シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記 -6ページ目

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】宝島マシンガントーク

 或る島に着くと港では、アートなオブジェがお迎えのようにして海を臨んでいました。その島が芸術の島に変身して数年たっています。ひょっこりひょうたん島探検記を書くつもりでひょっこり訪れてみたのは、フェリーの帰りが最終便になってしまう夕暮れすぎ。お客も乗っていないバスで島を巡ると、数ある美術館も閉館したあとでした。島の半分には漁師さんが暮らす旧い民家が並び、反対の半分にはあたらしくできた洒落た施設や蔦のからんだカフェや洋館がぽつぽつ。それもそのはず、この島を芸術の島に模様変えしたあと、芸術家や外国人が棲むようになったそうです。新旧織りなしているのかいないのか、不思議な空気に違和感をおぼえつつ港へ戻りましたが待ち時間があり喫茶店を捜したところ見あたらず、食堂やらスナックやらわからないレトロかつアラビアンナイト風の小さなお店に入りました。

 そこにいたのです、透け透けサイケファッションのマシンガントークのお婆ちゃんが! 入るなり「カラオケ歌う? 何万曲もあるんやから」客もいない店で入ってすぐにしらふで歌えるわけもなく。すると「お水、飲んで! 水は威張れる。こんな美味しい水はない」とわたしの耳を放しません。そしてそこから出てくる出てくる島のいきさつ。新旧まじわっていく過程にはさまざまな出来事があったそうです。愛する島を守るためにお婆ちゃんはさまざまな人たちに、立ちむかい戦ったそうです。こんなことまで言うてええのん? と、裏事情の暴露に驚いたのですが、お婆ちゃんと一緒に島とお店を守ってきた相棒のお爺ちゃんは、むかし法律関係のお仕事をしていた人だそうで、ときどきお婆ちゃんのマシンガントークに法的駄目だしをビシッと決めます。絶妙のパートナーシップでした。ゴッドお婆ちゃんから「只で泊めてあげるから」と言われて、嬉しかったのですがお断りして、店をあとにしました。見られなかった美術館やアート施設よりも、郷土を本当に愛して生きてきたお婆ちゃんと出会えた、わたしの宝島探検記です。<鳩子>

ひょっこりひょうたん島 全13巻 ちくま文庫 い-20/筑摩書房

¥12,968
Amazon.co.jp

冒険に出よう (U25サバイバル・マニュアル) (U25 SURVIVAL MANUAL SE.../ディスカヴァー・トゥエンティワン

¥1,260
Amazon.co.jp

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】右脳はポエムとドラマ

 先日、ずいぶん長いあいだ逢っていなかった中高時代の友人が写真を習っているとのことで、写真教室の展示会を訪ねました。むかしから絵が上手だった彼女のことなので、きっと素敵な写真を撮るだろうと、わくわくして向かい、たいへん感動し、勉強になりました。

 友人はご年配の男性と二人でうけつけをしていました。女子校だった中高時代は交換日記も交わしていたのに、互いに人生に忙しくなり、ずいぶん長いあいだ、お互いの心の中を覗いてきませんでした。それが写真を見せていただいて、むかしいつも近くに感じていた彼女の本質のようなものへの理解心が、むくむく湧き起こりました。

 一枚は、冬の未明の山村。雪深い山の風景がフレームを主に占め、谷底に見えるか見えないかの古民家の薄明かり。家族の為にお味噌汁を炊いているお婆ちゃんのドラマを感じました。未明に大地震に襲われた神戸に彼女が生まれ育ち、ずっと暮らしているので、なおさら思いが伝わりました。もう一枚はキリギリスのような昆虫の黄緑色の羽のアップ。そこに斬新に鋭利に投げかけられた斜めの黒い影。そこにも懸命に生きている命と影を感じました。

 一緒にうけつけをされていた男性に、「女性の写真と男性の写真は、どう違いますか?」お伺いした処、「そら、女性には負けますわ」との答。なぜなら女性は右脳で写真を撮るから、らしいのです。右脳左脳に関しては緒論もあるでしょうが、彼女の写真からは、ポエムとドラマを感じました。

 日ごろシナリオで感じるのは、右脳の発達している人は描写がうまくて、左脳の発達している人は構成力が長けているということです。どちらも長けたい勉強熱心さももちろん大切ですが、長けている方をもっともっと伸ばして、自らの作品を愛し、作品を通して人から愛されることは、忘れてはいけない大切なことなのではないかと、あらためて学んだ一日でした。<鳩子>

