赤い夢の迷宮 著:勇嶺薫

勇嶺薫:著
講談社 ISBN:978-4-06-182528-4
2007年5月発行 定価945円(税込)

自分も何冊か読んでいる、児童向けミステリーのはやみねかおるが、ペンネームを漢字に変えて、大人向き作品に挑戦した本格推理ものということで、平積みされてるころから気になってたんだけど、ようやく100円GET!
小学生のころ、“ぼく”とその仲間たちはOG呼ばれる不思議な大人と出会い、彼の魅力に惹かれながらよく家に入り浸っていた。だが、OGが所有する別荘、通称“お化け屋敷”の探検を行った際に遭遇した恐ろしい出来事を境に、関係も疎遠になったいた。そして25年の年月が経った現在、そのOGから、招かれかつての仲間たちが集まることに…。再び“お化け屋敷”へ訪れることになるのだが、そこで殺人事件が待っていた!
大人向けにしちゃ、“はやみねかおる”が抜け切れておらず、おこちゃまな荒唐無稽さが目立つのでガックリ。いつもの路線で読むなら、それでもいいのだが、期待が高かった分、こんなもん?という物足りなさの方が強かった。
確かにね、いつものターゲットである子どもに読ませたくないという作者の言う意味もわかりますよ…他のはやみね作品と違って死人がいっぱいでるし、犯人、殺人鬼の思想なんかもヤバめに描かれてるから、お子さんたちが影響を受けたら…って考えるのも。
本格推理ものの定番、嵐の山荘系にチャレンジし、とんでも系なトリックもいっぱい用意されてるが、けっこうバレバレ。ひねくれているようで、文章がいつものはやみね節なんで、雰囲気がブチ壊し。推理小説好きの小学生が、綾辻行人を真似たみたいなイメージの小説だったよ…おお、アレだよコレ、中学生がこのミス大賞で特別賞貰った「殺人ピエロの孤島同窓会」みたいな雰囲気だったよ(笑…そこまで酷くないか)。
小説の方は読んでないんだけど、同じ原作を漫画にした「ぼくと未来屋の夏」というはやみねかおる作品があって、あれを、嵐の山荘もの、大量虐殺で描き直したんじゃないか?とも感じてしまった。ちょっとダークでマッドなオチなんかはそっくり。
登場人物が変なあだ名なのも…ノレなかった原因のひとつ。余計に幼稚っぽさが目立っていた。このあだ名で展開するっていうのも、登場人物を疑ってくださいと言ってるようなもんだったし、かえってわざとらしくて逆効果だね。正直言って、期待しないで読んだ名探偵夢水清志郎シリーズの方が、素直に楽しめたよ。無理して大人向け作品書かなくていいです…結局はやみね信者向け作品。本当に大人向けだったら、このミスとかでも話題になってただろうし…。
個人的採点:60点
図書館戦争 著:有川浩

有川浩:著
メディアワークス ISBN:4-8402-3361-6
2006年3月発行 定価1,680円(税込)

プロダクションIGによるアニメ化…その放送も間もなく始まるというので、本屋大賞で話題になった頃に100円コーナーで見つけた原作本を1冊だけ持ってたのでとりあえず読んでみた。
取り締まる法律として“メディア良化法”が成立・施行された現代、正化三十一年…法務省組織であるメディア良化委員会の検閲から、図書館の本を守るための図書防衛員に志願した笠原郁は厳しい訓練の後、エリート精鋭部隊である“ライブラリー・タスクフォース(図書特殊部隊)”に配属されるのだが…。
ライノベ作家が書いてるっていうから勝手に学園もの想像してた。学校図書かなにかをめぐる争いで(それだったら図書室になるか?)、コミックの「究極超人あ~る」に出てきた、春高の一番長い日ってエピソードみたいに、エアガンで戦うみたいなもんを想像してたんだけど、設定自体はとんでもだけど、それを補うために本格的にミリタリーっぽい世界観が作り込んであってびっくりした。
ただ、軍隊調に仕上げたドタバタコメディであり、原風景に近い日常の中での戦闘行為、ところどころに政治や行政批判、学生運動風なテーマが盛り込まれていたりと、押井守とか好きそうだなぁって感じだよね。別に押井さんは関わってないけど、なんか、IGがアニメ化っていうのもうなずける印象。
最近も若年者の猟奇犯罪が起きた時に、やれ不健全な漫画の影響だ、アニメの影響だ、映画の影響だと騒ぐマスコミや、バカな大人たちがたくさんいたが、そういうメディアや社会の風潮を批判した内容になっているところなどは、けっこういいと思うのだが、ただ、せっかく“図書館”を題材にしてるんだから、もっと実際にある“本”を作品に絡ませてきた方が、さらに読書好きの好む内容になっただろうと、少々、もったいない感じ。
漫画で言うと「金魚屋古書店」とかさ、それこそミステリー小説でも「配達あかずきん」みたいなのがあるじゃん。ミリタリーな世界観に拘ったのと同時に、本に関する知識にももっと拘りを見せてほしかった。文章も上手いし、アクション+ラブコメなエンターテイメントとして充分楽しめるものの、大人の鑑賞に堪えうるものにするならば、ここまでいてってるんだったら、もう一歩踏み込んでも良かったよね。大そうなハードカバー書籍で発刊されてるけどライノベを脱し切れてないのが残念。
決してつまらなくないし、アニメも面白そうだが…続きは100円で見つけてからでいいやってレベルです。
個人的採点:65点
深泥丘奇談 著:綾辻行人【新刊購入】

