シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記 -2ページ目

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】 ほりわり川から大海原へ

トンビ、そしてインヴァネスコートってご存じですか? 
着物にはおる男性用コートで、明治後半から大正昭和はじめに流行りました。
トンビは袖なしで、インヴァネスは袖があります。
スコットランドのインヴァネス地方で生まれたコートなのでこの名前だそうで、小説家の織田作之助がよく着ていました。

横浜の或る駅のホームにて、インヴァネスに貂(てん)の襟巻をした男の人が、眸を夢に輝かせて、まっしぐらに、かつかつ歩いてゆく幻をいくたびもみました。
大正時代の男の人の幻です。現代の人が夢もなさそうに俯いてホームをすすむなか、そのレトロマンはかつかつと、恰好よく闊歩しては過ぎ去り、また闊歩しては過ぎ去ってゆきました。

年も明け、そろそろ幻覚をみる状態にまで悪化したのかしら、ですって?
いえいえ、昨年亡くなった母が三つまで暮らした横浜の或る町へ散策にいってきたのです。
亡くなるまえの数か月間すやすやベッドで眠っている母をみていると、赤ちゃんのように可愛いなぁ、と思いました。
そして赤ちゃんのときに母が暮らした町へせめてわたしがいくと、母も喜んでくれるかもしれないと思い、旅だちました。
不思議なもので母からの聴きおぼえでしかないのに、町の光景はわたしの思い浮かべていたとおりでした。
小川が海へむかい流れていて、川のところどころに船が泊まっていて、そばには細い歩道があり、路地を曲がると小粋な民家群。
デジャブ―のような不思議な体験をしました。

 
インヴァネス・レトロマンは祖父の幻です。
ほりわり川から大海原を、夢で眸を輝かせ望んでいた祖父の、まぎれもない微笑みを感じました。
現実世界では、幼な子と散歩している若いお母さんたちといくたびもすれ違い、わたしはその後ろ姿を目で追いつつ… 


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上方(ハート)わが町ショートシネマフェスティバル

シナリオ・センター大阪校は今年で創立40周年を迎えます!!

それを記念してビッグ・イベントが開催されます!その名も
上方ドキドキわが町ショートフィルムフェスティバル
~あんさんの上方ドラマで新しい日本をつくろっ!

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11月6日(日)中之島中央公会堂にて!

企画なども続々決定!!
1、ゲストにジェームス三木先生!!ジェームス三木先生
朝の連続テレビ小説『澪つくし』や大河ドラマ『独眼竜政宗』などの脚本家として知られるジェームス三木先生がゲストとして登場! さらに「教えてジェームス三木先生」のコーナーも!!
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活躍中の脚本家に話が聞けるチャンス!!


2、ショートシネマコンクールカチンコ!!
生徒たちが上方を舞台にショートフィルム映画を作成。脚本はもちろん、ロケハンから撮影まで自分たちで行っています!!
未来のスター脚本家がいるかもしれない…!?

3、一般の方も参加可能! 20枚シナリオコンクール開催決定!!
最優秀賞の賞金は何と20万円壱万円 一万円 札 金!! しかもシナリオ・センター大阪校に通っていなくても応募できます!!
詳細は追って発表していきます。


今後も情報を更新していきますので、お見逃しなくビックリマーク
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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】



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         2016年

     をたいせつに



【活躍状況】新井まさみさんの最優秀賞受賞作がラジオドラマになります!

シナリオ・センター大阪校OGの新井まさみさんの第36回BKラジオドラマ脚本賞最優秀賞受賞作品『ふたりの娘』がNHKFMのFMシアターにてOAされます!

放送は2016年の1月9日、21:00~です。

出演は吉岡里帆さん、山田由梨さん、国広富之さん、門田裕さん、榎田貴斗さん、藤吉雅人さんです。

あらすじなどはこちら
ぜひOAをチェックして下さい!


また、その他のシナリオ・センター大阪校在校生およびOB・OGの活躍状況はシナリオ・センター大阪校HPにて掲載しております。そちらもぜひご確認下さい。

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】 カワイイは美しい

東京の伊勢丹で日本のカワイイ文化の元祖として内藤ルネさんのイラストレーションが展示されていました。
アニメ、デザイン等、日本のカワイイ文化は今、世界から注目されています。
ルネさん以前のカワイイ元祖として、松本かつぢさんや岡本帰一さんはご存じですか? 
ギスギスする日、カワイイ文化は心をやさしくします。

大正昭和初期の乙女のイラストが誰かに似ていると思っていましたら、先日、訃報が公にされました原節子さんです。

才色兼備、親孝行、言葉少なく、禁欲的…、こんな女性がいるのかしらという、まさしく日本の理想女性のシンボル。
小津安二郎監督と脚本家の野田高梧先生や、多くのキャスト、スタッフたちにより捻出されたシンボルです。
このシンボルを西洋的なおももちの原節子さんが演じていらっしゃるところに芸術が表現されています。

原節子さんの容貌は、チャプリンの「街の灯」の盲目の花売り娘や、「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンと似ていて、西洋的。
それを日本の精神の美意識につなげ、一つの象徴世界を創られたことが、背景となる時代性にもふさわしく、すばらしい。

初期にはジェームス槇というペンネームでバタ臭い映画を撮られていた小津監督だからこそ、この象徴美につながったのではないでしょうか。どのような始まり方でも、どのような回り道でも、かならず成果に集結します。また、そぎおとされたところに美が宿る、とも。人生、エンドレスに勉強ですね。来年もがんばりましょう!

