな、そして魅惑のおフレンチポップス

Hulla-Hulla”はSlack-Key GuitarのSlideが心地良い気分はワイハなナンバー。

And I Love Him”はご存知The Beatlesの“And I Love Her”のCover。ドスのきいた低音で歌うRitaとFunky風味のバックの演奏が面白い。

Tempo Nublado”はHammondの使い方などにチョイSka/Reggaeっぽさを感じるのが面白い。

Prisioneira Do Amor”はTangoかよな節操なさが最高。しかしRita姐は何やってもバッチリっすな。哀感漂うBandneonの調べにノって、さすが女優さんを目指しただけあって成りきりぶりが素晴らしい。

最後を飾るのはPsychedelicなEu Vou Me Salvar”。ロックな演奏が素晴らしい。

 

José (Joseph)/Rita Lee

(Hit-C Fiore)