日本一の写真集 ―歴史に彩られた建築物・自然美の風景/パイインターナショナル

¥1,890
Amazon.co.jp

いつかは行きたい 一生に一度だけの旅 BEST500 [コンパクト版]/日経ナショナルジオグラフィック社

¥2,940
Amazon.co.jp

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】夢二の郷

 あけましておめでとうございます。

 年の初めに岡山県瀬戸内市邑久町にある竹久夢二の生家を訪れました。わたしは大学の卒論に夢二を選びましたので、そのときに取材に訪れ、今回はウン十年ぶりに再び訪れたことになります。むかし訪れたときには田畑の中にあったのが、今では周囲に建物が増え、当時なかった少年山荘というアトリエもでき、ずいぶん様変わりしていました。そして、古典の小説から読むたびごとに新たな発見を得るのと同じように、むかしとは異なった印象を抱きました。

泣くときはよき母ありき 
遊ぶときはよき姉ありき 
七つのころよ

 生家の入り口にある夢二の郷愁の詩です。郷愁に胸を打たれるようになるのには、人はときを要するものですね。なぜ大学生のころ、夢二に惹かれたのかというと、大正浪漫のデカダンスな女性像だったのではないかとうっすら覚えています。それに加えて物語の主人公のようにドラマティックな夢二の女性関係への興味。今思えば青いだけでした。あれから幾たびか、なぜ夢二に惹かれたのだろうと考えることがあり、それはおそらく父の故郷である兵庫県篠山と、夢二の郷の岡山県邑久町とが、どこか土の薫りが似ているからなのかもしれないと思うようになりました。そして今回訪れて、わけもなくめがしらが熱くなりました。父もまた、稲穂がさやぐなか、小川のせせらぎでめだかや蛙と戯れ、空をくるりと舞うとんびに歌いかけ、土の薫りのなかで遊んだことでしょう。

 或るミュージシャンが、「いい歌が作れるときはふたつ」と言っていました。ひとつは恋をしたときで、もうひとつは、自然から新たな発見をしたときだそうです。今年もたくさんの自然に触れたいです。<鳩子>

その日からとまったままで動かない時計の針と悲しみと。―竹久夢二詩集百選/竹久夢二

¥930
Amazon.co.jp

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】ウィスキーがお好きでしょ

 友だちのセカンドルーム探しにつきあいました。澱んだ川辺でひとり暮らしをする彼女曰く、「山でも海でもいい、超ボロ家でいい、いい空気が吸いたいぃ!」と。おかげで山へ海へと、ツアーへ。

 六甲山中にひっそり佇む中古マンションには以前のご夫婦の荷物がのこっていました。壁を覆う大きな額に飾られた絵画。マホガニーのダイニングテーブル。冷蔵庫くらい大きなスピーカーがごろごろ。ウォーキングクローゼットを埋めるヴィトンのスーツケース群。なんじゃ、こりゃバブル? って感じなのですが、ご夫婦の映像が浮かんできました。書籍棚には経営者論の全集。おそらく社長さんだったのでしょう。奥さまは古着のお着物が好きとみえて、骨董品の小箪笥の抽斗から朱縮緬絞りの帯揚げがこぼれていました。わたしに浮かんだ映像では、ご主人はロマンスグレーで、髭もダンディ。奥さまはかなり年下。可愛い小さな市松人形さんみたいな女性です。ときには北野坂あたりへジャズのライブにでかけ、六甲へ戻ったあとも二人で語りなおし、そしてこんなときにはウィスキーとジャズが似合うのでしょうね。さまざまな時を経たように、ベッドの横に介護用の簡易ベッドがより添っていました。片づけもせず慌しくでていかれた痕跡に、だからこそ時は大切にすべきと教わったような気持ちがしました。

 そうするうちに夜更けになり、急遽友達と宿をとりました。寅さんみたいに急遽宿をとるのも、楽しいものです。でも垣間見たリッチな世界から一挙に現実にひき戻され、そこは襖も破けている鄙びた国民宿舎。これがまた楽しかった! 「つまんない話なんだけど」と彼女が手酌で語り始めたのは、むかし、お金の苦労をしていた時にお世話になった工場の社長さんに、今もすごくご恩を感じていて、そして涙ぐみながら、でもそれってほとんど意地なのかもしれないという話で、わたしは「つまんない話」はいいもんだなと、これまた手酌。来年も、佳き友と佳き時を… <鳩子>