大好きな方、お二人の訃報を知りました。原節子さんと水木しげるさん。わたしはお二人のどこが好きなのか、少し考えてみました。お二人の勇気への憧れなのかもしれません。
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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】デュークボックスのおじぃちゃん

狭いわが家に小さなデュークボックスを置きました。

何度もセットしなくてもレコードがウン十枚はいります。

ランダム再生も何時間でも可能です。

デュークボックスと言えば、なんたってプレスリー。

しかしなぜか藤圭子、それから三線、アルメニアのジャズピアノと、支離滅裂なレコードをたくさんしこみました。

 

ところがなにせ中古。悦に入りすぎていると、ばらばらとレコードが機械のなかにドミノ倒しのように倒れ、修理先を探しました。

 

やっとみつかった修理先。大きな工具箱と毛布を両手にやって来られたのは、かなりお歳を召したおじぃちゃんでした。
「ちょっと、明るいところ、借りますよ」とおじぃちゃんは、窓からの陽がはいる狭いキッチンに毛布を敷き、デュークボックスを毛布の上に運びました。

そして、「三時間ほど頂戴しますよ」と修理を始められました。

 

拝見していると、すごく眸が輝いておられます。そのことにわたしはとても感動したのです。面倒くさいことをさせられて、という仕事に対するスタンスの人が多い昨今、こんなにわくわく好きなことができるのか、と眸を輝かせておられたからです。

 

むかし、路地を曲がるとあったような、中古オーディオ店。

そんなお店には必ず音キチさんがいて、すごくうんちくや説明が好きで、それはなによりも音が大好きだからなのでした。

先日、ラジオ番組を収録されているスタジオの社長さんがセンターへお越しくださいました。

そのスタジオには大型冷蔵庫のような、オーディオ機材がたくさん並んでいます。

普通なら聴きのがす音にこだわりを燃やしつづけていらっしゃる社長さん。

なにかに心底惚れこむ人生って、本当に輝いていて、ステキです。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】赤いパラソル

仕事がお休みの日はお昼寝をするのが一番の極楽、と熟睡していたら、「ゆみちゃーん!」という叫び声で目がさめました。

どうやらマンションのおなじ階のお独りさまのお兄さん、といっても50歳くらいの日ごろしずかな方がベランダから叫んでいるよう。

(ゆみちゃんという名前の方、ごめんなさい)その後も「ゆみちゃーん、ゆみちゃーん」とつづきました。

 

そういえば、お兄さんの部屋の外に、可愛らしいちいさな、フリルのついた赤いパラソルがたてかけられていたことがありました。

「今日は彼女がきてるんですよっ」と、ちょっといばっていたかのような赤いパラソル。

恋の花がパッと咲いたようで、ひとごとながら、おめでとう、といいたくなっていたというのに、赤いパラソルのゆみちゃんと、なにかあってお別れしたのかもしれません。

おせっかいですが、ゆみちゃんに、許してあげてください、といってあげたくなりました。


駅の靴の修理のお兄さんは、いつもものすごくむっつりしていたのが、或る日、お兄さんを手伝う女の人が横にいて、それからいつもにこにこするようになりました。それから女の人はいなくなりましたが、お兄さんのにこにこはやみません。結婚されたのかしら?


恋とは不思議。むっつりがにこにこになったり、悲しい別れから叫び声を発するようになったり。

人の恋ながら、いろいろあっても、やはり恋はステキと思います。

恋はやさし野辺の花。

恋は心に咲く赤いパラソル。


わたしの棲むこのあたりでは疾走する人や叫ぶ人が多くて、またしてもお昼寝どきひさびさに、「ドンペリはいりまーす!」と叫び声がひびきました。数年ぶりなので、なんだか元気で威勢のいい叫び声に、起こされたことも忘れて、とても嬉しくなってきたのでした。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】渓流の里のガラス博士

