顔のない敵 著:石持浅海

石持浅海:著
光文社 ISBN:4-334-07639-4
2006年8月発行 定価900円(税込)

石持浅海の短編集で、地雷をテーマにした作品を集めたもの(7本のうち、最後に載ってる1本だけ無関係)。著者がデビューしたての頃から拘っているテーマなのだとか。
地雷原突破
ベルギーで行われた、地雷の恐ろしさを市民に伝えるための地雷原再現イベント…実際には爆発しない音響地雷の中に本物が紛れ込んでおり、イベント主催者のNGO関係者が爆死した。同じNGOに参加する坂田は、酒の席で親友の早瀬に事故の様子を語って聞かせるが…早瀬は事故ではなく、殺人ではないかと疑い始める…。
地雷を使った殺人、トリックなど派手目な事件だが…それをアームチェアー・ディテクティブよろしく、酒の席で真相を看破しちゃうという…。推理小説的にはそこそこ、ただ物語的にはこれ一本だと、調子っぱずれに感じる箇所もあるのだが…その後の作品で少しずつ補完されていく感じ?
利口な地雷
地雷撤廃論を唱えるジャーナリストの永井綾子は、新しく開発されたスマート地雷の説明を受けるため、自衛隊の兵器調達担当者、小川一尉と共に開発工場へ出向く。そこで地雷の説明を受けた直後に、開発者の一人が、敷地内の倉庫で、金槌を使ったブービートラップに遭い殺されてしまった!
トラップ殺人…でも、そのトラップの説明はあまり詳しく載ってない。そうではなくて、なぜ、こんなトラップが仕掛けられたのか?という点から犯人を看破していく。トラップ自体には地雷は関係せず、地雷撤廃のテーマが、事件のバックボーンとして大きく影響する。
顔のない敵
カンボジアに地雷撤去にやってきたNGO団体のメンバー…地雷撤去作業中に、地雷原の地主であり、NGOに積極的に協力している地元の有力者が、誤って地雷原に入り込み爆死してしまった!しかし、遺体や現場の不自然さから他殺の疑いが…。
1本目に出てきた坂田とNGOが出てくるお話。発表時期は「地雷原突破」以降なんですけど、作品内ではそれよりも前のお話ということ。いちおう、事件の小道具にもちゃんと地雷が使われ、テーマもそれに即した方向で描かれており、真相は他の作品同様に、ちょっと地味で、新鮮味が乏しいが…表題作になるだけのまとまりの良さは感じた。
トラバサミ
戦争被害者自立支援会というNGOに参加している男が交通事故死した。その男の遺留品の中に…手作りのトラバサミが!警察は、男がどこかに罠を仕掛けたのではないかと考えるのだが…。事件を担当する久山刑事は、知り合いの自衛隊員、小川一尉に捜査協力を要請する…。
「利口な地雷」に出てきた小川一尉が再登場…犯人が仕掛けたトラバサミの在りかを、対人地雷に照らし合わせ、犯人の性格や、NGOでの活動内容から推測していくというもの。地雷というものに対し、一般読者が感じるだろう意見に近いものが、一番色濃く出ていたかなと思える。
銃声でなく、音楽を
地雷撤去のNGO団体に所属する坂田とサイモンは、有名な音響機器会社にスポンサーになってもらうため、プレゼンにやってきた。社長とのアポイントメントをとりつけたのだが、まさに2人が社長と会うために、プレゼンルームに訪れた瞬間、部屋の中から銃声が!
またまた坂田とNGOメンバーが関わった事件。地雷に関しての記述は、他の作品に比べ無理やり感があったが…坂田シリーズのキャラクターを理解するには外せない作品だろう。
未来へ踏み出す足
地雷撤去をするための作業ロボットを、現地で試作運用するためにやってきた開発者たちと、地雷の取材を続けるジャーナリストの永井綾子。テストが成功し喜んでいたのもつかの間、開発者の一人が死んでいるのが見つかった。顔には地雷撤去用に開発された特殊な接着剤が吹きつけられており…。
坂田と、小川一尉は出てこないのだが、2人に関わった他の人物同士が登場し、二つの系統の作品が、ちゃんと地続きであったとわかる、地雷シリーズの最後にふさわしい物語。ただ、これもテーマ重視なので、ミステリーと捉えると弱い。接着剤でグルグル巻きにされた死体、「顔のない敵」に登場したコン少年が、探偵役など…面白くなりそうな気配はあったのだが。
暗い箱の中で
同僚の女性社員が退職するため、送別会に向かう…5人の男女。しかし、そのうちの一人が忘れ物をしたので、みんなで会社に戻ったところ、急に地震が起き、乗ったエレベーターがとまってしまった。さらに真っ暗闇で、仲間の女性がナイフで刺されて殺された。犯人は4人の中に?
著者の商業デビュー作の短編だとか…あとがきの自作解説で、推理作家の鮎川哲也に地味だと言われたなんて書いていたが…確かに(DAIGO風)
会社の同僚同士が閉じ込められた密室のエレベーターの中で起きた殺人…という、いかにも本格ミステリな舞台設定は、嫌いじゃないが…犯人や事件の動機も予想通り。また、作品中に発覚するもうひとうの事件の方が、ちょっと描きこみが弱く、全体的な印象がイマイチ。
あと、この短編集に組み込むことはなかったのでは?正直、これがなかった方が…地雷作品6編でまとまりのあるものだっただろう。
最後に掲載されていた「暗い箱の中で」の場違いさに加え、「暗い~」以外は発表年代順に並んでいる、他の短編作品だが…それよりも作品内の時系列で並べなおした方が、登場キャラクターにもう少し入り込めたような気がする。
「地雷原突破」という、一番最初の作品を、地雷シリーズの最後か、その手前に持ってきた方が、「えっ!?」という驚きが演出できたのではないだろうか?作者もいろいろと考えているのだろうが、読者的にはちょっともったいないかな?
動機から迫っていったり、犯行状況から迫っていったり…推理小説的な楽しみは、いろいろと変化を変えているので、その点はうまさはちゃんと実感できるのだが、それよりも社会派なテーマを重視しているので、全体的に地味さはぬぐえないような気がする。
個人的採点:65点
続々 殺戮のジャンゴ害伝 地獄のビッチハイカー 著:佐藤大とストーリーライダーズ
地獄のビッチハイカー
佐藤大とストーリーライダーズ:著
ニトロプラス:原作
小学館 ISBN:978-4-09-451042-3
2007年12月発行 定価600円(税込)