ドラマ脚本の書き方―映像ドラマとオーディオドラマ/新水社

¥1,575
Amazon.co.jp

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】わたしの町のドンペリマン

 紅葉を満喫するのに少し早いこの季節、散歩がてら、秋の草花を眺めながらセンターへ通っています。その途中にときどき出逢う、不思議な男の人のお話を。

 この人は夜に遭遇することが多いのですが、後ろ髪をたなびかせて、自転車で大疾走しながら、大声で何度も、「ドンペリ、はいります!!!」と叫んでいます。出逢うとちょっと怖いようでいて、妙に元気でいるのが嬉しくなるのはなぜ…とも思いますが、気になるのは、なにが彼をそうさせたのか!?? ということです。バブル真っ盛りに、ホストクラブで働いていて、ドンペリの注文を毎日叫んでいたころの強烈な思い出が、もしかしたら強烈な恋と失意が、今も彼にそう叫ばせているのかもしれません。

ドンペリとはフランスの高級シャンパン、ドン・ペリニョンの略。バブルのころには「ロマコンのピンドン割り」などが流行ったそうで、ロマネ・コンティという高級赤ワインをドンペリのロゼで割る飲み方だそうです。失業者や生活保護を受ける人が多い現代では、バブル、イコール成り金というイメージにつながりますが、果たしてそれだけでいいのかしらと思います。バブルの名残りを感じさせる豪華な作りのホテルに泊まったことがあります。ロビーにそびえる直径二メートルは越える柱は、ほんものの大理石。それだけでウン千万は要したと思われます。しかし、ほんものの建材を生かすのには、ほんものの職人がいらしたはずです。どんな仕事をして、その建材を生かしてやろうと、意気込まれたことでしょう。そういう人たちもひっくるめるのには、抵抗があります。ドンペリにも、極上の味わいが…

この不思議なドンペリマンに出逢うと、黒澤の映画で、他人に見えない電車を「どですかでん、どですかでん」といいながら走らせていた少年を思い出します。ドンペリマンにはなにが見えているのでしょう? 二十年後、どんなことを叫ぶ人が、自転車で町を大疾走するのでしょう?<鳩子>

どですかでん<普及版> [DVD]/東宝

¥3,990
Amazon.co.jp

【超わたし的タマコの日記】マンガとアニメ文化

おはようございます!タマコです。
先日、母と共に阪神百貨店で開催されていた「タツノコプロテン」と梅田ロフトの「楳図かずお恐怖マンガ展 楳怖」という展覧会をハシゴして行って来ました。

「タツノコプロテン」はアニメ制作会社タツノコプロ50周年を記念して開催された展覧会で、私が子供の頃テレビにかじりついて観ていたアニメ(再放送だったと思いますが)「科学忍者隊ガッチャマン」や「タイムボカンシリーズ」「ハクション大魔王」などのセル画や資料がたくさん展示されていて懐かしい気持ちが湧き上がってきました。子供の頃は奇想天外なメカやカッコいいアクションシーンにワクワクし、ギャグに笑うのを楽しみに観ていましたが、今シナリオを勉強している身になり改めて作り手の立場から見てみると、なるほどこういう設定があったのかと新たな発見もありました。年配の方々が懐かしそうに目を細めながら展示物を見て回られている姿も印象的でした。

「楳怖」のほうは母のたっての希望で、私は付き添い役でした。私は昔からホラーは避けて生きてきた人間なのですが、母は子供の頃に楳図かずお先生の恐怖漫画を読み漁っていたそうで、暗がりに展示された怖い漫画原稿を懐中電灯で照らしながら(お化け屋敷風演出の展覧会でした)、「これ読んだわ」と、楽しそうに言い続けておりました。そういえば、私が生まれた当初から我が家の本棚には「まことちゃん」のコミックが全巻並んでいたなぁ…。

こちらの展覧会は若いカップルや友達グループ、私達のように母と娘と思われるふたり連れの方々も多く来場しており「うわっ!」とか「ヒャッ!」とかいう悲鳴も時折聞こえてきました。楳図かずお先生は喜寿を迎えられるそうですが、今なお斬新と思えるアイデアの数々に刺激を受けて帰って来ました。
世界に誇ると言われている日本の漫画やアニメの文化は、今や子の世代、孫の世代へと脈々と受け継がれているんだなぁと改めて実感しました。

