105円読書 -14ページ目

血烙 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

血烙 刑事・鳴沢了 血烙 刑事・鳴沢了

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-204812-6
2007年2月発行 定価900円(税込)









前にも読んでいる刑事・鳴沢了シリーズの7作目、今回は残りの8、9作目も同時期にGETできたので、続けて読もうと思っているのだが…今回は、なんと鳴沢がニューヨーク市警で研修中に大事件が起きてしまう。

NY市警で研修中の鳴沢了、アメリカ暮らしの恋人、内藤優美とその息子、勇樹たちとも過ごせ、充実した日々を過ごしていたのだが…そんな鳴沢のもとへ事件の一報が。勇樹が乗ったバスがジャックに遭遇し、人質になっているという。長い膠着状態の末、意外な形で事件が収束に向かうのだが…解放された人質の中に、勇樹の姿はなかった!

バスジャックだけでもすごい事件なのに、それは事件の幕開けでしかなく、義理の息子になるかもしれない、勇樹が行方不明になり、その裏には勇樹の伯父で、鳴沢の親友、NY市警の七海の因縁の相手である、チャイニーズマフィアがからんだ、もっと大きな事件が待っていた…。

何で、勇樹がさらわれなきゃいけないんだ?というのが最大の謎なんだけど、実は最初でちゃんと伏線があるので…作中の登場人物はかなり悩みまくっていたけど、読んでいる読者は真相に至るのはけっこう容易。ただし、あんな秘密まで出てくるとは…。

事件解決後の鳴沢、本当にかっこつけーの、不器用だなぁ。次の話で、優美との関係がどうなっているのか、なんか心配になってきたぞ…。

最後まで読むと、物語の背景には、いつものように重苦しいテーマなんかが描かれているのだが、洋モノの翻訳小説を読んでいるみたいで、いつものシリーズとチト趣向が違っており、これはこれで、なかなかエキサイティングなエンターテイメントとして楽しめた。

作品のクライマックス…フロリダ、キーウエストが舞台になるのだが、そうだよ、コレ…殺しの許可証と取り上げられちゃったジェームス・ボンドが麻薬王に、友人の復讐を果たしに行くという「消されたライセンス」と、なんか鳴沢がダブって見えたね。シリーズものとしては、微妙にニュアンスが違って異質なんだけど、エンターテイメント小説としては、テンポがよく、今までの作品の中で一番面白く読めたかも。個性的な相棒がいっぱい出てくるのも楽しかった。






個人的採点:80点






BG、あるいは死せるカイニス 著:石持浅海

BG、あるいは死せるカイニス BG、あるいは死せるカイニス

石持浅海:著
光文社 ISBN:978-4-334-07655-9
2007年6月発行 定価930円(税込)









2004年に東京創元社のミステリフロンティアで出た作品を、光文社のカッパノベルズで新書化したもの。過去の石持作品がかなり好きだったので、期待していたのだが…もはやSFに近い大胆な基本設定にノレるかどうかがキモだな、こりゃ。

天文部の合宿で流星観測に出かけた高校生の西野優子が何者かに殺され、死体にはレイプ未遂の痕跡もあった…。構内では優等生で通っていた優子にいったい何があったのか?妹の船津遥は…姉の死の真相を追い始めるのだが…彼女が拘っていたらしい“BG”とはいったい何を意味するものなのか?これが事件の謎を解く鍵となりそうなのだが…。

奇抜なSF的設定が面白く描かれていおり、その世界観の中で、しっかりと石持作品らしいフェアな本格推理のロジックが構築されているわけなんだけど、なんかちょっと違和感があったな、自分は。

苗字の違う姉…家族の構成なんかの説明が最初の方に出てくるんだけど、一瞬、そこでどうなってるんだ?って疑問に思って、何度か同じ個所を読み返してしまったよ(笑)

基本的には男より女が多く存在する世界で、男がすごく貴重がられている。しかも人類はすべて女として誕生し、男は女が自然に、または人為的に性転換するとかなんたらかんたら…詳しくは作品を読んで理解した方が面白いと思うのだが、とにかく現代の日本か舞台なのかと思わせておいて、そうじゃなかったと…。