アニメが好きなので、脚本家としてはよく存じ上げている佐藤大さんのライノベ…長ったらしいが、インパクトがあったので、内容も知らずにタイトル買い。なんか、ゲームか何かが元ネタらしい。
マカロニ・ウェスタンの世界が実在する辺境の無法惑星スウィート・ウォーター…ビッチハイカーと名づけられた名も知らない美女が、本当の意味も知らずにその惑星にやってくる。その姿を8ミリカメラで隠し撮り、編集をするのが、ピンク専門放送局の番組「天国までイキたいの!ビッチハイカーTV」の"ディレクター”の仕事だ!
エロ専門のどっきりカメラ…ビッチハイカーと名づけられた美女ターゲットが、蹂躙されまくり、挙句の果てには●●されてしまう様子を…隠し撮りする、カメラマン兼監督のお話。
くだらねぇ~、エロ要素は強烈に詳細ではないが、SF、ウエスタン風味なポルノ小説だなこれ(笑)ラノベって、今はここまできちゃってるんだね。表紙はさすがに服着てるけど、挿絵に出てくるおねーちゃん、みんな素っ裸。と、そういう類の小説です。
ただ、何気に脚本家として映像作品に数多く関わっている佐藤大…エロと鬼畜などうしようもない文章の中に垣間見せる、映像論やら映画蘊蓄、映画オマージュ、アニメ、サブカルネタには思わずニヤリとさせられる箇所あり。
それと序章を含み、全部で4章構成になっているが…最終章の展開は上手。しっかりと映像作家特有の悲しい性が描かれており、お約束のようなどうしようもない展開ながら、ただのポルノ小説から、ここで見事に脱皮させている。
設定はSFなのに…普通に実在のマカロニ・ウェスタンと、ホラー映画の話がてんこもり。いい加減でいかがわしいところが、なんかB級感出てて面白い。そういうところを含めて、しっかりとマカロニへのオマージュが込められている。
タイトルに“続々”とついているが、小説はとりあえずこれ1冊。そういうタイトルの付け方もお約束なわけで…一応、架空の次回予告なんてものも載っていたので、人気次第では続編を書きたいんだろうなぁと思うんだけど、どうなんでしょうねぇ?
個人的採点:65点
パラダイスビーチ 著:鳴海章

鳴海章:著
双葉社 ISBN:4-575-50784-9
2001年6月発行 定価800円(税込)