ちなみに「楳怖」のオマケでもらった「猫目小僧」などの漫画がプリントされたトイレットペーパーは怖くて未だに使えません…。〈タマコ〉


TATSUNOKO PAST&FUTURE~タツノコプロ50TH カコトミライ~ (アニメ関係.../著者不明

¥6,300
Amazon.co.jp

まことちゃん 全巻セット (小学館文庫)/小学館

¥7,925
Amazon.co.jp

漂流教室 全巻セット (小学館文庫)/楳図 かずお

¥3,660
Amazon.co.jp


【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】なにもしていない人

 生徒さんたちはお昼のあとなのでうつらうつらと眠たそう。そこでわたしが「なにもしていない人ってほんとに、いないですね」というと、みんなむくむく頭をあげて、変なおばさん、とわたしを睨みました。電車やカフェの中で、なにもしていない人がいません。携帯、スマフォに釘づけ。指も大忙し。ちょっと、ちょっと、桜も、青空もみてください、流れる雲も… 草木やものがなにかをしようと思っていたなら、ものすごい数の目的が空気をゆきかい、息がつまりそうですね。人間だけの本能なのでしょう。フェイスブックには「今なにしてる?」とあり、なにもしていないのは、現代ではかなりの変人になってしまうのかしらと、不理解がむずむず。


 目的といえば、「将来、なにになりたいですか?」という問いに、小学生のわたしは隣の席のケイコちゃんから、「なに書いたらええかわからへん」と相談をうけました。ケイコちゃんはいつも鼻を垂らしていたのですが、とても可愛いので、「ファッションモデルにしといたらええやん」と答えて、そのままケイコちゃんは書きました。わたしはなににしようかと考えて、「残りもので美味しい料理が作れるお手伝いさん」と書きました。ちょっと変わった子どもだったようですが、きっとそのころ、残りもので料理を作ると、母に、美味しいね、上手やね、と誉めてもらっていたからだと思います。母は安くついて喜んでいただけでしょうね。


 なにもしていない人が、薄墨の雲につつまれた山里に棲む仙人のお爺さんに限らず、むかし、夏の夕暮れどきの軒先で、なにもしないで団扇で暑さを凌いでいる、クレープのシュミーズ姿のお婆ちゃんをよくみかけました。なにもしていないのが一番かっこよくてサマになっている人といえば、なんといっても笠智衆です。笠智衆がジムで筋トレしていたら幻滅。小津安二郎が外国で評価されるのも、なにもしていない人を視つめる視線なのかもしれません。夜のとばりに秋の音が…<鳩子>

小津安二郎大全集 (DVD 9枚組) BCP-027/株式会社コスミック出版
¥1,980
Amazon.co.jp

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】可愛い友だち

 わたしの友だちで、ウクライナから来日されて20年ほど、がん治療に携わっていらっしゃる女医さんがいます。もともとは姉の友人だったのですが、わたしも仲良しになり、今は東京で活躍している彼女とはフェイスブックの友だちです。毎日ほどフェイスブックで、彼女の新しい友だちのお知らせをいただきます。それが、ほとんどが可愛い幼児たち。写真と一緒に送られてきます。おそらくなかには、患者さんの幼児たちもいると思われますが、「わたしと友だちになりましょう?」と幼児に話しかけている、彼女のやさしい微笑みが浮かびます。

 20年近く前、息子さんと二人で来日された彼女は、たいへんな努力家です。母国で医学博士号を修得されていた彼女は、来日後、がん治療の研究員をされていました。それが長年の努力が叶い、昨年、日本での医師国家試験に合格されました。今までのお仕事のご苦労、お母さんとしてのご苦労等、さまざまに伺っていたわたしは、そのお知らせを本当に嬉しく思い、姉と一緒に小さな宝石のついたピアスを合格の記念に贈りました。自分の人生の使命に向けて、ひたすら努力されている人が、心の近くにいることは、多くの励みをいただきます。

 もうひとつ、可愛い友だちのお知らせ、といってはなんですが、可愛い仲間が、力をあわせました。長研の市川さん、嶋さん、松下さんの三人が力をあわせて、共同脚本を執筆。三田市民演劇三田交響曲「さんだほたる第二章~ふれんず~」が、この8月25日26日に郷の音ホール(三田市総合文化センター)で公演されました。送られてきたパンフレットの「脚本家」の欄には、三人の笑顔が。わたしは感慨にふけりました。書きつづけるあいだには、さまざまなことが人生に起こります。ときには、めげそうになることも。でも書きつづける力は、友だちが支えてくれます。感動をくださった三人の方に、心からお礼申しあげます。<鳩子>

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】父と寅さん

 女子サッカーなでしこの清々しい笑顔に、元気をいただきました。猛暑が終わりを告げるのまもなく。お元気で乗り越えてくださいね!

