うしろ 著:倉阪鬼一郎
うしろ
倉阪鬼一郎:著
角川書店 ISBN:978-4-04-384301-5
2007年3月発行 定価740円(税込)
角川ホラー文庫で初登場の倉阪鬼一郎、書き下ろし作品。
セキュリティ万全、女性専用…一見、普通に見えるマンションだったが、妙に人の入れ替わりが激しい。音楽を学ぶために韓国からやってきたイェニョンをはじめ…新しい入居者たちも、その違和感に少しずつ気づき始めるが、既に仕掛けれていた呪いが発動していた…。
文字による視覚的な怪しさなど、倉阪鬼一郎らしいお約束を多用し、ジワジワと攻めてきて、頂点に達すると一気に加速して、何もかもが大爆発する。ああ、やっぱりいつもの倉阪節炸裂だぁと妙に安心!?
死人急増…鬼畜なことやってるけど、そんなに怖くなく、やっちゃったぁ~というおもろさ。ワンパターンだけど、けっこう好きです。
マンション住人の一人である、怪談小説好きの大学講師に、ホラー小説論を代弁させるなど、こういうとこもお約束だね。
そんなに新鮮なもんでもないので、やっぱり倉阪フリーク向けって感じの作品。一月に読んだ、著者初の本格伝奇モノだという…「大鬼神 平成陰陽師 国防指令」よりは普通に読めていいです。
個人的採点:65点
ヴァンガード 著:深見真

深見真:著
集英社 ISBN:978-4-08-630385-9
2007年10月発行 定価560円(税込)

集英社スーパーダッシュ文庫、ライノベです。「ヤングガン・カルナバル」シリーズの深見真が、お得意のリアル銃器描写を武器に、ウィザードリィ風のRPG小説に挑戦。
大地震により突如出現した、巨壁…東京を取り囲んだその壁は、東京を日本から孤立させてしまった。そして、その壁の内部には迷宮が存在し、人間とは異なる文化や生命も存在している。その迷宮内を資源や出口を求めて探索する者をヴァンガードと呼ぶ。壁の出現から約50年後の2070年…18歳の柊速人はヴァンガードのパーティーリーダー。個性的な仲間たちを束ね、迷宮探索に挑んでいたのだが…とんでもないトラブルに巻き込まれる。
お約束な設定をもっともらしくアレンジして説得力を持たしているのが、けっこう読んでいて楽しいです。2070年という近未来の話なのに、外から文化が入ってこないので…あまり今の日本と変わってなかったりね(笑)武器を登場させるための設定も、いろいろと考えられていていいです。外の世界と遮断されてるんだから、外国製の武器なんて入ってくるわけないんだけど、そういうところの解釈も上手に考えられています。
銃器描写の他にも、オタク知識やら、学園もの要素、レズっ気のある女の子によるお色気など…「ヤングガン~」と共通、彷彿とさせる部分もあり。モンスターとか出てくるんだけど、対決はあくまで銃器で。魔法が出てきたり、死んだ人は生き返ったりしないし…ファンタジーな要素は全くないです。「メタルギア」+「ウィザードリィ」 ってとこかな?
1冊ぽっきりでは、設定のすべてを解き明かすような作品になっていないので、今後の読者の反応次第では、著者もシリーズ化を目論んでいることでしょう。続編に期待。
個人的採点:65点
風刃迷宮 著:竹本健治
風刃迷宮
竹本健治:著
光文社 ISBN:4-334-73289-5
2002年3月発行 定価620円(税込)
竹本健治の牧場智久シリーズ…1998年に新書版で出たものを文庫化。既にこの文庫版の方も絶版になっているということだが…Amazonのマケプレなんかだと1円から出品されている。自分みたいに100円コーナーを根気よく探しても見つかるのでは?
インドの古代遺跡で死者が出るほどの火災に巻き込まれた牧場典子は、どこからともなく聴こえてきた、謎の人物による日本語の言葉に助けられ、無事に生還。 しかし、帰国後はストーカー被害に悩まされ、六本木で起きた殴殺事件や、巣鴨の女質店主人の失踪事件に関わることに…。事件の陰に、天才棋士の弟・智久の存在がちらつくのだが、はたして彼は事件にどのように関わっているのか?