最初から、SFものか何かと理解して読んだら、もっとおもしろかったかもしれないんだけど…過去のようなオーソドックスな推理ものを期待しちゃったので、調子が狂ったというのが正直な感想。もっと推理物として反則的な作品はいっぱいあるので、よく出来てるんだけど、やっぱりちょっとノレなかった。






個人的採点:60点






ともだち 著:樋口有介

ともだち ともだち

樋口有介:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204066-3
2002年8月発行 定価820円(税込)









最近、ハマっている樋口有介を続けて読んでみた…今回も高校生が主人公の青春ミステリーだが、剣道の達人の美少女になってるのは割と、今風でいい感じ。初出は約9年前の1999年だそうで、2002年に文庫版化されたもの。

祖父に剣術を教え込まれた高校生の神子上さやかは、諸事情で学校では他の生徒や教師から近寄りがたい存在になっている。そんな、さやかと同じ学校に通うコギャル女子高生が襲われる事件が頻発していたのだが、その矢先に、今度はさやかと同じ美術部員の美少女が殺されてしまった!さやかは、殺された少女と行動を共にしていた転校生の間宮という不思議な少年と共に犯人探しをはじめるのだが…。

つづけて読んだ樋口作品2作品では、男の子視点で描かれていたけど、今度は女の子視点になってます。でも、ワトソン役の相棒は、今までの主人公を彷彿とさせる、ちょっと皮肉屋の男子高生っていうのが、やっぱり共通するところだね。恋人でもない、微妙な距離感の二人が友達の死の真相を探っていくんだけど、今までと違うところは最初から殺人事件だとわかってるあたりで、俄然、推理小説っぽさが強くなった。

ただ、あらすじを読んだだけで、だいたいの事件の真相は看破できちゃうし、だから事件が起きる前から、怪しい犯人にも目星がつくわけ。著者としても、そんなにミスディレクションさせようというわけではないんだろうけど、そういう展開も簡単に見破れちゃうのね。

予想通りの展開ではあったが、樋口作品はキャラクターの描きこみを楽しむことに、趣をおいているので、今回も安定して楽しく読めたけどね。






個人的採点:70点






林檎の木の道 著:樋口有介

林檎の木の道 林檎の木の道

樋口有介:著
中央公論新社 ISBN:4-12-203415-9
1999年5月発行 定価900円(税込)









初出は1996年のハードカバーでその後に文庫化された、樋口有介の青春ミステリー。これも2007年に創元推理文庫で改訂版 が出ているそうなんですけど…とりあえず旧バージョンを100円GETできたので。

17歳の広田悦至はボンヤリと夏休みを過ごしていたのだが、元彼女の宮沢由実果から久しぶりに電話があり、呼び出される。しかし、面倒に感じた悦至は、その誘いをぶっきらぼうに断ってしまうのだが…その直後に、由実果が御宿の海で自殺を遂げてしまった…。通夜の席で由実果の幼馴染だという友崎涼子と出会い、実は三人とも同じ幼稚園に通っていたことが判明。そんな簡単に由実果が自殺するはずがないという結論に達した二人は事件の調査を始めるのだが…。

この前読んだ「ぼくと、ぼくらの夏」と似たシュチエーション…離婚した父親と二人暮らしだった前回とは違って、今度は離婚した母親になってるんだけど、近所に住んでる祖父が登場したり、母親に恋人らしき相手がいたりと、主人公の周りはだいぶ賑やか。

で、また自殺した知り合いが実は殺されたんじゃないか?と疑い…急に仲良くなった女のこと事件を調査するという展開になっていく。新しい女友達も気になるけど、昔の元カノの素顔もひっかかる…みたいな微妙な男ごころが、上手な吸引力となり、作品に惹きこまれていくあたりが、相変わらず憎いかな。

展開は似ているし、「ぼくと、ぼくらの夏」もそんなに古さは感じなかったんだけど、こちらの作品の方がもっと後に書かれているので、よりいっそう今読んでも古くささを感じない。アレンジをいっぱいもりこみながらも、より現代風にセルフリメイクしたような作品って印象を強く受ける。






個人的採点:70点






ジュリエットXプレス 著:上甲宣之

ジュリエット×プレス ジュリエットXプレス

上甲宣之:著
角川書店 ISBN:4-04-873726-0
2006年9月発行 定価1,155円(税込)









