【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】夢の大空を架けるおばあちゃん
五月、母が亡くなりました。享年九十歳でした。
満中陰をすませても、夜ごとお線香をたて、想いうかぶのは母のやさしさです。満中陰へは、母と十五歳のときからの友人のおばあちゃんがお越しくださいました。同級生なので、八十八歳です。
七十歳までニットデザイナーをされていて、写真に転向。それ以来、無我夢中で写真に魅せられつづけていらっしゃいます。コンクールにも意欲的に応募され、数々の賞を獲られ、年鑑にも選ばれ、個展も開催されています。ニットデザイナーのときも、毎年、個展を開催されていました。
「わたしは今、ここに生きています」という発信力の強さは、アメリカ生活を永くされていたからというのもあるのでしょう。日本人は、「わたしは今、ここに生きています」とアイデンティティーを発信することに、どこかネガティブな力がはたらいてしまいます。
満中陰でのお食事の際、
「生きるということは、夢を持つことよ。目的を持たないと、生きていることにならないのよ」
と、キラキラ輝いた眸で語られ、同席のごく平凡なお年寄りの親戚たちは、微笑みながらも驚きの視線を投げていました。
「六末のコンクール作品が間にあわなかったの、くやしい」といわれて、夢を追うセンターの方たちと八十八歳のおばあちゃんが同じスタンスなのには、本当に感嘆しました。
現在は全室、天井から床まで窓の高層マンション高層階におひとりで暮らしておられ、空の色、見おろす桜の色、お城の色が、うつりかわるにつけて、写真撮影に無我夢中でいらっしゃるとのことでした。
生きることは夢を持つこと… 法事の席で本当にあたたかい励ましをいただきました。