105円読書 -58ページ目

イノセント 著:中村うさぎ

イノセント

中村うさぎ:著
新潮社 ISBN:4-10-456702-7
2004年2月発行 定価1,365円(税込)









サスペンスというジャンル別けが正しいかどうかはわからないが、とりあえずここで。

焼身自殺を図ったソープ嬢。彼女の死んだ理由を求めて、娘の素顔を辿る父親は彼女のとんでもない事実に直面してしまう。果たして娘は本当に自殺だったのか?何者かに殺されたのではなかったのか…?

文章のほとんどが…死んだ娘の関係者による証言と娘の日記という形で構成されている。証言ばかりが続いて物語が進行していくというのが、なんだか…宮部みゆきの「理由」を思い出す(実は「理由」の原作小説を読んでないのだが、映像版を見た)。

文章を読んでいると、違和感を感じるので…これは何か仕掛けがあるぞと思いながら読み進めているので、なんとなくオチは読めた。事件の真相というのは、なかなかビックリさせられるものがあるのだが…最近流行った、ある映画と酷似しているので、ちょっとインパクトに欠けるのが勿体無い。作品が発表された時期を考えると…こちらの方が早いので、決してパクリではないのだろが…。






個人的採点:65点






エーガ界に捧ぐ 著:中原昌也


エーガ界に捧ぐ

中原 昌也
扶桑社 ISBN:4-594-03948-0
2003年4月発行 定価1,500円(税込)









久しぶりの書き込みだ。とにかく、1週間ほど、小説を読んでいない。そのわりに相変わらず…色々と衝動買いはしていたのだが、整理も面倒なのでそのうちにまとめてやろうと思う。

ようやく1冊読み終わったのが…ちょっと前に購入した「エーガ界に捧ぐ」という三島賞作家・中原昌也氏が雑誌に連載している辛口な映画コラム(?)の単行本である。噂によると、近々文庫版も出るとか聞いたのだが、定かではない。自分は相変わらず105円で入手したものだ。

雑誌掲載時に話題になっている映画と、過去のソックリな映画(その時によって内容が似ているものから、タイトルしか似ていないものまで千差万別だが)を比較しながら紹介していくといった趣旨だったはずなのだが…全くお題の映画を語っていないときまである(笑)

自分がいかに貧乏作家かとか、どこどこの映画会社が試写状送ってくれないだとか…愚痴もいっぱい書いてある。文章がノッている時は…本当に紹介している映画がどれほど面白いモノかとよく伝わってくるのだが、その逆に…何を語りたいのだか支離滅裂なときもある。後半になるにつれ…映画評というよりは、中原昌也という人の精神状態を観察しているような気分になってくる。作家さんが文章を生み出すのが、いかに大変かというのが、ひしひしと伝わってきましたです。

連載100回分なので、合計200本の映画が紹介されている計算になる。映画評というと、この間、井筒和幸の「こち虎自腹じゃ!」を読んだのだが…年代がこちらの中原氏の方が近いせいもあるのか、割と映画の好みは…こちらの方がシンクロ率高し(笑)彼が誉める映画、貶す映画の好みが意外と自分とマッチしていた。だから自分が知らないような作品を持ち出すときは、かなりその映画に興味がわく。

井筒和幸の辛口映画評以上に…読む人を選ぶ映画評で、誰にでもお薦めできる本では決してない。ただ、自分はわりと面白く読めた。

合い間合い間に…作者の中原氏と、作家、イラストレーターといった業界人との対談も収録されており、それらがいい箸やすめになる。






個人的採点:65点






アホか、お前ら! 著:井筒和幸


アホかお前ら!

