TOKYO WAR MOBILE POLICE PATLABOR 著:押井守【古本購入300円】
- TOKYO WAR
MOBILE POLICE PATLABOR
押井守:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2366-0
2005年7月発行 定価1,785円(税込)
BOOK OFFの単行本300円均一で入手した書籍。11年前に文庫で出版された、「機動警察パトレイバー2 the MOVIE」のノベライズで、押井守の処女長編小説を加筆・修正した改訂版…実は当時のオリジナル文庫版も過去に読んでいて、いまだに所有しているのだが、どんな風に変わっているか興味があって、購入してみた。ただ、改訂版だが…あまりオリジナルに手は加えていない様子で、文庫版を引っ張り出してきて比べてみたのだが、どこが変わっているのだか、全然分からない程度だった。マニアなら細部の違いに気付くのかもしれないが、自分には無理だ(笑)確実にいえるのは、改訂版用のあとがきがついている点かな。あと、最初の柘植がPKOに派遣されているところが…オリジナルでは第1章目の“奇襲”という章に組み込まれていたが、その部分がプロローグとして扱われていたことか…。
横浜ベイブリッジが爆破された!当初はテロと思われたのだが、実はジェット機による爆撃だということが判明。さらに自衛隊関係者が事件に関与しているという噂が流れ始める…。特車二課の後藤の元へ荒川と名乗る陸上自衛隊調査部別室の荒川と名乗る男が訪問…ベイブリッジ事件の証拠となるビデオテープを提示し、捜査への協力を要請してきた。
当時は、映画のノベライズとして…映画本編との差異を見つけて楽しむ程度だったのだが、この10年近い間に数々の押井守の映像作品や活字作品に接してきたので、改めて「TOKYO WAR」を読み直すと…絶妙な押井節が効いた文章が所々にあり、思わずニンマリさせられる。一つの物事を説明するのにやたらと遠まわしに、二点三転しながら結論を語るという…映画本編の長セリフにも匹敵した表現が、けっこう活字で読んでいて楽しいのだ。
また後藤や荒川といったキャラクターのセリフを借りて語られる押井流の戦争論なんかも…映画以上に克明に描かれており、当時とは世界情勢も色々変わってきているのだが、普通に今現在のことを語っているようにも受け取れてしまうので、戦争というものの本質をけっこう語っていたんだなぁって思ってしまう。
たた突っ立っているだけでもお金がかかる。自衛隊が出動したときのお金の流れ…それはいったい誰が負担するのか?といった議論を繰り広げるあたりは、イラクへの自衛隊派兵問題なんかともダブってしまった。
映画同様、野明や遊馬、レイバーの活躍といったものはあまり興味がないらしく…後藤の登場シーンに比べると、本当に映画のノベライズって感じで文章が軽い(笑)それでも、映画では描かれなかったようなファンサービスをしっかりと抑えており、押井守の描いた小説にしては、バランスよくまとまっているのが実感できますね。
個人的採点:80点
バイオハザード3 死者の街 著:S・D・ペリー
バイオハザード3 死者の街
S.D.ペリー:著 風間賢二:訳
中央公論新社 ISBN:4-12-500885-X
2005年1月発行 定価1,050円(税込)
前巻を読んでから少し間があいてしまったが、S.D.ペリーの「バイオハザード」シリーズの第3巻目を読んだ。作者のオリジナルストーリーだった2巻目から変わって、今回は1巻同様、ゲーム版のノベライズということなのだが、元ネタのゲームをプレイしたことがないので、かなり新鮮に物語を楽しめた。またホラーやバトルの要素も増えていて、小説としての読み応えもアップしているように感じたが、それは元ネタのゲームがしっかりしていたのにも起因しているんだろうなぁ~。
新人警官のレオンは、配属先のラクーンシティに到着したのだが、街の異変を素早く察知する。その刹那、ゾンビと遭遇した…。一方、S.T.A.R.Sの隊員クリスの妹、クレアは…音信不通になった兄を心配し、ラクーンシティを訪れるのだが、街の惨状に直面する。いったいラクーンシティに何が起こったのか?ゾンビに襲われたクレアを偶然助けたレオンは、一緒に街を脱出しようと試みるが、途中でゾンビが現れ脱出失敗。警察署に行けばなんとかなるのではと考えたレオンは、自分が囮になりクレアを逃がそうとする。署での合流を誓う二人だったが…肝心のラクーン市警本部もゾンビや化け物たちの巣窟になっていた!?
