シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記 -4ページ目

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】伊豆の踊子 脇のエスプリ

日本人の心に残るラブストーリーとは?


映画化がおおい作品ともいえます。

「伊豆の踊子」を主演、美空ひばり(33年・野村芳太郎監督)、吉永小百合(63年・西河克己監督)、山口百恵(74年・西河克己監督)を見比べました。

それぞれその時代の映画の位置づけや企画の特徴がわかり、とても面白かったです。

特に美空ひばり作品は野村監督で、社会派の視線に感動しました。

「伊豆の踊子」は野村監督が35歳の時の作品で、「砂の器」の20年前なのですが、社会派の才気を感じさせます。あと、田中絹代、鰐淵晴子、内藤洋子主演作があるそうです。

そしてあらためて原作がたいへん計算された小説であることを勉強しました。

短篇ほど計算が求められるという、まさしく教科書です。


冒頭で旅芸人と道を同じくする学生。

峠の茶屋につくと、お婆さんがいて、奥ではお爺さんが中風で寝こんでいます。

かたや生命力にみなぎる美しい踊子。生命への視線の対比を感じさせます。

学生がそう感じているのかどうかにはふれられず、小説の「話者の視線」として命と恋へのテーマへ導入します。心をとざしていた学生は一座の家庭的な温かさに触れ心をひらき、恋心を募らせます。そして人生の酸いも甘いもしりすぎた四十女の兄嫁の母。流産と早産で子どもを亡くした兄嫁。彼女たちと踊子との対比が、プロセスに効果をあげ、あどけない踊子の未来への危惧と同情に、ますます恋心をふくらませてゆきます。対比、対比、対比、対立と別れ…といった構成ですが、対比とは脇役ですね。

作者の人生観の滲みでる、本当に味わいのある脇役が、小説も映画も映えさせます。

脇に作者のエスプリを。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】越前 ソゥル ソゥル

越前へ友人の取材についてゆき、自由行動となり、ひとりで隣町へタクシーでむかいました。

漆塗りをみにいく予定が運転手さんに伺うと、訪れるのが念願だったお能の町と同じ方面としり、急きょ変更。

以前より面打ち師がいらっしゃるというその町に、というよりもその人に、たいへん興味があったからです。

まるで寅さんのような風まかせです。


伺えば、幸いにも運転手さんのお父さんがその町のご出身ということ。

お父さんに電話でお能ゆかりの地を詳しくたずねては、案内してくださいました。

わたしの父のふるさとと土の香りや峠の風景や素朴なお人柄が似ており、運転手さんに「ふるさととおなじ匂いがします」と話しながら探しあてた処には、能面を飾る館と工房がありました。

こちらもみせてくださいと柔和なおももちの工房の奥さまにお願いし、奥の囲炉裏端の暗やみへたどりつくと、念願のお目にかかりたかった面打ちの先生がいらっしゃいました。

髪と髭は仙人のようにながく、やさしく奥深いお目元をされた先生から伺うと、わたしの父のふるさとでながく修行をなさっていたそうです。


越前の能には歴史があり、観阿弥世阿弥の能以前の鎌倉末から南北朝にかけて、すでに越前では猿楽がそうとう高い水準にあったと伝えられています。

冬にはかなりの雪がつもるというその山深い工房へは、教えを請うためにはるばる東京芸大の先生もこられるそうです。


能の心を打ちこむ面打ち。

あらゆる芸術に通じる面打ちの精神の、奥深いお話を伺いました。


魂が呼ぶようにお目にかかれた先生ですが、能は、わたしにとって壮大な勉強を要します。

必ず今度はもっとゆっくり参ります、と約束して先生と奥さまにお別れしました。

おふたりはとてもやさしい笑顔で、手をふって見送ってくださいました。

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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】Cold Dog Soup

貧しい詩人たちが集うバーを舞台に、「創造的な仕事をする者は冷めた犬のスープを飲まなきゃならないこともある」と歌う、ジェイムス・マクマートリーという人のお父さんも小説家だったそうです。


 冷めた犬のスープとは、直接的な意味では、ご馳走が食べられない貧しさですが、それだけではないところが、考えさせられる歌詞です。孤独でもあり、苦々しい思いでもあり。

すると、こんなご馳走を食べたといばる人がいたなら、そんなことをいばるあなたは、創造にほど遠い人なのですよ、ということになりますが……


 創造の人生を歩む人には二種類の人がいるようで、ビフテキの食べられる人になりたい人。いい家に棲み、美人を奥さんにしたい人。ついでに愛人までと欲深く。そのために人生を邁進できる人。

もう一方は、冷めた犬のスープを敢えて飲む人。辛酸に臨まざるを得ない自分の業と戦う人。なんのため、というなら創造のためなのでしょうが、業であるからには理論がたちません。

いずれもそうはなりきれない人生のその都度その都度に、悩みは尽きないものです。でもその人らしい人生なら、ケセラセラ……と無責任なようですが、実際、そういうことなのでしょうね。でも、いずれの人からも、較べる意味もない、個性と創作とにであえるのではないでしょうか? 


