初恋よ、さよならのキスをしよう 著:樋口有介
初恋よ、さよならのキスをしよう
樋口有介:著
東京創元社 ISBN:4-488-45902-1
2006年9月発行 定価720円(税込)
前回に続き、樋口有介の柚木草平シリーズの二作目を読む。これも創元推理文庫での復刊版で、初出は92年だそうだ。
娘に付き合わされ、スキー場にやってきた柚木草平は、偶然、高校時代のマドンナ、初恋の相手の卯月実可子と再会を果たす。実可子の方も結婚をし、娘と一緒に遊びに来ていたのだ。以前と変わらぬ美しさに、気持ちが揺らぐ草平はゆっくりと会う約束を交わし、その場を別れるのだったが…1ヶ月後、実可子の姪から彼女が殺されたことを知らされる。実は実可子は、死ぬ前に自分の娘に、何かあったら草平を頼るようにと伝言していたらしいのだ…。
皮肉なのか、ただキザなだけなのか?女に強くみえて、けっこう振り回されちゃう草平が、初恋相手の死の真相を暴くというのが今回のストーリーなのだが、容疑者も同じく高校時代の同級生であり、かつての仲間たちに的をしぼるという複雑な心境。
最初から殺人事件は決定だしってことで、前作よりも推理小説らしくなってきましたし、容疑者たちの会話の中に、真相へ導く伏線などもさりげなく、しっかりあって、ああ、あれがそうだったのかと…思わず悔しくなる。
ただ、それよりもやっぱり…憧れのマドンナの知りたくなかった本性を追求しなくてはならないという立場にちょっと後悔もしながら、あまり深く関わっていなかった女の子の友達から…「実は興味あったのよあなたのこと?」みたいなこと言われちゃって、ああ、作品の中の言葉を借りると…人生はボタンの掛け違え、あの時、この人に告白してれば、この人と付き合っていれば、今の俺はまた違った人生を送っていたはずだという、妄想のような願望、誰にでもある、青春時代を懐かしむというテーマがもろ身近に感じて物語に入り込みやすかったのね。かつての友人達も、自分の知らないところでそれぞれの人生を送っているという、当たり前なんだけど、そいういところもホロ苦くていいです。
前作よりも俄然、面白くなりました。ただ、レギュラーキャラなのかと思っていた、警視庁のキャリア警視の愛人さんは今回はお休みでしたね。前作のラストも、アノ後、どうなったのか知りたいんだけど(笑)ただ、娘との約束に関しては、しっかりと話が継続しているあたりは笑わせてもらいました。前作で約束したオーストラリア旅行の代償がスキー?
ああそうそう、ちょうど作品の流れが、節分からバレンタインデーまでなので、現実とちょうどシンクロして、今読むとけっこうベターですよ!
個人的採点:75点