昨日まで読んでいた「天帝のはしたなき果実」が、マジで読みづらくて、疲れたので、なんかスカっと読めるものはないかということで、コレをチョイス。犯罪に巻き込まれた女子高生と犯人一味の逃避行ものです。
女子校に通う相原律は、平凡な学生生活を過ごしていたのだが、ある日、クラスメイトの由美が、いじめにあい、通称“かえるの解剖”と呼ばれている性的な虐待を受けている現場を目撃してしまった。真相を知りながらも、関わり合いになりたくないと願う律だったが、それから由美は学校を欠席するように…。ある日、その由美から相談があるので、会いたいという連絡を受けた律は、負い目もあり由美に会いに行くことに。しかし呼び出された場所はヤクザの事務所であり、律に復讐しようとした由美がヤクザに依頼して、レイプしようと企んでいたのだ。そんな時、事務所に強盗が現れ銃撃戦に!律はその襲撃犯に助けられ、一緒に車で逃走する羽目に…。
鳴海章版“トゥルー・ロマンス”といったところでしょうかね…犯罪に巻き込まれ、ヤクザと警察に追いかけられ、その危機的状況で、一緒に行動している犯罪者に父性や恋愛感情的なものを抱いてしまう女子高生。
いろいろな場面で、いろいろなヤツがいじめにあい、何度となくレイプされる描写がいっぱい。それも、女が女にだったり、男が男にだったり…殺しながら犯しまくる変態だったり、もう鬼畜なヤツいっぱい、えげつない行為いっぱい。
女子高生同士のいじめで、クラスメイトを教室でやっちゃうという冒頭の“かえるの解剖”こそ、かなり衝撃的ではあったが、繰り返されるたびに、またか?な印象…けっこう慣れてしまった(笑)ついでに、死体の山もいっぱい。
裏切ったり、裏切られたり、死んだと思っていたヤツが生きていたりと、ドロドロとした人間関係…ありがちなんだけど、最後のオチは盲点だった…。強烈に印象に残る作品ではないが、テンポよく読め、バイオレンスなエンターテイメントとしてはそれなりに満足はできた。
個人的採点:65点
天帝のはしたなき果実 著:古野まほろ

著:古野まほろ
講談社 ISBN:978-4-06-182477-5
2007年1月発行 定価1,680円(税込)

去年かな?新刊で平積みされていた時から気になっていた古野まほろの小説を、まとめて4冊、ブックオフの100円コーナーでGET!?今回読んだデビュー作を含むそのうちの三冊が、やたらと分厚くて、定価も全部1600円以上と、なかなかの金額。一気に全部読んでみるか?なんて気持ちで手を出したんだけど…。
90年代初頭の日本帝国…勁草館高校。アンサンブルコンテストを控える吹奏楽部の仲間たちは、厳しい練習に励んでいた。ホルン奏者の古野まほろもそのメンバーの一人。ある日、部の仲間である子爵令嬢修野まりから託された謎の暗号文を、クラスメイトで生徒会長の奥平に見せたところ、その暗号を解き明かしたらしいのだが、学校内で首を斬られて殺されてしまった。吹奏楽部の仲間とともに犯人探しを誓うまほろだったが、さらに新しい事件が…。
そのうち慣れるだろうと思って読んでいっても、なかなか慣れない、この作家の文章。ついでに、事件も全然起きなくて、かなり退屈。あまりのつまらなさに放り出そうと思ったことも何度かあるけど、毎回のように、ここまで読んだし、いつかは面白くなるだろうと。途中で放り出したら、この作者に、バカにされてるようにも思えてきて、なんとか読み進める。
約800ページのうち、200ページ目くらいで、ようやく本題らしい事件が起き、さぁ、ここからテンポを挽回するかなと思いきや…テンポはそのままに、また同じようなことの繰り返し。 500ページ目あたりから、700ページ目あたりは、ようやく推理小説っぽくなってきて、主人公たちを含む高校生たちの推理合戦など盛り込まれているので、そこだけはようやく面白くなってきたんだけれど…また最後の100ページくらいが、やたらとクドイかなと。
最後100ページの真相告白、そのとんでもなオチがあってもいいけど…800ページ費やさなくても別にいいんじゃないか、おい。奇抜で、分厚くて、自分のオタク知識をひけらかした蘊蓄詰め放題な文章が文学的だと錯覚しているような感じの作品=メフィスト賞の悪いパターン。
読んでるうちに違和感を感じるからさ、気付くんだけど…せめて、カバーのどこかに、まともな“あらすじ”くらい書いてくれないかね?日本に似ているパラレルワールドな世界観だという情報は、最初から欲しかったよね。有名作家の推薦文と、折り返し部分の意味不明な“あらすじ”もどき…このパターンのメフィスト賞って、当たりはずれの落差が大きすぎるよ。買っちゃったので、いつかは他の作品も読んでみるけど、すぐには続けて読みたくないね。
個人的採点:55点
トランプ殺人事件 著:竹本健治

