アクアリウムの夜 著:稲生平太郎

稲生平太郎:著
角川書店 ISBN:4-04-427501-7
2002年2月発行 定価630円(税込)

角川スニーカー文庫の中でスニーカー・ミステリ倶楽部というジャンル別けがされている本の1冊。前にこのシリーズの本をまとめて古本屋で見つけて、購入しておいたものの中から、面白そうなのを選択してみた。
野外劇場で行われた見世物“カメラ・オブスキュラ ”を見物した主人公たち…この日を境に、日常が少しずつ変化していく。コックリさんが指し示す不気味な警告、霊界ラジオから聴こえる謎のメッセージ…水族館に隠された謎とはいったい何なのか?宗教や金星人まで出てきて、とにかく学研ムー 状態な小説だった。
1990年に書かれた小説を2年くらい前にスニーカー文庫で文庫化したものなので…題材に懐かしさを感じます。きっと最近の物語だったら…パソコンやら、携帯電話が出てくるんだろうなぁ(笑)いくつもの大きな謎を提示をし、学園ミステリーらしく高校生の友情や恋愛話を絡めながらも、オカルティックな事件の核心に迫っていく。しかしホラーというジャンルにくくられているくらいなので、推理小説のように明確な答えは得られない。“せつなく、残酷な1年”とあらすじにも書いてあったのですが…確かに読み終わったとは、後味の悪さが残る。クライマックスなど、展開が凄すぎて2回くらい読み直さないと…ちょっと意味不明(笑)
読み終わった後に、色々な人が書いた、この作品の書評を読んでみたが…好みがはっきり分かれている。ベタ誉めの人は、物凄い賛辞をおくっているが…逆にケチョンケチョンに貶しまくってる人も多い。ちょっとクセのある作品ではある。
個人的採点:60点
空色 SORA-IRO 著:坂巻央

坂巻央:著
文芸社 ISBN:4-8355-6257-7
2003年9月発行 定価1,050円(税込)

綺麗な表紙とタイトルに惹かれ、手に取ってみたのだが…“坂巻央”なんて作家、知らない。どんな人なのかと、プロフィールを読むと、“1990年、神奈川生まれ。現在、中学二年生(発刊当時)”と書いてあった…、ちゅ、中二ですか!?そう、これは中学二年生の少年が書いたSF小説だったのです。この間、買ったばかりなのですが…ちょっと物珍しくて、早速読んでみました。
悪い宇宙人が侵略してきて…大学生の男の子が、良い宇宙人と共に戦うといった感じの物語なのだが…いかにもSF好きの子供が、自分の好きな作品を真似して書いてみましたって部分が大きい(文章が簡潔なのに…複雑なSF設定も容易に想像できる)。頑張って、環境問題やら平和への願いなどを語っているのだが…背伸びしすぎているようにも感じる。主人公を大学生じゃなくて著者に近い年齢設定にした方が、もっと自然に描けたのではないだろうか?
でも、中学生で、本を出しちゃうのは凄いなぁ。自分が中学生の頃は…本も好きだし、文章を書くのも嫌いじゃなかったたが、せいぜい、夏休みの読書感想文の宿題で、国語の先生から“大変よくできました”のハンコをもらうくらいだった。
正直…1000円出してまで、読みたい本ではないが、105円なら話の種になるってもんです。もしかしたら、将来この少年がベストセラー作家にでもなった時に、デビュー作読んだことあるぜ!初版本持ってるぜ!なんて、自慢にもなるかもしれない。これも、105円読書の醍醐味じゃないでしょうか?
個人的採点:50点(←ちょっと厳しいか)
銀の仮面 著:ヒュー・ウォルポール

ヒュー・ウォルポール:著
倉阪鬼一郎:訳
国書刊行会 ISBN:4-336-04244-6
2001年10月発行 定価2310円(税込)

