【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】爺バンドの夜は更けない
- 或るジャズライブバーへ。そこは客もまばらな、爺バンドが演奏するお店でした。
ドラマで親父バンドがでてくると和気藹々と和やかな雰囲気なのですが、それはフィクションの世界。いくつになっても男たちは闘魂を温めているものです。
店にはいるや穏やかならぬ雰囲気を感じました。
なぜならサックスのお爺ちゃんが目立って元気なのに対してベースとドラムは肩をおとして意気消沈したお爺ちゃん。ピアノは若いお姉さん。サックスソロのあとはピアノ、つづいてベースとソロがつづいたもののドラムソロはカットされ、「こりゃ、おかしい!」とお客の団塊世代爺が突如たちあがってアート・ブレイキ―を二曲もリクエストしました。
概して団塊世代はおかしいと思うことに遭遇するや血が騒いで、なにかをするのが習癖のようです。
アートといえばドラムソロ。さっきまで意気消沈していたドラムのお爺ちゃんは、あとで体調をくずして家路につくころには歩けなくなっていそうなくらいに汗をまき散らし、長丁場のドラムソロで爆発しました。
穏やかならぬ元気としょんぼりが密かに戦っていた店内も、ドラムのおかげでみんなのりのり、大興奮の渦になりました。
アート・ブレイキーといえばドラマーですが、もとはピアニストだったそうです。
或る夜アートが演奏するクラブに、クラブのボスのマフィアがピアニストを連れてきて弾かせたところ、アートよりも優れた演奏をしたため、ボスはアートに「おまえはタイコでも叩いてな!」と拳銃をちらつかせながら脅したそうです。
ジャズというと、紳士淑女がグラスを傾け拝聴する上品なイメージがありますが、もともとは荒くれ男が戦うワイルドな世界だったようです。
いくつになっても戦う男たちの夜は更けません。
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