井筒和幸:著
徳間書店 ISBN:4-19-861795-3
2004年2月 定価1,260円(税込)









週刊アサヒ芸能で連載された、映画監督の井筒和幸による、毒舌エッセイをまとめたもの。ちょうど、1年くらい前に発刊されたものなので…話題的には更に1年遡って2003年1月頃のものからスタートしている。

前に紹介した映画評「 こちトラ自腹じゃ 」同様…映画業界からはじまり、明石家さんま、松嶋菜々子、果ては小泉さんやブッシュさんまで…芸能から国内外の政治ネタまで、いつもの調子でオッチャン吼えまくり。

“ギター侍”なんて目じゃないくらい…斬って、斬って、斬りまくる。

バカ話しながら、バカにも分かるように…世の中の出来事を語っている。

井筒和幸のことを…ただの毒舌コメンテーター、“自分の映画が面白くないくせに、人の映画を批判するな”って思っている人には、はっきりいって向かない読み物でしょう。

確かに、芸能人についての悪口書いてるところは…その芸能人のファンから見れば、辛口すぎる…“お前に言われたくないねん!”って思うかもしれないけど…逆に本を読みながら、“よく言った!”とうなずいてる人も多いのも事実なのだ。そういった、言葉に出さないだけで、世間の皆は思っているぞってことを平気で書いてくれてるから気持ちがいい。

その証拠に…1年前の古本だからこそ…この毒舌オヤジが書いた与太話が、今では現実になっているってこともあるんだ(笑)

おっちゃん曰く“松嶋菜々子が歩く官能グラビア”だというのが、読み終わっても、頭から離れない…。出産後も爽やかママ系で上手に芸能活動を続けている松嶋菜々子をつかまえて、“エロ”と、この人が言い切ると説得力がありますね。そっかー、松嶋菜々子って、爽やかでも、癒し系でも、演技が上手いからでもなく…“エロ”だから人気があったんだ。これから見方が変わりそうです。そういえば…ちょっと前に流行った某お茶のCM、確かにエロさがあったなぁ。あのCMを演出した人は、ちゃんと松嶋菜々子のエロを見抜いていたんだ。やっぱ、おっちゃんの言うことは正しいんだ。

この毒舌パワーをもう少し映画のほうで発揮できれば、マイケル・ムーアなんかに負けない映画ができると思うのだが…。昔は「ガキ帝国 」なんて傑作を撮った凄い監督だってことを忘れちゃいけないよ、やっぱ。あの映画を撮った人だったら…これだけぎょーさん毒舌はいても許せますね。最後は書評ではなく、映画評になってしまった感じだが…。

そんなことで、新作の「パッチギ!」は久しぶりに期待が膨らむ!






個人的採点:75点







水の牢獄 著:咲田哲宏


水の牢獄

咲田哲宏:著
角川書店 ISBN:4-04-424502-9
2002年2月 定価500円(税込)









引き続き買いだめしてある角川スニーカー文庫のスニーカー・ミステリ倶楽部。

高校の読書同好会メンバーが合宿のためやってきたペンションに突如現れた“宙に浮かぶ、半透明の奇怪な魚”…この化け物が次々に仲間を血祭りにあげていく!外は台風の直撃で、僻地にあるペンションは孤立無援の状態。携帯も電話も圏外で、助けを呼ぶこともできない。何故自分たちが狙われるのか?最後まで生き残るのは誰なのか…。ホラー小説です。

“パラサイトイヴ”と“嵐の山荘もの”の合体?B級ホラー映画のノリと、化け物を操っているのは誰なのかという、ミステリ的な要素も楽しめるので、けっこうハマれました。仲間が短時間でどんどん死んでいくところ…そのくせに平気で下ネタな会話が入ってくるところなど、まさにアメリカのB級ホラーだよね。

ストーリーのテンポはいいのだが…化け物の正体がなんなのかって語られていくあたりは、意外と小難しく説明されているので、何度も読み返してしまった。






個人的採点:60点






氷菓 著:米沢穂信

氷菓 

米沢穂信:著
角川書店 ISBN:4-04-427101-1
2001年11月 定価480円(税込)









この前まで読んでた“姉飼”が非常に、クセのある強烈な本だったので、ちょっと軽めの読み物が読みたくなり…買いだめしてある角川スニーカー文庫のスニーカー・ミステリ倶楽部から1冊チョイス。

高校に入学したばかりの主人公、無駄なことは嫌いな性格なのだが、同じ学校のOGである姉の勧め(脅迫?)…で古典部に入学した。日常生活の中で出あった些細な謎を解き明かしていくうちに…古典部の仲間から奇妙な依頼を受ける。それは次第に学校や古典部の歴史にも関わっていることだと判明する…。