最初から、最後まで何が起きているのか、非情に理解し辛い構成です、まさに迷宮だと。典子を中心に複数の人物が、いろいろな事件に遭遇するんだけど、そのどれもに智久が関わっているようだと。でも、智久本人はあまり出てこない。はてさてとなっていくんだけど…。
典子を助ける精神科医の天野の存在なんかを考えると、なんとなく予想できる結末。大昔に読んだ某、名探偵の名前が付いた“●●●●殺人事件”という推理小説みたいなことなんだろうなぁって思っていたけど、やっぱり。牧場シリーズを読んでいる人には、感じる作品全体の違和感も、物語の行方を見極めるポイントになっているかもしれない。
巻末の解説なんかを読んでも、やはりだいぶ異色な作風らしいのだが、いつもの竹本健治のテーマからはずば抜けて外れたものではないということだ。作中、延々と何が起きているの?という疑問に陥ることができるのはいいんだけど、真相がすべて解明し、すっきりしたぁっていうカタルシスは若干弱めなので、好き嫌いはわかれそう。
個人的採点:60点
収穫祭 著:西澤保彦
収穫祭
西澤保彦:著
幻冬舎 ISBN:978-4-344-01348-3
2007年7月発行 定価2,100円(税込)
帯の“こんなに殺していいものか!?”に惹かれて手に取った、西澤保彦の「収穫祭」…ハードカバー600ページ以上(原稿用紙1944枚だそうで)の分厚さに、ちょっと読むのに手間取ったが、内容はダレることなく、物語の山場に差し掛かると、ページをめくるのが止まらない。
1982年8月17日…台風が直撃した暴風の中、首尾木村(しおきむら)北西部で、ほとんどの村民が惨殺されるという大量殺人が発生。生き残ったのは、三人の中学三年になる少年少女と、その三人が通う中学校の教師ひとりだけだった。犯人と目される外国人は、逃走中に事故死したとみられ事件は解決したと思われていたのだが、9年後、事件の生存者へフリーライターが取材を開始すると、ふたたび同じような殺人が起きてしまった!
僻地の田舎町で起きた猟奇的な連続殺人…小川勝己の「撓田村事件」を彷彿とさせるような思春期少年のボンクラ妄想から始まり、近年起きている実際の猟奇殺人を想像してしまうような、スプラッターな展開の第一章。これだけで普通のミステリー1冊分のボリュームを感じるが、これはただの幕開けにすぎなかった…。
謎が解明されると、さらなる謎がわき起こり、登場人物たちがあっ気なく殺されていく。事件の根底には、人間の淫靡な性癖とか、屈折した感情が深く関わっており…なかなか刺激的。特殊な閉鎖的環境、家族の血縁、男女間のトラウマなどなど…人間のどす黒さを描き切っているのが秀逸で、さしずめ、西澤版“ひぐらしのなく頃”といったところではないだろうか?
どんでんがえし的な展開も含め、不気味さや怖さがしっかりと持続。事件の真犯人や動機など、頭の片隅ではこんなんではないか?と理解はしているものの、はたしてそれが当たっているかどうかが不安になってくるし…事件の真相以外にも、登場人物たちの感情を読み解きたくなる。膨大な物語の中に、さりげなく散りばめられた数々の伏線がピタっとハマる瞬間で、推理小説としてのカタルシスがしっかりと味わえるのも見事。
個人的採点:80点
EDGE2 三月の誘拐者 著:とみなが貴和
EDGE2 三月の誘拐者
とみなが貴和:著
講談社 ISBN:978-4-06-275617-4
2007年1月発行 定価600円(税込)
昨年読んだ1作目に続き、続編の2巻目をようやく入手したEDGEシリーズ。もともとは女の子向けライノベ、講談社X文庫の人気シリーズ(既に完結しているそうで)なのだが、いかにもなイラストなどを排除し一般の講談社文庫でリニューアル刊行中。
7歳の少女が行方不明に…他県で起こっている連続少女誘拐事件との関連も視野に入れて捜査に入った警視庁は、ラグナロク・ボマー事件でも成果を見せた、天才心理捜査官・大滝錬摩に協力を求めるのだが…。
錬摩の相棒になる精神が退化してしまった超能力青年・宋一郎の存在にさえ我慢すれば…連続爆弾魔だった前作よりも、さらに身近に潜んでいそうな犯罪者を描いていて、物語のリアリティを増す。主人公側よりも、犯人と被害者の描写をかなり丁寧に描いているのがGOOD。