 哲学者のアランが、「幸福論」の「友情」という章に残しています。「きみの薪(たきぎ)を地下室のなかで腐らせてしまってはならぬ」――
 
 冷めた犬のスープを飲むような辛い気持ちの日には、「わたしには、原稿用紙一枚からでも、あたらしいなにかを生みだせるエネルギーがある、それさえあれば、なるようになるさ」と、自分を信じましょう!

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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】いたずら描き

 すこしまえの三月、岡山県備前市片上という処へ「片上ひなめぐり」をおとずれました。商店街や住宅に飾られた様々なおひなさまを、ゆっくり散歩しながらめぐる地元のイベントです。宇佐八幡宮では、木々に覆われた六十二段の石段の、下から上までびっしり緋毛氈を敷きつめ、ひな壇にみたてた「石段ひな飾り」が。すばらしい眺めでした。夜にはライトアップも施されるそうです。商店街に子どもたちが手作りしたおひなさまを飾る「子どもおひなさま」の店があり、とても楽しかったです。そのなかに幼稚園児の男の子の作品で、雄雛雌雛のお顔の作りはそれこそ幼くて、すこしとんちんかんなのですが、それよりも、雄雛も雌雛も、互いに背をむけていたのにびっくり。この子のお父さんとお母さんは喧嘩していたのかな、と思いましたが、大人は背をむけたおひなさまを作ろうとは思いません。おそらく幼稚園の先生も困惑されたことでしょう。でも戸惑いや困惑は、創作そのものです。この坊やの将来が楽しみです。

 先日ある小説家が、小説を書く前に、登場する人がどんな表情をするのかを、絵にすると聴きました。そしてその絵を前に、小説を書くそうです。特にクライマックスでどんな表情をしているのか、というのがたいせつなのでしょうね。

 わたしはいたずら描きが好きで、よく似顔絵も描きますが、いつも無意識にその人への愛を描いているものです。悪意がないから、悪戯なのです。肩に力をいれず、ひょいと生まれるいたずら描きは、人より秀でたいばかりの絵よりも、人の心に届くことがあるのかもしれません。大人はいたずらが苦手ですが、たまにはいたずらをしてみても? 

     



【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】爺バンドの夜は更けない

或るジャズライブバーへ。そこは客もまばらな、爺バンドが演奏するお店でした。
 
 ドラマで親父バンドがでてくると和気藹々と和やかな雰囲気なのですが、それはフィクションの世界。いくつになっても男たちは闘魂を温めているものです。

 店にはいるや穏やかならぬ雰囲気を感じました。

なぜならサックスのお爺ちゃんが目立って元気なのに対してベースとドラムは肩をおとして意気消沈したお爺ちゃん。ピアノは若いお姉さん。サックスソロのあとはピアノ、つづいてベースとソロがつづいたもののドラムソロはカットされ、「こりゃ、おかしい!」とお客の団塊世代爺が突如たちあがってアート・ブレイキ―を二曲もリクエストしました。

概して団塊世代はおかしいと思うことに遭遇するや血が騒いで、なにかをするのが習癖のようです。

アートといえばドラムソロ。さっきまで意気消沈していたドラムのお爺ちゃんは、あとで体調をくずして家路につくころには歩けなくなっていそうなくらいに汗をまき散らし、長丁場のドラムソロで爆発しました。

穏やかならぬ元気としょんぼりが密かに戦っていた店内も、ドラムのおかげでみんなのりのり、大興奮の渦になりました。


 アート・ブレイキーといえばドラマーですが、もとはピアニストだったそうです。

或る夜アートが演奏するクラブに、クラブのボスのマフィアがピアニストを連れてきて弾かせたところ、アートよりも優れた演奏をしたため、ボスはアートに「おまえはタイコでも叩いてな!」と拳銃をちらつかせながら脅したそうです。

ジャズというと、紳士淑女がグラスを傾け拝聴する上品なイメージがありますが、もともとは荒くれ男が戦うワイルドな世界だったようです。

いくつになっても戦う男たちの夜は更けません。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】雪つばきのぬくもり