吉田喜重監督の「秋津温泉」の舞台となった岡山県の奥津温泉へいってきました。

恋の物語にふさわしい、清らかで凛とした滝の音が響く、ステキな山郷でした。


近くにウランガラスの美術館がありました。

ウランガラスとは、ガラスにウランを混ぜて作った、黄色や緑色の色彩を放つガラスです。

製造されはじめたのは1830年代で、ウランが原子力に利用されるようになった1940年代までにヨーロッパ、アメリカで大量に工芸品が製造されたそうです。

現在はウランを扱うことがむずかしいために極少量が生産されているにすぎないそうですが、アンティークとして愛好家も多く、高値で取りひきされているそうです。


日光をうけると透明なガラスの奥から色彩を放ち、まるでガラスが生きているかのような、とても美しいガラスです。

訪れたときにはガレをはじめとした、19世紀から20世紀に至るヨーロッパ、アメリカのガラス美術展を開催していました。アールヌーボーの螺旋に、奥からの色彩の輝きがなんといえない美の世界をかもしだしていました。


ガラス博士のように詳しく丁寧にご解説くださった館長とおぼしきご高齢の紳士は、こよなくウランガラスを愛していらっしゃるご様子で、ひとつひとつの作品を愛でるごとくご解説いただき、たいへん勉強になりました。

 「はい、一列に並んでください」
と、学校の先生のように几帳面な博士にいわれて、見しらぬ子どもづれの家族と先生の教えに従うように一列に並んでガレを鑑賞したのも、なんとも不思議な体験でしたが、心をこめて美の世界を創りだしてきた芸術家の作品を、心をこめて見てもらいたいという、熱い情熱をガラス博士から感じさせていただきました。


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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】花、咲かせて

 女流日本画家、片岡球子氏の画集に、同氏の恩師からの忠告が記されていました。


「あなたはみなから、ゲテモノの絵を描くとずいぶんいわれています。今のあなたの絵はゲテモノに違いありません。しかしゲテモノと本物は紙一重の差です。あなたはそのゲテモノを捨ててはいけない。自分で自分の絵にゲロが出るほど描きつづけなさい。そのうちに、はっといやになってくる。いつか必ず自分の絵に、あきてしまうときが来ます。それまでに何年かかるかわかりませんが、あなたの絵を絶対に変えてはなりません。他人が何と言おうとも、そんなことに耳を傾けることはいりません」


 片岡球子氏は、お若いころには賞にいくたびも挑戦され受賞されることが少なかった画家だそうです。

戦前は、「落選の神様」とまであだ名されたそうです。しかし後年は、歌舞伎、能、浮世絵師、富士山、史上人物と生涯描きつづけるモチーフを得られ、芸術賞や勲章をもらわれました。

ゲテモノといわれる土着的な作風は、北海道石狩で造り酒屋と材木商を営んでいた生家の環境から発しているそうです。戦前、日本画の世界は技術優位の価値観で優劣を定められ、戦後になり洋画化がとりいれられていくまで、時代にかかわりなく永らくご自分の絵を描きつづけられたひたむきな人生観に感動しました。恩師もまた、素晴らしい創作者と感動しました。


 いわゆる日本画の女性像ではなく、リアリズムのなかに佇み、生きてゆこうとしている女性を描かれている球子氏初期の作品に、やさしく命を視つめる眼を感じました。


 際立つ欠点と紙一重の個性的な輝きが、あなたのなかにあるのかもしれません。個性が摘まれては、花が枯れて、朽ちてしまいます。

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【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】夢の大空を架けるおばあちゃん

 五月、母が亡くなりました。享年九十歳でした。

満中陰をすませても、夜ごとお線香をたて、想いうかぶのは母のやさしさです。満中陰へは、母と十五歳のときからの友人のおばあちゃんがお越しくださいました。同級生なので、八十八歳です。

 

七十歳までニットデザイナーをされていて、写真に転向。それ以来、無我夢中で写真に魅せられつづけていらっしゃいます。コンクールにも意欲的に応募され、数々の賞を獲られ、年鑑にも選ばれ、個展も開催されています。ニットデザイナーのときも、毎年、個展を開催されていました。

 「わたしは今、ここに生きています」という発信力の強さは、アメリカ生活を永くされていたからというのもあるのでしょう。日本人は、「わたしは今、ここに生きています」とアイデンティティーを発信することに、どこかネガティブな力がはたらいてしまいます。
 

 満中陰でのお食事の際、
 「生きるということは、夢を持つことよ。目的を持たないと、生きていることにならないのよ」
 と、キラキラ輝いた眸で語られ、同席のごく平凡なお年寄りの親戚たちは、微笑みながらも驚きの視線を投げていました。

「六末のコンクール作品が間にあわなかったの、くやしい」といわれて、夢を追うセンターの方たちと八十八歳のおばあちゃんが同じスタンスなのには、本当に感嘆しました。

 現在は全室、天井から床まで窓の高層マンション高層階におひとりで暮らしておられ、空の色、見おろす桜の色、お城の色が、うつりかわるにつけて、写真撮影に無我夢中でいらっしゃるとのことでした。 


 生きることは夢を持つこと… 法事の席で本当にあたたかい励ましをいただきました。