【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】越前 ソゥル ソゥル | シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】越前 ソゥル ソゥル

越前へ友人の取材についてゆき、自由行動となり、ひとりで隣町へタクシーでむかいました。

漆塗りをみにいく予定が運転手さんに伺うと、訪れるのが念願だったお能の町と同じ方面としり、急きょ変更。

以前より面打ち師がいらっしゃるというその町に、というよりもその人に、たいへん興味があったからです。

まるで寅さんのような風まかせです。


伺えば、幸いにも運転手さんのお父さんがその町のご出身ということ。

お父さんに電話でお能ゆかりの地を詳しくたずねては、案内してくださいました。

わたしの父のふるさとと土の香りや峠の風景や素朴なお人柄が似ており、運転手さんに「ふるさととおなじ匂いがします」と話しながら探しあてた処には、能面を飾る館と工房がありました。

こちらもみせてくださいと柔和なおももちの工房の奥さまにお願いし、奥の囲炉裏端の暗やみへたどりつくと、念願のお目にかかりたかった面打ちの先生がいらっしゃいました。

髪と髭は仙人のようにながく、やさしく奥深いお目元をされた先生から伺うと、わたしの父のふるさとでながく修行をなさっていたそうです。


越前の能には歴史があり、観阿弥世阿弥の能以前の鎌倉末から南北朝にかけて、すでに越前では猿楽がそうとう高い水準にあったと伝えられています。

冬にはかなりの雪がつもるというその山深い工房へは、教えを請うためにはるばる東京芸大の先生もこられるそうです。


能の心を打ちこむ面打ち。

あらゆる芸術に通じる面打ちの精神の、奥深いお話を伺いました。


魂が呼ぶようにお目にかかれた先生ですが、能は、わたしにとって壮大な勉強を要します。

必ず今度はもっとゆっくり参ります、と約束して先生と奥さまにお別れしました。

おふたりはとてもやさしい笑顔で、手をふって見送ってくださいました。

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