殺人鬼の放課後 著:乙一 恩田陸 ほか | 105円読書

殺人鬼の放課後 著:乙一 恩田陸 ほか


殺人鬼の放課後

著:恩田陸 新津きよみ 小林泰三 乙一
角川書店 ISBN:4-04-426902-5
2002年2発行 定価500円(税込)









人気ミステリー作家が参加した短編アンソロジー。タイトルからわかるように…“殺人鬼”が共通のテーマになっている。

恩田睦「水晶の夜、翡翠の朝」
全寮制の学校で相次ぐ…不自然な事故。幸いにも命を落とすほどではないが、それらはみんな偶然を装った悪意あるトラップによるものだ。誰がいったいそんなものを仕掛けているのか?容姿端麗・頭脳明晰なヨハンがその謎に挑む…。

学園の設定や探偵役の主人公のバックボーンなどはちょっと斬新で、特殊なものだったが…それ以外は学園ミステリー風に綺麗にまとまっていた。


小林泰三「攫われて」

彼女は語り始めた…どのようにして自分たちが誘拐され、何が起きたかを…。3人の少女達を襲った突然の誘拐…彼女たちの運命は?

今は現実で似たような事件が起きているので、面白がっては読めないが…。誘拐犯と子供の駆け引きがスリリングに描かれている。


新津きよみ「還ってきた少女」
学習塾の若い女性講師の前に…自分が教育実習生だった頃受け持った生徒にソックリの女生徒があらわれた。そんなはずはない…彼女は交通事故で死んだはずなのに…。まさか幽霊なのか?

ホラー、ファンタジーっぽい部分もあるが、突飛過ぎないオチが用意されていて、推理小説としてもそつなく綺麗にまとめられているなぁと感心。


乙一「SEVEN ROOMS」
何者かに拉致された姉と弟…何もない無機質な部屋に閉じ込められてしまった。実は拉致されているのは、この姉弟だけではなく、他にも若い女性が多数同じような状況下にいるらしい…誰が、一体何の目的でこんなことをするのか?やがてある恐るべき法則が浮かび上がってくる…。

きっとアメリカのB級ホラーとかを意識してるんじゃないかなぁと思わせる、ベタな雰囲気づくりが上手に出ていた。自分たちがどのような状況に置かれているか、脱出の方法はないのかと模索するあたりは…推理小説らしくもある。乙一の作品って実は初めて…なんかこの後味の悪さみたいなのが、この人のテイストなのか?短い短編の中に色々な要素が上手くミックスされている。


作者が違うので、同じ殺人鬼ものでも、みんなバラエティーに富んでいて楽しめる。ただ、やはり殺人鬼というのが、一番ピッタリとはまるのは乙一の「SEVEN ROOMS」か?1時間くらいで、パーっと読めるので、通勤・通学の暇つぶしになるのでは?






個人的採点:65点