映画化された「そのケータイはXXで」(エクスクロス)やTVドラマ化された「コスプレ幽霊紅蓮女」の上甲宣之の作品で、5月に文庫化されたばかりの「ジュリエットXプレス」。本屋で平積みされているのを目撃し、面白そうだなぁって横目で見てたら…その帰りに寄ったブックオフで、ソフトカバー版が100円コーナーにあったので購入、さっそく読んでみることに。

大晦日から新年にかけての45分…一人旅に出た高校生の坪内真夕子は、生放送のラジオ番組を通じ自分が乗車している寝台特急で発生中の誘拐事件の事実を知り事件に関わることになる。一方、夕子のルームメイトの佐倉遥は、一人居残っていた学生寮に押しかけて来た新聞部員たちと噂のスナッフフィルムを探しをさせられる羽目に…。さらに、二人が通う学校の教師の自宅が強盗に侵入され、異変を察知した娘の藤岡智美が果敢にも犯人に対抗していく!

「そのケータイはXXで」と同じようなパターンで、携帯電話を巧に使い、同時進行で起きている別事件が、最後の最後にがっつり交わって、真相が見えてくるという感じの内容。

「そのケータイはXXで」よりも、事件の内容が身近な感じになっているのは良いアイデアだと思うし、読んでいる最中はテンポがよくて嫌いじゃないのだが…やっぱりラストは強引さは否めないか?綺麗にオチがついちゃったあたりが、逆に物足りないんじゃないかな、コレ。



文庫版 ジュリエットXプレス
角川書店 2008年5月発行 定価500円(税込)






個人的採点:65点






ぼくと、ぼくらの夏 著:樋口有介

ぼくと、ぼくらの夏 ぼくと、ぼくらの夏

樋口有介:著
文藝春秋 ISBN:4-16-753101-1
1991年4月発行 定価428円(税込)









創元推理文庫の復刊版“柚木草平シリーズ”を読み、樋口有介に興味を持ち、昔の作品を大量に発見したので、まとめ買いしてしまった。これがデビュー作らしい。2007年に新装版 が出ているそうですが、中身の改訂があるかどうかは不明。同じ文庫だが、16年も経っているので定価がかなりあがってる。

夏休みのある日、刑事の父親から、同級生の岩沢訓子が自殺したという話を耳にした、戸川春。偶然、外出先で会った同じく同級生の酒井麻子にその話をしたところ、中学の頃親しかった訓子が自殺したことに疑問を持ち、2人はその原因を探り始めるのだが…。

初出は昭和63年、1988年…20年前ということなので、携帯電話もなければ、出てくる映画なんかの話も古いんだけど、それ以外の部分では、そんなに古さを感じないのは、“柚木草平シリーズ”と共通するな。

軽妙な語り口調で、同級生の自殺の真相を探り始める高校生の話、いわゆる青春ミステリーってヤツ。なんとなく、大沢在昌のアルバイト探偵にも似た雰囲気を感じた。

ただ、出だしこそ、同級生の自殺なんかどうでもいいや~的なところもあったが、最後はわりと切ない系で…どっしりと重たい現実を背負いこまされた感じだね。

事件そのものや、証拠から真相を導き出すというよりは…さりげない人物の描写で、犯人にけっこう行きつく。最後まで読んで、やっぱりコイツかが関わってたか度…100%(笑)

これ、大昔に映画化もされてるんだってね…ちょっと見てみたい。






個人的採点:70点






ナイトブリード 著:友成純一

ナイトブリード ナイトブリード

友成純一:著
角川春樹事務所 ISBN:4-89456-800-4
2000年11月発行 定価650円(税込)









この間、急に寒くなったと思ったら、また急に暑くなったり…そのせいかな、1週間くらい体調くずしました。珍しく医者通いもしてしまった…本を読むどころじゃなく、布団の中で唸ってました。で、ようやく峠を越したみたいなんで、読書再開、その一発目で、なぜか友成純一のグログロホラー(笑)