血なまぐさい殺人とかは全然起きないのだが…青春ものとして自分の高校時代などを懐かしみながら気軽に読めます。これは、ミステリとして物足りないくらいで丁度良い読み物だったんだけど、ただ、“謎の確信”がやっぱりそっちの方向へ行っちゃうのねって…ベタなあたりがつまらない。30数年前の学校の歴史が云々なんて語られはじめたら、時代的なもので、大方予想はつく。






個人的採点:50点







昨日の105円GET
綾辻行人・コミック版「緋色の囁き」角川書店 2002年10月発行 定価714円(税込)

山田悠介・コミック版「@ベイビーメール」幻冬舎 2004年07月発行 定価693円(税込)

どちらも人気小説のコミック版…たまには漫画もいいかなって思いまして。

姉飼 著:遠藤徹


姉飼

遠藤徹:著
角川書店 ISBN:4-04-873499-7
2003年11月 定価1,260円(税込)









第10回日本ホラー大賞受賞作…表題作を含む短編4作品を収録。巻末には、荒俣宏、高橋克彦、林真理子ら選考委員によるホラー大賞選評が掲載されている。


姉飼
子供の時に縁日の的屋で、串刺しにされている“姉”たちに魅せられてしまった主人公。その後の人生に大きな影響を与える。人間という生き物は自分の煩悩に打勝てずに、こうして身を滅ぼしていくということを、こういった怪奇な物語を通じて、読者に語りかけているのだろうか?説明的なものがかなり省略されているので、かえって想像力を働かせてしまう。とにかく不気味な作品。


キューブ・ガールズ
賞味期限がきたら捨てられると裕也に告白された亜矢乃。「亜矢乃は、その、商品だったんだ」…パソコンから情報をダウンロードし、ジャンルを選択。お湯をかけると、自分好みの女の子があらわれるとい…“キューブ・ガール”。つまり未来のダッチワイフのお話だ。ブレードランナーのレプリカントを思い出す、儚い物語。4つの物語の中では、一番、分かりやすかった。ただし、相変わらずこの作者は何を考えているのか…。


ジャングル・ジム
毎日、毎日…変わらない日常の風景として、そこにあり続けていた、居続けていた“ジャングル・ジム”が、ひとりの女性に出会ったことから世界が一変していく…。これも、きっと何かの喩えなんだと思うのだが…。恋愛というものが人を変えていく。考えが自己中心的になり、周りが見えなくなる。知らず知らずに他人に迷惑をかけてしまう。相手を束縛したいという欲求にかられるが、上手くいかない。そして…最後には女は魔物だといいたいのだろうか?自分には、そんな解釈しかできなかった。これが正しいかはわからない。


妹の島
フルーツに埋もれて見つかった長男の生首…ハチの大群に刺されて死んだ四男。復讐を企てる使用人に脅える、二男と三男。果樹園の主である父親は…ハチに刺されることで快楽を味わう特異体質だった。ストーリーを上手く説明できないほど、奇妙な物語。最初こそミステリータッチな内容で幕をあけたのだが…。単純な復讐劇と受け取っていいものなのだろうか…。4つの中で一番、受け付けがたい作品だった。


ほとんどの作品で、男が女性をもてあそぶという構図が見受けられ、それを非現実的な不気味な世界観で見せようとする作品ばかりだ。女性にはあまり読んで欲しくないな~なんて思うのだが、どうなんでしょうね。下品で、不気味で、意味不明なんだけど…物語の先が、つい気になってしまう。たまには、こういったゲテモノもいいかもしれない。ただ、続けて同じような本を読みたくはない。






個人的採点:55点






ミラクル 著:桜井亜美

ミラクル

桜井亜美:著
幻冬舎 ISBN:4-344-00364-0
2003年7月 定価1,470円(税込)









昔、映画化された「イノセントワールド」を見たことがある程度で桜井亜美の小説を読むのは初めてだ。

心臓を患って入院中の弁護士イブキは美人看護婦のセイラと出会う。男のみならず、同性からも羨望の眼差しを受ける…美貌と優しさを兼ね備えた彼女には裏と表の顔があった…。医師や患者を虜にし、同僚のナースとも同性愛の関係を結ぶ…。更に彼女が過去に勤めていた病院で、担当した患者が不審死を遂げていたのだ…。

