【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】紫陽花のような
六月、我が家のベランダでは百合が満開になりました。そこで一人で百合の花見酒。香りも満ちていい気持ちでした。今年も早や半分を過ぎましたね。電力不足も危惧される今夏が心配です。体調の芳しくない方、ご家族にお年寄りのいらっしゃる方、どうぞお元気に夏をお過ごしください。
先日、山里を訪ね、紫陽花園を堪能しました。立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花… 東洋の花からは、女性像が連想されます。紫陽花のような女性なら、どんな女性なのかしらと思い巡らせてみました。花の色は暖色が多く、そのなかで紫陽花の寒色は涼しげなのに、大輪に群れ咲くそのエネルギーからは、いわゆるところの日本の女性像に繋がりにくいのです。演歌の歌詞で紫陽花は、雨の中の男女の別れの情景として使われています。女の涙と紫陽花の花びらにとまる雨粒から、儚い女性のイメージへと繋がってゆくようなのですが、わたしには違和感があります。昔の男が好む薄幸の女なのでしょうか? わたしが見た、青、赤へと色変化しつつ群れ咲くエネルギッシュな紫陽花なら、どんな女? ぼんやり思い浮かべました。
日本での紫陽花の語源は、藍が集まる、から「あづさあい」へと変化したそうです。西洋でも様々な名前と、謂れがあるそうです。なかでも面白いのが、「オルタンス」という西洋での紫陽花の名前の謂れなのですが、諸々あるなかに、或る植物学者がブーゲンビリア島への航海に、男装した娘を同行したお話がありました。そこで「オーランドー」と云うヴァージニア・ウルフの小説があることを思いだしました。三十代のまま老いることなく、男、女と色変化しながら、三世紀生きた、男装の麗人の物語です。主人公は、ウルフの両性愛の恋人がモデルだそうです。「オルタンス」「オーランドー」、と名前が似ているだけなのですが…
女は世につれ、世は女につれ、ドラマも、女性像に尽きますね!<鳩子>
【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】夢はいつも
今年の三月に、母の親友が大阪都心の高層マンションに引っ越しされました。三十八階建てマンションの、二十二階へ。おん歳八十六歳で一人住まいの彼女からの連絡が途絶え、骨折したのか、入院でもしてないかしら、と母はわたしに云々。大丈夫、そのうちにお元気な連絡がくるよ、とわたしは答えていました。
彼女は、お若いころから七十歳まではニットデザイナーをなさっていました。著名な創作ニットデザイナーに学ばれ、その後はお一人でニットの個展を毎年、開催されていました。そして七十歳でデザインから写真に創作活動を変更。以来写真に魅せられつづけ、日本中、世界中、どこまでも撮影旅行にでていらっしゃいます。賞も続々獲得され、年間限られた人しか掲載されない写真年鑑誌に作品が選ばれたのは、八十歳前くらいのことでした。
もちろん彼女も夢いっぱいだけの人生ではなく、ご主人、お嬢さまと死別されています。でも、常に前向き。創作に無我夢中。連絡もなく、新しい電話番号も告げられていない母は、何度も心配していたのですが、そんな彼女のことなので、絶対に大丈夫と答えていたのです。
五月も末に近くなった母の誕生日に、彼女から葉書が来たそうです。新しいマンションから見おろした桜の写真の葉書。一番いい写真が撮れて、現像しあがるまで、ずいぶん苦心されて時を要した旨が葉書に添えられていたそうです。引越し疲れで毎日寝込んでいたどころか、さっそく桜のいい一枚を撮ろうと、無我夢中になるひたむきさに、あらためて彼女を尊敬しました。以前住まれていたマンションは川べりで、朝も五時には川にでて、その日、どんな写真が撮れるか、毎日が楽しみでしかたがないと仰っていた、輝く瞳を思い出しました。<鳩子>
【超わたし的タマコの日記】妄想シナリオ執筆法
おはようございます。
鳩子さんの弟子でシナリオライターの卵のタマコです。ここでは時々ページをお借りして、サブカル系女子タマコがマイブームや日常ふと思った事をつぶやいていきたいと思います。よろしくお願い致します。