わたしの父は「寅さん」が大好きで、いつもひとりで楽しみに映画館へいっていました。回想の講義にさきがけ、あれこれ考えていたところ、「寅さん」には回想があまりないことに気づきました。回想は注意して見ていないと、わからなくなってしまいます。おなかをかかえて笑っていたなら、なおさらでしょうね。
父と母は、ふたりでよく映画館にかよっていましたが、そのときは、文芸作品や戦争ものが多かったようです。きっと、母の好みに父があわせていたのだと思います。旅行も夫婦でいくときは、ちょっといい宿を手配しなければならないけれども、ひとり旅となると、気取りのない宿を選べると、年配の方から伺ったことがあります。ひとり映画もひとり旅も似ているのかもしれません。寅さんのように、風の吹くまま自由気ままに… 文芸ものや戦争ものはむずかしい構成が多く、帰宅した母から、「お父さんはちょっとも、わかっていなかったのよ」と、よく愚痴を聞きました。回想シーンで、前後がちんぷんかんぷんになるらしいのです。

 梅ちゃん先生のような町医者をしていた父は、ご近所のたくさんの患者さんに、「おかげさまで元気になりました」とお礼の言葉をいただいていました。しかしときには、患者さんが悲しむことを告げたり、悲痛な場にたちあったりすることがありました。だからこそ、ホッと人のやさしさや、人情のたいせつさを伝え、人に笑顔をくれる「寅さん」が好きだったのだろうと思います。亡くなって三年も経つこのごろになって、或る日、或る日の、父を理解できます。

 面影が父に似たご老人を町角で見かけることがあります。そんなときは、後姿を目で追いながら、そのままご老人が、楽しそうに、ひとりで映画館へ向かっていかれるような、父の残像を見ます。<鳩子>

    人生に、寅さんを。 ~『男はつらいよ』名言集~/キネマ旬報社

¥1,260
Amazon.co.jp

【超わたし的タマコの日記】「リーガル・ハイ」いいキャラの誕生に嫉妬する。

おはようございます!タマコです。

先日、最終回を終えた「リーガル・ハイ」にハマってしまいました。

「リーガル・ハイ」は偏屈で毒舌で最低の性格だが、訴訟で一度も敗けた事が無い敏腕弁護士と、真面目で正義感が強いが、融通の利かない堅物の新米弁護士がぶつかり合いながらも共闘する、法律ものコメディでした。

さすがは尊敬する脚本家の一人、古沢良太さんです。その面白さに、全話噛り付くように観ました。
世間を賑わすあの人この人を彷彿とさせる依頼人と関わり、強烈キャラの主人公、古美門弁護士が世相をズバッと斬るセリフにテレビの前で快哉を叫んでしまいました。

古美門「我々は神ではない…(略)真実が何かなんて分かる筈がない」
黛「だったら…私たちは何を信じればいいんですか?」
古美門「自分で探せ」

「朝ドラヒロイン」や「赤毛のアン」と揶揄される黛弁護士や、タイムボカンシリーズの敵役のような(?)三木法律事務所の面々とぶつかっていく事で、第一話でなされた上記のやりとりの答えが浮かび上がってくるわけですね。
勉強になった部分を列挙する紙幅がないのが残念なくらい、毎回感服しながら観ていました。

「リーガル・ハイ」は脚本×演出×役者が相乗効果を遺憾なく発揮したドラマだと思いました。Facebookのファンページなどをみると、続編を期待する声の多さに驚きます。

主人公の古美門研介は古畑任三郎や「相棒」の杉下右京、「踊る大捜査線」の青島刑事たちのように、シリーズ化して欲しくなる「いいキャラ」であると思います。
脚本家の両沢和幸さんがこう仰ったのをどこかで読みました。
「いいキャラが生涯一人でも創る事ができれば、脚本家冥利に尽きる。その脚本家は幸せだと思う。」
いつか私もいいキャラを生み出したいものです。 <タマコ>


「リーガル・ハイ」公式BOOK 古美門研介 草創記62484-37 (ムック)/角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
¥1,470
Amazon.co.jp