バイオは映画しか今まで見ていなかったのだが、 クライマックスの展開は映画版に似ていましたね。でも映画とは話が違うようだし、全くゲームをプレイしていないので、今後の展開が本当に予想がつかない。エピローグあたりを読むと、今後…今回のキャラと、1、2巻に出てきたキャラが一緒に活躍したりするのかなぁと期待が膨らむんですけどね。
テンポの良さなんかも手伝い、過去の2冊よりも、スラスラと読めた。ページ数は今までの中で一番多いのにね(笑)
個人的採点:70点
魔女の笑窪 著:大沢在昌【古本購入:300円】
魔女の笑窪
大沢在昌:著
文芸春秋 ISBN:4-16-324590-1
2006年1月発行 定価1,550円(税込)
前回に引き続き、BOOKOFFの単行本300円均一で見つけた、わりと新し目の書籍です。今年の初めに出た大沢在昌の新刊「魔女の笑窪」。新刊で買いたかったんだけど…待ってて良かった♪
裏稼業のコンサルタントとして生計を立てている水原…男を完璧に見抜くという特技を生かし、現在の地位を気付いてきたのだが、そんな彼女には誰にも知られたくない、思い出したくもないある秘密があったのだ。彼女はかつて、厳しい掟で固められた“地獄島”と呼ばれる島から抜け出してきた過去があったのだ。そこで彼女はどんな地獄を見てきたのか?
連作短編のはずだったのだが…後半はではすっかり、主人公が過去と対峙する長編作品を読んでいたかのように錯覚させられる展開。構成の上手さに拍手。いつもは短編だと、それぞれのあらすじとか、細かい感想を書くのだが、これはほとんど長編作品と捉えてもいいんじゃないかと思いますね。
海外のSFドラマで「ダークエンジェル」ってあったでしょ?あれをSFじゃなくて、もうちょっと現実的な設定に置き換えたって感じかな。身分を隠しながら、生活していたんだけど…追っ手に自分の存在がバレてしまうという。
最初は必殺仕事人みたいに、完璧に仕事をこなすクールな主人公なんだけど…段々と過去が判明するにつれ、人間的な部分が描かれていく。さすが大沢在昌という…キャラクターがとっても魅力的に描かれている。主人公もそうだけど、個性的な脇役も光ってるね。ちょろっと出てくるヤクザとか、けっこうカッコいいんだ。
難しい事は何もなく、安心して楽しめる娯楽小説として、一気に読破!
個人的採点:75点
勝つために戦え! 著:押井守【古本購入:300円】
- 勝つために戦え!
押井守:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2668-6
2006年3月発行 定価1,575円(税込)
今月は、身内に不幸があり、ブログ更新どころか、本を読んだり、買ったりする暇が全然なかった。ようやく、落ち着いてきて、読者や買い物の時間がとれるようになってきたんだ…。で、久しぶりにBOOK OFFへ行ったら、300円以上(100円コーナー以外)の単行本が全て300円になるというお買い得セールを実施していた。つまり上下巻セット(分売不可)のハリポタなんかも、たった300円で買えちゃうわけなんですけど…せどりがみんな買い占めちゃうので、人気書籍はほとんどありませんでした(爆)それでも、気になっていた昨年から今年にかけての、新し目の書籍を何冊かまとめ買いをしてきてしまった。ということで、来月あたりは…105円以外の本もいっぱい読むかもしれません(笑)
久々読んだ本は、コレです。今年の3月頃に出たばかりの新刊本です!映画、アニメ監督の押井守が、勝敗論をテーマに語り尽くす、インタビュー形式のコラム本なんですけど…そのほとんどが、押井さん自身がハマっているサッカーネタ。もちろん、他のスポーツも語るし、アニメや映画ネタ、政治ネタなんかも語っているのですが…何かというとサッカーの話題ばかり。
"サッカーなんて毛ほどもキョーミなし!”と語っていた挿絵担当の人気アニメーターの西尾鉄也氏ではないが、自分もあまり興味のない事柄なので、コアなサッカー話にはちょっと話についていけないところもあるんだけど、何をもって勝負の勝ち負けとするのかという、押井さんの意見は、共感が持てる部分がけっこうある。
所詮、他人は他人…自分は自分で、価値観が全く違うんだから他人にああだこうだ言われて、負け組のレッテルを貼られても、他人が考えている次元とは別の次元で、自分に課したハードルをクリアしていれば、勝負に負けていないだって胸を張って言っていいんだと…。なんかそんなようなことを考えて、ちょっとだけ元気になれましたね(笑)
上でもちょっと触れたけど…西尾鉄也さんの挿絵はけっこう面白い。時にテーマと全く関係ないこと描いてますからね。(それを自分でツッコんでるし)こちらの方が、押井さんの悪口やら、アニメ業界のネタやら色々出てきて、単純に楽しかったです。これだけでも充分、元が取れたかな?