綾辻行人:著
メディアファクトリー
ISBN:978-4-8401-2174-3
2008年2月発行 定価1,659円(税込)

作家の“私”は、不意に眩暈に襲われ、近くにあった深泥丘病院を訪れた。特に大きな異常はなく、神経的なストレスと診断されるが、念のため後日、検査入院したらどうかと担当の医師から勧められる。そして入院中の病室で…。
あとがきで著者本人も認めていたが、綾辻センセを思わす主人公が体験する日常と隣り合わせの怪異現象の数々(登場する奥さんはやっぱ小野不由美をイメージしてるのかな?)。エッセイかなにかでは?と勘違いするほのぼのとした語り口、病院という場所への不安や不満なんかが語られていたと思ったら、だんだんと過去に発表した「最後の記憶」を彷彿とさせるような、記憶をテーマにした話にも?
何を体験したのかという恐怖の正体が、漠然としており…なんだかわからないんだけど、主人公の“私”の恐怖が伝染してきて、読んでるこちらも落ち着かない。狙ったように、消化不良気味なオチが次々に積み重なっていくのも余計に、不安にさせらてしまう。そして、綾辻センセだから、きっと最後で何かある筈と信じながら読み進めるんだけど…(笑)
読後は「最後の記憶」と一緒に「どんどん橋、落ちた」も読まされたような感じだったかな(笑)たぶん、綾辻ファンにはこれでイメージが伝わると思う。「十角館の殺人」系…本格推理小説のファンにはきっと物足りないだろうが…著者のホラー嗜好な面を知っている人にはこれまたけっこう楽しめるのでは?さりげなく業界ネタをパロったような描写なども面白い。
作品に深く関わることになる病院の医師、石倉(一)との初対面…私がミステリ作家だというのを知ると…石倉が「江戸川乱歩とか横溝正史とか牧野修とか」って言いだす。思わず、なんで牧野やねん!って吹き出してしまったのだが、作者もしっかり「どうしてそこに、牧野修の名が入ってくるのか」と同時に心の声でツッコミを入れていたっけ。でも、この何気ない会話が意外と作品の本質を突いてる部分じゃないの?そう、何故そこで牧野?きっと、この医師がそういう世界に興味あるってことなんでしょうね。
個人的採点:70点
うそつき ~嘘をつくたびに眺めたくなる月~ 著:日日日

~嘘をつくたびに眺めたくなる月~
日日日:著
新風舎 ISBN:4-7974-9822-6
2005年8月発行 定価691円(税込)

