【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】Cold Dog Soup | シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】Cold Dog Soup

貧しい詩人たちが集うバーを舞台に、「創造的な仕事をする者は冷めた犬のスープを飲まなきゃならないこともある」と歌う、ジェイムス・マクマートリーという人のお父さんも小説家だったそうです。


 冷めた犬のスープとは、直接的な意味では、ご馳走が食べられない貧しさですが、それだけではないところが、考えさせられる歌詞です。孤独でもあり、苦々しい思いでもあり。

すると、こんなご馳走を食べたといばる人がいたなら、そんなことをいばるあなたは、創造にほど遠い人なのですよ、ということになりますが……


 創造の人生を歩む人には二種類の人がいるようで、ビフテキの食べられる人になりたい人。いい家に棲み、美人を奥さんにしたい人。ついでに愛人までと欲深く。そのために人生を邁進できる人。

もう一方は、冷めた犬のスープを敢えて飲む人。辛酸に臨まざるを得ない自分の業と戦う人。なんのため、というなら創造のためなのでしょうが、業であるからには理論がたちません。

いずれもそうはなりきれない人生のその都度その都度に、悩みは尽きないものです。でもその人らしい人生なら、ケセラセラ……と無責任なようですが、実際、そういうことなのでしょうね。でも、いずれの人からも、較べる意味もない、個性と創作とにであえるのではないでしょうか? 


 哲学者のアランが、「幸福論」の「友情」という章に残しています。「きみの薪(たきぎ)を地下室のなかで腐らせてしまってはならぬ」――
 
 冷めた犬のスープを飲むような辛い気持ちの日には、「わたしには、原稿用紙一枚からでも、あたらしいなにかを生みだせるエネルギーがある、それさえあれば、なるようになるさ」と、自分を信じましょう!

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