二月のはじめ雪の舞う日に、京都文化博物カ館へ佐藤太清・生誕百年展を鑑賞してきました。


 佐藤太清画伯は大正二年に福知山市に生まれ、おなかのなかにいるときに父上が亡くなり、誕生直後に母上も亡くなるという孤独な幼年時代をおくられました。

その後画家をめざして上京、修行をつまれ日展入選後、超人的な努力により大作を次々と発表された壮年期、花鳥風景画家としての道を進まれ、「一期一会の世界」を描かれた旅シリーズ、旅の終焉、晩年の作品へと。

日本画はもとより、そこには一人の人間の人生が描かれていました。


 なんとやさしいつばきなのでしょう、と作品「雪つばき」のまえで永らくうごけなくなりました。

庭のつばきにつもったやわらかい雪と、それをついばむ愛らしい雀たち。

ご自身が庭へ訪れる雀にえさをあげて、いとおしんでいらしたそうです。

このやさしい眼で雪つばきを描かれたのが八十三歳のときで、日展出品の最後の作品になったそうです。

「花に想う」という文章が残されています。

いつもマッサージに家に来られていた全盲のご老人のことを書かれています。


「小学四年生の朝顔の咲くころにふとしたことで失明して、以来今でも心の眼にその当時のすがすがしい夏の朝の垣根に咲いていた朝顔が美しく残っているとはなしながら、今頃は美しいでしょうねと、遠い悲しい昔を追憶する様に虚空を見ていたことがある。

私もその話しを聞き、胸のつまる思いがして、この老人の心にある様な朝顔の花が描ける様になりたいと思っている」


 勲章を授与された大家なのに、市井の人の思いを真摯に心にきざみ、こたえられるようにと、高齢になられても命をかけて創作されつづけた清らかさに胸をうたれました。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】永遠の友だち、アン

子どものころにどんな物語に勇気や元気をもらわれたでしょう?
心に残った物語の中でも、「赤毛のアン」は大好きな小説でした。
アンがとにかく魅力的で、わくわくしながら読みました。とりたててできごとは起こらないものの、アンならどうやって克服するのだろう、アンを愛してやまないマシューおじさんとマリラおばさんなら、どうするのだろう、とアンの魅力でぐいぐい読み続けませます。


 作者のL・M・モンゴメリは新聞の記事で読んだ、「男の子とまちがえて女の子を引きとった夫婦の話」に着想を得て、この小説を書いたそうです。
ご自分の幼少期も重ねて、孤児院で暮らしていたアンが、カナダの島の老夫婦のもとへ、もらわれてきた少女時代の長篇小説を書かれました。
三十歳のときに四つの出版社へ送ったところがどこからも認められず、三十三歳のときに同じ原稿をボストンの出版社へ送り、原稿料をもらいベストセラーへ。続篇執筆へと至り、財団を作られるほどまでに成功されました。
読んで欲しいという願いは届くものですね。
モンゴメリはアンとは異なりとても美しい女性です。
のちに夫が鬱病にかかり看病に苦労されたそうですが、これほど明るいアンを描かれた作家にも、人生はさまざまな試練を与えるものです。


 アンは見栄えは良くない女の子ですし、みなしごです。
しかし少しもいじけていないところが、そもそも素晴らしい着想です。美しいものに自分だけの詩的な名前をつけるのがアンのこだわりです。ものにも命が宿っていることが、こだわりから伝わってきます。

 
夢中になって読んだころから数十年経つ今も、アンは現実の友だち以上の友だちであり、「わたしならこうするよ」とながながしたおしゃべりのあとで目をきらきらさせて、必ず教えてくれて、微笑んでくれそうです。

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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】風まち潮まちの港より

 あけましておめでとうございます。


 お正月は岡山県備前市の日生(ひなせ)で過ごしました。
風まち潮まちの港にはさまざまな文化と風情が残されています。伊勢志摩でも、風まち風よけのため港に、「はしりがね」と呼ばれる遊女がいたそうです。
島国日本では今は少なくなりましたが、海、港、女が流行歌の三大要素であると作詞家の先生から伺ったことがあります。「シンデレラ・リバティ」という映画がありましたね。
定住することのない人との恋物語はせつないですね。


 日生にある加子浦歴史博物館へいきました。
正宗白鳥、牧野大誓、柴田錬三郎、池田万寿夫、井伏鱒二をはじめ日生ゆかりの文人や画伯が多いのに驚かされました。
ちょうど大人の隠れ家のような雰囲気が漂う港の風情が、多くの芸術作品の想念を生んだのでしょう。