自分が事件に巻き込まれているという自覚も薄く、次第に犯人に惹かれていく危うい少女の感情。そんな少女に優しく接しながらも、ふとした瞬間に垣間見せる犯人の邪悪な目…頭の中では、主人公が颯爽と現れて事件を見事に解決する(なんてったって超能力者がいるんだから!)ってわかってるんだけど、この二人の微妙な関係に魅せられます。
大滝錬摩の秘密なんかも少しずつ紐解かれているし、宋一郎が微妙に成長していたりとシリーズならではの展開も随所に織り交ぜ、1作目より面白くなった。神田川がキーポイントになってるあたりが良かった。
個人的採点:70点
放課後ローズ 警視庁第七捜査資料課 著:船越百恵
放課後ローズ
警視庁第七捜査資料課
船越百恵:著
光文社 ISBN:978-4-334-07647-4
2007年1月発行 定価960円(税込)
何度か読んでいる船越百恵のコメディタッチの推理小説…一見、本格風な感じの出だしだが、実は、本格推理小説を改悪した2時間ドラマを、もう一度小説に直したみたいなイメージの作品で…どちらかというとライノベ的なノリも相変わらず。
丸井太、鷺ノ宮瑠璃、鬼頭英吉の警視庁第七捜査資料課のメンバーが歌舞伎町を探検をしている時、駐車してあった瑠璃の愛車であるミニパトに人が降ってきた!愛車の敵討ちと息巻く瑠璃は…他の2人を巻きこみ事件を調べ始める。一見、ただの自殺にみえたのだが、資料課の面々が調査を始めた途端、被害者の娘も同じような死に方をしているのが判明。さらには三年前に起きた解決済みの惨殺事件にまで関わることに…。その過程で目にした“放課後ローズ”という言葉の正体は?
「時効警察」を真似たらしい“資料警察”というTVドラマのファンの婦警が、事件調査の権限がある刑事でもないのに事件に首をつっこみひっかきまわすが…実はこの婦警、父親が検察庁刑事局長で、祖父が元警視総監。おいおい、お前は浅見光彦か、ケータイ刑事か?みたいな設定。語り手は、ミステリー作家志望の同僚の警官なんだけど、やたらと「拝啓 母上…」と心の中で呟くのがクセで、いったいいつの時代のホームドラマやねん!
漫才のような軽いノリのキャラクターというのは前回読んだ「名探偵症候群」なんかと同じ、この著者の持ち味なんでしょうがない(ちょっとやりすぎなんですけど)、事件が全然進まず退屈だった前作に比べれば、次から次へと悪趣味な事件が出てくるので…多少の面白みも出てきたが、全編穴だらけで、推理小説と呼べない代物に。
コメディ路線でもいいのだが、推理小説だとか警察小説とうたっている以上、ある程度のリアリティは守ってほしいなぁっていうのが正直な気持ち。たとえばね、新宿、豊島、中野、練馬に囲まれたという、どうやら架空の地区が、主人公たちの縄張りなんだけど…そっから、警視庁に戻った親父の執務室に盗聴器を仕掛けたって描写があんのんね。こんな作品だから、盗聴器が出てくるという設定は許せても…どんだけ出力でのデカイ盗聴器使ってんねん!って疑問が浮かぶ。その前にさ、検察庁刑事局長が戻る場所って警視庁じゃなくて、検察庁(霞が関の合同庁舎)じゃね?自分が無知なのかもしれないけど…ここもひっかかる。
証拠集めも違法捜査で、これだと事件を解決しても公判、維持できないぞ!という場面ばかりだし、挙句の果てには犯人が墓穴をほって、ベラベラと喋り出すという…本当に2時間ドラマだったら許せる内容の展開ばかり。たとえ、ほかの推理小説もこういう穴があったり、ギリギリな状態の綱渡りってことはたくさん例があるんだけど…ちゃんとした推理作家なら別の部分を細かいリアリティで補い、読者の目を欺くもんなんだけど、この作家にそこまでの技量がないから、ダメな部分がやたらとクローズアップしてしまう。
これだけ、ダメ~って感想がスラスラと書ける小説も久々だな(笑)別にミステリーに拘らず、コメディを書きたかったらライノベでラブコメとかそういうの描けばいいのに。光文社で、こんな雰囲気のある表紙で、警察ミステリーなんてキャッチコピーがあれば、期待しちゃうじゃんよ~。
個人的採点:50点
透明な旅路と 著:あさのあつこ
透明な旅路と
あさのあつこ:著
講談社 ISBN:4-06-212836-5