今回の話題は「妄想シナリオ執筆法」です。
皆さんは「妄想ダイエット」をご存知でしょうか?TV番組で取り上げられたり、ハイヒールモモコさんが実践したりで話題のダイエット法で、好きな芸能人の恋人になったと思い込んだり、憧れの同性の芸能人になりきってダイエットに励む方法です。要するに頭でイメージすることでモチベーションを維持しつつ、食事管理や運動を継続させるのですね。
タマコは妄想が得意なので、現在この妄想ダイエットを始めたところなのです(笑)
この方法、シナリオを書く時にも使えそうです。締め切りが迫ってるのにどうしてもエンジンがかからない。ネタ切れ感で筆が進まない…そんな時、私は好きな俳優さんをイメージキャストに据えてみます。なんとなくキャラクターが動き出してくれます。
あるいは、自分が憧れているプロの脚本家になったつもりで書いてみます。なんでも書けそうな気がしてきます。
実際に、あるコンクールで受賞した作品が実写化されることになり、作者がイメージキャストにしていた俳優さんが出演してくれた事が過去にあるそうです。
タマコも実践中の「妄想シナリオ執筆法」良ければお試しあれ。
〈タマコ〉
【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】 愛のある光景
ここ数年、四月から七月にかけて京都の大学へ通っています。朝はいつもより早起きします。せっかく大学生と一緒にときを過ごすのだから青春の心を取り戻そうと、我が家のささやかな書棚から遠藤周作の「恋することと愛すること」という文庫本を取りだして、電車のなかで読んでいます。朝日が差す車窓からは桜の色どりも移り変わり、青春の書物にときめく時間は、早起きの辛さも忘れさせてくれます。
思い出せば大学生のころ、恋と愛はどうちがうのかと、友だちと夜更けまで語りあったりしました。夜更けの談義にはインスタント珈琲だけで充分でした。青いということを、遠くにしてしまったら、ものは書けないような気持ちがします。澄んだ青さよ、永遠に…
恋すること、つまり異性に対して情熱を持つこと、これは「愛する」こととはちがいます。なぜなら、恋をすることは、その機会や運命さえあれば誰でもできることだからです。(中略)愛することとは決意と意志と忍耐とからはじまるのです。だから、それは「恋する」ことのようにやさしいものではない。貴方もA嬢もB嬢もC嬢も、誰でもが機会と運命とさえに恵まれれば、できるというものではない。愛することは、貴方だけの決意と、貴方だけの意志と、貴方だけの努力によって少しずつ創られていくものなのです。(遠藤周作「恋することと愛すること」)
恋をしているときは人生の輝けるひととき。でも、その恋も客観的に視つめると、誰にでもできることなのですね。単に機会に恵まれただけのこと… などと考えつつ、愛のある光景は見逃さないようにと思っていますと、京都の町を行く揺れるバスのなかで、足の不自由なお婆ちゃんを、出口までずっと支えられるご婦人の姿に、胸が熱くなりました。<鳩子>

【超わたし的タマコの日記】僕達急行 A列車で行こう
サラリーマンの小町(松山ケンイチ)と下町の鉄工所の二代目の小玉(瑛太)が共通の趣味である鉄道を通して仲良くなり、恋や仕事に奮闘(?)する姿をふわりとしたユーモアで包んだ作品。
心地よい列車の走行音、車窓を流れていく田舎の風景、緑あふれる自然の匂いと風に包まれて、のんびりとローカル線に乗って旅をしているような気分になる作品でした。
肩の力の抜けた、鉄道マニアの今どきの青年2人と趣味を通じてつながっていく人と人。それは緩いつながりではあるけれど、「ちょっとイイよなー」と思いました。劇中のセリフにあった「少し好き」という感覚に近いと思います。
「袖擦り合うも他生の縁」という言葉がありますが、ちょっとした関わり合いでも、人と人とが出会うことって、少しワクワクして。劇中にあった、二台の列車模型を走らせて、並んだ瞬間「キター!」と言うシーン、まさにそんな感じ。
