アルテミス・ファウル 妖精の身代金 著:オーエン・コルファー

オーエン・コルファー:著
大久保寛:訳
角川書店 ISBN:4-04-791419-3
2002年7月 定価2,100円(税込)

イギリスの子供向けファンタジー小説。ハリッポッターを抜いたとか、抜かないとか…そんな宣伝文句が書いてあった。ハリー・ポッター+ルパン+007(またはトゥームレイダーか?)みたいなお話です。
アルテミス・ファウルは、犯罪一家に育った12歳の天才少年。妖精の黄金を手に入れようと…エルフの女の子(実は地底世界の女性警察官)を誘拐してきたまではよかったが…妖精たちだっておとなしくいいなりにはならなかった。アルテミスは召使のバトラーや、その妹のジュリエットと共に…ハイテクで武装した妖精たちと激しい攻防を繰り広げる羽目になる。
確かに、007みたいにスパイ小説っぽい趣向が凝らしてあるあたり、ハリポタなんかよりも面白いと思うが、いかんせん、子供向けの読み物だ。個人的には、人間側の活躍をもっと読みたかった気がするが…妖精側の描写が意外と多い印象?
最初の方で…アルテミスたちが、妖精の秘密を探っているあたりは、けっこうドキドキしたのだが、実際に妖精が出てきてしまったら…興ざめしてしまったかな?第二巻目も買ってあるのだが…続けて読む気にはなれません。また気が向いたら…続きを読んでみるつもり。
個人的採点:55点
ワイルド・サイドを歩け 著:東山彰良

東山彰良:著
宝島社 ISBN:4-7966-3950-0
2004年3月発行 定価1,785円(税込)

「逃亡作法 Turd on the run」で、『このミステリーがすごい!』大賞の大賞銀賞&読者賞受賞を受賞した東山彰良作品。相変わらず、個性的な悪党どもが下品に暴れ回る。
台湾産ドラッグ「百歩蛇」を巡って…ホモの高校生&不良高校生、ストリートギャング、ヤクザの三つ巴の抗争が勃発する!
この間読んだ、グスーヨンの「ハードロマンチッカー」といい、悪ガキどものドラッグネタという…似たような話が続いてしまったが…物語、エンターティメントとして、語り口の上手さはこちらのほうが全然上だ!
3つのグループの話が…クライマックスでぶつかり合うあたり、今回もタランティーノの映画を見ているような気分にさせる。帯には“日本の8Mile”って書いてあったけど…和製“トゥルー・ロマンス”といったところかもしれない。
個人的採点:70点
ヤフオクでもっと儲ける100のルール 著:桜井もえ

桜井もえ:著
技術評論社 ISBN:4-7741-2059-6
2004年7月発行 定価1,344円(税込)

本気で稼げ!ヤフオクで儲ける100のルールの続刊。一応、達人編ということになっているので、最初の本よりは…読みどころがあった気がする。ただこちらも…既にネットオークション歴が長い人にとっては、常識化しているような情報が多かった。
激ウマ人気商品の探し方仕入れ方、ヤフオクのちょっと危ない裏事情、売上総額「一億円」のノウハウ。仕入マジックでボロ儲け!
著者本人も認めている通り、書いてある100個のノウハウのうち、人によっては使えるものが1個しかもないかもしれないと。確かに、なるほどーと感心するテクニックも載っているが、ほとんどは、“そのアイデア、自分も考え付いたけど、面倒だから実践してねーよ”ってのが多い。たとえば、ヤフオクで売れる非売品のプレミアグッズや限定商品を入手するために、セブンイレブンでバイトしろって!
いつもこの手の本の著者に対して疑問に思うのだが、こうして偉そうに稼ぐ方法を皆に教えて、皆が真似したら…アンタが稼ぎが少なくなるだろうよって思ってしまうのだが、そういうところはどう感じているのだろうか?それとも、この本の印税で…儲けたから、いいのだろうか?こんな本を読まなくても…同じアイデアを実践していた人たちは…きっと、余計なこと書いてんじゃねーよって気持ちの人もたくさんいる筈だ。
こちらの続編も…達人編というか、達人に憧れる初心者編といったところか?読み物としては、暇つぶしにはなる。でも、この本で本当に億万長者になろうなんて思うおめでたい読者はいないでしょうね。こんなもんを新刊で買うと、著者を喜ばせるだけなので、ぜひ古本屋や、オークションを利用して“古本”で読みましょう。
個人的採点:50点
本気で稼げ!ヤフオクで儲ける100のルール 著:桜井もえ 他