2005年4月発行 定価1,470円(税込)
「バッテリー」など児童文学中心に活躍しているあさのあつこ、初のモダン・ミステリーということで読んでみた。
女の首を絞め、殺してしまった吉行明敬は、車で逃亡中に…山の中で不思議な少年と少女に出会った。少女は近くの村にある家まで連れて行って欲しいというのだが、どうやら二人は兄と妹という関係ではなさそうだ?白兎と名乗る生意気な少年と、和子という幼い少女…最初は疎ましかったこの二人の存在も、一緒に行動しているうちに明敬の接し方も変わり始める…。
少年と少女は何者なのか?ってところで…話をひっぱり、人を殺めてしまい、死に場所を捜していた男が…不思議な少年と少女に出会って、自分のろくでもない人生を振り返りつつ、少しずつ希望をつかもうとする姿を描いた物語なんだけど…良く言えば幻想的な?悪く言えば古臭くて地味な?作品で…少年、少女の正体も、ひっぱったわりに普通だしってことで…推理小説やホラー小説のようなものを期待してしまうと、なんとも中途半端で物足りないです。
あさのあつこの文学小説が好きな人は、こういうジャンルも書ける作家なんだってわかって、これでも楽しめるのかもしれないけど…自分的にはイマイチでしたね。あまり感想を書きすぎても、ネタバレになる作品だし、感想は短めで…。
個人的採点:60点
チーム・バチスタの栄光 著:海堂尊
チーム・バチスタの栄光
海堂尊:著
宝島社 ISBN:4-7966-5079-2
2006年2月発行 定価1,680円(税込)
この時期に読むとかなりミーハーにみられそう(笑)映画版が始まったばかりの「チーム・バチスタの栄光」の原作小説をハードカバー版で読む。かなり前に入手してあったんだけど、積読の中でほったらかしだった…。映画を見に行きたくてさ、せっかくなんで原作を読んでからと思って挑戦してみることに。一応、ジャンル的には推理小説でもいいんだよね?このミス大賞受賞作品だし…。
東城大学医学部付属病院、桐生恭一率いるバチスタ手術専門の、通称“チーム・バチスタ”…成功率100%の輝かしい成績が一変して、術中死が立て続けに起きてしまった。医療ミスか、故意に引き起こされた殺人か?病院長の命令で、チーム・バチスタの内部調査をする羽目になってしまった、不定愁訴外来の田口は真相にたどり着けるのか?
確かにキャラクター描写がコミカルで楽しめるんだけど、読み始めはさ、やっぱ医学用語とか、大学病院内の派閥争いの人間模様とか…覚えたり、理解するのが大変でさ、なんでこんなに人気があるの?って疑問に思っちゃったんだけど…、噂の白鳥が登場してからは一変するね(笑)読むペースが変わったもん。
件の医療事故をきっぱり“殺人”と断定し…チンチクリンな理論で現場をひっかきまわす…そのくせもったいぶって真相をなかなか語らない白鳥の姿は、完全に推理小説特有の名(迷)探偵といったところだろう。前半では探偵役だった田口が、今度はワトソンに回るわけですか~。事件の本質なんかはミステリーとして、特別、奇を衒う趣向ではないと思うのだが、普通なら蛇足に感じそうな、真相解明後の丁寧過ぎる落し前の付け方なども面白く読むことができた。
映画公開に合わせて、文庫版が出ているけど…この内容で、上下巻に別ける意味が理解不能だよね。文庫版買うんだったら、自分みたいにブックオフの100円コーナーでハードカバー探した方がいいと思うよ。
文庫版 チーム・バチスタの栄光(上)
宝島社 2007年11月発行 定価500円(税込)
個人的採点:70点
初恋よ、さよならのキスをしよう 著:樋口有介
初恋よ、さよならのキスをしよう
樋口有介:著
東京創元社 ISBN:4-488-45902-1
2006年9月発行 定価720円(税込)
前回に続き、樋口有介の柚木草平シリーズの二作目を読む。これも創元推理文庫での復刊版で、初出は92年だそうだ。
娘に付き合わされ、スキー場にやってきた柚木草平は、偶然、高校時代のマドンナ、初恋の相手の卯月実可子と再会を果たす。実可子の方も結婚をし、娘と一緒に遊びに来ていたのだ。以前と変わらぬ美しさに、気持ちが揺らぐ草平はゆっくりと会う約束を交わし、その場を別れるのだったが…1ヶ月後、実可子の姪から彼女が殺されたことを知らされる。実は実可子は、死ぬ前に自分の娘に、何かあったら草平を頼るようにと伝言していたらしいのだ…。