「縁は異なもの味なもの」というセリフがあったように、どこでどうなるかわからない部分もあるし、肩肘張らない程度に大事にしたい気もする。「ちょっとイイよなー」と思うワケです。
エンドクレジットの最後に「ありがとう森田芳光」という言葉がありました。森田芳光監督がこの作品を遺してくれたことに胸がジーンと熱くなりました。
私も青春18きっぷを持って旅に出ようかなぁ。<ま>
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- 監督 森田芳光 / 脚本 柏田道夫
【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】 下駄の音がする
「あれあれ、下駄の音がするよ」と、女主が店の奥からにこにことでて来られたのは、昨年末に博多織の記念館を訪れたときのことでした。旅行のときにはよく着物を着ます。地方にいくとお宮様に参ることが多く、玉砂利を歩くと草履が傷つきます。そこで冬でも下駄をはくのですが、訪れてくる人の音に耳を澄ますなど、わたしには日ごろできないことです。なにやら時代劇のなかへ訪れたようで、日々の出会いのなかで、その人の音に耳を澄ましてみるのはステキなことだと思いました。
ともすればかろきねたみのきざし来る
日がなかなしくものなど縫はむ
岡本かの子の歌です。この歌は妻が手縫いしながら夫を待っている気持ちを詠んだ歌です。
今のように、リビングに大型液晶テレビが陣取っている訳でもなく、お笑いやバラエティが哀しみをその場凌ぎで忘れさせてくれる訳でもなく、ただ手縫いしながら夫の帰ってくる音に耳を澄ましている妻。…昭和風どころじゃなくて時代劇がかっていますが、儚くて、辛くて、いいなぁと思います。ああでもない、こうでもない、と思いの重なる女の人のかろきねたみが伝わります。静まりかえった夜更けには、夫の下駄の音が遠くから近づいてきて、ご近所に迷惑をかけないようにそぉっと開けられる玄関の横開き戸の音。静かだと妬みも深いでしょうけれど、思いやりも深いことでしょう。
この頃、突然ぶっ切れたような事件がつづきます。町はうるさくて、耳を澄ますどころか、蓋をしたくなります。あなたの愛する人の近づいてくる音を知っていますか? あなたが愛した亡き人の音を覚えていますか? <鳩子>
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【活躍状況】大阪校出身者は小説でも活躍中です
大阪校出身者はテレビ・ドラマ・映画だけではなく小説でも活躍中です。
3月にたくさん出版・発表されました。
吉野万理子さん「アルバムの一枚目」読楽4月号 徳間書店
谷口雅美さん「雨のち笑顔」「渡瀬さんの後悔」
99のなみだ・桜 涙がこころを癒す短編小説集 リンダブックス
十時直子さん「贈る言葉」
99のなみだ・桜 涙がこころを癒す短編小説集 リンダブックス
甲本千絵さん「ともだちから」
99のなみだ・桜 涙がこころを癒す短編小説集 リンダブックス
谷口雅美さん「父へ」「母が祈る理由」「走馬灯のように母は。」
母のなみだ・愛しき家族を想う短篇小説集 リンダブックス
甲本千絵さん「運動会」
母のなみだ・愛しき家族を想う短篇小説集 リンダブックス
【超わたし的タマコの日記】「痛いけど、頑張ってるやん、私」と思えるドラマ「最後から二番目の恋」
「ふと気づいたんだけど、俺、バカボンのパパと同い年になっちゃったんだよね」
数年前、ゼミの後に立ち寄った居酒屋で、先輩は遠い目をしてそう言った。
「41歳の春なんだよ」
その視線の先に先輩の生きてきた41年が見えるようで、なんとも感慨深い印象を受けた。いつか自分の作品にこのセリフを書こうと目論んでいたのだが、現在放送中のドラマでこのセリフと再会する事になった。
岡田惠和さん脚本の「最後から二番目の恋」である。このドラマ、私の周りの30代、40代の女性がドハマりしている。先日も居酒屋で年上の女友達と「中井貴一が良いんだよねー」などと話していると、隣の30代女子会グループの席からも「キョンキョンがさぁ」という会話が聞こえて来た。今、居酒屋で話題にあがるドラマナンバー1なのではないだろうか。
なぜ私達は熱く語ってしまうのか?