5年前に日本全土を襲った大地震…しかし、不思議と全く被害はなかったのだが、それを境に、今まで目に見えなかった悪魔、妖怪、物の怪の類が、日本各地に現れ、混沌の時代が幕を開けた…。妖怪が跋扈するのは当たり前で、あるものは、人に憑依し人肉を喰らう!そんな世で、九州を拠点に日本転覆を企む過激な宗教団体“黄昏の鉄十字教団”、それと対峙する“黎明の光教団”の争いは激化…さらに化け物退治専門の武装機動隊が“黎明の光教団”と手を組み九州の覇権を奪取しようとし…。

友成節絶好調、血と汚物をまき散らすスプラッターバトルを延々と繰り返す中で…妖怪、物の怪は恐ろしいが、一番の元凶は人間様であるというのを説いている作品です。

化け物どもが日常にあふれかえり、カオスと化した日本…化け物退治を志願する諸外国が、それを理由に侵略してくるんじゃないかと、かたくな援助を拒んでいる日本とかね…世界観や設定は凝っててなかなか面白い。

ただ、広げた風呂敷が、最終ページ近くになっても、手つかずなんで…こんなんで話を完結させることができるのだろうか?と思ったら、最後の一行に“第一部 完”の文字が…。え~、ウッソー、だよね。ネットとかで調べて見たんだけど今のところ、続編らしき小説は出ていない模様。これで、物語がしっかりと完結していれば、傑作なんだけど、この高揚感をどこで発散させればいいのやら…。






個人的採点:65点






螺旋に回転する世界 著:菊池勇生

螺旋に回転する世界 螺旋に回転する世界

菊池勇生:著
小学館 ISBN:4-09-379734-X
2005年11月発行 定価1,365円(税込)









ゲーム好きの人がカバー買いしそう(笑)金子一馬のカバーイラストが印象的…これが単行本デビューの新人作家だそうだが、漫画原作などの経験はあるそうです。

刑事の横川憲二の携帯に、半年前に連続バラバラ殺人事件に巻き込まれて死んだ妻、響子から電話が…。しかも、言っていることが支離滅裂で話がかみ合わない。憲二が生きているのは、皇紀2665年、光文17年の2月…電話の響子は西暦2004年、平成16年の8月だという。さらに西暦2004年の方でも連続バラバラ殺人が始まっており…次のターゲットが2004年の響子で、それも1週間後には殺されているのではないかということになり、お互いに協力しながら両方の世界で事件の捜査を始める。2665年の憲二は…かつて他の事件で一緒に捜査した探偵・小鳥遊司に協力を仰ぐ…。

過去からの電話っていうのはありそうなんだが…さらにパラレルワールドがからんでくるから、やたらとややこしい。 自分が住んでるのとは異なる世界、さらに半年遅れ、で両方の世界で似たような事件が起きているから、もしかしたら数日後には、パラレル世界(読者から見ると現実世界の方の)の嫁さんも殺されちゃうんじゃないかということで…事件を解決していこうとするって話。

バラバラ殺人の犯人探しと…一応は推理小説らしき展開もあったりするんだけど、なんでもアリのSFなのか、コレ?殺人事件のオチは某有名SFアクション映画みたいになってたんだけど…二つの世界が関係してくるので、もっと複雑。

推理ものとしては、とってつけたような真相でやたらとチープ…設定やキャラはわりと奇抜なだけに、この世界観自体の真相に迫る物語展開にしたら、SFミステリーとして立派だと思うんだけど、そっちは投げっぱなしが多いので期待ハズレ。

主人公は刑事でも嫁さんでもなくて、光文の方の世界にいる…合法ドラックでラリると推理力がアーーーップするホモの美青年探偵(表紙イラスト)なんだそうで、それが一番の売りになってるらしいんだけど…意外と出番少ない(笑)ここをもっとクローズアップさせても面白いはずなのに…。






個人的採点:60点






冬のスフィンクス 著:飛鳥部勝則

冬のスフィンクス 冬のスフィンクス 

飛鳥部勝則:著
光文社 ISBN:4-334-73818-4
2005年1月発行 定価700円(税込)









物語自体は独立している、全く別な事件なんだけど前回読んだ「砂漠の薔薇」の姉妹編的な関係になっているという作品。主人公が寝る前に絵を見ると、夢の中でその絵の中に入ってしまう…そしてその中で殺人事件に巻き込まれるという、かなり奇抜な作品。

楯経介は、寝る前に絵を見ると、夢の中でその世界に入り込んでしまうという不思議な能力を持っていた…。彫刻家・洲ノ木正吾のコラージュ・ロマン「冬のスフィンクス」の中で彷徨う楯は、奇妙な連続殺人に巻き込まれていき、次第に、現実と夢の区別がつかなくなる…。さらに現実世界で、この悩みを相談した、友人の亜久直人が…あたかも自分の夢の中に消えてしまったかのごとく失踪してしまった!?