竹本健治:著
東京創元社 ISBN:4-488-44303-6
2004年9月発行 定価693円(税込)

精神科医の天野は…カード仲間と共にコントラクトブリッジを楽しんでいたが、参加者の一人、沢村詠子が、密室状況にあった遊戯室から忽然と消失…後日、別の場所で死体で見つかった。警察の捜査では自殺ではないかということなのだが、腑に落ちない天野は、友人の須藤や天才少年棋士・牧場智久に相談を持ちかける…。
このシリーズでは、いつものことだけど、専門用語いっぱいで、最初のとっかかり部分はかなりキツイ。コントラクトブリッジなんてシャレたゲームは全くやらんので、囲碁、将棋以上に…チンプンカンプンだった。
初心者読者のためなのか?かなりのページを割いて、ゲームのルールや用語説明が事細かく説明されているんだけど、それを読んでも????。こんなもん飛ばして読んでも、物語に影響ないんじゃないかと…思っていたら、ちっ、仕掛けありかよ。でも、そんな仕掛け、見破る余裕なし(笑)
ただ、チンプンカンプになっていても、前半部分でややひっかかりを感じるのは確かですね。その後、150ページくらい読んだところで、ようやく牧場智久登場…このあたりから、推理小説として楽しむ余裕も若干、出てきたかな?
最後まで読むと、作者にうまく煙に巻かれているみたいで、そこがけっこうミステリアスな雰囲気を味わえる。推理小説的な、真相看破のカタルシスなどもはやどうでもよくなってしまい、現実と虚構の狭間でもがく登場人物同様に、作品の中に読者を迷いこます。作中に登場した何度か登場した“惑乱”という言葉が、そのままピッタリとはまる作品。
個人的採点:70点
誘拐から誘拐まで 著:大石直紀

大石直紀:著
光文社 ISBN:4-334-07356-5
1999年9月発行 定価860円(税込)

過去にも何冊か読んでいる、大石直紀の誘拐を題材にした推理小説…。「キッドナップ」というタイトルに改題され、2003年に文庫化されているんだけど、今回、読んだのは最初の新書版。
国際的なヘッジファンドの元幹部、仁科貴史の息子が何者かに誘拐され、身代金の要求が届いた。その受け渡し方法として、仁科本人が現金を持ち、ベルギーのブリュッセルへ飛べというのが犯人の指示だった。捜査官も同行し、ベルギー警察と協力のもと捜査を展開するが、今度はモロッコのマラケシュへ飛べとの指示が!
この著者らしく、作品舞台の一部が海外だったり、謎の外国人組織が出てきたりと…わりと国際的でスケールのでかい話が絡んでくる。ヘッジファンドなど金融小説みたいなテーマも盛り込まれている。
冒頭の誘拐、身代金の受け渡しなどはかなりスリリングに描かれている。誘拐の真相が実はこうでした…というどんでん返し的な真相を、中盤でバラしちゃっても…さらに新しい展開を盛り込んできたりするストーリー構成のうまさは相変わらず。クライマックスでもう一度起きる、日本警察と犯人の攻防の様子などもかなり惹きこまれる。前に読んだ同じ著者の「テロリストが夢見た桜」にも通じる。
ただ、中盤ではいろいろな登場人物が入り乱れるので、やや散漫気味に感じる箇所もあり。それを乗り越えれば、しつこく感じたいくつかのキャラクターの生い立ちなんかも、しっかりとしたフリになっており、物語の中で、おとしまえをつけてくる。一部、やりすぎにも思える隠し玉はあったが(笑)
個人的採点:65点
稀覯人の不思議 著:二階堂黎人

二階堂黎人:著
光文社 ISBN:4-334-07608-4
2005年4月発行 定価920円(税込)

