【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】赤いパラソル
- 仕事がお休みの日はお昼寝をするのが一番の極楽、と熟睡していたら、「ゆみちゃーん!」という叫び声で目がさめました。
どうやらマンションのおなじ階のお独りさまのお兄さん、といっても50歳くらいの日ごろしずかな方がベランダから叫んでいるよう。
(ゆみちゃんという名前の方、ごめんなさい)その後も「ゆみちゃーん、ゆみちゃーん」とつづきました。
そういえば、お兄さんの部屋の外に、可愛らしいちいさな、フリルのついた赤いパラソルがたてかけられていたことがありました。
「今日は彼女がきてるんですよっ」と、ちょっといばっていたかのような赤いパラソル。
恋の花がパッと咲いたようで、ひとごとながら、おめでとう、といいたくなっていたというのに、赤いパラソルのゆみちゃんと、なにかあってお別れしたのかもしれません。
おせっかいですが、ゆみちゃんに、許してあげてください、といってあげたくなりました。
駅の靴の修理のお兄さんは、いつもものすごくむっつりしていたのが、或る日、お兄さんを手伝う女の人が横にいて、それからいつもにこにこするようになりました。それから女の人はいなくなりましたが、お兄さんのにこにこはやみません。結婚されたのかしら?
恋とは不思議。むっつりがにこにこになったり、悲しい別れから叫び声を発するようになったり。
人の恋ながら、いろいろあっても、やはり恋はステキと思います。
恋はやさし野辺の花。
恋は心に咲く赤いパラソル。
わたしの棲むこのあたりでは疾走する人や叫ぶ人が多くて、またしてもお昼寝どきひさびさに、「ドンペリはいりまーす!」と叫び声がひびきました。数年ぶりなので、なんだか元気で威勢のいい叫び声に、起こされたことも忘れて、とても嬉しくなってきたのでした。
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