アクセス 著:誉田哲也 | 105円読書

アクセス 著:誉田哲也

アクセス

誉田哲也:著
新潮社 ISBN:4-10-465201-6
2004年1月発行 定価1,470円(税込)










誉田哲也の作品を読むのは2冊目…過去に「ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華」という、著者のデビュー作を読んだことがあるんだけど、美人ヴァンパイアが活躍するアクションホラーサスペンスといった感じの内容で、なかなか面白かったのを覚えている。今回は携帯電話やネットがテーマということで、漠然と「着信アリ」みたいな内容を想像していたんだけど…。

携帯電話もパソコンのインターネットも無料で使い放題になるというプロバイダ、条件は登録した後に、誰かを紹介すること。従妹の可奈子から教わった、雪乃は、そっそく男友達の翔矢にプロバイダに契約して欲しいと頼むのだが…。その怪しげなプロバイダと契約したのを境に、彼女たちの周りで奇妙な出来事が次々に起こる。可奈子は親友の自殺に始まり、謎の脅迫電話に脅える。雪乃は、援助交際相手とのH写真や自分のパーソナルデータが流失し、援助交際相手の一人から脅迫を受ける。そして翔矢のクラスメイト、ヤクザ映画好きの平凡な少年が突然殺人鬼に大変身し…翔矢の命をも狙う。

ネット社会の甘い誘惑、危ない罠を…ホラー仕立てにして警告してるのかななんて思う作品だよね。ネット上に広がるオイシイ話なんかを安易に信用してはいけないってことなんだよ。Winnyでの情報流失の件しかり、儲かりますって言葉に騙されて犯罪に加担したり、お金を騙し取られたり…これだけパソコン、インターネットが普及してきたにも関わらず、使っている人間の危機管理の薄さ、貧しさ…そういった無知な人間が多すぎると。

何でそうなるのかは本を読んでもらって理解してもらうのが一番なので詳しくは語らないが、無知な人間がネットを媒介して、悪意に支配されてしまうというようなお話なわけです。ヤクザ映画大好き、Vシネマニアの少年が、日本刀を振り回す殺人鬼に変身して大暴れし、美少年、美少女と平凡な女の子が事件に巻き込まれていくという前半戦はなかなかスリリングで面白い。それぞれのキャラクターの個性が細かく描かれていて、各々が魅力的なキャラクターに仕上がっており、頭の中でイメージしやすいのも誉田作品の特徴かな?

敵の正体や、窮地を打開する策が判明する後半になると、なんかSFっぽくなってきて…ホラー的な怖さは薄れるのだが、油断していると、時たまグロテスクな描写あり。想像すると、けっこうキモイ。

最後まで、グチャグチャ、ドロドロ…後味の悪さが残る救いようのない展開みたいなものを期待していたんだけど、家族の絆、友情なんかを絡ませて、けっこう前向きな結末になっていたかな?






個人的採点:65点