ヤフオクで儲ける100のルール
桜井 もえ 根元 亮太共著
技術評論社 ISBN:4-7741-1976-8
2004年3月発行 定価1,344円(税込)

相変わらず新聞などで、ヤフオクを利用した詐欺が報道されているが…何年も利用している自分が思うには、騙される側にも問題ありだと思う。何十万もする、新品電化製品やブランドものが、そんな安く買えるわけねーだろ!とツッコミを入れたくなるほどだが…平気で怪しい出品者にお金を払って、後で大騒ぎしている。自分はしょっちゅう…出品・落札でヤフオクに参加していて、評価もかなりの数をいっているが、一度も変なトラブルに巻き込まれたことは無い。クセのある取引相手はたまにいらっしゃるが(苦笑)機械的に対応していれば、あまり大きなトラブルには発展しない。
一部ヤフー嫌いの人や、マスコミによる過剰な報道のせいで…ネットオークションに悪い印象を与えているみたいなので、利用者としてオークションが一昔前のように活性化することを願いつつ、こんな本をご紹介!
毎度の事ながら、BOOKOFFで105円で見つけてきた本です。同じ作者による“ヤフオクでもっと儲ける100のルール 達人編”も入手して読了済みなので、後ほど紹介しようと思っています。
必見!家に眠るゴミの山がお宝の山に。パソコン1台でできる毎月のお小遣い稼ぎ。どんなモノも確実に高値で売れる出品テク。資金も店舗も不要!すぐ人気ショップ開店。副業で本業で年収1000万円も夢じゃない!これぞ最強のノーリスクビジネス。
はっきりいって…自分のようなヤフオク慣れした人間が読むと正直、たいした内容は載っていない。自分が実践しているようなことばかり、偉そうにアドアイスしている。たとえば…オマケや懸賞当選品で儲けろなんて当たり前のことが、仰々しく書いてあるのだ。
ネットで検索すればいくらでも出てきそうな情報を本にまとめただけであり、こんなもんで、印税儲けやがってと腹立たしくなるのは間違いないのだが…これからネットオークションをはじめてみようかと思う人たちには、なかなか分かりやすいガイドブックになっていると思う。
発送方法や梱包方法、支払方法など…ハードユーザーなら常識化しているような基本的なことから、出品時のアクセス数を伸ばすテクニック、商品撮影のテクニック、どんなものが売れるのかといったことまで丁寧には書かれている。
別に絶版や品切れなどにはなっていない本なのだが、意外と、ヤフオクでは、この本がそこそこの値段で取引されているので、自分もソッコー出品してやろうかなと企んでいる(笑)
個人的採点:50点 初心者の方が読めば、なんてヤフオクって素晴らしいのだろうと思えると思います。
ハードロマンチッカー 著:グ スーヨン

グ スーヨン:著
角川春樹事務所 ISBN:4-7584-3092-6
2004年3月発行 定価714円(税込)

映画にもなった「偶然にも最悪な少年」のグ スーヨンの、2001年のデビュー作を文庫化したもの。在日韓国人の悪ガキの話を…差別用語満載で、下品に描いた問題作。
下関の進学校に通う在日韓国人の16歳の少年グー…同世代の仲間たちは、喧嘩、クスリ、SEXとやりたい放題で、放火、殺人、強姦までしでかす始末。一匹狼的なグーも、朝鮮高校の生徒とトラブルを起こし、逃げ回るハメに。なじみのライブハウスで紹介された怪しげな男に、小倉で経営するライブハウスの店長(兼運転手?)を任され、ホステスのおねーさんの家に居候するようになる…。
文章は…独特なセリフによる会話文が多く…少々、読みづらかった。同じような題材で思い浮かぶのは、金城一紀の「GO」だが…こちらはとにかく下品で、作者自信が浴びせられてきた差別への反発が、そのまま文章になったような印象。俺は周りの馬鹿どもと違うぜ!という主人公グーのクールな視点、小説というよりは…作者本人の思い出話なんじゃないだろうか?と思えてくる。
「ビー・バップ・ハイスクール」「岸和田少年愚連隊」「ガキ帝国」「パッチギ」「GO」…こういった映画や小説、漫画などをグチャグチャに混ぜ合わせたような読み物に感じた。
個人的採点:60点
あやまち 著:沢村凛