個人的採点:65点(西尾鉄也さんの挿絵に関してはら95点!?)
アシャワンの乙女たち 著:牧野 修

牧野修:著
朝日ソノラマ ISBN:4-257-77046-5
2004年11月発行 定価600円(税込)

ジャンル別けするとなんなんだろうな?牧野修なので、SFとかホラーでもいいのかもしれないけど、とりあえず“その他のミステリー”にしておきます。美少女が、化け物と対決するという勧善懲悪な娯楽小説です。作者的にはある特撮作品を意識して書かれたそうですが、今のタイミングで読んでしまうと…人気アニメの「舞-HiME」とか「舞-乙HiME」にも近い内容にも感じる。
全寮制の女子校・私立第四ボロヴィニア学園の中等部二年に進級した木戸美弥は、三人の新しいルームメイトと出会う。美貌と知性を兼ね備えた学年一の美女・白鳥すこやか、格闘好きの小林燐、小学生かと見間違うほどに童顔で小さな身体、小さな声の古府薫。新学期で浮かれる彼女たちだったが…一人の生徒の自殺未遂を機に、不穏な空気が学園内に蔓延る。実はボロヴィニア学園は大きな秘密が隠されていたのだ。古くから繰り返される“絶対の悪ドゥルジ”と、“絶対の善アシャ” という二つの存在が争い…学園はドゥルジと戦うための戦士、アシャワンの乙女を育成するための機関だったのだ!
前に読んだ「黒娘 アウトサイダー・フィメール」に比べると、萌え萌え~な要素満載でちょっとお子様向けなのかなって思ったんだけど、 いざドゥルジ(化け物)とのバトルへ突入すると、そんな印象は払拭。
ただ、物凄い長い間戦ってきたにしては…文庫本1冊で結末まで描かれてしまうわけだから、ラストバトルへの突入があっ気なく、そういう部分はもっと読みたい気分にさせられる。設定や文章は魅力的なのでちょっと残念かな?まぁ、安易にシリーズ化されたり、結末があやふやだったりという作品よりは、何がどうなったかがしっかりと描かれているので、娯楽小説として何も考えないで読むには充分魅力的な1冊だと思う。
個人的採点:65点
バイオハザード2 悪夢の洞窟 著:S・D・ペリー
- バイオハザード2 悪夢の洞窟
S.D.ペリー:著 風間賢二:訳
中央公論新社 ISBN:4-12-500873-6
2004年9月発行 定価998円(税込)
前回に続き、S・D・ペリーの「バイオハザード」シリーズを読んでみた。映画は見たけど、元ネタゲームはプレイしたことがないので、前作のゲームの忠実なノベライズというのも、全然内容はわからなかったから普通に楽しんだんだけど、今度はゲームに無い、著者のオリジナルストーリーになるのだそうだ。
アンブレラの怪しげな実験施設であったスペンサー館から生還したラクーンシティのS.T.A.R.Sの面々だが…常軌を逸脱した事件内容を報告しても誰も相手にしてくれなかった。それどころか、秘密を知られたアンブレラはS.T.A.R.Sの生き残り抹殺しようと、彼らの命をも狙う。唯一、話を信じてくれたS.T.A.R.Sエクスター支部のデヴィッドは、同じような実験施設ではないだろうかと疑われるキャリバン・コープの研究室に自分のチームを引き連れて潜入することを決意。ラクーンシティのレベッカに同行そて欲しい旨を申し出る。
1では謎解き要素なんかが、いかにもゲームのノベライズというように、わざとらしく感じてしまったのだが、今回もそういった仕掛けはあるものの、自然に作品に馴染んでいた。作品のテンポもよく、どうなってしまうの?という意外な展開もよく練られていたと思う。
克明なゾンビ描写も生々しく、その斬新さは、ぜひビジュアルでも見てみたいなぁと。映画版の「バイオハザード」と、今のところだいぶ内容が違ううんだなぁって、バイオハザード素人の自分は、今回もそれなりに堪能してしまいました。
2冊続けて「バイオハザード」だったので、1、2冊他の作品を読んでから、また続きに挑戦しようと思っています。
個人的採点:65点
バイオハザード1 アンブレラの陰謀 著:S・D・ペリー