16歳の高校生、竹宮輝夜は複数の男たちと交際しながらも、「好きってなに?愛ってどういう意味?」という疑問にぶち当たっていた。些細な事で、相手のことをくだらない存在に思えてきてしまい…別れを切り出すのだけど、相手が輝夜の気持ちを理解しようとしないことがとにかくもどかしい。そういう時、無愛想ながらも相手をしてくれるのが、年上の幼馴染で、拒食症の沖名太陽だった…。
一段と「ちーちゃん…」よりも文章は上手くなり、「ちーちゃん…」で気になった背伸びした大人の描写も今回は、登場人物の父や母を極力出してこないので、主人公が女の子になったとはいえ、作者と同世代の視点に徹しているので、かなり読みやすくなったじゃん!と思ったんだけど…最後の最後で、手を抜いちゃったかな?
幼馴染の異性が実は一番大切な存在というの気づくまでの話であり、軽妙な文章でドンドン読ませながらも、ある瞬間にとたんにダークでシリアスな話に転じるなど…本質は実は「ちーちゃん…」と同じなんだけど、そのシリアスな話がけっこう陳腐なんだわさ。四股交際中の最後の彼氏が出てきたあたりから、雲行きが怪しくなる…やっぱりこの辺は高校生(執筆当時)レベルなんじゃない?
話の持っていき方やオチなど構成が良かっただけに、もう少し最後のあたりがリアルに描写できればなぁ、文句なしだった。「ちーちゃん…」ではホラーだったからこそある程度陳腐だったから許せる部分があったのだが、この話の内容だったらもっとリアルに攻めてもいいはずだ。
女の子の想っている異性に対する感情がメイン…これは恋愛経験が少ない時に、こういうことを言われたクチだな、この作者も(笑)自分が未熟な時(学生時代)に付き合っていた彼女に対してした失敗を、そのままグチられてるみたいでさ…苦い思い出がいっぱい頭をよぎりました。
あと、愛と恋とか語るなら…今どきケータイ小説だってもっと際どい展開してるんだからさ、そろそろもっと冒険してもいいんじゃない?主人公の輝夜に、夢中になっているオタクで、小説家志望のボーイフレンドっていうのがさ、案外、この作者自身だったりしてね(笑)なんて深読みもすると楽しいか?
個人的採点:65点
ちーちゃんは悠久の向こう 著:日日日

日日日:著
新風舎 ISBN:4-7974-9558-8
2005年1月発行 定価590円(税込)

僕の幼馴染、ちーちゃんこと歌島千草は、小さい頃からオカルト好き。高校に入学した今も、友好的な関係は続いており、いつまでもこの関係が続くと思っていたのだが…。オカルトクラブへ入部したちーちゃんに無理やり誘われた怪事件を境に、ちーちゃんの生活に変化が。そして僕の生活も…。
ライノベっぽい、ユーモアも交えながら、しっかりとした文学的表現で読ませる。ラブコメチックな軽いオカルト話なのかと思いきや、後半はシリアスモード全開で、主人公の心の葛藤などがリアルに描かれていて、ホラーだというのも忘れてない、最後でゾクリとさせる手抜かりのなさも見事。小学生の作文みたいな文章を書く某ホラー作家は見習ってほしいぞ。
さすが現役高校生(時代に書いた作品)だけあり、学生時代に感じる周囲の仲間だったり、社会に対しての反発や主張が詩的な文章を通じてバシっと伝わってくる。その反面…主人公の両親の描写になると、背伸びしてるな~?っていうのがわかっちゃうから残念だね。
僕(作品内でちゃんと名前は出てくるけど)という主人公を際立たせるために、ああいう設定や生い立ちが必要だったのかもしれないが…自分なんかはあの部分を読んでいて、この物語には邪魔な存在、異質に感じた。きっと、今だったら、もっと上手に作品に馴染ませることができる技量はあると思うのだが…まぁ、しょうがないかな。
僕が入部する、陸上部の女部長が個人的に気になったね。いいキャラクターだった。というか、無邪気なちーちゃんに対し、しっかりものの女部長。いつの時代の男も、やっぱこういう両極端なヒロインに萌えるんだろうなぁって思いましたよ。
文章のうまさは実感、映画にもなっちゃうくらいだから大したものですが、「私の優しくない先輩」の方がもうちょっと面白かったなと思う、あくまで個人的な感想だけど。新風舎の日日日作品をいくつかGETしてあるので、続けて読んでみようかなって思ってるところです。
個人的採点:65点
ママに捧げる殺人 著:和田はつ子

和田はつ子:著
角川書店 ISBN:4-04-340711-4
2004年5月発行 定価540円(税込)

