『ファの豆腐』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『ファの豆腐』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2011年/日本映画/40分
監督:久万真路
出演:菊池亜希子/塩見三省/三浦誠己/瀬能礼子/ともさと衣

2011年 第27回 やりすぎ限界映画祭
2011年 ベスト10 第15位:『ファの豆腐』
やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『ファの豆腐』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界女優賞:菊池亜希子


[「菊池亜希子」の「映画」5作目]



「菊池亜希子」の「映画」5作目は、『白い息』の副題? で『冬の日』と「2本立て」公開された「短編映画」『ファの豆腐』。恐るべき “極限ダイナマイト・ボンバー・ギャル” 「菊池亜希子」の「極限の美」を「これでもか」と思い知らせる。

菊池亜希子が主演した『森崎書店の日々』『ファの豆腐』『海のふた』は、全部「男性社会」に挫折した「就職女子」の苦悩。「恋愛」「仕事」に破れ、男性社会に挫折した「就職女子」の苦悩なら、「菊池亜希子にまかせろ!」、ぐらいの「一番はまり役」かもしれない。『やりすぎ限界映画』とは?[定義⑤]『恋愛映画における女優の私見』において思い知らされた。現代の「格差社会」で『ファの豆腐』は、観た人間を「大きな癒しの世界」に誘う。

[「男性社会」での「夢」「やりたいこと」]



「男性社会」では「夢」「やりたいこと」がないとダメな人間のイメージがある。「男性社会」での「夢」「やりたいこと」は、家族を養うため男が高収入を得るのに必要な思想。「目標を持って生きる」価値観が必要だった。「男女平等」になってから「就職女子」が普通のようになったが、もし「結婚」「育児」が「一番やりたいこと」である女子なら、「男性社会」の価値観に踊らされて「夢」「やりたいこと」がないのをダメと思う必要はない。「男性社会」での「夢」が重要な女子は、「男に勝ちたい」女子だけだろう。

[殆どなくなってしまった「個人経営」]



今から約50年間前、僕が生まれた70年代を振り返ると、「商店」の形態は信じられないほど変わった。「格差社会」の進行で「自営業」、「個人経営」の「床屋」「電気屋」「本屋」「文房具屋」「おもちゃ屋」「駄菓子屋」「豆腐屋」……、などは殆どなくなってしまった。

僕の実家は「床屋」で、父が死ぬ2年前に店を閉めた。最期の2年間は客が一人もこない日が普通になってしまい、光熱費の方が収入よりも多く「大赤字」だった。現代「個人経営」で生計を立てるにはよほど経営手腕がないと難しい。『ファの豆腐』が僕の育った実家の「床屋」と重なった。朝子(菊池亜希子)が経営する「豆腐屋」での暮らしが、僕の子供の頃を思い出させた。

[本当に「豆腐屋」で生計を立てる]



■「私 コンビニで働こうかな
  夜だけでも
  そしたら だいぶ助かるし
  今のままだと出てくばっかりで」
 「だったら やめればいい
  学校給食がなくなったとき
  一度は閉めたんだ
  お前がやりたいって言うから
  始めたんだ
  やめちまえばいい」


現代のディスカウントストアと比較すると、僕は「個人経営」で生き抜いた両親に驚愕する。高度経済成長時代だった。「PC」「スマホ」などなかった時代。子供の頃の思い出は、いつも「床屋」の客が満員で、殆ど親に構ってもらえず寂しかった思い出。それほど店が繁盛してた時代が今は信じられない。

だが現代は「格差社会」が進行して「床屋」もディスカウントストアに変化。「激安ヘアカット1000円」となった。日本の殆どの「個人経営」が『ファの豆腐』となった。

本当に「豆腐屋」で生計を立てるなら、それこそ “本気” でディスカウントストアに勝る付加価値をつけたり、「個人経営」の魅力を売り込む戦略を考えねば成功は難しい。だが「絶対無理」とは言い切れない。最期はその人の努力だろう。今でも「個人経営」で生きてる人間はかなりいる。

[「もう “ファの豆腐” じゃないよ」]



■「もう “ファの豆腐”
  じゃないよ」


「もう “ファの豆腐” じゃないよ」。「自分の意志」か確信できずに吹いてた「豆腐ラッパ」の「ファ」の音が、「情けない音」から「力強い音」に変化した。「自分の意志」で「豆腐屋」の改革に「挑戦」する朝子の「決意」「覚悟」が伝わった。

「失敗して人生」。だが「挑戦」は悪くない。「80歳」で「エベレスト登頂」を成し遂げた人もいる。人間は何歳になっても挑戦はできる。「企業」の一員として頑張るか、「個人経営」で頑張るか、どんな仕事も「良いこと」と「悪いこと」はある。また『リトル・フォレスト』のような「自給自足」だってある。人生は何が起きるか解らない。「挑戦」しないでダメと決めつけるのもおかしい。もし「挑戦」したいことがあるならやった方がいい。やってダメなら初めてあきらめたらいい。コンビニで働くのはそれからだっていい。

[「一番大切なこと」]



だが「一番大切なこと」は、「生きる情熱」「生きる意志」だと思う。生きてて「自分が幸せ」「自分が楽しい」と感じれるなら、「夢」「やりたいこと」=「すること」など「本当は何でもいい」と思う。「結婚」「育児」が「自分が幸せ」「自分が楽しい」と一番思えることなら、「そこに突き進めばいい」。「就職女子」の失敗を「ダメと思うことはない」。

だが絶対「生きる希望」だけは失ってはいけない。最期は「生きる情熱」「生きる意志」があれば何したって何とかなるもの。「ハローワーク」だってある。「自分はもうダメ」という「思い込み」「絶望」「マイナス思考」こそが、「一番ダメなこと」だと思う。

「夢」「やりたいこと」に囚われるより、「自分がどうなりたいかを見つめることが一番大切」。「自分が幸せ」「自分が楽しい」と思えることが、「結婚」「育児」なのか「就職女子」なのか? 朝子の「挑戦」が「一番大切なこと」が何かを見つめさせてくれる。




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画像 2018年 12月