沢村 凛:著
講談社 ISBN:4-06-212343-6
2004年4月発行 定価1,470円(税込)

ミステリー的な要素もちょっぴり含まれているが、ジャンル的には恋愛小説なのだそうだ。
三十路間近の平凡なOL…ちょっと“引きこもり”がちな性格の持ち主なのだが…通勤途中…地下鉄の階段で出会う、名前も知らない男に恋をしてしまう。自宅に電話もない、携帯も持っていない…住んでるところは共同トイレのおんぼろアパート。見るからに怪しい人物なのだが…彼には他にも秘密がありそうだ。
恋仲になる相手に秘密が隠されていたり、主人公が何者かに尾行されてみたり、ミステリーな展開をするが、なるほどこれをミステリーとして捉えると、かなり弱い。やっぱり帯に書いてあった通り、恋愛小説なのだろう。でも普通の恋愛小説と少し雰囲気が違うような…。
“あやまち”というタイトルが…意外と綺麗に物語にハマった印象。
似たような文章を繰り返して…日常を上手く表現している。
個人的採点:55点
ニッポン泥棒 著:大沢在昌【新刊購入】

大沢在昌:著
文芸春秋 ISBN:4-16-323630-9
2005年1月発行 定価2,000円(税込)

何日か前に読み終わっていたのだが…なかなか書き込みができなかった。
久しぶりに新刊で購入した大沢在昌の「ニッポン泥棒」。現実の世の中でも、ネット社会の発達が、逆に犯罪の増加へと繋がっている今日だが、普通の人間が唐突にネット犯罪に巻き込まれていくという恐ろしさを…ハードボイルドサスペンスとして上手に読ませていく。
妻とは離婚…勤めていた商社は倒産し、ハローワーク通いの初老の男の元へ1人の若者が訪ねてくる…あなたにとっても、世界にとっても大事な用件があると…。諜報機関から盗み出された極秘データをもとに作られた、未来を予測できる驚愕のシュミレーションソフト「ヒミコ」…男は自分の知らないうちにそのコンピューターソフトを動かすためのキーに選ばれていたのだ。諜報機関が入り乱れ、騙し騙され…「ヒミコ」を巡る争奪戦が始まった。
元商社マンのオヤジ…いや、普通のじーさんが、日本を守る、世界を変えるという、老人パワー炸裂な物語です。とにかくこのじーさん、カッコよすぎる。スパイ相手に、サラリーマン時代に培ってきた交渉術で渡り歩こうとするんだから、只者じゃない!仕事人間のように思わせておいて…昔の愛人とか出てくるからカッコイイ。もし実写化したら、山崎努あたりが似合いそうなキャラクターだ。
魅力的な脇役の配置もお見事…怪しげな革命家崩れのハッカーのオヤジとか、主人公と一緒にソフトの争奪戦に巻き込まれてしまった水商売のおねーさんとか…他にも正体がなかなかつかめない怪しげな奴らがゾロゾロ出てきます。
ジジィが頑張るハードボイルドということで、大沢在昌自信の「流れ星の冬」を思い出す。
個人的採点:75点
久々に新刊本読んでます!:ニッポン泥棒

タイトル: ニッポン泥棒
なかなか新しい書き込みもできないのだが…久しぶりに105円読書ではなく、新刊本を読書中である。大沢在昌の新刊本「ニッポン泥棒」。あるコンピューターソフトを巡る陰謀に巻き込まれた初老のオッサンの話だ。全561ページのうち、まだまだ半分の280ページ程度しか読んでいないのだが、相変わらず物語には惹きこまれる。詳しい感想は読了後、105円読書の番外編ということで、書いていこうと思う。
書き込みをしないうちに、また大分…105円GETが増えている。読めないのに何で買うんだよって突っ込まれそうなくらい買ってる。最近はコミックなども105円で買い漁っているので…すこしずつそちらも紹介してみようと考えている。2月は毎日更新を目指すぞ!
届かぬ想い 著:蘇部健一