手塚治虫愛好会の会長、星城明人が自宅で何者かに殺された。犯人は被害者を自殺に見せかけ、密室状態にして現場から立ち去ったのだ。さらに、被害者がコレクションしていた貴重な漫画古書も盗まれていることが判明した。残された愛好会のメンバーは警察から目をつけられてしまったのだが…そこに愛好会メンバーの一人でもある水乃サトルが颯爽と現れ、事件調査に乗り出す!
著者本人が手塚治虫ファンクラブの会長をやっていたという有名な話があるだけに、かなり趣味の世界で暴走しまくってる作品。嫌いじゃないが、そこまで手塚治虫に傾倒しているわけじゃないので、マニアックなウンチク攻撃に、そうなんですか~とため息をつかされまくり(笑)
ただ、ちょっと趣向は違うものの、自分も本が好きだし、他の趣味でもコレクター癖は人一倍強い方なので、この作品に登場する古本好きのキャラクターたちの心情には、けっこう共感できてしまうところがある。
今ではブックオフの100円コーナーばかり利用するが、昔は、けっこう高い古本買ってたよなぁ。ハードカバーの小説とか、定価が高いから、古本でも、欲しい本が半額くらいになってるとけっこう嬉しかったもので…古書店めぐりのエピソードなど、読んでる最中は、けっこう懐かしい気分になった。
作品の舞台設定は、今から20年くらい前?まだ、手塚治虫が御存命中だった頃のお話で…その頃の、いろいろなタイプのオタク人間たちの描写がけっこうリアルに描かれていて、面白かった。
ミステリー部分に関しては、蘭子シリーズに比べると軽めなものなんだね。わりと、最初の直感で犯人に到達できてしまったかな。犯人に関する別のエピソードも、実は何らかの事件ではないだろうか?と疑っていたのだが、それは違ったけど…。
個人的採点:65点
海泡 著:樋口有介
海泡
樋口有介:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204328-X
2004年2月発行 定価940円(税込)
100円コーナーで見つけるたびに買ってる樋口有介がたまってきたので…。大学生の主人公が帰省先で事件に巻き込まれる話。夏休みが舞台なので、ちょっとだけ時季がづれてしまったが、まだまだ暑い日が続いてるので、気分的にはOKでしょ。
東京の大学に通う藤井洋介は、夏休みを利用して2年ぶりに小笠原諸島の父島に帰省…。島に残る級友たちと久し振りの再会を果たすのだが、その直後、同級生の一人、一宮和希が転落死した。彼女も東京の大学に通っていたのだが、ストーカーに悩み、実家に戻っていたのだ。さらに、ストーカーと目される謎の男も和希を追いかけて島にやってきて、滞在していたのだ…。
ちょっと皮肉やでキザな感じのナンパな主人公が、自分の同級生の死の謎を追うという、樋口作品のパターンのひとつ。やる気がなさそうなんだけど、ダラダラと日常を過ごしているうちに、事件の真相にたどりついてしまうと…。
これもパターンの一つで、両親が離婚してるんだけど、この作品の父親も、息子に負けず劣らずの女好き。60のオヤジが息子の前で女子高生と平気でセックスしてるような、チョイ悪どころじゃない…どうしようもない親父(悪)今まで読んだ樋口作品の中で群を抜いている、しょうもない親父だった。
いつもは、ワトソン役になるようなヒロイン的な女の子は一人くらいしか出てこないんだけど…だから今回の主人公モテモテです。この息子もうらやましいくらいに、いろいろな女とヤリまくっていた…。でも、実は…けっこうナイーブな奴で、ある一人の女の子の呪縛から逃れられないでいたりするんだよね。それが原因で、ナンパな性格ぶってる。
小笠原という微妙に閉鎖的な町が舞台なので、いつもの雰囲気よりも、さらにダラダラとした感じがしていたね。展開の中に、同じ樋口作品で非ミステリーの「八月の舟」みたいな部分もあったかな?怪しい人物がいっぱいいたので、珍しく、犯人は盲点だったかな?
実際に自分が小笠原にいるような雰囲気、そして主人公と様々なタイプのおねーちゃんとのやり取り…今回も面白く読めた。
個人的採点:70点
ヤングガン・カルナバル 開催・バンケットの死闘 著:深見真

開催・バンケットの死闘
深見真:著
徳間書店 ISBN:978-4-19-850761-9
2007年10月発行 定価860円(税込)