- バイオハザード1 アンブレラの陰謀
S・D・ ペリー:著 風間賢二:訳
中央公論新社 ISBN:4-12-500862-0
2004年7月発行 定価998円(税込)
実は、ゲームは全くプレイしたことがないのだが、映画は1、2を見ている「バイオハザード」…偶然、ブックオフでこの小説シリーズの1~6巻を格安でGETできた(1~3が105円で、残りが200円)ので一気に揃えてしまった。ゲーム版のノベライズと、作者のオリジナルのストーリーを交互に描いているらしいのだが、ゲームをプレイしていないので、普通にアクションホラー小説として堪能。
ラクーンシティで続発する猟奇殺人、事件現場周辺の探索に出かけたS.T.A.R.Sのブラボーチームの消息が途絶えた。アルファチームは、直ぐに消息不明現場の森林地帯へ救援に向かうが…不時着したヘリコプターに隊員の姿はなかった。いったい何が起きているのか?その後、現場近にある、廃屋と思われていた私有地、スペンサー家の豪邸で、隊員たちは恐ろしい事件に巻き込まれていく…。
ゲームをやっていない人間からすると…アイテムを見つけて、謎を解いていくなんてシーンが、少しだけわざとらしくも感じてしまうのだが、それを我慢すれば、映画で見た「バイオハザード」を思い出しながら、ホラー的な要素を楽しむ。映画のように、もっとアップテンポなアクション展開があるのかと思っていたが…それほどでもなかったかな?激しいゾンビバトルは2巻以降に期待ってとこかな?壮大なストーリーの一幕目として、後々の展開への謎を残してあったり、続きが読みたくなるようになっていますね。
最初はキャラクターのイメージとかが掴みにくかったけど、屋敷の中に入って、個別に探索を始める辺りから…登場人物の数も絞られてきて、キャラクターを把握しやすくなった。
作風としては、ゲームをやっていなくても、映画を見ていたので、けっこう入り込みやすかったかな。続けて2巻も読んでみるつもり。
個人的採点:65点
学ばない探偵たちの学園 著:東川篤哉
- 学ばない探偵たちの学園
東川篤哉:著
実業之日本社 ISBN:4-408-50428-9
2004年1月発行 定価860円(税込)
東川篤哉を読むのは2冊目…前にデビュー作の「密室の鍵貸します」を読んだことがある。この著者の特徴なのか、ヨーモアを全面に押し出しながらも、奇抜な密室トリックを、しっかりとした伏線で読ませる、王道的な本格推理小説になっている。
東京国分寺市、恋ヶ窪にある鯉ヶ窪学園に二年生で転校してきた、赤坂通。部活動が盛んなこの学園で、文芸部に入るつもりが、ひょんな勘違いから、学校非公認の探偵部なる部に所属する羽目になってしまった…。探偵部員の二人の先輩…部長の多摩川流司と、八ツ橋京介に引っ張りまわされながら…新しい学園生活がスタートした通。ようやくそんな生活にも慣れ始めた5月のある日…事件は起きた。下校時刻も過ぎた保健室で、芸能クラスのアイドルを盗撮しようとしたカメラマンが殺されたのだが、現場は密室だった。たまたま事件に遭遇してしまった探偵部の三人は…関係者に接触しながら、事件解決に奔走するのだが…脱線ばかり。そうこうしているうちに新たな事件が…。
最初からけっこうフェアに伏線は貼られていますね。ああ、この辺は怪しいな、なんかトリック解明のアイデアになるんじゃないのかなっていうのは想像できたんですけど…それをどう使うかは、最後まで読まなきゃわからなかった。トリック自体はけっこう大味だが、よく考えられていると思う。
探偵部のトリオと、その顧問が…ああでもない、こうでもないと推理を繰り広げて、真相にたどり着こうとするのだが、それ以外にも、けっこうおもろいキャラクターがいっぱい出てきた。そういうキャラクターが、もうちょっと事件に関係してきても面白かっただろうに。
ユーモアミステリとして気軽にスラスラ読めて、なかなか。シリーズ化できそうな感じだけど、どうなんだろう??