 博物館で田淵屋甚九郎という魅力的な人物の資料とであいました。
江戸初期から中期にかけて突如日生にあらわれ、日生を根拠地に廻船業を営んでいた人で、海賊説もあり、 四十八隻の千石船を所有し、北海道から九州はもとより、フィリッピン、中国、東南アジアまで交易を広げ、藩公認の密貿易もしていたそうです。
ところが日生の寺社の再建や、熱病が流行した際には密貿易で得た巨万の私財をなげうち村民を救ったこともあり、日生の人にとってはなくてはならない大恩人だそうです。
この男性像からレッド・バトラーを連想しましたが、「むかしむかしのことじゃった、甚九郎さんがなぁ、」と始まる甚九郎ののんびりユーモラスな昔ばなしも多く残されています。
例えば、勢いこんだあまりに用意した船が大きすぎて日生港の湾へはいらなかった等、村人がこの恩人を心から敬愛していることがユーモアから伝わり、ユーモアとは愛であることをあらためて学びました。                
 


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】はんなり年の瀬

 このごろつけ睫毛の女の子が多いのには驚かされます。
キャッチコピーは目元くっきり、とかなんとかなのに、実際はつけ睫毛が瞳の輝きを失わせていることにも驚かされます。
瞳は心の在り方の窓なのに!

 母が入院中なのでよく病院へいきます。そこでもついウォッチング癖が。
家族がきてくれたときの患者さんの嬉しい瞳。心配しないでねと語りかけるような瞳。相手を気づかう瞳はつけ睫毛よりも美しい。
母が看護師さんの中でも、この娘はいい子と思うと、別れしなに彼女の手を握ってはなしません。意地の悪そうな看護師さんにはそんなことはしません。どんな看護師さんの手を握るのか、またしてもウォッチング癖が。

 彼女たちには昔でいうところの「気立てのいい娘」という言葉が一番あてはまっていると思いました。「気立て」を辞書でひくと、「心の持ち方。心立て」とあります。わたしにもちろん息子はいませんが、もし息子がいたなら、嫁には気立てのいい娘がきてほしいものと思いつつも、我ながら思考回路がすっかりオバサンぶりなのには本当に驚かされます。

 気立てというとたいてい女の子に使われて、男となると、男っぷりがいいとかなんとか、封建時代はしゃあないわ、という感じですが、今はもう忘れられてしまったキャラクターをいろいろ考えてみました。
むくつけき、おぼこ、向こう意気、鼻っぱしら、気早(きばや)、生一本、おきゃん、しわんぼう…などなど。人とのコミュニケーションを避けるとか、人間関係が希薄とか、シナリオのキャラクターに多いのですが、どれもこれもそうなると世も末でしゃあないわという感じがします。

 慌ただしい年の瀬ですが、体調をととのえて、はんなりと、そして人っぷりよく、元気に年越しをしてくださいね!



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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】オリーブの実の成る島

 秋晴れの日、瀬戸内の小豆島をおとずれました。この島で有名な方に「二十四の瞳」の原作者・壺井栄さんがいらっしゃいます。

 壺井栄さんは明治三十二年に小豆島で醤油樽職人をしていた父のもとに生まれました。十一歳のときに父の稼業が得意先の蔵元の経営不調により傾きました。小豆島は赤穂等の塩田に近く、醤油の産地として歴史がありますが、現在に至るまで、組合ができたり、醤油税がかかったりと、さまざまなできごとが余儀なく起こってきたそうです。その後、小学校と高等小学校を卒業し、苦労をかさね上京し、プロレタリア作家・壺井繁治氏と結婚され、作家として開花されています。

 わたしはこの作品から、本来の教師という聖職の清さを感じていました。木下恵介監督の映画では「仰げば尊し」の音楽が流れるのでなおさらです。今回は、おだやかな波とお日さまに癒されて、少し考えてみました。

「二十四の瞳」では女の子が売られたり、男の子が戦死したり、やむを得ず思うままに成長できなかった子どもたちが登場してきます。それは作者が稼業の影響でご苦労され、思うままにいかない人生を感じられ、その後、人の愛を考えられたので描かれたのではないかと思います。父をどのように小説で描かれているかというと、主人公・大石先生の父は三歳のときに亡くなっています。その設定にはご自身の家族への愛を感じます。作者の母上は十一人の子どもを生み、戦争も挟んで孤児を二人ひきとって育てられています。作者ご自身に子どもは生まれませんでしたが、兄弟の遺児を二人育てられています。父への愛と、子どもたちを育てられた母への尊敬が、あたたかい文学の根底にゆるぎなく据えられているように、オリーブの実が成る島で波風にうたれながら、思いました。



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