蘇部健一:著
講談社 ISBN:4-06-182374-4
2004年4月 定価777円(税込)

ちょっとシリアスにした和製“バック・トゥ・ザ・フューチャー”か?押井守の傑作アニメ「ご先祖様万々歳!」を彷彿とさせる。
愛娘が誘拐され行方不明になり、妻は自分の責任だと思い込み自殺してしまった、哀れな主人公。年月が経ち…心機一転、再婚をしたのだが、二人目の娘も不治の病で余命いくばくもないと医者から宣告されてしまう。絶望の淵にたたされた時に…もしタイムマシンで未来へ行き“病を治す特効薬”を手にすることが出来ると言われたら…。
衝撃的な結末が用意されているが…タイムパラドックスものの王道のようで、やっぱりな感じがする。他の題材でも、この手のオチ、最近多すぎますね。この小説は、更に凄いことになってたけど。娘を愛しているようで、意外と身勝手、自分勝手なオヤジ…あんたが一番、いけないよ!って話じゃないんすかね(笑)
個人的採点:60点
今日の105円GET
伯方雪日「誰もわたしを倒せない」東京創元社 2004年5月発行 定価1,470円
殺人鬼の放課後 著:乙一 恩田陸 ほか

著:恩田陸 新津きよみ 小林泰三 乙一
角川書店 ISBN:4-04-426902-5
2002年2発行 定価500円(税込)

人気ミステリー作家が参加した短編アンソロジー。タイトルからわかるように…“殺人鬼”が共通のテーマになっている。
恩田睦「水晶の夜、翡翠の朝」
全寮制の学校で相次ぐ…不自然な事故。幸いにも命を落とすほどではないが、それらはみんな偶然を装った悪意あるトラップによるものだ。誰がいったいそんなものを仕掛けているのか?容姿端麗・頭脳明晰なヨハンがその謎に挑む…。
学園の設定や探偵役の主人公のバックボーンなどはちょっと斬新で、特殊なものだったが…それ以外は学園ミステリー風に綺麗にまとまっていた。
小林泰三「攫われて」
彼女は語り始めた…どのようにして自分たちが誘拐され、何が起きたかを…。3人の少女達を襲った突然の誘拐…彼女たちの運命は?
今は現実で似たような事件が起きているので、面白がっては読めないが…。誘拐犯と子供の駆け引きがスリリングに描かれている。
新津きよみ「還ってきた少女」
学習塾の若い女性講師の前に…自分が教育実習生だった頃受け持った生徒にソックリの女生徒があらわれた。そんなはずはない…彼女は交通事故で死んだはずなのに…。まさか幽霊なのか?
ホラー、ファンタジーっぽい部分もあるが、突飛過ぎないオチが用意されていて、推理小説としてもそつなく綺麗にまとめられているなぁと感心。
乙一「SEVEN ROOMS」
何者かに拉致された姉と弟…何もない無機質な部屋に閉じ込められてしまった。実は拉致されているのは、この姉弟だけではなく、他にも若い女性が多数同じような状況下にいるらしい…誰が、一体何の目的でこんなことをするのか?やがてある恐るべき法則が浮かび上がってくる…。
きっとアメリカのB級ホラーとかを意識してるんじゃないかなぁと思わせる、ベタな雰囲気づくりが上手に出ていた。自分たちがどのような状況に置かれているか、脱出の方法はないのかと模索するあたりは…推理小説らしくもある。乙一の作品って実は初めて…なんかこの後味の悪さみたいなのが、この人のテイストなのか?短い短編の中に色々な要素が上手くミックスされている。
作者が違うので、同じ殺人鬼ものでも、みんなバラエティーに富んでいて楽しめる。ただ、やはり殺人鬼というのが、一番ピッタリとはまるのは乙一の「SEVEN ROOMS」か?1時間くらいで、パーっと読めるので、通勤・通学の暇つぶしになるのでは?
個人的採点:65点