個人的採点:65点
びっくり館の殺人 著:綾辻行人【新刊購入】
- びっくり館の殺人
綾辻行人:著
講談社 ISBN:4-06-270579-6
2006年3月発行 定価2,100円(税込)
本屋に行ったら平積みされていたので、今回は新刊で買ってしまった…だって綾辻だし、館だし…でも2100円は高いな~。ミステリーランドという講談社が少年少女向け(&、昔少年少女だった大人たちへ)という主旨で展開している、企画のなかで書かれたものなので、いつもよりややソフティーな印象も受けるが、著者があとがきでも語っていたとおり、正統な“館シリーズ”として、ファンなら思わずニヤリとさせられる面もあり。とにかく、「暗黒舘の殺人」から1年半で、館シリーズの新作が読めるというだけで、びっくりだ。
兵庫県のA市に建つ古屋敷邸こと、びっくり館…どうやらこれもあの曰く付きの建築家、中村清司の建てた館の一つらしい。そこで、10年前に起きた密室殺人の犯人はまだ捕まっていない。数年ぶりにアメリカから帰国した永沢三知也は、古本屋で見つけた鹿谷門実なる推理作家の「迷路館の殺人」という推理小説を読み、著者の写真、中村清司という名前にひっかかりを覚える。そこで、親友・俊生と彼の住んでいたびっくり屋敷のこと、自分が十年前に遭遇した密室殺人のことを思い出し始める…。
いつものようなアクロバティックな超ウルトラC級どんでん返しは感じられないが、小説ならではの小粒な仕掛けはしっかり用意されている。文体なども主人公の子ども目線であり…いつもの“館シリーズ”を期待していると、物足りなさもあるが(クローズドサークルとか、連続殺人とか)…その分、丁寧で分かりやすいシンプルなミステリーに仕上がっており、ラストはちょっぴり、オカルティックな装いもしてある。
館シリーズの番外編的な読み物として、気軽に読みましょう…にしては、金額高すぎる!講談社さん、有名ミステリー作家による児童向けの“ミステリーランド”という企画主旨は大歓迎だが、それだったら子どもにも気軽に買える金額設定、せめて青い鳥文庫くらいの値段にしませんか?このミステリーランドで、けっこう他にも読みたい作家の作品が既にいっぱい出ているんだけど、とりあえずそちらは古本待ちってことですかね(爆)105円で捜索中ですが、未だに1冊も発見できず!?
個人的採点:65点 (綾辻さんにしては低めかも)
アクセス 著:誉田哲也
- アクセス
誉田哲也:著
新潮社 ISBN:4-10-465201-6
2004年1月発行 定価1,470円(税込)
誉田哲也の作品を読むのは2冊目…過去に「ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華」という、著者のデビュー作を読んだことがあるんだけど、美人ヴァンパイアが活躍するアクションホラーサスペンスといった感じの内容で、なかなか面白かったのを覚えている。今回は携帯電話やネットがテーマということで、漠然と「着信アリ」みたいな内容を想像していたんだけど…。
携帯電話もパソコンのインターネットも無料で使い放題になるというプロバイダ、条件は登録した後に、誰かを紹介すること。従妹の可奈子から教わった、雪乃は、そっそく男友達の翔矢にプロバイダに契約して欲しいと頼むのだが…。その怪しげなプロバイダと契約したのを境に、彼女たちの周りで奇妙な出来事が次々に起こる。可奈子は親友の自殺に始まり、謎の脅迫電話に脅える。雪乃は、援助交際相手とのH写真や自分のパーソナルデータが流失し、援助交際相手の一人から脅迫を受ける。そして翔矢のクラスメイト、ヤクザ映画好きの平凡な少年が突然殺人鬼に大変身し…翔矢の命をも狙う。
ネット社会の甘い誘惑、危ない罠を…ホラー仕立てにして警告してるのかななんて思う作品だよね。ネット上に広がるオイシイ話なんかを安易に信用してはいけないってことなんだよ。Winnyでの情報流失の件しかり、儲かりますって言葉に騙されて犯罪に加担したり、お金を騙し取られたり…これだけパソコン、インターネットが普及してきたにも関わらず、使っている人間の危機管理の薄さ、貧しさ…そういった無知な人間が多すぎると。
何でそうなるのかは本を読んでもらって理解してもらうのが一番なので詳しくは語らないが、無知な人間がネットを媒介して、悪意に支配されてしまうというようなお話なわけです。ヤクザ映画大好き、Vシネマニアの少年が、日本刀を振り回す殺人鬼に変身して大暴れし、美少年、美少女と平凡な女の子が事件に巻き込まれていくという前半戦はなかなかスリリングで面白い。それぞれのキャラクターの個性が細かく描かれていて、各々が魅力的なキャラクターに仕上がっており、頭の中でイメージしやすいのも誉田作品の特徴かな?
敵の正体や、窮地を打開する策が判明する後半になると、なんかSFっぽくなってきて…ホラー的な怖さは薄れるのだが、油断していると、時たまグロテスクな描写あり。想像すると、けっこうキモイ。
最後まで、グチャグチャ、ドロドロ…後味の悪さが残る救いようのない展開みたいなものを期待していたんだけど、家族の絆、友情なんかを絡ませて、けっこう前向きな結末になっていたかな?
個人的採点:65点