男を誘って猟奇殺人に走る女子大生の愛奈…一見、家族の面倒をよく見る真面目な学生に見られていたが、母親からの厳しい躾が原因のようだ。一方、この猟奇殺人が気になってしょうがない精神科医・加山知子、知り合いの捜査一課刑事から事件の相談なども受けたことから、さらに事件へ関わっていく…。
過剰なダイエットに走る女性の心情や、人間がもつ特異な性癖といったものを描きつつ、抑圧的な家庭環境から、狂気に走る犯人の、不気味な精神状態などはものすごく強烈に伝わってきます。最近の世の中を騒がす陰惨な事件の数々のことを考えると…絵空事のフィクションだとは決して言えないものが、こういった作品から感じられる。
ただ、個人的には…犯人の心理状態も描きつつ、捜査する側と同じように、読者も犯人の正体を推理するような楽しみが欲しかったかな?愛奈が極限まで達しちゃって…ようやく解放されるのかな?って思えるクライマックスの凶行…そこでいくつかの真実も明かされたりするのだが、どんでん返しの一発としてはちょっと弱い気がする。
あと読者に犯人がわかっちゃってるのであれば…事件に巻き込まれていく精神科医の追う側なんかも、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったかなという不満が残る。この辺のシンクロ率が高ければ、もっと手に汗握る作品になっただろうに…。
個人的採点:65点
ハルビン・カフェ 著:打海文三

打海文三:著
角川書店 ISBN:4-04-873348-6
2002年4月発行 定価1,890円(税込)

新聞の訃報欄で知った時はビックリしたが、昨年、急逝した打海文三の代表作「ハルビン・カフェ」を読む。自分は打海文三を読むようになったのは最近のことだが、どの作品を読んでもハズレが少ない作家だっただけに本当に残念ですよね。
福井県の西端にある海市…そこは中・韓・露のマフィアがひしめき合う無法地帯で、警官の死亡率が非常に高かった。そこで下級警官の一部が、マフィアへ報復するための地下組織“P”を設立し、行動を開始するが…もちろん警察内部でも対立は激化した。時が過ぎ、Pの活動も沈静化したある日、東京の新宿で起きた射殺事件を発端に新たな惨劇が動き出す…。
近未来の日本?架空の地方都市を舞台に、激化するマフィアと警察の抗争。そこへ警察組織の縄張り争い、権力闘争…さらには因縁・復讐なんかも絡んできて、もうごっちゃごちゃ。
最初はかなりとっつきにくく、物語の設定も、登場人物や人間関係も、そして文章もとにかく難解て疲れるのだけど、なんとか5、60ページ我慢して読むと、ある程度の筋が理解でき、その先は作品の中に入り込んでしまいます。
最後の、最後まで気の抜けない重たい文章。しかし、いくつもの視点が重なり合い、少しずつピースの嵌っていく爽快感は、非常に小説らしくて嫌いじゃないですね。一見、無骨な感じもするんだけど、文章をしっかりと読み解くと、奥行のある世界観が捉えられるし、実はこうでしたという物語の“核心”部分などに、説得力を持たせる雰囲気作りにも一役買っている。
この作品は発刊当時のこのミスでも上位にランクインされ、ミステリーファンからの評価は高い。100円本でけっこう前に入手してあったんだけど、積読本の中に紛れてて読んでいなかったので挑戦してみた。既に文庫本も出ているが、自分のはハードカバー版です。
文庫版 ハルビン・カフェ
角川書店 2005年7月発行 定価860円(税込)
個人的採点:80点
霧の迷宮から君を救い出すために 著: 黒田研二
霧の迷宮から君を救い出すために
黒田研二:著
実業之日本社 ISBN:4-408-50441-6
2004年10月発行 定価880円(税込)
大どんでんがえしな構成が得意のクロケン先生の推理小説。動くものが見えないという胡散臭い設定の主人公が登場するのだが…。
セキュリティグッズの会社“セーフティライフ”で営業をしている杉村亮治は、仕事のパートナーである米里由希から、僻地に建てられた災害用シェルターに呼び出されたのだが、そこで何者かに襲われ、崖から転落。奇跡的に助かるも、脳に障害を受けており、動くものが認識できなくなってしまった。さらにシェルター内から由希の死体が見つかり、現場は密室状態だったという…。
密室トリック自体は、某推理小説(いつもその分厚に驚かされる作家)のパクリのようなものなのだが、何故そうなったかは初っ端からネタをバラしているわけで(笑)、まんまじゃんというツッコミを入れたくなる。
事件のいくつかの真相など伏線が分かりやす過ぎて、どんでん返しのインパクトが薄いです。クロケン先生なんで、何か仕掛けがあるんだろうと、まどろっこしい文章を、疑いの眼差しで読み進めているので余計にそう感じてしまいます。
ただ、それは作者が真の狙いをズラすためのミスディレクションのひとつなんだろうねぇ、と…好意的に解釈してみる。動くものが見えないという、現実では体験しずらいシュチエーションを文章で理解させつつ、最後の最後で、そこかよ!的なオチ。タイトルの意味を考えたり、読後に冒頭のプロローグを読み返して見るとヤラれた感はありました。
登場人物たちの屈折した愛情のように、物語もだいぶ屈折してるなぁと…。
個人的採点:65点
精霊海流 著:早見裕司