あらすじを読むとサスペンス・ミステリーっぽいのだが、ジャンル的には恋愛小説になるらしい。確かに、最後まで読むと、恋愛小説だなって納得できる。

「氷の微笑」のシャロン・ストーンを彷彿とさせる魔性の女だが、この小説に出てくる“セイラ”は…裏表の見た目のギャップがもっと激しい。少女的なか弱さみたいなものが垣間見えるところなど…実際にこんな女がいたら、自分も騙されそうだなぁという風に…男から見ると官能的なエロチックさを感じる。

恋愛小説といっても、ベタベタしたものじゃないので男の自分が読んでも物語として楽しめる。初めて読む作家だったので、けっこう新鮮味のある文章ではあった。ただ…イブキとセイラの描写はわかりやすく最後まで描かれていたが…脇役として登場した、同性愛のナース、手玉にとだれた男たちはどうなってしまったのかが、読み終わっても非常に気になる。想像で補うのも、こういう作品の楽しみ方ではあるが、もう少し詳しく描いてくれたら、もっと面白かった。






個人的採点:60点






今日の105円GET
横山秀夫「真相」双葉社 2003年6月 定価1,785円(税込)

日向まさみち「本格推理委員会」産業編集センター 2004年7月発行 定価1,155円(税込)
昨年、買い逃して、読みたかった作品。ちょっと優先して読んで見たい。

中原昌也「エーガ界に捧ぐ」扶桑社 2003年4月発行 定価1,500円(税込)


ペロー・ザ・キャット全仕事  著:吉川良太郎

ペロー・ザ・キャット全仕事

吉川良太郎:著
徳間書店 ISBN:4-19-861349-4
2001年5月 定価1,680円(税込)









2005年一発目の書き込み!?

結局、年末年始が忙しく…この「ペロー・ザ・キャット全仕事」を読破するのに年をまたいでしまった。書き込みもなかなか出来なくて、本日に至る…。

吉川良太郎は、過去に「ギャングスターウォーカーズ」という作品を読んだことがあるのだが、こちらがデビュー作。こちらの方が、話も分かりやすく面白かった。

時は近未来、合法企業も警察も、ギャングのボスがにらみを利かせているフランス暗黒街…が舞台。ある政府機関が開発した、盗聴システム…<サイバネ手術を施した動物を遠隔操作し、視覚・聴覚情報をリアルタイムに転送する>をたまたま手にした主人公が、自分の失態からマフィアの手先として仕事をさせられる羽目になってしまう。人工的につくられた愛玩用のサイボーグ猫に憑依して…盗み聞きから時には人殺しまでやってのけるペローの活躍を描いた、SFノワール。

読書中の雑文の中にも書いたが…読んでいると“攻殻機動隊”を思い浮かべてしまう。SFなんだけど…ギャングものの王道でもあり、なかなか面白い。SF作品らしい専門用語も出てくるが、前に読んだ「ギャングスターウォーカーズ」程、難しくなかったのが良かったのか。主人公ペローの視点で物語が進み、語り口の軽妙なところがなかなか。

用心棒から殺し屋まで請け負う、ローニンのシモーヌは胸囲93センチと豊満な胸の持ち主!ほかにもバスタオル1枚の半裸でサブマシンガンとステルス地雷を操る街に潜入したエジプト秘密警察突撃隊サンドラ・アリなど…ナイスボディな闘うおねーさんが出てくるのだが、この辺は作者の好みだろうか(笑)いい趣味してます!






個人的採点:75点






読書中:ペロー・ザ・キャット全仕事 その2

読む暇がなくて、まだ100ページ程度しか読み終わっていない。猫型サイボーグに、憑依するなんて話なのだが…「攻殻機動隊」の草薙素子とちょっとかぶりますね。難しいSF用語がやたらと出てくるが、イメージはしやすい。


年内には読み終わりたい。読後…詳しい書評を書く予定。

読書中:ペロー・ザ・キャット全仕事

吉川良太郎のハードカバー「ペロー・ザ・キャット全仕事」を読み始める。第2回日本SF新人賞受を受賞したSF小説。366ページ…まだ読み始めたばかり。



今日の105円GET
舞城王太郎「煙か土か食い物」講談社 2001年3月発行 定価1,050円(税込)

舞城王太郎の本は読んだことがないのだが、何冊か購入してある。続けて読んでみたい。