殺人事件が夢か?現実か?といいながらも、ほぼ夢オチを肯定したような形で作品が進むから、かなり奇抜。先に「砂漠の薔薇」を読んでいると印象が変わるという解説の意味は、そういうとこかな?とにかく、これもまた語り手がイっちゃってる物語なんだろう。

そんなイっちゃてる物語でも、「砂漠の薔薇」同様に…最後の最後で出てきた事件にキッチリと落し前はつける。ひっちゃかめっちゃかな推理合戦を繰り広げたわりに、「砂漠の薔薇」同様に、これまた本格推理小説として、あらかじめ逃げ道を用意してあったかのごとく、あっ気ない真相が語られるのが、ちょっとズルいかなと…。

イっちゃてる物語なんだから、そんなとこで整合性を持たせずに…真相もイってしまえばいいのに。推理小説じゃねーよ、コレっていうアンフェアさくらいのオチの方が、この作品には似合いそうだ。ああ、それをやらかされると、前にノレなかった「ラミア虐殺」みたいな作品になっちゃうのか(笑)

宗教的な会話など…インテリっぽさをコミカルな文体で読ませた「砂漠の薔薇」に比べると、こちらの方が若干、硬めな印象も強く、とっつきにくさは感じたかな。






個人的採点:65点






砂漠の薔薇 著:飛鳥部勝則

砂漠の薔薇 砂漠の薔薇

飛鳥部勝則:著
光文社 ISBN:4-334-73550-9
2003年9月発行 定価660円(税込)









会田誠のイラストを使った表紙がインパクト大…飛鳥部勝則の「砂漠の薔薇」を読む。この作品とは対をなす姉妹的な作品「冬のスフィンクス」を先にGETしており、物語は独立してるので、どちらを先に読んでも支障はないという解説も載っていたのだが、せっかくなんで一気に読んでみたくて、二冊揃うまで読むのをやめていた。で、最近になって、コレを入手できたんだけど…一応文庫化の順番通りで読んでみようと…。

美術館に併設する喫茶店でバイトをする女子高生の奥本美奈は、画家の明石尚子と親しくなり、絵のモデルをすることになるのだが…、彼女の住まいは、首なし死体が発見された不気味な洋館の隣だった。しかもその事件の被害者は美奈と同じ学校の生徒、竹中真利子である。もう一人、失踪中の同級生が事件に絡んでいるらしいのだが…行方は分かっていない。さらに件の館に不気味な男が引っ越してきたり、自称刑事の男が美奈につきまとったりと…どんどん事件に深入りしてってしまうのだが…。

実際に起きる事件や物事はグロテスクであったり、陰険な感じも多いのだが、女子高生と画家のおばちゃんとの…インテリっぽい会話の応酬が、なかなか痛快。ただ、コミカルな部分に騙されないように!

主人公の女子高生も含み事件関係者が、みんな屈折してイっちゃってるか、ネジが緩んでるっぽいところなども…物語に引き込まれる要因か?若者の衝動的な暴力や狂気などが作品によく反映されており、最後は微妙に切ない気分させられた。

ただ、導入部からずっといい感じで引っ張られたのだが、せっかくの真相解明、どんでんがえしなど…本格推理小説として評価すると、つめが甘いような気がしないでもない。もう少しドラマチックに読ませてくれたら、ラストなんかももっと引立ったと思う。

飛鳥部作品は久しぶりで…自分は「レオナルドの沈黙」「ラミア虐殺」に続き、3冊目。「ラミア虐殺」には、ちとノレなかったんだけど…今までの中で一番、読みやすく面白かったです。次に読む予定の「冬のスフィンクス」にも期待!






個人的採点:70点