小泉今日子さん演じる主人公千明と中井貴一さん演じる長倉和平との軽妙な会話の中での自虐とも取れるリアリティのあるセリフに。千明の女友達三人のシーンの切なさに。30代、40代の長倉家の面々や20代若手脚本家とのやり取りから見えてくる千明の生きてきた背景に。
それらの描かれ方に、痛いほど共感してしまうからだ。
ちょっぴり痛みを感じながら観た第10話。
誕生日ケーキに立てられた沢山のロウソク。文句を言う千明に和平が言ったセリフ。
「誕生日は生まれてきた事をお祝いする日。そして、今元気で生きている事をお祝いする日」
それまで感じた全ての痛さを癒してくれるようなセリフだった。
冒頭の、バカボンのパパと同い年になった先輩は現在プロの脚本家として頑張っておられる。
歳を重ねるのは素敵なことだ。<タマコ>
万理子が、ドラマの勉強といって本を読んでいるシーンで、エンタテイメントの書き方3が使われていました。
- ドラマ別冊 エンタテイメントの書き方 Vol.3 2012年 03月号 [雑誌]/柏田 道夫
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【活躍状況】シナリオ・センター大阪校出身者 最近のテレビ、ラジオ活躍情報
2012年1月からのテレビ、ラジオ、小説などの活躍情報をまとめてみました。
■映画・ドラマ・マンガ原作・アニメ・舞台など
井上登紀子さん BS日テレ「檀れい名匠の里紀行~手わざ」 (構成)
「鳥取青谷和紙(仮)」 4月23日20:00-21:00
「鳥取木工と蔵の町巡り(仮)」 4月16日20:00-21:00
「東京雑貨巡り」 4月2日20:00-21:00
「王国ベトナムスペシャル」 3月17日19:00-21:00
福井ちひろさん 川口市立科学館プラネタリウム春番組
「星の命の物語~HR図と星の一生」3月10日~6月3日
田嶋久子さん「お姉ちゃんを貸す」ちびまる子ちゃん 3月11日18:00~ フジテレビ系列
「怒らない人になりたい」ちびまる子ちゃん 3月4日18:00~ フジテレビ系列
西井史子さん「逃亡者 おりん2」 1月17日(火)25:30~ テレビ東京系列
■小説・携帯小説
源祥子さん 2012年度リクルート進学ネット恋愛小説「歌うたいとギター弾きの恋」3月9日
甲木千絵さん 2012年度リクルート進学ネット恋愛小説「甘いのはお好き?」3月9日
竹中あいさん「Love&Job!オトナの事情」の3rdステージ 2月配信 VOLTAGE
吉野万理子さん 「海岸通りポストカードカフェ」 1月20日 双葉社
「今夜も残業エキストラ」 1月13日 PHP文芸文庫
「不惑ゆらゆら素描」 新連載 月刊ジェイ・ノベル(実業之日本社)
■ラジオ
吉川さちこさん「ウハウハ大放送アニメストリート シアター130」で「俺の卒業する日」 3月 バーディ企画
【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】おしゃれな魔法の杖
先日、車椅子生活をしている母のおともをして、杖を買いに行きました。
メイド・イン・ジャパンのそのお店にはきらきら光るスワロフスキーが彩られていたり、柔らかいゼブラの毛皮でやさしく手の甲を包むデザインが施されていたり、おしゃれな杖が並んでいました。
そのブランドは、さほどお歳ではない美しい女性が社長として経営されています。もともとインポートセレクトショップを営み、国内外へと買いつけのお仕事をなさっていたところ、或る日突然、難病にかかられ、自らが杖を使用することになられたそうです。
そこで気づかれたのが、日本の杖は介護用のものが主流であり、デザイン性の高い杖が少ないこと。それまでのファッション知識と難病のご体験を活かして、ファッションアイテムとしても使え、なおかつ安全性を備え、楽しく持って歩きたくなる日本発信の新たなステッキを作ることを決意されたそうです。
介護用品の専門店に行ったことがありますが、実用一点張りで、夢のない物ばかり並んでいたのには、手をのばすことができませんでした。いくつになっても、どのような状況になっても、その人らしさは尊重すべきです。
おそらく外国製のステッキを試された方も多いと思いますが、日本人の身長体重をしっかりふまえ、その人をしっかり支えることを第一条件として、それでいて日本人に似合う色合いの杖には、たくさんの方が生活の彩りの魔法にかかることと思います。なにごとも一点張りに走ってしまう日本人の特性には反省点も多々…。
母は、「車椅子なのに杖が欲しいなんて、ごめんなさい」と、なぜかお店の人に申し訳なさそうに言いながら、きらきら眸を輝かせて、杖を選んでいました。「杖を買うときは、必ずつきあってね」と言われていたのですが、わたしもステキなデザインの杖の、すっかりとりこになりました。<鳩子>
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