早見裕司:著
朝日ソノラマ ISBN:4-257-77030-9
2004年3月発行 定価600円(税込)

朝日ソノラマ、ライノベです…。そういえば、朝日ソノラマってつぶれましたよね?これは、あらすじを読んで、面白そうだから100円コーナーで買って来たんですけど、なんか絶版なんで、Amazonのマケプレで定価の倍以上の金額になってました…。
普通の人にはみえないものが見えてしまったりと、不思議な力を持つ水淵季里は、仲間に守られながら高校生活を送っていたが、沖縄から転校してきた比嘉告未と知り合い、告未が初めて友達と呼べるような存在になった。しかし、その告未に何かが取り憑いてしまい…なんとか、自分の力を利用して助けたいと願う季里だが…。
女の子の友情…最初はいじめ問題から始まり、最後には沖縄の文化や歴史なども深くかかわってくる壮大な物語へ。何故、人間は醜い争いを繰り返すのか?という共通したテーマが最後まで読んでると浮き彫りになりますね。
ただ、告未に取り憑いた悪霊らしき存在の正体とか原因が、なんか安っぽい。ここだけ、2時間ドラマ見てるみたいな…話なんですよね。
学園ものかと思いきや、後半は学校サボって、みんなで沖縄へ。沖縄の温かさなどが伝わってくるんだけど、その雰囲気の方が強くて、悪霊退治とかそういった部分での盛り上がりにちょい欠けるかな?
この作者の作品を読むのは初めてんだだけど、超能力少女・季里ちゃんは、ほかの作品にも登場するのだそうです。生い立ちだとか仲間の描きこみがあまり深くないのはそういうのが起因してるのかな?まぁ、軽い気持ちで読む作品だね。
個人的採点:60点
春を嫌いになった理由 著:誉田哲也
春を嫌いになった理由
誉田哲也:著
幻冬舎 ISBN:4-344-00734-4
2005年1月発行 定価1,680円(税込)
ジウシリーズや姫川玲子シリーズなど最近は警察ミステリーで活躍している誉田哲也。ホラー大賞を受賞した「アクセス」の次に書かれた作品だそうだ。過去にも誉田作品はいくつか読んでいるが、エンターテイメントとして安定した面白さなので、好きな作家の一人。
TVプロデューサーの叔母から、番組にゲスト出演する外国人霊媒師エステラの通訳を任された秋川瑞希だが、彼女は、そういった非科学的な事は大嫌いだった…。しかし、来日したエステラが番組のロケ先で本当に白骨死体を発見してしまった。もしこれがヤラセだったら…叔母たちTVスタッフもグルなのではないかと疑い出すのだが…?そうこうしているうちに、エステラが出演する番組の生放送が始まる…。
オカルティックな内容も含みつつ、白骨死体の正体は何者なのか?いったいどんな事件が起きていたのか?という真相を追求する、推理小説的な物語としても受け止められる。
TV局の内幕ネタっぽい部分を含みつつ、トラブルに巻き込まれる瑞希が幼少期に負ったトラウマ、そして何故か並行して語られる、中国人密航者の話などどう関わってくるのかが読みどころ。
クライマックスは、一気に物語が加速…アレとコレがピタっとハマって、そうくるか~。読み返せば、こういう結末を導き出せるキーワードはあったんだけど、文章のテンポとかにうまくノセられちゃったな。
シビアな話もいっぱいあるんだけど、TVプロデューサーのオバチャンと、瑞希のコミカルな関係などが場を和まし、読後感はわりと爽やか。面白く読めましたね!
個人的採点:65点