ヒュー・ウォルポールの短編傑作集。突如中年女性の前に現れ、家に転がり込んできた怪しい美男子…彼はいったい何を企んでるのだろうかとミステリアスな展開を見せる表題作の「銀の仮面」。大嫌いな人に付きまとわれる、現代でいうストーカーのような行為に悩まされる男の日常を描いた「敵」などホラーっぽいものから、犯罪小説まで11本の短編を収録。翻訳をホラー作家の倉坂鬼一郎が担当。
実は海外作品は、あまり好きではないのですが…大好きな倉坂鬼一郎の名前につられて、思わず買ってしまいました。だから、この本を買うまではヒュー・ウォルポールが、どれほど有名な作家かも知らなかったです。古典的な作品ですが…訳者の倉坂鬼一郎の文章には慣れ親しんでいるので、他の翻訳ものよりは、読みやすかった。最近のホラーやら、ミステリーのように派手な殺人が起きたり、アクションがあったりするような作品ではないですが…どの短編も不思議な人間ドラマをみせてくれて、なかなか面白かった。ベタなものもあれば、想像もつかないような奇妙なオチまで…短編ならではといった感じ。
個人的採点:70点
今日の105円GET
乙一「ZOO」集英社 2003年6月発行 定価1,575円(税込)
乙一のホラー短編集…去年あたり、けっこうベストセラーになってた筈だ。
ハイブリッド・アーマー 著:中島望

中島望:著
角川春樹事務所 ISBN:4-7584-2032-7
2004年2月発行 定価880円(税込)

結核で田舎のサナトリウムに入院していた高校生がスズメバチに刺され、瀕死の状態に陥るが、遺伝子研究をする企業の怪しい研究所の研究員に助けられる…。スズメバチの遺伝子を組み込まれたミュータントとして復活した主人公が、高校生活に戻るが…。
和風“X-MEN”といったところか…。スパイダーマンならぬ、スパイダーガール(クモの遺伝子を組み込まれた少女)をはじめ、ゴキブリやら、ヒメフンバエやら、アリジゴクやら…悪趣味な昆虫+人間のミュータントがいっぱい出てくる。ラストはあっけなく、細かな謎は残したままで、終了。作者自身が続編を意識しているのだろうか…続きが読みたい気分。
個人的採点:65点
今日の105円GET
浅草キッド「濃厚民族 15大対談集」 スコラ 2003年10月発行 定価1,575円(税込)
深作欣二を皮切りに、師匠のビートたけしまで、浅草キッドの対談集。
柊治郎「特命裏監察 悪党狩り」 2002年11月発行 定価900円(税込)
最近、お気に入りの柊治郎氏のポリス小説
坂巻央「空色 SORA-IRO」 文芸社 2003年9月発行 定価1050円(税込)
中学2年生の子供が書いたSFファンタジーだそうで…。
眼球蒐集家 著:船越百恵

船越百恵:著
光文社 ISBN:4-334-07568-1
2004年6月発行 定価900円(税込)

半年くらい前に出たばかりなのに、もう100円コーナーで売られてるんですね…。
両目をくりぬかれた猟奇殺人の謎を…、現場でドジをふみ左遷された女刑事と、奇人変人扱いされているが、実は天才的なプロファイラーである心理分析官がコンビを組み捜査していく。漢字だらけのタイトルを見ると、けっこう血なまぐさいホラー的な読み物かと期待させられたのだが…わりとコメディタッチ。猟奇殺人とコメディという妙な取り合わせだが…それなりにテンポよく読ませます。ただし、クライマックスの犯人との対決までコメディなので…やりすぎ。どちらかというと、ライトノベルに近い読み物。光文社のKAPPA-ONE登龍門という新人発掘から出てきた作家なので…デビュー作では、こんなものではないでしょうか?
個人的採点:65点
今日の105円GET
加賀美雅之「監獄島 上巻」光文社 2004年8月発行 定価1,300円(税込)
これまた出たばかりなのに100円コーナーという驚き!しかし上巻のみっていうのがミソ(^^ゞ 下巻を安く見つけるまで、手を出せません。