皮肉なのか、ただキザなだけなのか?女に強くみえて、けっこう振り回されちゃう草平が、初恋相手の死の真相を暴くというのが今回のストーリーなのだが、容疑者も同じく高校時代の同級生であり、かつての仲間たちに的をしぼるという複雑な心境。
最初から殺人事件は決定だしってことで、前作よりも推理小説らしくなってきましたし、容疑者たちの会話の中に、真相へ導く伏線などもさりげなく、しっかりあって、ああ、あれがそうだったのかと…思わず悔しくなる。
ただ、それよりもやっぱり…憧れのマドンナの知りたくなかった本性を追求しなくてはならないという立場にちょっと後悔もしながら、あまり深く関わっていなかった女の子の友達から…「実は興味あったのよあなたのこと?」みたいなこと言われちゃって、ああ、作品の中の言葉を借りると…人生はボタンの掛け違え、あの時、この人に告白してれば、この人と付き合っていれば、今の俺はまた違った人生を送っていたはずだという、妄想のような願望、誰にでもある、青春時代を懐かしむというテーマがもろ身近に感じて物語に入り込みやすかったのね。かつての友人達も、自分の知らないところでそれぞれの人生を送っているという、当たり前なんだけど、そいういところもホロ苦くていいです。
前作よりも俄然、面白くなりました。ただ、レギュラーキャラなのかと思っていた、警視庁のキャリア警視の愛人さんは今回はお休みでしたね。前作のラストも、アノ後、どうなったのか知りたいんだけど(笑)ただ、娘との約束に関しては、しっかりと話が継続しているあたりは笑わせてもらいました。前作で約束したオーストラリア旅行の代償がスキー?
ああそうそう、ちょうど作品の流れが、節分からバレンタインデーまでなので、現実とちょうどシンクロして、今読むとけっこうベターですよ!
個人的採点:75点
彼女はたぶん魔法を使う 著:樋口有介
彼女はたぶん魔法を使う
樋口有介:著
東京創元社 ISBN:4-488-45901-3
2006年7月発行 定価820円(税込)
90年代に講談社で発刊されていた作品を、創元推理文庫にて再収録したもの。樋口有介の名前は知っており、ずっと気になっていたのだが、実は今回が初挑戦。
元刑事のフリーライター柚木草平は、元上司のキャリア警視・吉島冴子がまわしてくる事件の調査も手がける私立探偵でもあった。今回は女子大生のひき逃げ事件に関する調査で、唯一の遺族である姉が殺人事件ではないかという疑いを持っているという。早速、依頼人に会い、事件に興味を持った草平は事件調査に乗り出すのだが…その矢先に新たな事件が!?
シリーズものということで、主人公を含み、今後レギュラーになるであろうキャラクターがなかなか魅力的に描かれている。別居中の妻と子供に手を焼きながら、警視長キャリア警視の愛人(相手も人妻)とうまく付き合い、聴き込み調査の過程では、若いねーちゃんと話がなぜか弾んじゃう。物語はもちろんのこと、草平の皮肉たっぷりな語り口調などが、いかにも中年ハードボイルドな感じで、好みの文章です。
本文を読む前に、お約束ながら…巻末の解説なんぞを読んでしまうと、“ええっ、ここで終わりなの!?”って思うよ~って書かれてたからさ、まさか事件が解決しないとか?って心配しいしい読んでたら…そういうことですか。これは確かに、あのラスト…次が気になるところで、寸止め、お預けくらった感覚ですね。
肝心な事件の方は…地道に聴き込み調査を続けながら、怪しいところをつっつきつつ、犯人探しをするってオーソドックスな展開。劇的なトリックとかあるタイプの作品ではないけど…人の繋がりを追いかけていくところにやはり魅力を感じますね。
でもやっぱ、女に強いんだか、弱いんだか…利用しているようで、実は振り回されてる?な草平というキャラクターですよね、この作品の魅力。18年も前の作品なので、微妙な古臭さはあるものの…男から見て、女性に対する摩訶不思議な部分や恐ろしい部分がよく描けており、思わず「同感」って言葉が漏れちゃうよ…。
同じシリーズの「初恋よ、さよならのキスをしよう」も入手してあるので、続けて読んでみるつもり。
個人的採点:70点