深泥丘奇談 著:綾辻行人【新刊購入】 | 105円読書

深泥丘奇談 著:綾辻行人【新刊購入】

深泥丘奇談 深泥丘奇談 

綾辻行人:著
メディアファクトリー
ISBN:978-4-8401-2174-3
2008年2月発行 定価1,659円(税込)








不覚…最近、ブックオフばかり利用しているので、1か月以上も前に、こんな本が出ていたとは露知らず、本屋で見かけて衝動買いしました。自分が新刊本を買い続けている、希少な作家の一人である綾辻行人の新刊。怪談小説とでも呼ぶのか…ちょっと不思議な連作短編。

作家の“私”は、不意に眩暈に襲われ、近くにあった深泥丘病院を訪れた。特に大きな異常はなく、神経的なストレスと診断されるが、念のため後日、検査入院したらどうかと担当の医師から勧められる。そして入院中の病室で…。

あとがきで著者本人も認めていたが、綾辻センセを思わす主人公が体験する日常と隣り合わせの怪異現象の数々(登場する奥さんはやっぱ小野不由美をイメージしてるのかな?)。エッセイかなにかでは?と勘違いするほのぼのとした語り口、病院という場所への不安や不満なんかが語られていたと思ったら、だんだんと過去に発表した「最後の記憶」を彷彿とさせるような、記憶をテーマにした話にも?

何を体験したのかという恐怖の正体が、漠然としており…なんだかわからないんだけど、主人公の“私”の恐怖が伝染してきて、読んでるこちらも落ち着かない。狙ったように、消化不良気味なオチが次々に積み重なっていくのも余計に、不安にさせらてしまう。そして、綾辻センセだから、きっと最後で何かある筈と信じながら読み進めるんだけど…(笑)

読後は「最後の記憶」と一緒に「どんどん橋、落ちた」も読まされたような感じだったかな(笑)たぶん、綾辻ファンにはこれでイメージが伝わると思う。「十角館の殺人」系…本格推理小説のファンにはきっと物足りないだろうが…著者のホラー嗜好な面を知っている人にはこれまたけっこう楽しめるのでは?さりげなく業界ネタをパロったような描写なども面白い。

作品に深く関わることになる病院の医師、石倉(一)との初対面…私がミステリ作家だというのを知ると…石倉が「江戸川乱歩とか横溝正史とか牧野修とか」って言いだす。思わず、なんで牧野やねん!って吹き出してしまったのだが、作者もしっかり「どうしてそこに、牧野修の名が入ってくるのか」と同時に心の声でツッコミを入れていたっけ。でも、この何気ない会話が意外と作品の本質を突いてる部分じゃないの?そう、何故そこで牧野?きっと、この医師がそういう世界に興味あるってことなんでしょうね。






個人的採点:70点