前回に続き、深見真の「ヤングガン・カルナバル」シリーズ…これが9冊目。まだまだ続きはでてるんだけど、入手しているのはここまで。きっと、これ1冊じゃ“カルナバル”の決着つかないよな…?
高校生でありながら犯罪組織ハイブリッドの殺し屋である木暮塵八と鉄美弓華。非合法組織同士が覇権を賭けて争う“カルナバル”がいよいよ開始され、塵八も弓華も、ハイブリッドの代表として、仲間とともに舞台となるメキシコに到着…。続々と各組織の殺し屋たちが集まってくる中、ハイブリッドのメンバーは現地の反政府ゲリラに接触を試み、協力を得ようとするのだが…。
殺し屋同士のバトルロワイヤルがついに勃発。前作で物足りなかったアクションは、今回、これでもかと盛り込まれている。殺し屋の大博覧会状態…映画の「スモーキン・エース」とか、漫画&アニメの「ブラックラグーン」みたいになってきちゃいました(笑)映画オタク、漫画アニメオタクな作者だけに絶対に、この二つの影響受けてる(笑)
死体の山がどんどん築かれていき、ついにハイブリッド側にも犠牲者が!?サブキャラがまた一人減ったね…まさか、あのキャラが!ここまできたら、人物関係がだいぶ把握し辛くなってきたので、次巻あたりでもっと大量にレギュラー、サブキャラをリストラしちまってもいいんじゃないでしょうか、なんて思ってしまいますぞ。
ただ、予想通り…カルナバルの途中で、次巻へ続くデス。すでに新刊が何冊か出てるけど、100円コーナーではまだ発見できず…そんなに読みたきゃ定価で買えばいいんだけど、いやいや我慢します。
テンポよく、血みどろカルナバルの様子を読ませ、グイグイとひきこまれるのだけれども…まだページが残っているから、話がもっと進むかな?と思いきや、日本居残り組の話も忘れずに出てきますよと。まぁ、こっちの居残り組も凄いことになってて、ひっちゃかめっちゃか。
アクションが多かったので、逆にお色気サービスは控えめだったが、相変わらず、同性愛ネタも濃厚だったねぇ。どこまで暴走するのか?ますますシリーズから目が離せなくなってきたぞ。オタクネタと同性愛ネタが過剰すぎるだろ!
個人的採点:75点
ヤングガン・カルナバル 前夜祭・標的は木暮塵八 著:深見真

前夜祭・標的は木暮塵八
深見真:著
徳間書店 ISBN:978-4-19-850741-1
2007年4月発行 定価860円(税込)

深見真のヤングガンシリーズの続きをようやく100円コーナーでGET!これがシリーズ8作目であり、続く9作目も同時に入手。いよいよ、タイトルにもなっている“カルナバル”の正体が明らかになり、全体的な物語がかなり動き出したようだが…。
高校生でありながら犯罪組織ハイブリッドの殺し屋である木暮塵八と鉄美弓華。弓華は、鳳凰連合にさらわれた伶を助けようと行動を開始するが、その前に死んだと思い込んでいた母親の聖火が現れた!一方、塵八は後輩の公魚一登と共に、ある人物の暗殺の仕事にとりかかるが、罠にはまり…逆に殺し屋たちの襲撃にあう。そしていよいよ“カルナバル”の全貌が…。
あるサブキャラの絶体絶命のピンチで終わった、前巻…その続きの内容にふむふむとさせながらも、サブタイトルの前夜祭が示すとおり…作品自体は、次巻で本格始動する“カルナバル”のための前座のようなお話。最初の方で、塵八と一登が鳳凰連合の殺し屋さんたちと壮絶な戦いを繰り広げてはいたが、決着は案外あっさりと…。
過去シリーズに出てきたサブキャラが、再登場したりするので…そういうキャラたちの過去など、細かなエピソードがいっぱいつづられており、やっぱり下準備的な印象。弓華に関しては戦闘シーンも控え目…そんかし、お色気系なファンサービスは、今まで以上に過激に!やたら全裸になってたし、お約束のレズシーンもいっぱい。なんてったって、実のおかーちゃんと、そんなことまで…ラノベみたいなイラストなのに、中身はすごいなぁ、このシリーズ。
そういえば、いつもは渋いハイブリッドの女ボス、白猫さんまで…あんなことを。さりげなく白猫さんの本名も出てきたりするので、物語の展開は次回以降に期待だが、小出しに色々と重要なキーワードが出てくるので、シリーズのファンとしては、見逃せない内容。
さて、続いて9作目“開催・バンケットの死闘”を読むぞ!
個人的採点:70点